さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

徳山引退&3大世界戦

2007-03-15 09:55:23 | 徳山昌守
もう7年前の真夏、府立体育館の二階席は
それこそ辰吉の試合のそれを上回るほどの
異様な熱気に包まれていました。
アリーナの後方に陣取った私は、場内に響き渡る太鼓の轟音と
囂々たる歓声に呆然となりつつ、二階席を何度も見上げたものです。

リングの上には、朝鮮半島がルーツのボクサーがふたり。
しかし、場内に飛び交うハングル語の大半は、青コーナーのボクサーにのみ向けられていて、
赤コーナーのボクサーは、相手にのみハングルでの声援が集中するという、
普段あり得ないその状況に、とまどいを隠せずにいました。

徳山昌守は、まさに牙を剥くような勢いで仁柱に攻めかかり、
鋭いワンツーで圧倒しました。見事な勝利でした。
場内の歓喜の中で、徳山昌守の笑顔が弾けていました。


しかし今にして思えば、彼が一番幸福だったのは、この日だったのでしょう。
その後、どれだけ勝とうとも、ボクサーとして、チャンピオンとして、
彼の誇りが完全に満たされることは、とうとうなかったような気がします。

長谷川穂積との対戦希望も、結局かなうことはありませんでした。
ボクシング界の「支配体制」に属さない徳山の希望は、
結局かなうことなく終わる運命にあったのでしょう。

その圧倒的な技量にもかかわらず、徳山昌守は、
本当に報われることなくリングを去ります。


昨日発表された3大世界戦、どれも面白そうな試合ばかりで、
リングの上だけを見ていれば、もちろん充分に楽しめますし、
私も、多くのファンの方々と同じく、そうするでしょう。

ただ、心の片隅にひとつの思いがあるのも事実です。
長谷川穂積、名城信男、アレクサンドル・ムニョス、
これらのチャンピオンたちとて、今、徳山がほぼベストの状態であれば、
誰一人、徳山には勝てないんじゃないか、と。

そして、そういう想像が現実かどうかを、実際に証明する機会を
我々ファンの前に提供できないボクシング界に、
私は、けっこう本気で失望しています。



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2 コメント

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徳山選手 (マクソン)
2007-03-17 19:50:52
はじめまして。名古屋在住のボクシングファンです。
私も、徳山選手が、モチベーション低下を理由に引退を余儀なくされるボクシング界に、失望があります。

それと同時に、3度も4度も世界戦を経験できる選手もいれば、ジムの問題等でチャンスに恵まれない選手もいる。かと思えば、前回負けた選手が世界に挑む、とかおかしな構図をどうにかしないと、どうにも煮え切らないです。

K-1やプライドでは、モノは違うといえど魅力的なカードがたくさん組まれているというのに、徳山選手一人をバックアップできないこのボクシング界には、少しがっかりしました。(徳山選手の人気面も含め)

さうぽんさんの記事を初期から拝見しましたが、
本当にボクシングが好きというか愛されてる方
という印象で、思わず見入ってしまいました。

それにしても長谷川を、負け試合から天才と見抜いた
のは凄い観察眼ですね・・・

これからも、コアな視点を楽しみにしています。
応援しています♪
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大変恐縮です。 (さうぽん)
2007-03-17 22:26:21
マクソンさん、はじめまして。
身に余るお言葉、恐縮です。
拙いブログですが、今後ともよろしくお願いします。

徳山vs長谷川戦が実現せず、徳山が引退というのは、本当に残念に思います。当該ジムの会長同士が合意していながら実現しないというのは、考えたら奇妙なことなのですが、現在、日本のボクシング界はそういう奇妙な構造下にある、ということでしょうね。

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長谷川の若き日については、私など目を付けるのが遅い方なんです。デビュー戦の時点で「これは」と言っていた人を私は実際に知っています。

実はこの日、あの熟山竜一もデビューしており、マスコミやマニア諸氏の目は、父をジム会長に持つ元高校王者の熟山に集中していて、誰も無名の長谷川のことは気にもかけていなかったそうで。

にもかかわらず「熟山より、あの千里馬神戸のサウスポー、あいつはすごい、いずれ絶対出てくる」とその人は断言したそうです。その後の両者の運命を思うに、この方の眼力は凄い、と感服せずにはいられません。

マニアの道はあまりにも深いです。私はこういう経験を経て、自分は「マニア」になぞなれない、目指すのは「究極のミーハー」だ、と言っているわけなのです...。

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