私が住んでいる自治体では市議会議員選挙がありましたが、投票率は20%台と素晴らしいスコアでした。結果として多少の増減はあれども、自民党系の会派、民主党系の会派、公明党ががっちりと肩を組むオール与党体制は微塵も揺るぎそうにありません。一方、フランスでは大統領選挙がありまして、その投票率はなんと86%、まぁ地方議員選挙と大統領選挙では盛り上がりも違うのでしょうけれど・・・
ちなみにフランスでの結果はと言えば、こちらも戦前の予想通りに右派のサルコジ氏が1位、左派のはずのロワイヤル氏が2位、この両者による決選投票が行われることとなりました。日本の選挙制度であったら一発でサルコジ氏が当選してしまうところでしたが、フランスでは過半数を採るまでの決選投票があるわけで、この2名以外の候補に流れた票がどう動くか、まだまだ最終的な結果は予測できません。
「ロワイヤルさん、日本マンガ読んで」麻生外相がチクリ(朝日新聞)
麻生外相は20日の閣議後会見で、仏大統領選の有力候補のロワイヤル元環境相がかつて「女性を虐げている」と日本の漫画を批判したことについて、「最近の少女漫画など日本の漫画、コミックというのは幅広くなっている。もう少し読む量を増やされた方がいい」とチクリ。同大統領選の第1回投票は22日に行われるが、ロワイヤル氏が当選すると日仏関係が冷え込むとの懸念があり、「マンガ外交」を持論とする麻生氏が牽制(けんせい)した格好だ。
左派のはずのロワイヤル氏を応援したいところですが、所々気に入らない点もあります。一応は左派に分類されるといえど、時に保守的な顔、マッチョな顔を見せることもあるわけでして、あの麻生大臣に偏見を指摘される始末なのは頂けませんね。この場合に限っては、麻生大臣の方が偏見のない寛容な見識を見せています。
仏大統領選、他候補は国家主義にとりつかれている=バイル候補(ロイター)
同候補は、国家に対する人々の感情は国への愛であるべきで、強迫観念であるべきではないと述べ、母国への敬意の示し方についてライバル候補から講義を受ける必要はないと言明した。社会党のセゴレーヌ・ロワイヤル候補は、この週に行った選挙集会の終わりに国歌「ラ・マルセイェーズ」を斉唱。フランス国民は家庭に三色旗をもち、国民の休日にはそれを掲げるべきと演説した。
一方保守派のサルコジ候補は、移民と国家アイデンティティーの省を設立するよう提案。アナリストは、これを極右の票獲得を狙ったものとみており、2人のこうした言動に対する反発の声も出ている。
バイル候補は「2人の候補は国家主義の強迫観念にとりつかれていると思う。まるで(極右指導者)ジャンマリ・ルペン氏の主張が彼らに乗り移っているようだ」と述べた。
どうやら右派のサルコジ氏だけでなく、左派のはずのロワイヤル氏も一緒になって愛国心競争に走っているようです。ついでに言えば、自分がいかに「庶民派」であるかも競い合ってアピールしているとか。ある意味で二人とも日本の政治家に似ているような気もします。中道のはずのバイル氏に「左からの」批判を受けるロワイヤル氏、ちょっと応援しきれないところもあるわけです。
もう一方の有力候補のサルコジ前内相も「相撲は知的なスポーツとは思えない。東京は息苦しく、京都はつまらない」などと日本を批判したと仏週刊誌が報じたことがある。
サルコジ氏は後日、発言を否定したが、麻生氏はこれについても「フランスからそう言われたからって、どうして気になるの。ついこの間まで(フランス人は)『生の魚を食うのはおかしい』と言っていたじゃないですか」と皮肉った。親日派のシラク大統領が引退する影響が早くも出始めているようだ。
再び、麻生大臣のコメントです。アジア諸国には感情的な暴論を吐く麻生氏ですが、今回はなかなか機知に富んだ回答をしています。偏見に基づく発言を受けても、感情的に応じることなく冷静に切り返す姿勢は評価できますね。今回は麻生大臣を褒めるとしましょう。
しかしどうでしょうかね、シラク大統領は親日派なんだそうで。そりゃ、シラク大統領は個人的に日本が好きだったわけですが、それでフランスと日本の国家同士の関係はどうだったでしょうか? 両国は外交政策で正反対の方向を向いていたわけで、むしろ関係は悪い方向に向かっていたはずです。そしてシラクとは反対に、個人的に日本が嫌いらしいサルコジ氏はどうでしょうか? サルコジ氏はヨーロッパでは珍しい親米右派、日本では主流派であるところの親米右派です。外交政策では日本と同じ方向を向いているわけで、むしろ両国の関係は同調を繰り返すものになると予想されます。個人的に日本が好きか嫌いか、それ以上に政策面での方向性がものを言うのではないでしょうか。
それはさておき、近年のグローバリズムによって恩恵を受けた分野も数多くある一方、それによる弊害から反グローバリズムというものがやはりいろんな所で興ってきており、むしろ近年の左派の方が反グローバリズムの観点から愛国的になりやすい面もあるかと思われますね。日本の共産党もそういう面ではかなり民族主義・愛国主義的です。
あと、国家の最高指導者が親日的かどうかで対日関係が変わるのかというと、あまり変わらないのではないでしょうかね。国家の最高指導者といえど個人的な好悪で物事を決めるような独独断専行は普通は無理でしょう。ただし、EU、対米関係はフランス国民にとっても重要ですし、EU、対米政策の変化や、東アジアという地域政策、台頭する中国の動向における日本への対応は大統領が誰になるかで多少の変化はあるかもしれません。
麻生の坊ちゃんの漫画好きは本物みたいですよ。私が気になるのは、いつ頃からの漫画好きなのかですね。普通の子供は大人になるときに、社会から漫画を「卒業」するように圧力をかけられますが、お坊ちゃまにはそんな圧力がなく、漫画好きの子供が漫画好きのまま大人になったのか、それとも幼少からのエリート教育で子供の頃は漫画を読ませてもらえず、その反動で大人になってから漫画を読みふけるようになったのか、その辺に興味があったりします。
ちなみに北の将軍様も、日本製品大好き、日本映画大好きの親日派ですね。でもやはり外交関係にまでは無関係なわけで、サルコジやロワイヤルが個人的の日本が好きかどうかではなく、日本「政府」をどう思っているか、こっちですよね。
『戦争論』や『嫌韓流』を
仏訳して読ませたら、
ロワイヤルもさぞぶっ飛んだことでしょう。
その辺は日本の恥部ですねぇ。「女性を虐げている」とか、その手の批判に対しては色々と反論も出来るのですが、レイシズムを煽る本が堂々と売られているのはフランスだったら捕まっちゃうところでしょう。