穴にハマったアリスたち

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映画 「カイジ 人生逆転ゲーム」 感想

2009年10月16日 | 映画・コンサート・展示会・テーマパーク
期待していた以上に面白かった。
映画化には向かない話と思っていたけれど、実は映画向けなのではという気すらしてきた。
下手に原作に拘らず、削るべきところを削り、アレンジを加えたのは英断だと思う。

■映画「カイジ 人生逆転ゲーム」

毎日毎日を自堕落に過ごしてきたカイジくんは、ある日、突然に多額の借金を抱える羽目に。
当然、払えません。毎日を自堕落に生きてきたので。
どうしようもなくなった彼は、金貸し屋さんに言われるがまま、借金返済のためにギャンブル船・エスポワール号に乗ることに。
そして始まる奇天烈ギャンブル。賭けるのは己の人生。
果たしてカイジくんは無事に生還できるのか。

というお話。1996年からヤングマガジンにて連載中。
漫画好きならほぼ確実に読んでいるほど有名だけど、微妙にマイナー臭も抜け切られないそんな漫画です。
映画化は正直なところ不安の方が強かったけれど、かなり素晴らしい出来栄えでした。手放しで絶賛したいくらい。

このお話の特徴は色々ありますが、その一つに「敵側」の人の方が正論を吐く、というのがあります。

「金は人の命より重い」
「何も積み重ねてこなかった人間が、何かを得られると思うな」
「質問すれば答えが返ってくるのが当たり前だと、まだ思っているのか」
「今までの人生で何度『少し待って欲しい』と言ってきた。いつまで待てばいいのだ」
「明日やろうと思っているからクズなんだ。今日頑張った奴だけが生きられるんだ」

完膚なきまでに正論。
そしてカイジくんを始め、主人公サイドは本当にどうしようもない屑。
美味しい餌にはあっさりと飛び付き、全く努力をせず、しかもそのことを反省しない。
エスポワール船での利根川さんの演説に簡単に感動し、船井さんの扇動に乗せられ、地下帝国では目先の快楽にずっぽり埋もれ、鉄骨の前でも安い根性論を賛美する。
そのくせ言うことは「努力する気はないが、俺たちを無条件に助けてくれ。俺は負け組なんかじゃない」。もはや救いようがない。

一度二度の「負け」なら「運が悪かっただけ」「個人の事情」とも言えますが、彼らはとことん人生で負け続けてます。
チャンスもあったのに、ひたすらに怠けて負け続けた。
挙句、復活手段として選択するのが一か八かのギャンブルですよ。どうしようもない屑っぷり。

でもだからこそ、「そうは言ってもこんちくしょう!」と叫びたい、そんな感情も分からなくはない。
これは「敵側」の人たちが間違ってるわけでも、カイジくんらが「本当はいい人」なわけでもない。
正しいものは正しいし、屑はやっぱり屑なのだけど、でもそれでも言いたい一言はある。そんな感じ。

カイジ役の方はとてもハマっておられました。
部分部分では格好いいのだけど、でもやっぱダメな子なカイジくんを上手く再現しておられた。
あの配役を考えた方は、偉い。そして演じた方も、凄い。

2時間の映画に収めるべく、展開は高速で進みます。
ギャンブルの内容もかなり切り詰められてるのだけど、非常に上手くアレンジしていたと思う。「はしょられた」というより満腹感の方が強かったくらい。
素人発想だと「2時間みっちりエスポワール」とか考えちゃいそうですけど、そんな安易なことをしなかったのはおそらく正解。

特に「鉄骨渡り」が良かった。
「高層ビルの間に渡された、鉄骨の上を渡るだけ」という果てしなく地味なゲームなのに、絵的に物凄く映える。
ここを山場に持ってきたのは流石。

あの鉄骨を渡っている最中の、「まだそこにいるかカイジ!」「ああ、いるぞ!」のやり取りは原作の全編通じても一番好き。
「限定じゃんけん」や「Eカード」もそうですが、「鉄骨渡り」は人生の縮図だと思う。
人はどんな綺麗事を言ったところで、人を救うことなんてできない。鉄骨から次々落ちていく仲間を救うことすらできない。
気合任せの勇気は即座に吹っ飛ぶし、なけなしの知恵で仕込んだ「靴の目印」は不運の雨であっさりかき消される。
すぐそこを歩いている戦友とは声をかけあえるだけ。決して、道は一つにならない。
それでも「仲間がそこにいる」という、ただそれだけのことで前に進める。励まされる。そして前に進んで行くしかない。まさに人生。

30歳間際になるまでの30年間、全く何も積み重ねてこなかったカイジくんが、それまでの30年分の全ての「努力」の清算をするべく挑むギャンブルとしてとても印象的だと思う。
まぁ普通の人は、そんな無茶なギャンブルなんかに追い込まれないように、毎日少しずつ努力してるわけなので、別段カイジくんらは「偉い」わけでも「可哀そう」なわけでもないのですけれど。
そこはちゃんと押さえて、話としても安易に一発逆転を謳ってるわけでもないのが良いです。
劇中でカイジくんも言っている通り、「勝って今度こそスタートラインに立とう」なところが切ない。
今までの怠けた人生の負債をチャラにしたい。「やり直したい」であって、「勝ちたい」わけでも実際「勝つ」わけでもない。

そういう意味では、ラストも全く救われていない、ある意味バッドエンドな映画です。
そこも含めて、非常に「カイジ」らしい映画でした。
原作が好きな人なら、十二分に楽しめると思う。


(左画像)
映画「カイジ 人生逆転ゲーム」 オリジナル・サウンドトラック

(右画像)
カイジ―賭博黙示録 (1) (ヤンマガKC (608))


BGMが格好良かったです。
演出の魔力で誤魔化されてるのは分かるんですが、やたらに格好良かった。
とりあえずサントラを衝動注文してみた。

原作者の出演の他、ちまちまと遊びが盛り込まれていたのも楽しかった。
鉄骨が2本1組になっていたりとか。
「1本1組だと電流が流れない」という原作の『間違い』をこっそり訂正してたのが可愛い。
その手の『ファンサービス』が随所で見られました。
多分、金利計算の間違いとかも訂正されてたんじゃないかな。

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2 コメント

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今日観た (バナナ)
2009-10-21 19:02:55
敵サイドが正論を吐く、っていう構図は
恐ろしいほどプリキュアと似てるんですよね・・・

あの娘さんたちは花の女子中学生なので良いですけれども
返信する
スプラッシュスターの番組がカイジの世界に居たら (日向咲の隠れファン)
2009-10-17 16:43:06
もし、カイジの論理がまかり通る世界のテレビ局での
スプラッシュスターについて論議をされたらこんな言葉が出てくるんじゃないかなと妄想…


「視聴率や売上は番組の質より重い」

「売り上げや視聴率を無視している番組が、何かを得られると思うな」

「ただ、質の良い物語をつくれば売り上げや視聴率として返ってくるのが当たり前だと、まだ思っているのか」

「今までの下がり続けた視聴率や売上に関して何度『少し待って欲しい』と言ってきた。いつまで待てばいいのだ」

「最初から二年目があると思っているからクズなんだ。今日どんな手段を使ってでも頑張った奴だけが二年目をゲットできるんだ」





こんな事を言われたら多分猫背の人はもっと猫背になってしまうかもしれませんが…
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