さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

パンチの効き方が普通では無い 武居由樹、アポリナルをTKO

2022-08-27 07:06:42 | 関東ボクシング




ということで昨夜はdTVにて、ペテ・アポリナルvs武居由樹戦を楽しく見ておりました。
簡単に感想を。



初回、実況解説が言っていたとおり、長くフェザー級でも闘っていたというアポリナルの上体は結構大きく、厚みを感じる。
武居はかなり警戒して、遠い間合いでの立ち上がり。「キックの間合い」とさえ見える。

武居が上体をねじるような、妙なバランスでワンツーを打つが、アポリナル外す。
目の良さと、上体の動きが繋がった防御動作。
外せる選手だとは、動画で見て分かっていましたが、思った以上に防御の質が高い。

初回3分見終えて、これ、5戦目で当てる選手じゃなかったのかも、と思ったほど。
アポリナルはあまり手を出さなかったが、しっかり武居を見ていただろうし、2回以降、どういう形で出てくるだろうか、と心配な気持ちになっていました。


しかし2回、武居が左を上下に散らすなど、攻撃の数が見えてくる。
右フック飛び込み、ロープ際に逃れたアポリナルに、スタンスを踏み換え、左を伸ばして右。
綺麗に、わかりやすく顔面やアゴに入った、というパンチでは無かったが、アポリナルがダウン。
立ったが追撃されて二度目のダウン。簡単に倒れたように見える。踏ん張りが効かない模様。


スローで見ると、最初のダウンを奪った右は、アポリナルの左耳に、まともに入っていました。
確かに当たれば効くところ、なのでしょう。当て際が強い打ち方でもあるのでしょう。
それはわかるとしても、あの感じのヒットでそんなに効かせられるのか、と驚きもしました。
日本のボクサーも最近は、海外というか世界基準に沿った選手が増えて来て、型どおりに綺麗に打っていればいい、という感じではなくなっていますが、それにしてもこの打ち方で、この効かせ方は、ちょっと普通じゃ無いなあ、と。


傍目にはそういう印象でしたが、武居本人は手応えありと見えて、3回以降、立ち上がりとは間合い、立ち位置が全然違う。
明らかに近い位置に立って、そこから打っていく。「ボクシングの間合い」としても、ちょっと近め。

ボディにワンツー打ってガードされるが、そこから飛び退くのでなく、さらに前に出て追撃。
飛び込みの右フックも狙う。左ストレートは下に上にと打ち分ける。
アポリナル、あからさまに弱味は見せていないが、右フック引っかかって膝をつく。スリップだが、やはり足にダメージがある。

4回、武居の右フックでアポリナルがダウン。武居攻めるがアポリナルが打ち合いで右を一発ヒット。
武居、少しムキになって、危ないタイミングと角度のまま打ち合う。すぐに思い直して離れたが、ちょっとだけ不安も見えた。


途中採点、当然ながら武居大差のリード。40対33で三者揃う。
全ラウンドを武居が抑え、2回が10-7、4回も10-8だから、アポリナルは4ラウンズで7失点ということに。


それでもアポリナル、モラルの高さを見せ、右を振るって闘志を見せていたが、5回、打ち合いで武居の右フックが決まる。
その後左フックか、アポリナルが後退したところで、レフェリーが早めのストップ。
印象としては「ダウンの回数、点差という理屈は揃ったから」止めた、というものに見えましたが、さりとて続けていても、アポリナルには見た目以上にダメージがあった、レフェリーが間近でそれを見て止めたのだ、と言われれば、反論不能ではあります。



ペテ・アポリナルは、一定水準以上の実力を持つ、武居のキャリアでは最強の相手だったと思います。
しかし、フェザーでもやっていた選手の耐久力を、ものともしない武居の強打、普通じゃ無い「効かせ方」が出来るパンチを先に打たれ、それ以降はいかに「決壊」せずに踏ん張るか、という方向でしか、その闘志を表現出来ませんでした。


これまでの相手よりもレベルの高い、練れたボクシングが出来る選手相手に、先手を取られて長いラウンドを闘うことになったら...というのが、キャリアの浅い強打者への、いかにもありがちが危惧ですが、武居由樹は2回にはもう、その悪い想定を、自らの強打で破壊してしまいました。

それ故に、これまで試されていなかった部分を試される、という試合展開だったか、という見方をすれば、答えは半々かな、というところです。
ちょっとズルい言い方ですが。
長丁場での対応はストップしたから仕方ない。ただ、4回に3度目のダウンを奪ったあとの打ち合いで、少し判断ミスというか、無理をしたところは、相手がさらに上の相手だったら、致命傷になっていたかもしれません。


しかし、序盤の遠い遠い間合いの取り方は、良い意味での警戒心の強さを感じました。
また、ダウンを奪ったあとの攻め口は概ね無理が無く、左ストレートを上下に散らし、ボディをしっかり攻めているあたりも、総じて冷静ではありました。
4回、ワンツーに目を引いておいて、飛び込みの右フックで倒すあたりも、理屈の見える攻めでした。

キャリア5戦でタイトル挑戦の強打者、というと、この辺、もっと無理や雑さ、それこそ驕りが出たとて、何の不思議も無いところです。
やはりキックの世界でのキャリアがあるだけに、そういうレベルとは違う、という理解で良いんでしょうね。


今後に関しては、世界どうこうとはまだ遠くても、国内の122ポンド級上位陣との対戦は、あれこれ見てみたいものです。
というか、こぞって対戦希望が殺到するくらいじゃないと嘘だろう、とも思います。
今回の勝利で、ボクシング界においても本物のホープと目されるでしょうし、キックの実績も相まって、普通のレベルとは違う知名度があるわけですから。
確かにパンチがあって怖い選手ではありましょうが、そんなこと言ってる場合じゃない。「ええ的や」くらいに思ってほしい、ですね。
また、そうやって挑みかかってくる相手との、やって実になるカードを、ひとつでも多く闘ってほしいです。


その先に、上だの世界だのが見えてくる、その過程をまずは見せてもらいたい。そう思います。
強打のみならず、色々独特な魅力を持つ、楽しみなタイトルホルダーが誕生しました。今後も色々楽しみですね。




ということで、せっかくのライブ配信だったのですが、全試合張り付いて見る、というわけにはいきませんでした。
dTVの配信、PCと大きなモニタで見て、画質は充分だったのですが、配信中の巻き戻しなどには対応していませんでしたので。

しかし、他の試合も見どころ多いカードばかりでした。
「心配な天才肌」富岡浩介の試合が未見です。またアーカイブで見るとしますが。

セミの高畑里望、岡田誠一戦は壮絶でした。先にダウンを奪った高畑の長い距離を、岡田が果敢に攻略し、最終回に逆転のKO。
43歳対40歳の、ボクサー人生の総決算となる一戦、見応え充分でした。
両者に拍手したいと思います。


こういう試合、以前なら放送局によっては、ライブで、またフルラウンドを見ることはかなわない場合の方が多かったでしょうが、それを今はライブで、フルでしっかりと見られるんですから、これだけでもネット配信の価値あり、というものですね。





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7 コメント

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Unknown (hiro)
2022-08-27 07:53:18
いや色々と、見応えも思うところもある試合でした。
飛び込みながらの、独特の当て勘でのダウンは武居ならではの姿がそのまま生かされていた所。一方で、打ち合いにおいては、K-1の姿ならばあの距離での打ち合いで意外性溢れるバックスピンキックかハイキックを打ち出してみせる選手でしたが、ボクシングではその武器がないのを思い出したか(笑)。ストップはちょっと早かったですね。

今後、K-1では首相撲禁止のルールによって避けられてきた、クリンチ紛れのしつこい接近戦が得意なタイプとの対戦はどうなるかな…と思います。K-1時代の武居選手を最も苦しめ、延長判定にもつれ込ませたヨーブアデーン・フェアテックス選手をはじめ、ムエタイのタイ人選手相手の3試合は全て判定に留まっていました。この克服をしてほしいですね。

高畑―岡田は、両選手とも本当に気持ちが充実していました。高畑選手のパンチでダウンした岡田選手が正座で気持ちを切り替え立ち上がる所、高畑選手の応援団が、何とか逃げ切れると思った最終回に凍り付く所…声援が許される会場だったらどんなにも…と思わされる、記憶に残る勝負でした。高畑選手、まだまだ動けそうですが…うう…。
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Unknown (アラフォーファン)
2022-08-27 08:32:53
武居くん、足腰が強くバネがすごいですね。キックの間合いから効かせるパンチを当てるためにやっていた事が生きている感じです。普通なら届かない、ただ彼の踏み込みは一瞬で入り、しかも横に位置を取る、そこから右フックが来たら相手は予測つかないですし、スピードもかなりある。あの踏み込みでバランス崩さないのは感心します。そしてクール。
顔色変えずに一瞬で相手を斬り捨てる侍みたいなイメージです。相手の予測外の距離角度、当て勘、拳の硬さなど相まって倒せるのかなと。ただ今回も前半でダメージ与えた訳で後半になったら?あるいは武居くんが打たれたら、など試されないままのところはありましたね。

それでも楽しみ。キックの時の師匠も素晴らしいお人柄、武居くんもその影響か、浮ついたところないし、八重樫さんも現役時代は型通りではない戦いしており、どう育てるのか。

一つ気になるのは大橋会長が階級下げを示唆した事。まあ井上兄弟との重複気にしたんでしょうが、このバネが無理な減量で失われぬよう、配慮願いたいです
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Unknown (海の猫)
2022-08-27 16:06:11
あの打ち方、当たり方で倒れるのは、自分も本当に驚きました。そして早いラウンドから本人狙って倒しに来ているのが、相手からしたら脅威ですね。まずはあの独特な動きとタイミングに慣れて、とのんびりやってる暇がない。そしてフィジカルが本当に強い。身体の当たりではアポリナルの方かなと思ってたのですが、そんなこともなく。
アポリナルは重戦車という感じではありませんが(誰が考えたんだろ)、バランスのとれたいい選手と思います。この相手にこの内容なら、国内上位の誰とやっても楽しみですね。井上が12月に国内でやるなら、そのアンダーで良いカードを組んでくれたら嬉しいです。
武居はデビュー前の木村とのエキシビションを見た時も衝撃でした。他競技とはいえトップを張っていた経験と天性の格闘センスが今のところ良い方にのみ出ていますね。
何度か防衛し、世界戦線はバンタムというのは、自分は賛成です。井上の転級関係なく、世界レベルではバンタムのフレームに見えます。国内ではSバンタムで問題ないと思いますが、本気で世界を狙うなら、バンタムの身体を作って欲しいと思います。

今回こちらで知って、dTVで見ました。ひかりTVより使い勝手が良いですね。すぐにアーカイブが見られるようになれば(見られませんよね?見つからなかったので)、なお良いのですが。
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Unknown (hiro)
2022-08-27 16:37:32
武居選手、体重の話が出てますが、18歳でキックデビューした2014-2015年は55kgで戦い、体格差に苦しみ1勝2敗。53kgに落とした2016年に4連勝で頭角を表すと共に、身体を作り上げて、2017年からは55kgに戻して、以降2020年まで無敗で転向しました。K1では、当時層が厚く、注目を集める階級である55kgでチャンスを求める転向だったと思います。ボクシングでは使わない筋肉を削った結果がバンタム級であれば、良い結果が出ることを期待したい一方、6年間主戦場としたスーパーバンタム級の方が慣れて良い成果が出るのではとも思います。
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Unknown (neo)
2022-08-28 10:10:48
武居由樹、実は10年くらい前に、ザ・ノンフィクションで見てから折に触れて消息を気にしていた選手でした。キックで王者になった時はよく頑張ったんだなと感慨深く感じたことを覚えています。
今回の相手は強豪で、なかなか一筋縄にはいかないのではと踏んでいましたが、強かったですねえ。高校でボクシング部だった事も大きいかも知れませんがボクシングの間合いでもしっかり戦えるし、キックの間合いからの素早い踏み込みもあるし、身体は強いし、積み重ねてきたものがきちんと力になっているように見えました。
少し粗が無い訳ではないですが、世界ランカークラスの強いベテラン相手でもなんやかんや勝ち切りそうなので、強い相手と経験を積んで順調に世界王座を獲得して欲しいですね。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2022-08-28 17:41:49
>hiroさん

詰めた距離だと蹴りですか。もしホンマに出たらまずいですね(笑)。
はー、K1だと揉み合いへの慣れや耐性が無いんですか。そういうものですかね。ちょっと意外です。まあ、昨今のボクシングだと概ね大丈夫かなあと思いもしますが。世界レベルでそんな選手は希ですし、その下のレベルなら、大抵もつれる前に倒すでしょう。クリンチの多い相手には、クリンチ寸前にボディ打つ習慣をつけたらいいと思いますね。それを身に付けられるだけのセンスがあるように思います。
セミは声援禁止、抑制の状況ならばこそ、割と静かな感じでしたが、それが却って緊迫を際立たせていたような。高畑、さすがにここで連敗ですから、厳しいでしょうね。


>アラフォーファンさん

下半身や身体全体の強さを上手くボクシングに転換出来ている印象ですね。このへんの配分が上手く出来ずに失敗した例も過去に見てきましたが、八重樫東の存在ゆえに、という部分かもしれません。距離や角度、タイミングはこれから研究される部分もありましょうが、当て際の強さ、打ち込みの深さゆえに、小さい振りでも倒せるというところだけは、研究したところでどうにもならない部分で、大きな強みですね。受け身に回ったら、という想定とは少し違いますが、4回に詰めに行って逆にもらったあとの対応の悪さなどは、まだキャリア不足かな、と見えました。


>海の猫さん

打ち込みが深いこと、飛び込みで倒せることなど、これまでの試合でも驚きはありましたが、今回の小さい振りで、頭部だか耳の辺りだかであんなに効かせてしまったのは、さらなる驚きでした。国内上位とのカードを期待と書きましたが、その反面、他ジムの会長さんが「あんなのとやらせられるか」と考えたとて無理も無い、と思ってもいます。ある意味、理屈も何も通じないですからね。
そして、強打を軸に試合を回すことに慣れている。一方で、それにかまけたり、頼りにしないと闘えない、という選手ではない。もちろん不足も課題もあるにはあるが、5戦で自分の型を持っている。他から見たら脅威でしょうね。
アポリナルは過去の試合映像よりも良いな、と見えましたが、かないませんでしたね。
dTV、画質もよく、価格も手ごろで満足ですが、ひかりTVと同じく、アーカイブ置くのに時間が空くんですね。或いは置かれない?何も情報が無いので困ります。巻き戻しや追っかけ再生が出来ないのも不便ではありますね。


>neoさん

その番組の話は聞いたことがあります。何かと注目度の高い存在なのですね。
元々アマチュアはボクシングで、その後K1で、そしてボクシングに戻ってプロで、という来歴は興味深いですね。両方の良いところを取り入れて、バランス良く整えるというのは難しいことでしょうが、今のところ多少歪に思うところがあるものの、概ね上手くいっているんではないか、と見えます。今後はやって実になる試合を重ねていってほしいですね。それが一番難しいことなのかもしれませんが。
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武居の階級について (さうぽん)
2022-08-28 17:49:22
バンタムに落とすという話が出たんですか。驚きました。アポリナルが大きかったんで、今回は相対的に身体の厚みで負けているように見えましたが、私は減量きつくて締まりすぎなのか、だとしたらこの先はフェザーで考えてもいいかなと思ったくらいでして。
もちろん本人のコンディション次第ですが、今やっていて、問題なさそうなクラスから下げても、あんまり良いことないような気がしますね。最近、それで上手く行った選手っていましたっけ。大橋秀行は自分がミニマムに下げて成功したんで、それがまだ頭に残っているのかもしれませんが、それで通じた時代はもう過去だと思います。
ジムメイトとの階級の兼ね合い、という理由は、もしそうだとしたらクラブ・ジム制度に生きる業者の勝手、ご都合でしかないですね。そろそろマネージャー登録が別であれば同ジムでも対戦可能にしてほしいですが、これはまた別の話で。
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