さうぽんの拳闘見物日記

ボクシング生観戦、テレビ観戦、ビデオ鑑賞
その他つれづれなる(そんなたいそうなもんかえ)
拳闘見聞の日々。

偉大なり、マルケス!

2012-12-09 21:47:40 | 海外ボクシング

恥ずかしながら、何が起こったのかわかりませんでした。

マニー・パッキャオが右で煽って左、と見えた直後、前のめりに倒れ、びくともしない。
ファン・マヌエル・マルケスが両手を挙げて歓喜のステップを踏んだのを見て、
カウンターが入ったのかと思いはしましたが、今のアクションの中に、
どんなパンチを入れる隙間があったのか?と困惑しているうちに、試合は終わっていました。

スローで見て驚愕。パッキャオの重心が浮いていたとはいえ、右の煽りを躱して、
拳いくつか程度の小さい振り幅、でも肩がしっかり入った右カウンター。
ファン・マヌエル・マルケス、39歳にして生涯最高の一打が、4度目を数える
仇敵との対戦、実に42ラウンド目にして、遂に出ました。

あれこれボクシング見てきて、スロー再生見て膝が震えたのは、今日が初めてかも知れません。
ボクシング史に残る、強烈なKOのひとつに数えられるフィニッシュシーンでした。
少なくとも、今年のリングマガジンベストKOは、これで決定でしょうね。


最後だけじゃなく、そこまでの過程もまた、ものすごい展開でした。
共にロベルト・デュランの如き、殺意に満ちた攻撃と、天賦の才能が迸る防御の競い合い。
打っては外し、打ち終わりを狙う、高度なリターンとカウンターの応酬が間断なく続く。
これぞまさしく世界の超一流、誇り高き英雄同士の闘いでした。



見終えて思ったのは、パッキャオが前戦の、消化不良の果てに喫した敗戦を、
深く反省し過ぎたのかな、ということです。

最近放送されたドキュメンタリーでも、過去の自分に回帰した闘いを見せて、
ボクシングに対する取り組み方への疑念を払拭する、というコメントをしていました。
そのせいか、最初から積極的に攻め続けていましたが、若干、その意欲に縛られすぎていて、
過去の試合で見せた柔軟性、或いは「遊び」のようなものが全く感じられませんでした。
後付けの感想ですが、倒された場面にも、その影響があったのかも知れません。


それにしても、歴史上、何度も対戦を重ねたライバル対決数あれど、過去3度の対戦において、
片方に勝ち星がないにも関わらず4度目が実現したこと自体、
今回勝者となったファン・マヌエル・マルケスの偉大さの証明だと言えます。

39歳にして、過去3度闘って勝てなかった相手に挑むことに費やした彼の労苦、
その心を支えた、自分自身が培ってきたボクシングへの誇り。
その膨大さ、崇高さの前には、どのような言葉も無意味でしょう。

...と、試合前からマルケスについては、だいたいこんなことを思っていたのですが、
その上結果が勝ちで、内容があれで、終わり方もあれですから。
私は本当に、文字通り、しばし言葉を失っていました。


恐るべし、そしてやはり偉大なり、ファン・マヌエル・マルケス。
とりあえず、こんなことくらいしか思いつきません。
衝撃的、かつ感動的な、至高の一戦でした。



コメント (5)
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