さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

「復帰戦」としては上々、されど今後は? パッキャオ、まずは破綻なく勝利

2016-11-06 15:20:21 | マニー・パッキャオ



ということでWOWOWの生中継を見終えました。
タイトルマッチ三試合、ひょっとしたら飛ばされるのかな?と「邪推」していた
大沢の試合含め生中継、ありがたいことです。

今後もオンデマンド含め、生中継があるようですので、楽しく拝見したいと思います。
まずはとりとめも無く今日の感想文を。


マニー・パッキャオは、7ヶ月ぶりの「復帰戦」でした。
計量の映像を見ると、ちょっと身体に張りが無い、筋肉量が少し減ったか?という感じ。
実際、試合始まってしばらくは、動きが切れないなあと見えました。

ジェシー・バルガスは、セミセミでノニト・ドネアに勝ったジェシー・マグダレノ同様、
広めのスタンスで踏ん張って迎え打ち、後ろの足をこまめに動かして後退、
困ったらクリンチ、という流れを作ろうとしていました。
しかし2回、パッキャオの右足の上に、自分の左足が乗ってしまった瞬間に打たれ、
実質片足でしか踏ん張れない、不運な状況で喫したダウンがあり、
そこから少しずつリズムを失い、目論見が狂った感がありました。

4、5回あたりは、待ちの展開で、リズムやテンポを落とす試合運びが出来ていましたが
6回くらいになると、見るからにスタンスが狭まり、踏ん張りが利かず、迎え打ちの威力を落としてしまう。
このあたりから、パッキャオがそれまでよりも踏み込んで打つ頻度が高まり、
終盤は再三にわたって攻め込まれてしまいました。

パッキャオは若干幸運な?感じもありましたが、序盤のダウン奪取から、
徐々に調子を上げ、中盤以降もペースを落とさず、終盤はさらに好打を重ねる「復調」ぶり。
爆発的な追い上げはなかったものの、左ストレートの速さと右回り、右リードジャブの切れなど
往年の片鱗をちりばめつつ、きっちり差を付けて勝ちました。
中に一つ、何ソレ採点が混じっていたのには驚きましたが。

もし、練習不足の影響が出るようなら、途中まで好調でも、突然の失速というような事態が
いつ起こっても不思議は無いと思って見ていましたが、そのような心配は無用でした。
パッキャオはやはり、このあたりの相手なら、順当に勝つ力を普通に持っている、
その事実を改めて見た、復帰戦としてはまずまず、上々の試合だったと思います。

しかし、今後の試合について、名前の挙がっているテレンス・クロフォードや、
ウェルターの他団体王者との対戦などがあるのだとすると、この試合の出来では不安でもあります。
まずまず良かった、破綻は無かった、というレベルでは、これらの相手に勝てはしないでしょう。

かつて当たり前のように、試合の度に見せていた「驚異」のマニー・パッキャオを取り戻せるか否か。
そこが成否を分けることでしょうね。

もっとも、彼がそのような彼自身を取り戻して闘い続けることを、本当に心底から希求しているのか、
それが若干、疑問だったりもするのですが...。
もしそこまでの覚悟があるのなら、議員との両立状態のまま再起することはないんじゃないかなぁ、という。
まあ凡百の身に、これほどの巨大な「星」の心情など、計り知れようはずもないですが。



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セミファイナルのオスカル・バルデスvs大沢宏晋戦は、ワンサイドの展開で進み、終わりました。
内容は、事前の想像通りだった部分と、そうでなかった部分とがありましたが。

まず、王者バルデスの様子が、開始早々から奇異に見えました。
動き自体は前見た通りかな、と見えたのですが、顔色が何だか悪く見える。
スピードの差でリードしている展開なのに、気づけば2回にはもう口が開きっぱなし。
動きも、コンビを打つ動作は滑らかなのに、全体的にはブツ切り、細切れの印象。
その止まっている間に、大沢のジャブを出させてしまい、攻勢を切られる場面も。

対する大沢は、序盤から勝負を、と言っていたそうですが、スピードの差、
それも手足や身体の運びというより、いつどこ打つか、の「判断のスピード」で大きく劣り、
打つ決意をする間が見つからず、後手に回っては打たれ、の悪い回りに追いやられてしまいました。

元々はライト級でキャリアをスタートさせた大沢が、体格の利を生かせる場面は
残念ながらほとんどなし。優勢なのに苦しそうな表情をさらして闘うバルデスに、
何とか押し込んで攻められないか、と思って見ていましたが...。

4回にダウンを奪われ、7回に左フックで効かされて詰められ、ストップ。
心情的な部分で、地方の小さなジムからベガスの大舞台に立った事実を称えたい気持ちもありますが、
試合自体は善戦健闘とはいえない、厳しい評がなされて然るべきものでした。残念です。


試合後の報道などを見ていないのでわかりませんが、バルデスは何か重篤な負傷か、
体調不良の状態にあったのではないか、と見えました。
もしこの状態のバルデスに、細野や下田、天笠あたりが挑んでいたら...と
言うても詮無いことを思ってしまうほどでした。


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ノニト・ドネアの敗戦は、いよいよ彼の身体的限界が来てしまったのかな、という印象でした。
ドネアよりも分厚い上体のサウスポー、マグダレノは、広いスタンスで踏ん張り、
左(アッパー含む)と右フックの迎え打ちに専念し、クリンチやホールドで接近戦を抑えて、
後ろ足から小さく後退のステップを刻み、懐を深く使う、迎撃ボクシングでドネアの切れ味を封じました。

メインのバルガスは、体力不足とダウンの影響から、早々にこの構えを崩してしまいましたが、
マグダレノはバッティングによる出血にも動じず、終盤まで持ちこたえました。
10回くらいになって、すこしスタンスが狭くなり、迎え打ちの威力が落ちたところを攻められましたが、
最後まで踏ん張って、中差の勝利を収めました。

以前なら、相手が来れば鋭い「合わせ」のカウンターがあり、相手が引けば旋回してサイドから崩す、
自在な攻撃ボクシングを見せてきたドネアですが、相手の体格や懐の深さに苦しんだせいもあり、
どうにも攻め口が直線的で単純でした。これではいくら個々のパンチが切れても勝てん、という感じでした。


軽量級の歴史において、これだけ攻撃指向が強く、なおかつ技巧の冴えを見せ、
多くの強敵と闘い、勝ちまくってきたチャンピオンは、そうそういるものではありません。
ジョフレやゴメスに匹敵する戦慄的な強打を持ち、原田同様に大幅な階級間移動をこなし、
過去に類例なきほど、数多くのスペクタクルな勝利を重ねてきたノニト・ドネアの
偉大なキャリアにも、とうとう終焉の時が来たということなのかもしれません。
敗れた相手がリゴンドーのような驚異的な強豪でも何でも無い選手だったこともまた、
そのような思いを強くする一因ではあるのでしょうが。



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7 コメント

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Unknown (R35ファン)
2016-11-06 17:52:02
一部ではパッキャオ様の復帰を小遣い稼ぎと揶揄する向きもありますが今回に関しては問題なかったですね。最後バルガスはやっと立ってるだけに見えたのに随分けったいな採点がありましたね。ただ左をリードがわりに打ったり、色んな技で今日は勝ちましたが、ガルシアあたりならまだしもクロフォードとやるとは思えないです。議員さんとしての活動と両立するなら、今日のレベルの相手と後二試合くらいやって引退かなと思います。
大沢さんは初めての大舞台に浮き足立つ様子はなく、ダウンした後に、アイムオーケーと冷静に応えて、メンタルはしっかりしてましたが、いかんせん差がありすぎました。相手のスピードとパワーが予想以上で、対処の仕方や勝つための"アテ"を何も見つけられない感じに見えました。あれ程の相手でなくても、一度くらい世界ランカー対決なり、国内の強豪と試合していればもう少し試合になったのかなと。復帰してから強い相手とやってないから、仰る様な判断スピードは磨かれないまま来たのかなと思います。
ドネアは見ていて悲しかったです。あの華麗なフットワーク、恐ろしくキレる左フック、目の良さは一体どこに消えたのか。正面から工夫なく突っ込み、大振りの左フックを空振りしてはヨロける姿、いつも筋骨隆々ではないですが今回特に締まりなく、動きも遅く、見るんじゃなかった、とすら思いました。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2016-11-07 13:37:23
>R35ファンさん

再起の事情はあれこれあるんでしょうね。仕上がり自体は及第点だったでしょうが、それ以上でも以下でもないというところでもあります。プロモーターは自分の立場であれこれ構想を持っているでしょうが、それがパッキャオの意志と合致するかどうかは、ちょっとわかりません。仰るとおり、ほどほどのところで納める感じ、ですかね。
大沢については、この日の4試合に出た「アジア勢」の中で、一番「話にならない」内容で負けましたね。日本の代表的選手がこれか、という誤解が広がるのだとしたら辛いところです。一番良いのはなかなか出てこない、という、ある部分タイあたりと通じる日本の特殊さ、その悪い面が出てしまいましたね。仰るとおり、あの舞台に辿り着くまでに必要な過程を経ておらず、その結果があの試合内容というのは、厳しく評されることでしょう。精神的には落ち着いてはいたのでしょうが、いきなりあのレベルの相手(仮に彼が比国遠征でマグサヨあたりを倒していたとしても、それでもなお難敵だったでしょう)に挑むのは厳しすぎましたね。見ていて気の毒にさえ思いました。

少し脱線しますが、WBOアジア王座を、例えば日本の頂点を決める試合で惜敗した下田あたりが獲得して、再浮上への道に繋がる、という方向で利用するというのは、それはそれでひとつの方法かな、と思ったりはしました。細野戦の敗北は、見ていてどうも納得感がなかったですし、さりとて細野側が即再戦を受けはしない現実がある以上、そういう選択もありかな、と。大沢のように内実がない世界ランク上昇に利用するのはバツですが。

ドネアは普通のボクサーには無い才能を持つが故に、衰えた時に凡庸に見えてしまう、という典型的な例ですね。長谷川穂積がようやく、ベテランとしての闘い方を見つけたと語っているのと違い、彼はそういう方向性に辿り着いていないのでしょうね。それは彼の才能が、かつてどれほど桁外れに凄いものだったかを証してもいるのでしょうが。

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Unknown (Unknown)
2016-11-10 12:01:16
>スピードの差でリードしている展開なのに、気づけば2回にはもう口が開きっぱなし。

バルデスはタイトルを獲った試合もそうでしたね。
あの試合は2回に倒しきってしまいましたが。

今回の大沢戦はそのままのペースでいったら、ひょっとして厄介なことになるかなという自覚はあったんでしょうね。
だから、ボクシング寄りに切り替えて、ペース配分に十分注意していたように見えました。
また自覚があるからあれだけ一方的な展開でも集中力がありましたね。

あれは井上にもぜひ見習ってもらいたいです。
井上は切り替えの理由がスタミナ面というよりは拳の負傷だったりしますが、戦術変更したあとの集中力や丁寧さという点でバルデスは成熟していました。
集中を切らしたり雑にならないところに、あの選手は非常に遠いところを見据えているんだろうなと感心しましたね。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2016-11-10 16:33:23
>無記名の方

出来たら、次回は何かお名前書いていただけると嬉しいです(^^)
よろしくお願いします。

なるほど、言われてみればそうだったかも知れませんね。余裕があるはずの展開なのに、妙にきつそうな表情に見えてしまったんですが。
抑制したペースでの闘いについては、大沢に脅威を感じたという風には見えませんでした。ただ、間違いを怖れた、ということならあり得るかもしれませんが。それが本人の不調だったのか、そうではなかったのか...この選手の試合は今後も見る機会が多くありそうですので、いずれ答えが出ることでしょうね。
井上との差は、やはり駆け足で大きな試合を闘ってきた弊害という面があるかもしれませんね。これまた、今後が全てを証すことでしょうが。






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Unknown (FINITO)
2016-11-11 11:33:55
失礼しました、思ったことをふらっと書きマナーを欠いていました。

仰るとおりバルデスは大沢には全く脅威など感じていなかったでしょうね。大沢には酷ですが、このレベルにぐだぐだした泥試合やポイントの取りこぼしがあっては評価を落としてしまうという高い意識のもとの、計算されたペースの抑制であったと見えました。
井上との差は立っている舞台の違いでしょうか。同じ舞台であれば井上も集中力を切らさずあのようなパーフェクトな試合運びができるような気もします。


ところで話は変わるのですが、こちらのブログ様に長谷川穂積の荒川正光戦の観戦記がありませんでしたでしょうか?
(いつも「長谷川 荒川」とかで検索していていたので御ブログか100%の確信がもてず間違っていたらすみません)

私はあの観戦記が大好きで気が向いたときに定期的に読んでいたのですが、いつの頃からか見つけることが出来なくなり・・・
あの文章には才能ある駆け出しのボクサーの迸るきらめきや儚さと、それに邂逅したボクシングファンの戸惑いと抑えられない高揚感が凝縮されており大好きな文章でした。商業的なものも含めてボクシング絡みの文章でいちばん秀逸で心に残っているといっても過言ではないです。その後の長谷川の偉大さに鑑みてもたいへん貴重な記録であったと思量します。

ご事情やお考えがあり公開をやめられたのかもしれず、このようなことを書くこと自体がご負担になるかもしれず申し訳なく、ご事情やお手間がなければまた公開していただければとても嬉しいです。
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コメントありがとうございます。 (さうぽん)
2016-11-11 13:07:37
>FINITOさん

いえいえ、マナーがどうというような話じゃ無く、こちらがわかりやすくて助かる、というだけの話ですので、お気にならずに。
バルデスにとっては、そういう位置づけの試合だったのでしょうね。そこまでの厳しさが井上の周辺にあるか否か...彼は日本に置いて、単に勝つだけでは満足してもらえない、という意味では突出した位置にいるとは思いますが。

あの観戦記は時々、高く評していただけることがありますが、自分としては目の前を矢のように過ぎていく現実に追いまくられて書いたもので、色々誤記があったりもして、褒められると背中に冷たい汗が流れます(^^;)
で、あのサイト全体は、サーバー管理の方の事情で、今は見られなくなっています。今後復旧出来るかどうかは、目処が立っていません。ご了承くださいませ<(_ _)>

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Unknown (FINITO)
2016-11-12 12:55:22
お返事ありがとうございます。ご事情了解しました。
長谷川のデビュー当初を知る資料としても貴重な観戦記ですので、問題が解決されて後世に残っていくとよいですね。
返信する

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