さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
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拳闘見聞の日々。

玉越強平、5度目も実らず 悲壮なる敗戦に寄せて

2013-04-09 19:31:12 | 関西ボクシング

玉越強平、5度目の王座挑戦は、またしても敗戦となりました。

彼の試合は、あの池原信遂を破った試合を直に見たのが最初だったと思います
(ひょっとしたら、それ以前にも見ているかも知れませんが)。
本来、フェザー級だった玉越が、122ポンドに落として、
抜群の長身、リーチ、そしてハンドスピードを生かして、見事な勝利を飾った一戦です。

しかしその後、初のタイトル挑戦、中島吉謙との負傷ドローに始まり、
後楽園ホールでの三度のタイトル戦は、少なくとも映像で見た限り、
玉越の不遇、不運がまず、印象に残るものでした。

言ってはなんですが、中島戦、ウェート・サックムアングレーン戦(神戸開催)は
まだともかくとして、それ以外の試合は、私の目には「こんな荒いボクシングを
攻勢と見てポイントを振る採点では、玉越にはやりようがない」と映る、
納得感の乏しい試合でした。

そういう不運、不遇にあっても、玉越は地元でキャリアを重ね、
タイトル奪取の夢を捨てずに闘い続けてきました。


その頃、少しだけ、彼と会場で話をする機会がありました。
私が思わず、上記のような憤懣を口にすると、彼はそれを言下に否定しました。


「それも含めて、僕の実力です。今度は、全てを撥ねのけて勝ちます。」
「自分の人生の全てを賭けて、タイトルを獲って見せます。」


私は、自分の、ファンとしての勝手でしかない彼への憐憫を、ただ恥じるしかありませんでした。


その後、なかなかタイトルマッチの話もないまま、突然飛び込んで来たのが、
例のメキシコ遠征の話でした。敵地での、WBC1位ダンテ・ハルドンとの対戦。
正直言って、この試合が彼のキャリアを締め括る、最後の一戦となるのだろう、
これまた勝手にそう思っていた私は、3回ノックアウト勝ちの報に心底驚き、
また自分の勝手な思い込みを恥じつつ、心中、歓喜しました。

その勝利がどう評価され、どうランキングに反映された(或いは、されなかった)かについては
くどくど書くのは止めておきます。何でそうなる(或いは、ならない)のだ、という思いは、
部外者のファンに過ぎぬ私が思う以上に、本人と周囲を苛立たせたことでしょうから。


そしてやっと巡ってきた、日本タイトル4度目、東洋含め5度目のタイトル挑戦。
急上昇中の若き強豪、金子大樹との一戦で、彼は巧みな試合運びで序盤を闘い、
強打の王者相手に、技巧で渡り合いかけましたが、バッティングによる夥しい出血が
そのペース維持を阻みました。結果は、これまで以上に悲壮な敗北となりました。


長年にわたり、その試合ぶりを見てきたボクサーが、長く待ち望んでいた大切な試合で、
あのように敗れる姿を見ることは、本当に辛く、悔しいことです。
またしてもバッティングによる出血が、彼の足枷となって、彼の夢を阻んだことには、
それこそ言葉に出来ないような感情を持ってもいます。

(JBCルールは、WBCにならって、相手をバッティングで出血させたボクサーから
減点処分をするように改定されるべきだ、などと思ったりもします。
悪質な事例が、最近なら昨年末の新人王決定戦でも散見されました。が、これはまた別の話です)


しかしこれまた、私などが思う以上に、玉越強平本人が、言葉に尽くせぬ想いであることでしょう。
その現実の前に、私は本来、沈黙すべき一介の部外者であるに過ぎません。

しかし、せめて言わせてもらうとするなら、苦しみの中、懸命に闘い続ける姿は
敗れてもなお、私にとっては神々しくさえ映る、感動的なものでした。
長きに渡る彼の闘いは、ひょっとしたら終りの時を迎えるのかもしれないけれど、
こっそりと玉越強平のファンであった私は、その闘う姿を見続けることが出来て、
本当に良かったと思っています。

結果には恵まれなかったけど、チャンピオンと同等か、それ以上に努力を重ねた、
恵まれた体躯とハンドスピードを持つ、人柄の良いアウトボクサーが神戸にいたことを、
忘れることはありません。長きに渡り、鍛練を重ね闘い抜いた今、
ひとまずの休養と、彼の傷が癒されんことを願っています。


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4 コメント

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Unknown (アラサーファン)
2013-04-10 10:33:57
お早うございます。玉越さんの気迫、金子君に持ち味を出させないよう磨きぬかれた戦略、知略がバッティングによって寸断されたのは残念です。ただ、それを差し引いても若き金子君の冷静さとここ一番の爆発力には感心しました。玉越さん、これで最後ではなく、もう一度があってほしいです。

名城さんのレポート、読んでいただいてありがとうございます。後から見直してみると1ラウンドからKOラウンドまでまでどんな過程で推移したかきちんと記しておらず、全体の感想と名城さんの印象のみになってしまっており、また試合進行の文句など書かなくてもよい話を書いておるためあまり伝わらないものでした。申し訳ないです。
返信する
Unknown (玉越強平)
2013-04-12 02:50:02
たまたま、この日記を見つけました
日記を書いていただきありがとうございますm(__)m
返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2013-04-12 10:22:23
>アラサーファンさん

最近見た試合で、どうもこれは意図的じゃないのかと思うようなバッティングと、それにより試合展開が大きく左右されたような事例が立て続けに目についたもので、この件については後日、少し触れてみようと思っています。

金子大樹は強い選手ですが、鮮やかに勝った最近の数試合と、今回の試合とでは、少し印象が違いました。世界、という言葉をどの水準に置くかで違うでしょうが、三浦隆司ならまだしも、内山高志に挑むというのは、まだちょっと荷が重いとも感じましたね。例えば彼が世界でなく、OPBF王者ジョムトーン、或いは比国の強打ポンティーリャスに挑むとなったら、どんな試合になるのか、という興味を満たしてもらいたいな、と思ったりもします。ただし、おそらくそういう挑戦はないのでしょうが。

名城戦観戦コメント、重ねて感謝です。充分に雰囲気はわかりましたし、有り難かったです。進行については、私も時に同様の感想を持ちますが、たいていの場合は諦めの心境にありますかね(笑)書かなくてもよい話、ではありません、積極的に書いていかないといけない話だと思いますよ。でも、すっかり慣らされてしまっていて、書くのを忘れることがほとんどですが(笑)

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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2013-04-12 10:28:53
>玉越強平さん

これはどうも、ご本人でしょうか。拙いブログですが読んでいただいて光栄です。

過去にもあれこれ見た試合について取り上げさせてもらったことがあります。ファンの勝手でしかない思いですが、色々と書かせていだたきました。時に失礼なところもあるかも知れませんが、ご笑読いただければ幸いです。
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