さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

善し悪しあれど、懸念は消えず

2012-12-23 17:12:56 | 長谷川穂積

昨夜は長谷川穂積の再起二戦目を観戦してきました。
悪いのか良いのか、判断のつきかねる10ラウンズだった、というのが率直な感想です。


まず一番強く印象に残ったのは、相も変わらずというか、今まで以上に頻繁に、
ロープ際に下がり両手を下げるシーンが目についたことでした。

アルツロ・サントスは当然、手を出せる展開をタダで与えられたのですから、連打してきます。
その大半を外し、連打で反撃して押し返す場面が何度かあった反面、
当然ながら全部は外せず、左を好打されてもいました。

ロープ際へ下がる回数が多かった反面、以前ほど「長居」しなくなったかな、とも見えました。
反撃の連打も、アウトサイドの無力なパンチが以前よりは減り、インサイドを突く好打が
いくつか見られたのは好材料です。

ただし、往年のパーネル・ウィテカーほど完全に目で外せるわけではなく、
また、試合展開を完全に掌握したとも言えない場面で、あのような誘いをする必要が無いのに
ああいうリスクを背負う必要があるのか、率直に言って疑問です。

本人が折に触れて語っているように、自分のボクシングを、防御面で見直したいという気持ちで、
ある程度劣勢になるのも構わず、自分から引いて相手に攻めさせていたのでしょう。

しかし長谷川に期待するのは、こういうのは今日限りにしてくださいね、ということです。
この試合だけの話なら、少々打たれても破綻はないのかもしれませんが、
今後闘うであろう相手に、こんな頻度でロープを背負っていては、結果がどうなるかは目に見えていますから。


次に攻撃面ですが、まず、試合前に左足を痛めていたと、後に知りましたので、
見た直後に思ったこととは少し印象が変わっています。

全体的に、やはり攻撃の精度に欠けた印象でした。
右に関しては以前と余り変わらず、パーリー7割、ジャブ3割という感じ。

個人的には、ここにもっと大きな、目に見える変化が欲しかったですね。
もっと良いジャブをリードにして距離を維持することは、防御勘の確認以上に、
ボクサーとしての護身に大きな益があるはずです。ここに一定の進歩を見たかったのですが。

速い左ストレートがジャブ代わりという感じで、左で探るようなパンチが多く、
そして、その左は、ヒットがあってもほとんどが浅い印象でした。
散発的に好打はありましたし、防御感も冴えた場面がありはしましたが、
それが次の展開につながらない、組み立てがいちいち崩れ、細切れになり、
また一からやり直し、の繰り返しでした。

それはやはり、足の負傷で蹴り足が弱かったせいもあるのでしょう、
ジャブより速い左ストレートで相手を突き崩し、その手応えを元に
攻防共に歯車が噛み合っていくという、好調時の長谷川ボクシングは、
今回、完全には実現されなかった、という印象です。


この試合の限りでいえば、まずまず良し、という部分もありましたが、
次にも組まれるという世界戦に視界良好、というような試合には見えませんでした。
長谷川本人が、課題を見いだしたことを前向きに語っていることは救いだとしても、
過去への回帰のみが主眼として語られ、新たな基軸を打ち出そうという風が見えないことに、
不安、不満、懸念を持たざるを得ません。

世界挑戦の相手は報道によると、スーパーバンタム級ではアブネル・マレス招聘は困難で、
WBCフェザー級王者ダニエル・ポンセ・デ・レオンの名前が挙がっていましたが、
おそらく年明けのIBF、WBO認可により、そのほかの可能性も出てくるのでしょう。

しかしどんな選択がなされるにせよ、この試合で見いだした課題を元に、
長谷川穂積が自分のボクシングをいかに磨き上げて、三度世界に挑むのか、
その姿に注目せずにはいられません。

そして、その勝敗が、長谷川の才能と闘志が十全に発揮された末のものであってほしい。
長らくその姿を追い続けて来た者のひとりとしての、せめてもの願いです。


そういう意味では、やはり、昨日の試合は...でしたね(^^;)



コメント (15)
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