さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

永遠なる闘い・大晦日5大世界戦 4/5 

2013-01-04 20:59:39 | 関東ボクシング

距離で防御する「ボクサー」と、腕を使う、または頭の動きで防御する「ファイター」。
両者の攻防、せめぎ合いは、ボクシングの歴史において、永遠に続く闘いです。
佐藤洋太と赤穂亮の一戦もまた、その延長線上にある、熾烈なものでした。

初回から佐藤が鋭いジャブで距離を支配し、赤穂はその防壁を破ろうとするが
ジャブ、右ストレートで止められ、時折左フックの好打があるものの、
アウトサイドからの攻撃のみで、相手の身体の芯を打てない。
時にリング中央に陣取って突き放し、時に大きく旋回しながら放つ
佐藤の左リード中心の、ロングレンジの展開に引き込まれてしまった赤穂は、
懸命に食い下がるものの、ヒット、手数とも及ばず、敗れました。


佐藤については、一般的な評価はどうなのか知らないですけど、
私はたくさん見所のある、見ていて楽しいボクシングだった、と思います。

相手の視線を左右に散らすフェイント、スタンスを変えて距離の長短を切り替え、
身体の向きを変えてパンチの出所を隠す、等々の細かい技を、
休み休みではなく、試合開始から終了まで、間断なく見せてくれました。
決して強打の赤穂相手に逃げ腰になったという印象がなく、
技と力の対決を真っ向から挑んだ上での「巧さ勝ち」でした。見事だったと思います。

これで昨年、スリヤン、シルベスター・ロペス、赤穂と、東洋圏内の強豪を連破した佐藤ですが、
今年は米大陸の強豪クラスとの対戦を期待したいところですね。
今後、4団体認可となれば、オマール・ナルバエスとの統一戦とか、
フライ級最強のブライアン・ビロリアといった名前も上がってきて欲しいです。
次が指名試合となれば、WBC1位カルロス・クァデュラスが有力なんでしょうが。

様々な技を駆使しつつ、決してボクシングの攻防の密度を薄める闘いには走らない、
密度の高い技巧派ボクシングを見せてくれる、異形のアウトボクサー、佐藤洋太は、
今現在、もっとも「見もの」なボクサーのひとりです。
これほど、誰とやっても面白そう、と思えるボクサーは、そうそう出るものではないでしょう。
興行面での苦戦が漏れ伝わってくることも多いですが、彼のボクシングの魅力は、
強豪相手であればあるほど発揮され、多くに伝わるものだと信じます。


敗れた赤穂亮ですが、残念ながら大敗だったものの、こちらの闘いも立派だったと思います。
過去の数試合における闘いぶりは、ラフというのを通り越した無理押し、
力ずくのごまかし、としか言いようのないものが散見されて、
私は赤穂亮に対し、率直に言って、悪い印象、感情を持っていました。

しかし今回、赤穂はあくまで、技と力で佐藤洋太に挑み、及ばず敗れました。
その技量についての批評は置いて、彼は一度も試合を壊そうとはせず、
正々堂々と闘って敗れました。

佐藤の正確で鋭い左リードに距離を支配されても、それを突破せんと挑み続け、
しかし、体当たりまがいの突進などは一切せず、試合の品位を落とさなかったし、
初回終了間際の連打や、時折佐藤の打ち終わりを捉えた単発の左フックなど、
及ばずながらも見せ場を作って、終始緊張感のある闘いを見せました。

当たり前ですが、ボクサーは拳と拳で闘う者です。
そして、時にその原則を忘れたか、或いはハナから理解していない手合いが、
のこのこと10回戦クラスのメインイベントに出てきたり、
果ては世界戦と称する試合のリングに立ったりすることに、
いちいち腹を立てていてはキリがない昨今、なのですが。

しかし、私の、そういう懸念、疑念の対象であった赤穂亮が、これほど真っ当に、
相手の良さを削ぎ落とし、揺さぶり、苛立たせる技巧派、佐藤相手に
クリーンな試合ぶりを見せてくれるとは、失礼ながら想像していませんでした。
悪くすると、試合を壊して自分が勝とう、というような試合展開の末、
勝ち負け以前に不快感が先に来る、酷い試合を見せられる羽目になるのでは、とさえ思っていました。
そんな自分の悪い先入観を、今はひたすら恥じています。

赤穂にとり、辛く苦しい12ラウンズだったでしょうが、それでも彼は、
大舞台で自分の、ファイターとしての意地と誇りを見せてくれたと思います。
互いに認め合った宿敵に完敗して、今は落胆のさなかにいることでしょうが、
この近辺クラスの誰と闘っても、今回の闘いぶりならば、きっと好試合が期待出来るでしょう。
佐藤洋太の飛躍と共に、赤穂亮の再起にも、大いに期待します。




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3 コメント

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Unknown (ポインター)
2013-01-05 15:13:55
ボクサーvsファイターの典型的な戦いとなった佐藤vs赤穂ですが、私は戦前予想として赤穂に期待していました。赤穂の前試合、戸部戦を見ていまして。
しかし佐藤と対峙し、あれほどまでに手数がでないとは思いませんでした。会場では赤穂の応援団から結構野次が飛びかってましたが。
数少ないチャンスに振り出す赤穂のパンチ、殺気がみなぎり、私には緊張感バッチリの12ラウンズでしたね。
スコアは3-0で佐藤でしたが、最終回には佐藤も前に出て赤穂の気持ちに応えた、日本人同士の戦いだからこそでしょうか、期待していた赤穂が負けても良い試合だったと感じました。
赤穂の再起、期待しています!
返信する
Unknown (アラサーファン)
2013-01-05 21:56:35
私も佐藤君の闘い方に感心した一人です。変則ばかり強調されていますが左ジャブと右ストレートを中心に、緩急、パンチの出所、角度、タイミング、距離をきちんと管理し、その為の手法を数多く準備し、実戦に落とし込む事ができる極めて上質なボクサーだと思います。何でもスパーリングを500R程したそうで、そこから沢山のヒントを得たと思われ、考察力の高さが伺えます。
赤穂君、実は色々考えてはいたと思われますが佐藤君の管理力が一切それを許さなかった、ただのフッカーにしてしまったと見ています。それでも赤穂君のパンチは一撃で終わらすパワーが見られ、スリルは常にある面白い試合でした。
互いに相手を認めあった上での舌戦、敢えて死地に飛び込み、相手の距離に乗った上でさらに上を行き、照明が切れても最後まで試合を管理仕切った佐藤君は見事でした。
私はナルバエスと組んでも面白いと思ってます。

返信する
コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2013-01-07 08:59:58
>ポインターさん

以下、ポインターさんとは異なる私の(今回の試合前までの)赤穂観を書きますが、見方は人それぞれということで、ご容赦願います。

前記事のコメント欄にも少し書きましたが、私は先の戸部戦や石崎戦などを見て、こんな闘い方がまかり通るボクシング界はいったいどうなっているんだ、という憤りとでもいうべき感情を持っていました。パンチを当てるより腕で殴打するような場面があまりに多く、前進する身体の膂力を相手の身体にそのままぶつけて攻め込んでいく姿を見て、こんなのはもはやボクシングではない、ただの喧嘩だ、この選手が次に、世界戦と称する試合に出て良いのか、と思っていました。

以前、中広大悟と引き分けた試合の映像を見たときには、良い意味での果敢さのみが目についたものですが、その後、試合のたびに粗く、悪くなっていく一方だなという印象でした。

しかし今回の試合で、敗れたものの、赤穂は本来の意味でのファイターとして闘い抜いてくれました。仰るとおり、殺気、闘志をもって、しかし易きに流れぬ闘いを、最後まで見せてくれたように思います。佐藤の技巧に対し、真っ当な方法で攻め込み、結果としてそれがかなわなかったわけですが、赤穂がこのようなファイターであってくれれば、私は彼の試合をまた見たいと思いますし、素直に応援も出来ますね。

>アラサーファンさん

スパーリングの多さにはちょっと驚かされますね。目慣らしや発想のためにやる軽いものならまだいいですが、本気で打ち合う回数としてはちょっと過多なのでは?とも思いますね。
彼のことを「和製サーシャ」と呼ぶ人もいますが、アクションの多彩さでいえば遙かに見所が多いように思います。サーシャと違って、見ていて飽きませんしね。
赤穂との関係は、何かボクサー同士にしかわからないものがあるようですね。闘いぶりは正反対、感性や情緒もだいぶ違いがあるようですが、それだからこそ、という感じなのでしょうか。
佐藤の今後については、さらなる強敵との試合実現に期待します。というか、もう生半可な相手では、かえって彼の集中力が続かないんではないか、とさえ思えます。今回の試合でも、最終回にセコンド陣に変なことを言ってたらしいですが、レベルが高すぎて試合中に自分で退屈してしまうようなところがあるのかも知れません。もしそうなら、とんでもない話なんですけどね(^^;)
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