さうぽんの拳闘見物日記

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拳闘見聞の日々。

体力強化が「心」も支えた 岩佐亮佑、バークレイズでタパレスをKO

2019-12-10 09:35:34 | 海外ボクシング




観戦旅行のさなか、日曜の早朝と昼間に、外出先のスマホにて、WOWOWオンデマンドで合計6試合を見ることになりました。
この辺が以前とは違うところ。遅まきながら(というか、ホンマに遅い)スマホなんてものを手にして、やっと人並みの生き物になれたかなという。

で、一番大事な岩佐亮祐の試合は、伊丹空港に着いたあとから見始めました。
昨日、WOWOWの枠でも放送されたようですが、それはまだ見ていません。



前日計量二度目でパス、当日計量でオーバー。
IBFの当日計量にて、時間の猶予を与えての再計量を行ったりはしていないでしょうから、結局そのままの状態で、タイトル獲得の資格を失う代わりに、体重の優位性は手にしてリングに上がってきたマーロン・タパレスは、体つきも若干、岩佐亮佑と比べると厚みあり。

こちらの記事によると、タパレスは当日計量において、再度秤に乗り、増量4.5キロ以内の規定体重でパスした、とのこと。
WOWOWの放送で言っていた話とは違うようです。訂正します。失礼しました。


タパレス、初回から頭や上体を動かして、左クロスなどを打ち込んでくる。
大きく動いて、岩佐の右リード、その射程距離のみならず「範囲」から外れつつ、単発で当て、怯んだら追撃。
過去に複数の選手が見せた「岩佐攻略」のパターンを、タパレス陣営も踏襲してきた印象でした。

しかし、岩佐は思ったよりも動じず、正対して打ち返す。
時折ヒットを喫するが、以前なら外そうとして動き、下がるところを、踏み留まり、さらに前に出て押し返したり。
やりようによってはさらに打たれてしまうところですが、前に出ている割に、打たれるにしても「時折」止まり。

巧い選手がファイター化、前に出る型に変えた場合、ある程度外せて、当てていける自信、或いは算段がある場合と、単に手詰まりで仕方なく、という場合とがありますが、岩佐はどうやら前者のようでした。

前戦、ロスのリングでセサール・フアレスに勝っていますが、その試合でもこういう感じで闘ったようで、今の岩佐は、それまでのイメージでは語りきれない部分があるのでは、と思っていましたが、それがこの試合で、具体的に見えてきました。


3回、左打つと同時に起こったバッティングでタパレスが膝をついたら、それをダウンに取ってもらえる。これは幸運。
これで右の頬が腫れたタパレス、少し苛立ち、ペース乱すかと思ったが、改めて強打を狙ってくる。

岩佐は下がらず、出て対し、しかし外せるぎりぎりのところで闘う作業に勤しむ。
徐々に右リードが続いたり、接近して打ち合ったり、という場面が増えてくる反面、単発ヒットを喫する場面もあり、一進一退。

8回、タパレスの右フックが好打するが、岩佐堪えない様子で逆に攻め込む。
ストレートパンチを連打してタパレスを下がらせ、ボディに左、さらにロープ際に追い込んで打ち込む。
「捉えた」という表現をしても良さそうなラウンド。

しかし9、10回、苦しいタパレスにセコンドが指示しなおしたか、活を入れたか。
改めて大きく動き、単発のパンチもフェイント入れたり、起動を変えたりで、タパレスが持ち直す。
ポイント的に微妙になってきたかな、と思っていましたが、岩佐の動き自体も落ちない、変わらない。

11回、左と右を外から打っておいて、直後、タパレスの右を外し、右ジャブ省略の左ダイレクト。
それまでとはちょっと違う足の踏み替え方で、やや内角に軌道を描いた一発が、タパレスのアゴを切るように打ち抜き、鮮やかなダウンを奪う。

タパレス、一応カウントを聞いて立つが、レフェリーの状態確認に対し、一歩よろめいてしまい、ストップされる。
不満そうでしたが、現在の趨勢では、仕方ないところか。



試合前から、セレス小林会長により、体力強化についての喧伝がされていまして、正直「ホンマにそうであったなら、どんなにいいか」とか思ってましたが、こちらの不明でした。脱帽するしかありません。

そして、その体力が強化されたことが、岩佐亮佑の心の支えでもあったのでしょう。
それは試合の展開において、岩佐亮佑の姿、さらに言うなら「佇まい」に、全て出ていたように思います。

途中はけっこう焦れったくも感じましたが、終わってみれば岩佐は、終始タパレスに対し動じず、揺るがずに押し続け、狙い続けて、それを終盤にかなえて勝ちました。
何より、試合が終盤に進んでも、疲れも揺らぎも見えなかったし、その上で、11回になって「今日イチ」のベストパンチを決めて倒したことは、大きな驚きでした。
これほど体力的に、いや、心身共に強靱になっているのか、と。それこそ過去のイメージを覆した、と言っていいようにさえ。


米国リングで二連勝、ロスでイリミネーションバウトに勝ち、今回はニューヨークの新メッカ、バークレイズで暫定タイトルマッチに勝つ。
岩佐亮佑が突き進むIBF王座陥落後の再起路線は、日本人ボクサーとしては過去に類例なき、実に目覚ましいものです。
昨日の帰国後の会見では、ダニエル・ローマン以外眼中にない、と発言していますが、彼にはそう断言する権利があります。
「それ以外」の試合については峻拒する、と言えるだけのことをやってきたのですからね。



井上尚弥がプロ転向する前、若き岩佐亮佑の存在はまさしく、新時代の旗手そのものでした。
しかし、幾度かの挫折を経ての戴冠、そして陥落の後、今の岩佐亮佑が辿り着いた「境地」は、その頃に思い描いたものとは多少趣が違うものの、それでもなお、充分に魅力的です。

何もかもが思い通りの栄光は手に出来ず、長きに渡り苦しみつつも、彼は闘うことを諦めず、新たに自分を鍛え直し、そのこと自体によって、動じず闘い抜く身体と心を備えるに至った。
それを実感させてくれる試合内容だけで、充分見応えのあるものでしたが、それを見事な「結果」に変えた、あの左ストレートは、余りに鮮やかで、眩くさえ映るものでした。
スマホとしては大きめの画面(6インチ強)とはいえ、当然いつもより小さな画面での観戦ですが、思わず声が出そうになったくらいに(笑)

いや、本当に嬉しい勝利でした。岩佐亮佑、お見事でした。拍手あるのみ、です。


ダニエル・ローマンとの対戦は、今後の情勢でどうなるか、ですが、いずれにせよ次の試合も楽しみですね。
その勝ち負けがどう、という以前に、彼が難敵相手の試合をふたつ、アメリカのリングで勝ち抜いて手にした「権利」を行使する試合、です。
場所や日時がどうであれ、これもまた生中継で見たいものです。WOWOWさん、G+さん、その節は是非に(笑)。



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ということで、一曲。
甲斐バンド “Muscle” です。






コメント (5)
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