ということで、DAZNライブ配信、楽しく見ておりました。
セミファイナルのエルウィン・ソト、高山勝成戦は、ソトが9回TKO勝ち。
ストップの是非なども、多少論議を呼ぶかも知れませんが、簡単に感想を。
立ち上がりから、高山が軽いパンチの数を出し、ソトが重いパンチを返す流れ。
高山は足は動いているが、ガードが少し低いか。ソトは振り回しておいて、インサイドに刺すワンツーが速い。
2回、このパンチで高山、少し効かされる。
この段階で、少しずつ足捌きよりも、ボディにパンチを集める方に、闘い方の比重が移っていったか。
対するソト、序盤の内は、高山の軽いパンチなら、少々は...という感じで、重いパンチを狙っている風。
こういう傾向自体は、この後、高山に多少幸いするだろう、とこの時点では見えました。
3回、高山が手数出して奮戦。4回、ボディ、上の打ち合い。5回も同様。
パワーの差を手数で埋め、ソトの疲れを誘い、あわよくばボディブローの中に、ダメージを与えられるものがあれば、と思って見ていました。
しかし6回から、ソトが巧くリングを「刈り込んで」高山が思うように足で捌けなくなってくる。
重いパンチを時折好打されていて、そのダメージも当然あるが、ソトが攻防共に丁寧になってきた印象。
7回、互いに右へ周り合う。ソト、上体を無理なく動かし、頭の位置を変えつつ攻める。
時に下がって右ヒット。高山は足のベクトルが左右に向かず、前進してボディ狙い。
本来、パンチ力で劣っている方が採る闘い方ではない。苦しい。
8回、そのボディ攻撃も、下ばかり、下狙い、という前提でソトに見られてしまっていて、ヒットしても本来以上の効果が得られない。
ソトが要所で、右から左アッパーなど、好打を重ねる。
9回、高山が出るのを見て、ソトが迎え撃ち。ワンツー決める。ショートの打ち合いでも、高山は出ては打たれ、の繰り返し。
それでも前に出て保たせていたが、ソトのヒットのあと、高山が手を返していたさなかに、TKOの宣告となりました。
高山勝成、調整期間の短さを感じさせない奮戦でしたが、体格とパワーの差を、手数と動きで埋めることはかないませんでした。
ライトフライ級では、さらにパンチングパワーの不足が目に付きましたが、それを補うために、本来、優っていないといけない部分でも、ソトに上を行かれた、という印象です。
序盤こそ、強打者が陥りやすい一発狙い、軽打被弾の傾向が見えたものの、高山の動きをよく見て、サイドへの動きを徐々に封じたし、足を動かし、頭(上体)を振って外し、カウンター狙いで強打を生かし、という具合に、試合が進むにつれて、やることがいちいち丁寧、的確になっていく。
エルウィン・ソトは、パンチ力、体格の優位性のみならず、それを元手に冷静さを持ち、高山のビジーファイトに対応して、強打を決めていきました。
試合の結果は、内容を正当に反映したものだった、と思います。
あと、ストップの是非については、あれは仕方なし、としか言えない、と見ます。
確かに高山の方が手を出している(力無いものでしたが)タイミングで、いかにも間が悪い、絵面が悪い、といえばそうですが、そこまでの展開、高山が打たれたパンチの数、両者のパワーの差、そして高山がなまじ粘り強いが故の、あそこから先に潜む危険...諸々を考え合わせると、あのストップは受け容れないといけないものではないか、と。
高山を応援する心情はもちろんありますが、それを込みにしても「まだこれからやのに」とは、全然思いませんでした。
まあ、あのレフェリーは「その場なり」の仕事をする人や、というのも事実ではあるのでしょうが。
試合後のシャドーボクシングや、まだ闘えたとアピールするジェスチャーが、場内の観衆にどう映ったものか、正確なところはわかりませんが、試合後のコメントなどを含めると、本人はまだ「次」を闘うつもりでいるようです。
まあ、何かにつけ、大きな試合ともなれば進退絡みの区切りに結び付けてしまう、日本的な思考でいけば、如何なものかと見る向きもありましょうし、私のような高山贔屓の身でも、そういう気持ちが半分くらいあったりします。
しかし、この試合出場オファーを受けたことも含め、高山勝成の行動原理は、言ってみれば国際的な基準により近いものであり、彼の振る舞いや言葉が、外国のボクサーのそれであったとしたら、特に違和感なく見られるものでもありましょう。
見た目不相応に年齢も重ねていますし、闘いぶりも含め、苦しいところでしたが、それでもあの大箱で、若い王者相手に怯まず挑み、打ちかかり、様々に手を尽くして闘った末に、まだ「次」を語る。
それが高山勝成なのだ、というしかないのでしょう。
様々な困難と共に、走り続けてきた彼のゴールは、まだもう少し先にあるらしい、ですね。