豪州落人日記 (桝田礼三ブログ) : Down Under Nomad

1945年生れ。下北に12年→東京に15年→京都に1年→下北に5年→十和田に25年→シドニーに5年→ケアンズに15年…

大湊マリーナ潰瘍教室 

1975-05-16 21:47:47 | Weblog
  大湊マリーナ潰瘍教室                             

 海洋教室の岡崎講師はボクの胃潰瘍を悪化させる。彼は掛け算ができない。「1時間8リットルの燃料を消費するエンジンで3時間の航海に必要な燃料の量を求めよ」という簡単な例題も彼は解けない。しかし威勢だけは良い。「1時間に8リットルだから3時間だとその3倍であることは皆さん判りますね。8かける3で答えが出ます。これは簡単ですね。掛け算のできない人は8たす8たす8とやりゃいいんです。」冗舌な彼はそう言いながら必死に指を折り曲げて足し算で答えを求めていた。「小学校で九九を皆さんは習っていますね。これは簡単でしょう。8×3は27です」「先生8×3は24だよ」皆が笑っても彼は虚勢を張った。「8×3が24であるくらいは子供にも判ることです。冗談、冗談。英語で冗談はジョ-クだんす。エンジンを発明したのはエジソンです。ハハハハハ・・・」
 実技の講習となると岡崎講師は一層元気が良い。「それでは本日の航海予定について、今から説明します。ここ大湊マリーナをA地点とします。芦崎をB地点、城ヶ沢沖をC地点とします。B地点とC地点を逆に覚えないで下さい。いいですね、きちんと覚えて下さい。そして最後にまたこの大湊マリーナに戻って来ます。ここをD地点とします」「先生、大湊マリーナはA地点じゃないんですか」とボクは質問した。「おやおや私の説明を全く理解していない人が約1名いるようです。大湊マリーナは出港時にはA地点ですが、帰港時にはD地点なのです。本日の我々の航海はA地点を出てB地点、C地点を通過してD地点に戻って来るというコースを取ります。以上で説明を終ります」「先生、質問があります」たまりかねた受講者の1人が岡崎講師に迫った。「B地点とかC地点とか言い換えなくても、芦崎だとか城ヶ沢沖だとかそのまま喋った方が判り易いのと違うの?」「素人の方がそう考えるのは無理はありません。しかし、我々プロの間ではこのような言い方をするようになっているのです」彼に何を言っても無駄なことだ。皆はあきらめてA地点からB地点に向った。

コメント
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