扉と斧

5月31日（火）晴　

2：30防火扉で指をつぶした20代の患者が受診。爪が根元から取れている。毎月1回、月末に船内安全会議が開催され、JGから平沢、徳元、僕の3人が出席。本日は僕が出席する最初の会議だったが、早速この事故を報告しなければならなかった。2，3日中に患者と目撃者の証言を添えた書面での報告書も作成しないといけない。

デッキの所々にある斧は緊急の際木製扉を打ち破る道具。

映画「ガンジー」、読書「金融庁が中小企業をつぶす」（東谷暁）。

電話とインターネット

5月30日（月）曇時々雨　　

船から陸に電話をすると電話料金は1分間800円。インターネットは1時間2000円。通信衛星のインテルサットを使用しているので仕方のない価格設定なのだろう。クルーPC室には4台のPCがあり、1台は日本語が使用できる。こちらはクルー割引があり、1時間500円。寄港地でインターネット・カフェを探すのは大仕事だし、日本語使用可能なPCを見つけるのは至難の業だ。シドニーに電話をしても、ユミは仕事に行っているだろうし、船旅は時差の計算が厄介だ。せっかく電話をもらっても自室にいないケースも想定される。料金は高くてもE-メールが使用できるのはありがたい。

映画「梟の城」。読書「ニューヨークの魂」（鬼島紘一）

ダナン港

5月29日（日）快晴　　

17：00ダナン出港。今日は僕の外出日だが、10：30から避難訓練があったので、11：30－15：00までJGの仲間5人と外出した。10米ドルをベトナム通貨に交換したら、15万ドン。急に大金持ちになった気分だ。しかしバイタクで市街地まで片道3万ドン、ベトナム麺フォーとビールで3万ドン。制服にフィットする黒ズボンを買ったら14万ドンを請求されたので、バイタクに2万ドン払って銀行に行き、ATMで10万ドンおろした。帰船後バイタクの運転手に残った現地通貨すべてをチップとしてあげた。彼らはマフィアの親分からバイクを借りて商売をしているらしい。

映画「ぽっぽ屋」、「忘れな草」（ベトナム映画）。読書「ベストスクール」（山本由美）

ベトナム

5月28日（土）快晴　　　

8：00ダナン入港。2日間停泊する。本日は船に居残り。慢性アルコール中毒の乗客が、1週間船内で騒ぎまくっていたが、自分から下船すると言い出し、夕方の便で日本に戻って行った。家族がつかの間の厄介払いしたのか、当人自らが世界1周の航海で自分を変えたいと願ったのだろうが、無理だった。1人用キャビン200万円の費用は払い戻しがきかない。

映画「地雷を踏んだらさようなら」、「7 years in Thibet」。読書「自治体倒産」（神野直彦）

ドリル(安全訓練）

5月27日（金）曇　　　

トパーズではJG関係者は全員、船員手帳を取得してクルーとして乗船することを義務付けられている。昨年芦屋の海技大学校で救命艇手講習を受講したのは船員手帳取得のためだ。乗船すると新人は5日間の安全講習が課せられる。クルーは原則として１週１回の安全訓練（避難訓練、退船訓練、消火訓練など）に参加を義務付けられる。テロ対策のための爆弾探しの訓練もある。同一の港に2日間以上停泊する場合、乗客の少ない第2日目の10：30から大掛かりな安全訓練が実施される。訓練では英語だけが使用される。

クルーはパブリック・エリアへの立ち入りを禁止されている。業務以外で客室に入ったり、自室に乗客を入れると解雇される。食事はクルー・メス、飲酒はクルー・バーに限定され、3杯以上の飲酒は処分（罰金または解雇）の対象とされる。クルーの一般規則は以下のとおり。①制服の着用、②乗客へ失礼のない対応、③客室への立ち入り禁止、④自室への乗客の招き入れ禁止、⑤汚い言葉の使用禁止、⑥暴力行為の禁止、⑦パブリック・エリアへの立ち入り禁止、⑧勤務時間の厳守、⑨乗客に道を譲る、⑩飲酒と喫煙の制限、⑪武器、麻薬、密輸品の所持禁止、⑫賭け事の禁止、⑬無断上陸の禁止、⑭避難訓練への参加、⑮上司への服従

船医はシニア・オフィサーだから、制服着用の上、パブリック・エリアに立ち入りが可能だ。接客などのために乗客用の食堂やバーも利用できる。しかし居心地は良くはない。クルー・メス、クルー・バーのほうが気楽に利用できる。

僕は「クルーの一般規則」は結構なものと思う。オリビア号は組織原則もなく、かなり無政府主義だった。JGもPBも船内秩序を自分の都合よく解釈して、組織としての機能はかなりお粗末だった。主催者の「JGとPB」、トパーズの船会社「キーマ」、「乗客」の三者の関係が前よりかなりすっきりした。現在は「キーマ」主導の体制だが、当分このままでいいのだろう。

「青いパパイア」（ベトナム映画）、「雨上がる」。読書「コンビニの光と影」（本間重紀）

香港の夜景

5月26日（木）曇時々雨　　

7：00香港入港。23：30出港。10時間の自由時間を看護師の佐々木と僕とで公平に5時間ずつ分けた。寄港地では必ずどちらかが船内に待機する。外出時間を公平に分配する原則を確立しないといけない。これは医師、看護師の双方にとって安心なことでもある。
9：30－14：00下船。世界中で使用可能なボーダホンの携帯を渡された。世界は次第に便利になってきた。しかし、まだまだ使い勝手は悪いし、通話料金も高い。前回はユマテイ（油麻地）に行ったので、今回はフェリーで香港島に渡り、ワンチャイ（湾仔）を見物。Eメールをチェック。ユミが今週から翻訳の仕事を始めて、自給17ドル（1500円）もらっているとのこと。8時間労働で日給は12,000円。僕の船医の日給より高い。外国船ターミナル・ビルにネット・カフェが1軒のみ。そしてパソコンが1台だけ。並んで待って、15分間限定。受信は日本語で可能だが、送信は英語かローマ字。これではたまらない。

映画「夏至」（ベトナム映画）、「2046」。読書「死刑廃止論」（亀井静香）

ライフジャケット・No 215

5月25日（水）曇時々雨　　

オリビア号の診療室では、船医も看護師も1航海ずつの契約だった。看護師は2人の時も1人の時もあった。どちらにしても医師も看護師も新人で、診療室のどこにどんな薬や医療材料があるのか知らないまま乗船する。責任者不在の診療室は管理も杜撰で、航海最終日の1－2時間の申し送りもおざなりで、業務のおおよそを把握するのに1ヶ月を要する。過去の診療室の資料が全くない。マニュアルもない。処方しても薬が見つからない。仕方なく目の前にある薬の中から適当なものを患者に渡す。わけのわからないまま、その場限りの診療をしているような気分だった。トパーズの前回の航海から看護師は常勤の正社員になった。遅きにも失するが、これは正常化への第1歩だ。

第48回航海の診療室の総収入は616万円。うち薬代は243万円。1日6万円、1回の受診で3600円支払っている勘定だ。

僕のライフジャケットには「215」の番号が付けられている。これは日本人医師のクルー番号である。

映画「I am Sam」、「初恋の来た道」。読書「テレビジャーナリズムの作法」（小泉哲郎）

日本人船医用キャビン

5月24日（火）雨後曇　

僕のキャビンは3人部屋を1人で使用しているのでかなり広い。収納スペースも十分だ。浴室はトイレとシャワーだけで、浴槽はない。毎日プールで泳ぎ、風呂桶につかる習慣がないから、僕にとって不便はない。

トパーズには2つの乗客用レストランがある。昨日の食事はコースメニューのトパーズ・ダイニングが前半食350、後半食350の計700人。ビュッフェメニューのヨットクラブが200人の合計900人。クルーは3箇所のクルーメスで食事をする。船会社キーマの200人はヨーロピアン・メスとアジアン・メス。JGの50人はジャパニーズ・メス。いずれも質素な造りで窓がない。この他にブリッジ付近にかなり豪華なオフィサー・メスがある。キーマの船医のロリスは「君もオフィサーだからオフィサーメスで食事ができるよ」と言うが、居心地が悪そうだ。乗客用レストランだって、好奇心溢れる乗客から他人の病状を尋ねられることが多いから、敬遠するのが賢明だ。

映画「シー・ビスケット」、「ジャッキー・チェンのドタバタ活劇」。読書「スポーツ放送権ビジネス最前線」（メディア総合研究所・編）

オリビア号のドクターズ・キャビン

クルー・バー

5月23日（月）曇後雨
　　
クルー・バーでは缶ビールが120円、コーラが60円。船内の自販機ではコーラは150円だからかなり安い価格設定になっている。しかし決して清潔とは言えない。もやい綱の置き場に隣接しているので、入港・出港時には危険だ。

18：00と20：00の2回に分けて、船長による歓迎パーティー。主なオフィサーが壇上に整列し、乗客に紹介される。JG側からは平沢クルーズ・ディレクター、徳元レストラン・マネージャー、宮尾チーフシェフ、僕の4人が登壇。ネクタイを持っていなかったので、急遽売店で調達。

映画「宋家の三姉妹」。読書「官僚崩壊」（吉田和男）

出港風景

5月22日（日）雨　

神戸で300人ほどの乗客を乗せてトパーズ号はいよいよ世界1週クルーズに出発する。

JGの年商は公称36億円。トパーズの乗客は1000人。世界1周航海の最低価格は130万円。1航海で13億円、1年に世界を3周するから39億円。乗船率を勘案しても36億円は間違いのない数字であろう。

映画「ラスト・エンペラー」。読書「DOKEN天国ニッポン（樺嶋秀吉）」

赤い靴

5月21日（土）快晴　　　

12:00トパーズ号は横浜港の大桟橋を出港する。山下公園の「赤い靴の少女」がトパーズを見守っている。
僕の船医の報酬は税込み35万円の月給。世界1週航海は100日前後だから約120万円。1年間に1回しか乗船しない。10％の源泉徴収をされているが、申告すれば税金は還付される。面倒だから昨年までは申告はしていなかった。

映画「船上のピアニスト」。読書「虚像累々（河北新報社）」

横浜ラーメン博物館

5月20日（金）快晴　横浜

ホテルで朝食後山下公園を散歩。10：30順子が車でやってきた。まず、彼女をトパーズに案内した。ラーメン博物館で昼食。その後船内生活で必要な物品の買い物に付き合ってくれた。16：00順子の車で大桟橋へ。今夜は船泊だ。

順子はオーストラリアから戻った後派遣会社に在籍し、アドビーに勤務して英語の通訳のような仕事をしている。時給1,600円で、1日8時間、週5日間働く。週給64,000円だが通勤費は支給されないし、祝祭日はもちろん無給だ。給料の半分を投資して中国語の個人教授を受けている。

ホテルの窓からトパーズが

5月19日（木）曇　　　

21：00横浜港で下船。ホテル・ノボテル横浜にチェックイン後、中華街で夕食。順子に電話。マッコーリー大学でユミと同級だった順子は現在横浜に住んでいる。明日1日横浜を案内してくれることになった。ホテルの部屋の窓から大桟橋に停泊中のトパーズが見える。

前航海では1日の外来患者数は17人。50％が風邪、30％が胃腸障害。

読書「冠スポーツの内幕」（谷口源太郎）

診療室申し送り

5月18日（水）曇　

10:00より診療室申し送り。第48回クルーズのDrは大分苦労したらしく、「もう2度と乗るのはいやだ」と言っていた。英語もPCも苦手な上、小児科医師なので、外傷や骨折の患者にてこずったようだ。

ピースボートの世界1周航海の費用が4人部屋の最低価格で130万円。全食事付で、シアター、図書館、プール、ジムなど船内施設も無料で利用できる。飛鳥は500万円だから、4分の1の格安価格だ。

15：00神戸入港。第48回の乗客を全員降ろして、トパーズ号は22：00空船で横浜に回航する。

読書「堤義明とオリンピック」（谷口源太郎）

横浜の夜景

5月17日（火）快晴　

オーストラリアから持参したパソコンが昨日クラッシュした。ビックカメラに修理を依頼したら1ヶ月を要するというので、新品を1台購入。メモリーを増設しても16万円。
12：00横浜港から第48回クルーズ最終段階のトパーズ号に乗船。今日は横浜、明日は神戸で乗客を下ろし、19日に空船で横浜港に戻る。その間に診療室の申し送りをする。そして第49回クルーズは5月21日横浜出港からスタートする。

読書「メディア選挙の誤算」（小玉美意子）