今頃ですが先週土曜日さいたまスーパーアリーナ大興行の、メイン以外の感想なども少しだけ。
せっかく行ったんですから...というところなのですが、実は事情あって、この日はメインだけしか会場で見られませんでした。
セミセミはタブレットでライブを見ましたが、セミは移動の都合上、3回までしかライブでは見ていません。4回以降はアーカイブで見ました。
会場に入って着席したときには終わっていました。8回まで行ったと聞いて「思ったより長引いたのやな」という感想を持った次第。
そのくらい、中谷潤人は序盤から、山内涼太をワンサイドに打ちまくっているように見えました。
距離の違い、角度の変化、精度の差が相まって、現状だいぶ差があるだろうなあ、という戦前の想像と違わない展開が続き、8回のレフェリーストップまでそれはほぼ変わりませんでした。
中谷が、減量苦によってコンディションを落としでもしていない限り、ワンサイドマッチになるだろう、という予想通りの、順当な勝利でした。
もしそこに揺らぎがあれば、山内の強打がそこを撃ち抜く可能性も、ゼロではなかったでしょうが。
しかし、見終えて思うのは、やはり山内が今、挑む先は中谷でなく、ユーリ阿久井政悟だったし、国内から中谷の挑戦者をピックアップするなら、それは阿久井であってほしかったなぁ、ということです。もちろん、スケジュール的に無理だったわけですが。
残念ながら、世界とつくタイトルマッチとしてはミスマッチでした。世界フライ級1位と日本フライ級1位の試合、という感じで見れば、納まりの良い試合だったかもしれません。
世界王者がアルテム・ダラキアンだという「設定」をしての話ですが。
中谷はしかし、もう次から階級を上げたいと希望しているようです。コンディションに不安がなくなれば、さらにスケールアップした姿が見られるでしょうね。
しかも楽しみなカードもあれやこれやと頭に浮かびます。楽しみが増えますね。
セミセミはライブ配信を見ていましたが、うーん、こうなってしまったか、と色々な意味で残念な試合でした。
前にも少し書いたんですが、こういう複数世界戦とか、大試合大箱興行のアンダーで「これメインで、ホール興行なら満員間違いなし」と思うような好カードが組まれて、喜んで会場に見に行くと、試合内容どうよりも雰囲気的になんかこう...燃えないというか、熱くならないというか、盛り上がらんかったなあ、と思ったことが、過去に何度もあります。
それはメインカードにしか興味を持たない客層の比率が高く、広い会場で観客の熱気や集中が分散されてしまう、という現象なのですが、悪くすると試合内容もそれに影響されて噛み合わず、空回り、となることもあります。
今回、吉野修一郎と伊藤雅雪の試合も、同じ撤を踏んだというか。やっぱり違うロケーションの方が、これよりは良い試合になったかもしれないなあ、と思わずにはいられませんでした。
伊藤は別段悪い調子でもないように見え、鋭い右や、左右(ないしは、右左)のコンビをよく当てていました。
しかし少々打たれても耐え、フォームが乱れても重いパンチを打ち返せる吉野との、相性の悪さが試合の展開を決めてしまいました。
さらに悪いことに、吉野の頭が前に出て、バッティングが頻発。試合後吉野が「課題です」と何度も言っていましたが、確かに課題です。
試合自体を左右することへの是非、というのみならず、全世界に配信される大舞台での試合としては、あまりにも「絵」として見て、よろしくない。
勝負以外の話なんか、と切って捨てて済む次元ではなかったな、と、率直に思います。
国内レベルで最強無敵となっても、世界への距離はそこからがまた遠い。
ライト級という伝統クラスの情勢は基本、そういうものだけに、中谷正義や、一階級下ながら元WBO王者の経歴を持つ伊藤がライバルとして存在することは、吉野修一郎にとってはある意味、幸運のはずです。
そのひとり、伊藤との対戦がこういう舞台で実現したにもかかわらず、勝ち負け以前に「打たせて堪え、返す」試合内容自体が冴えなかった上に、頭まで絡んでしまうとなると...きついようですが、この試合の内容と結果が、今後に明るい展望を拓くものだった、とは、どんな忖度を積み重ねても言えません。
もちろん伊藤の鋭いカウンターに耐えて反撃したタフネスとパワーは凄い、と言えば言えるかもしれませんが、この試合は「勝ちさえすれば何でも良い」試合ではなかった。
その面においても、残念ながら大きな不足を感じた試合でした。
まあ、やっぱりこの手の試合は、ホールでやるか、かなうならば大田区総合体育館とか、代々木第二体育館とかの、中規模会場のメインとして、この試合自体をお目当ての観客が集まる中、闘われて然るべきだったかなあ、と思います。
もっとも、このカードでそのような興行が成立しうるかというと、それはそれで難しいでしょう。
それは両選手の技量力量を云々する以前に、日本ボクシング業界の力不足、という話になるわけですが...。