さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

泥沼の死闘に引きずり込み、敵地で雪辱成る 栗原慶太、サルダールをKO

2024-01-27 16:20:27 | 海外ボクシング



ということであっという間に、フィリピンからのライブ配信という、以前なら考えられなかった条件で試合が見られる金曜日がやってきました。U-NEXTさんに感謝です。
本当に、昔だったらリング・ジャパン(ジョーさんの会社ね)がビデオ出すとかしてくれなかったら、絶対に見られなかったような試合ですが。
それがまた、どえらい試合になりました。簡単に感想。



OPBFバンタム級タイトル...のみならず、IBFアジアタイトルというのもかかっている(こちらは決定戦だそうです)という、フロイラン・サルダールと栗原慶太の再戦は、前回敗れた栗原の方から、ゴングと同時に詰め寄って打ちかかるというスタート。
現地の映像がCGになってしまい、しばらく見られませんでしたが、再び映像が映ると、栗原の先制攻撃は奏功しなかったようで、出鼻にサルダールの右クロス、左フックなどを合わされている。
その後、栗原の左ボディから右がヒット。右ストレートも当たる。しかし上体がのめっていて、足がついてきていない感じ。サルダール。

サルダールは中盤以降落ちることが多い選手だし、防御も甘いところはあるが、序盤は持ち前の強打が冴え、合わせの巧さが出る。
ルイス・ネリー戦も初回は好打して優勢だったし、井上拓真も初回にダウンさせられている。
そもそも他ならぬ栗原自身が前回痛い目を見ているわけで...正直、この仕掛けはどうなんだろう、と思っていたら、2回も栗原が出て、サルダールさすがに面食らっているような感じ。

サルダールも迎え撃つが、栗原の攻めは後先考えてない、というレベル。左右を振り回して、左ボディが入る。
これが効いたか、サルダール、コーナーに圧されてさらにボディ、右ストレートなどを受ける。
栗原は左右とも力で振り回す打ち方で、スピードも切れも感じない。しかし間を詰めてどんどん手を出す。
栗原空振りも多いが、サルダール、ロープに押し込まれて一度腰が落ちる。両者空振りの応酬、という場面も。
なおも栗原ボディを攻めるが、一発、はっきり低いローブロー。レフェリー止めず、サルダール打ち返して逃れる。
両者右ヒットの応酬、栗原また出て左フック。サルダール、ロープ背負わされて打たれる。栗原の回。


栗原、スピードもなくリズムも悪い。打つというより殴っている。リズムもスタミナ配分もへちまもない、というスタート。
前回、見て立ったせい?であの負け方をした?という悔いが、こういう形で出ているのかもしれないが、いずれにせよ、もう是非を言う段階は過ぎている。
一度こうなってしまった以上、試合中に変えられるものでもない。このまま行くしかない。
そして、対するサルダールがボディを打たれ、それに巻き込まれている。栗原、勝機はある。しかし容易なことではないことも一目瞭然。

3回、栗原出て、ボディから攻める。打ち合いで右フックヒット。サルダール後退、栗原なおも攻めるが、左ボディ決めた後、連打を返される。右アッパーもヒット。ヒットの数で、ややサルダールか?
4回、栗原出る。右ストレート、左フックとも強振だがスローで、精度に欠ける。サルダールはまだ、本来の良い打ち方が出来ていて、右カウンター気味にヒット。
しかし栗原、手数を出しまくり、サルダールをロープに詰めて連打。栗原のパンチがボディだけでなく、頭部にも当たり始める。
サルダールも打ち返すが栗原止まらない。スリーパンチにボディ、左フックから右フックが頭部に入り、サルダール膝をつくダウン。
終わるかとも思ったがサルダール立つ。再開後、半ば背中向けるような姿勢で左。栗原も鋭く追えない。10-8栗原。

5回、栗原詰めに行く、というより変わらず出続ける。ロープを背負ったサルダール、単発ヒットはあるが栗原に手数で圧倒され、自分から膝をつく。ダウンに見えたがレフェリーはノーダウンの裁定。この辺は敵地ならではか。
栗原、攻めているが個々のパンチに本来の威力がない。サルダール、苦しいが打ち返す右や左フックには、まだ切れが残っている。
しかしラスト20秒以上、栗原が左右を振るって攻め続ける。正確なヒットは少ないが、サルダールも上体がぐらぐら。
消耗戦、という表現でも届かない様相に。栗原の回か。しかしもう、採点どうという試合ではなくなっている。

6回早々、サルダール逆襲。飛び込みざまの左がヒット、右ストレートも決まる。こちらも後先言うとる場合ではない、と覚悟した模様。
左右のコンビで打ちまくる。猛攻。栗原クリンチで止める。そのまま押していって膝をつく。スリップ。
栗原効いたか、しかしサルダールも体力はぎりぎり。左振ってミス、バランス崩したところに栗原が連打。ロープに詰めて上下左右と打ちまくる。
サルダールのけぞり、腰が落ちかけ、レフェリーがストップするかと思ったが、サルダールがそこから左フック、右返して脱出。場内歓声。
しかしまた栗原がロープに詰めて左右。連打ではなく一発ずつ、精度に欠けるが打ち続ける。サルダール反撃の手が止まっている。これはストップで妥当かと思うが、レフェリー止めない。
終盤までこの構図が続く。サルダールやっと打ち返すが、両者とも疲弊していて、限界を超えている。泥沼で足掻くような闘い。栗原の回。

7回、栗原の右ストレートでサルダールの顔が跳ね上がる。ロープに詰める栗原、しかし、しばし手が出ない。上手く休んでいるというより、本当に手が出せないんだろうなあ、と見ていて感じる。
しかしその疲れが幸いしたか?ショートの左アッパーに右と、本当に小さいパンチがこつこつ出る。大きな空振りをしない分だけ、この方が良い。
サルダール辛そうだが打ち返す。右ストレート、振りかぶって打ったがヒット。両者、両手がもう上がらず、頭で押し合いつつ打ち合う場面も。

もうこの回になると、見ていて採点も何も無かろうという感じで、どっちの回かよくわからず。
実況の西アナも解説の岩佐亮佑も興奮して、ラウンド数を間違えている。
8回、サルダール右を伸ばすが、栗原の右ショートがドンピシャのカウンターになる。狙ったとも思えないが、サルダール完全に止まり、栗原追撃。最後はコーナーに詰めて左右連打から、左ボディが決まって、サルダール立てず。KOとなりました。



いやもう...これまで色んな試合見てきましたが、タイトルマッチのレベルで、技術もペース配分も、これだけ全部かなぐり捨てたところで闘った選手、見たことあるかなあ、というくらいで。
しかもその闘い方で、記憶が残っていないKOという形で、自分を負かした相手に、それも(昔日ほどの不利ではないにせよ)敵地に出向いての闘いという状況で、雪辱を果たしたのですから。

栗原慶太、実況解説も語っていたとおり、試合どうこう、ボクシングとして見てどうこうじゃなく、今日この日、この相手に勝つことが、彼にとり、人生の全てだったのでしょう。
正直、この試合内容を見て、この先をどうとか言うことは出来ない、と感じたのも事実です。
しかし、まずは栗原慶太の決めた「覚悟」と、その凄まじい闘いぶりの前に、賢しらな理屈を言うのは憚られる、という気持ちでもあります。本当に、凄まじい闘いでした。
多士済々の日本バンタム級上位陣、タイトルホルダーの中でも、元々異彩を放つ存在ではありましたが、この試合を見た後では、もはや異次元の立ち位置というか、存在になっ(てしまっ)た感がありますね。



この日の興行、日本からもたくさん選手が出ていました。
関根幸太朗はフィリピンでも強く、タフでしぶといアル・トヨゴンに負傷TKO勝ち。強い左リードが相変わらず良いですね。
あと、日本でもお馴染みロニー・バルドナドを、細川兼伸が判定で下す殊勲。判定は敵地にしては意外な、という印象でもありました。本人が驚いてましたしね。
アンダーではデビュー戦の選手も出て、惜しくも判定負けでしたが、フィリピンでデビューというだけでも期待の表れ、でしょうか。

メインはIBFライトフライ級のイリミネーター。正直、栗原の勝利を見た後でお腹いっぱい、のんびり見よか、と思っていたら初回で終わり。
サウスポーのクリスチャン・アラネタがアルビン・マグラモを初回、左アッパーで倒し、右フックで二度目のダウンを奪い、TKO勝ち。
IBFライトフライ級の挑戦権を獲得した...はずです(笑)。見事な勝利でありました。



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