非国民通信

ノーモア・コイズミ

勝利と平和

2022-03-23 22:38:36 | 政治・国際

 ……こちらは中国政府スポークスマンのツィートですが、先般このブログで書いたことを図にすると上記のようになります。まさしく日本を含む西側陣営の視野の範囲を示したものであり、この地図に載っている国の意見こそが「国際社会」の声として伝えられているわけですね。しかるに本当の多数派は、日本が仰ぎ見て「いない」側にこそあります。

 「国際社会が一丸となって」ロシアの侵攻に反対していると思い込んでいるとしたら、その人は西側のメディアに騙されています。反ロシアで盛り上がっているのは日本が仰ぎ見ている一部の国でしかなく、実際のところ多くの国はずっと落ち着いているわけです。もし反ロシアで盛り上がっている国が世界の全てであると勘違いしているのなら、その無知と驕りこそ正されるべきものでしょう。

 

南ア大統領、NATOを非難 ウクライナの紛争「回避できた」(ロイター)

[ヨハネスブルグ 17日 ロイター] - 南アフリカのラマポーザ大統領は17日、ウクライナにおける戦争について北大西洋条約機構(NATO)を非難し、ロシア非難の呼び掛けに抵抗すると表明した。

ラマポーザ大統領は「NATOが、東方への拡大が地域の不安定化を招くという内部の指導部や当局者からの長年にわたる警告に注意を払っていれば、戦争は回避できたはずだ」と言明した。

 

 軍事侵攻という「結果」は理由なく起こったものではありません。「原因」は当然ながら存在しますし、それが外交上の失敗にあることは明白です。にもかかわらず「結果」だけを非難し「原因」に目を向けないとすれば、そうした人々が平和に資することは未来永劫ないでしょう。結果だけを非難し原因に対処しない者は、単に何かを糾弾しているだけであり、糾弾すること自体に満足していると言えます。

 軍事的な手段へと至る前に外交的な解決を図ることは可能ですし、いざ事態が始まってしまった後からでも外交的な解決は可能です。にもかかわらず開戦前から外交的解決を放棄し、ひたすらロシア非難に邁進している人々が追求しているのは、結局のところ「平和」ではなく「勝利」なのです。まぁ自陣営の立場からしか物事を見ないのであれば、勝利=平和には違いありません。

 もっともウクライナ政府側も、最近は少しばかり目が覚めてきているようにも見えます。「国際社会」という名の一部の国家から軍需物資は次々と送られてくる、義勇兵の名目で外国人兵士も一定数が入り込んでいるものの、ウクライナが戦場であり続けることに変わりはないわけで、そこに何か感じるところもあったのではないでしょうか。

 結局のところNATO陣営が勝利するとしてもダメージを負うのは専らウクライナです。この現実を今さらながらに理解し始めたことで、ゼレンスキー側の態度の変化に繋がっている節が窺われます。NATOは反ロシアではあるけれども、親ウクライナとは限らない、ウクライナのために血を流してはくれない……それが理解されて漸く、交渉が成り立つようになった、と。

 ちなみにNATOとウクライナの関係は、台湾におけるそれにも当てはまるように思います。とりわけバイデン政権に替わってからは台湾を中国にけしかけるような動きもまたエスカレートするばかりですが、「国際社会」が反中国になったとしても、それがすなわち親台湾になるとは限らないわけです。

 台湾と中国が争うことをアメリカが望んだとしても、では台湾が被害を被らないように守ろうとする動きがあるかと言えば、間違いなく今のウクライナと同じような扱いとなることでしょう。ウクライナと同じような──NATO陣営から支援を受けても結局は自国が血を流す──事態を恐れるなら、台湾政府なども外交姿勢を考える必要があります。

 そして日本もまた、自分たちが見てきた「国際社会」の声だけに耳を傾け自陣営の勝利を平和と信じ続けるのか、これまで目を向けてこなかった数多の国とも協調を目指すのかを問われているわけです。従来通りにNATO陣営の勝利を平和と同一視している限り、「天下統一」のための争いは避けられません。それが平和に繋がるのかどうか、平和を口にする人ほど考える必要があるでしょうね。

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