豪州落人日記 (桝田礼三ブログ) : Down Under Nomad

1945年生れ。下北に12年→東京に15年→京都に1年→下北に5年→十和田に25年→シドニーに5年→ケアンズに15年…

花と蝶

2002-06-07 15:15:54 | Weblog
6月7日(金)曇

   花と蝶

森英恵の会社が倒産した。僕はファッションの世界には疎い。しかし彼女はオートクチュールで世界進出を果たした唯一の日本人なのであろう・・・こういう言い方は僕流ではない。女か男かとか、日本人初をありがたがっているように取られるのは不本意だ。それにオートクチュールとかプレタポルテとかアパレルとか、こういう言い方も気に入らない。ウーマンリブとしての彼女は十分に評価に値する。

森英恵は皇后、ナンシー・レガン、グレース・ケリーなど世界のファースト・レディーの服を作った。だから偉いのか才能があるのか僕にはわからない。皇居つまり江戸城を作ったのは太田道潅と言われているが、実は大工、左官、人足だった。ピラミッドを作ったのはファラオではなくて農民だった。

世の中が変わってきているから単純に比較はできない。クラシック音楽の多くは宮廷音楽であった。宮廷画家たちは王族の肖像画を極端に美化して描いた。日本の美術や工芸は支配者の気に入るものを目指した。学問や科学さえその例外ではなかった。庶民にも必要な着物や食べ物も差別されて、違反すると処罰された。

森英恵と会ったことはない。僕は彼女の才能よりも勇気を評価してきた。たまたま悪い時代に遭遇したが、彼女は栄光の過去を捨てることができなかった。そして100億円以上の負債を抱えたまま倒産した。組織的には株式会社だから有限責任だし、知的所有権を売り渡すことで彼女自身は救われるであろう。しかし、子会社、関連会社、下請け、孫受けの零細企業はたちまち死活問題に遭遇する。

花と蝶、華やかな部分だけにスポットライトを浴びさせて、人間は影の部分を見ようとはしたがらない。


読書:「ファッション」森英恵

コメント
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