非国民通信

ノーモア・コイズミ

罪に問われることもあれば、問われないこともある

2023-12-17 21:43:29 | 政治・国際

江東区長選、元都部長の大久保朋果氏初当選 「政治の信頼回復」焦点(朝日新聞)

 区長選で違法ネット広告を流したとして捜査を受けた前区長の辞職に伴う東京都江東区長選が10日、投開票された。無所属新顔の元都部長、大久保朋果氏(52)=自民党、公明党、国民民主党、都民ファーストの会推薦=が、国政野党が推す候補ら新顔4人を破り、初当選を決めた。投票率は39・20%(前回48・86%)だった。

 同区長選は今年2度目。4月の前回は自民元衆院議員の木村弥生氏が初当選したが、東京地検特捜部の捜査を受けて10月に辞職を表明した。支援した地元選出の柿沢未途・自民衆院議員も捜査を受け、法務副大臣を辞任する事態に。選挙戦は「政治の信頼回復」が焦点の一つとなった。

 また、前回は木村氏ら自民側の有力2候補による争いが中心だったが、今回は3候補に与野党が分かれて対決する形となり、構図が一変した。

 

 さて国政では安倍派を中心とした政治資金問題に火が付いており、自民党にはこれ以上にない逆風が吹いています。日本人は政策面の誤りには寛容な一方で金の問題には厳しく、普通に考えれば野党側が圧倒的優位になりそうなところですが、結果はご覧の通り自民党候補の勝利でした。元より一度目の区長選は自民党系の候補同士の争いで野党候補は共産党系だけという地域ですから、志のない野党候補が入り込む隙はなかったのかも知れません。

 冒頭の引用でも触れられているように、この選挙は前区長による違法ネット広告の配信に端を発したものでした。立派な選挙法違反ではありますけれど、隠れて行われたものではない、むしろ不特定多数向けにアピールすべく問題の動画は流されていたわけで、どうして選挙が終わってから問題になったのか、少々疑問に感じないでもありません。サッカー選手であれば相手の反則は強くアピールするのが常識、ならば選挙でも対立陣営の不正行為は声高にアピールされても良かったはずです。

 もし不正が秘密裏に行われたものであったなら、それが発覚するまで時間を要したとしても仕方ないのかも知れません。しかし木村弥生前区長が広告費用を支払って放送した動画は、誰でも見ることが出来るものでした。選挙区外の住民にとってはいざ知らず、同選挙区で区長の座を争う対立候補陣営の目には止まっていても良さそうなものです。対立陣営が公職選挙法違反を指摘、違反のあった候補はその場で退場──という流れであれば、2回も選挙をしなくて済んだことでしょう。

 総じて政治家というものは、経済や科学、歴史や諸々に疎い傾向があります。ただ「選挙には詳しい」人ならば多いはず、少なくとも政治家を支えるスタッフの中には「当選させるためのプロ」がいるはずです。そんな選挙のプロ集団がどうして対立陣営の違反を投票日前に指摘できなかったのか、そのあたりが私には気になります。ライバルを追い落とす絶好のチャンスが誰の目にも触れる形で転がっていたのに、そこに食いつく人がいなかったのは何故か、と。

 ただ今回の違反、柿沢未途という法務副大臣も務めたベテラン議員の助言によるものとも伝えられています。今になってみると自爆行為にしか思えないものでも、その当時であれば「これぐらいは大丈夫」という判断が働いたのでしょうか。刑法犯の検挙率は地域や罪種によって差がありますが日本全体ですと50%程度、裁かれるものもあれば無視されるものもあるわけです。公職選挙法や政治資金規正法の違反も同様、「裁かれるものもあれば無視されるものもある」というのが政治のプロの感覚なのかも知れません。

 小田原市役所で生活保護受給者を誹謗、罵倒する分限の入ったグッズが職員の間で制作・販売されていたなんてこともありましたが、これが問題視されるのには10年の月日を要しました。医学部入試で男女の点数の扱いに差を付けているなんてのは一般向けの書籍にも書いてあったことですが、これが世間で大きく取り上げられるようになったのは最近のことです。東京パラリンピックの作曲担当である小山田圭吾氏による障害者「いじめ」も本人が武勇伝としてメディアに語ってきたことであり、それを隠そうとする動きは一切ありませんでした。SNSへの悪ふざけの投稿が一夜にして炎上することもあれば、長らくスルーされることもある、世の中はそういうものなのでしょう。

 それまでずっと取り沙汰されることのなかった政治資金問題が、閣僚就任と同時に騒ぎ立てられて辞任の最短記録を作った政治家もいます。不正があっても、その責を問われるかどうかは別問題なのかも知れません。今、渦中にある安倍派の議員達も選挙期間中に違法な有料広告を出した候補も、問題視されることはないだろうとの目算で動いていたのでしょう。そして恐らくは、現時点では何ら問題視されていない人の中にも、誰かがその気になれば大問題になるような違反を抱えているケースが多いのではないかと、そんな気がしますね。

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