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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Franck Bedrossian / "Manifesto"

2011-05-08 07:23:53 | art music
Manifesto



□ Franck Bedrossian / "Manifesto"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>La Solitude du coureur de fond
Tracés d'ombres

Release Date; 28/04/2011
Label; Æon
Cat.No.; AECD 1106
Format: 1xCD

>> http://outhere-music.com/store-AECD_1106


>> tracklisting.

01. It  (2004-2007)
Pour sept instruments

02. La Solitude du coureur de fond  (2000)
pour saxophone alto

03. Tracés d'ombres  (2005-2007)
pour quatuor à cordes

04. Manifesto  (2008)
pour huit instruments à vent

05. Bossa Nova  (2008)
pour accordéon

06. Propaganda  (2008)
pour quatuor de saxophones et électronique


Ensemble 2e2m
Pierre-Stéphane Meugé, saxophone (02)
Pascal Contet, accordéon (05)
Quatuor Habanera (06)
Pierre Roullier, direction (01.04)


Direction artistique: Sébastien Naves, Franck Bedrossian, Pierre Roullier.
Montage, mixage & mastering: S. Naves (Protoson)
Enregistrement: 20-22/05/2009 (01-05), 17/01/2010 (06), Conservatoire de Gennevilliers.
Editeur graphique: Editions Billaudot.
Photo: Dolorès Marat.





“Franck Bedrossian's music sets complex sounds as the paradigm of a new music having integrated Varèse's 'sound-energy' as well as free jazz's 'sound-gesture'. It is by this standard that most of the works in this monograph must be listened to, in particular Manifesto, It and Propaganda.” -Omer Corlaix




  gets torn"
         des escaliers
qui se déchire?
            centrifugal
        ・        ?on dirait
   stairs
        "sounds like
 centrifuge
              -Frédéric Forte




フランス、スペクトル楽派の流れを汲む若手の急先鋒、Franck Bedrossianの作品集『Manifesto』。アンサンブル2e2mによって紡がれる怜悧で凍てつくような音の凝集体が、無機的、ときに有機体を発生させるように、生温い幻夢の響きを奏でる。

録音はフランス、ジェヌヴィリエのコンセルヴァトワールにて行われた。



※ スペクトル音楽…「複雑な音響をオーケストラで再現するために、フーリエ変換による音響の解析、周波数変調を初めとするアナログ変調、内挿といった情報理論とその工学技術を駆使(Wikipedia:トリスタン・ミュライユの頁から抜粋)」する等といった、音響学的技術が実践された楽曲群を指す。



Franck Bedrossianは、スペクトル楽派を推進したGérard Griseyに師事。彼の楽曲はクラスター技法で評価されることが多いが、実際には19世紀に端を発する西洋の実験音楽史の系譜を集約した、もっと複合的かつ漸進させた手法が用いられ、"Saturation(飽和)"の音楽と名状されている。

2010年、フランス国立科学研究センター(CNRS)と社会科学高等研究院(EHESS)の合同会議により、こうした『サチュレーション』の定義が、「シミュルタネイスム(同一フレーム上における時間と空間の相互連関変化の記述)のプロセスと帰結の、豊穣な音楽表現」とされた。



本作のパフォーマーであり、世界中で実績を積み上げている現代音楽アンサンブル、 2e2mの為に書かれた"It"は、よりFree Jazzに歩み寄った作風でありながら、その音色はもっと重厚かつ繊細で、Franckが実験音楽の系譜を準えながら、あくまで「今の」作曲家であることを強烈に印象付けている。


楽器ごとの音色のディストーション(歪み)、ミューテーション(突然変異)で音の連続体を繰り込んでいく。ストリングスやホーンの響きは断続的にエネルギーの励起と発散を繰り返し、一般的な音楽構造によって与えられる筈のポテンシャル状態へと遷移することがない(情報はエネルギーの過渡状態である)。音場の散逸的な密度が、時間の流れ方そのものを不安的な曲率によって捩じ曲げているのである。



同様の技法はローマ・フランス・アカデミーに嘱託された"Tracés d'ombres"の、ラレンタンドからアッチェレランドへとオーガナイズされていく過程でも確認することが出来、その彩色はまさに『サチュレーション』を体現したものである。

フランスの現代作曲家であり、偉大な教育者でもあるFrédéric Durieuxに捧げられた表題曲"Manifesto"でも同様に、ラストパートに向け音色とテンポを変化させながら、コンパイルされた複雑性構造を自己開示していくという趣旨にも、高度に技術化された情報科学を扱う現代における、このサチュレーションという音楽技法の当世的な発想の必然性を垣間見られるだろう。



また、"La solitude du coureur de fond"と"Bossa Nova"で聴かれる通り、Bedrossianはサクソフォンやアコーディオンの音色それ自体を「電子変換的なもの」(事実、音という事象自体を電子レベルで捉えるならば…)として特別視しているが、"Propaganda"では、実際にSaxphoneの音色をエレクトロニクスと競演させ、人の手に依る器楽音と、電子音の多層的な織り重なりによる時間表現としての世代融合を可能にしている。




IRCAMによれば、Franck Bedrossianの方法論は後期ポスト・セリエルを代表するHelmut Lachenmannのパラメータ技法的な音響処理に加え、Griseyの方向性概念と高調波のプロセスを共生させているという。それは「 RothkoやPollockの抽象芸術、Bill Violaの時間遅延的テキスト、そしてBeckettの導く方程式に基づいた比率的表現」であるとし、現代に至って、より物理的な次元へアプローチしているとする。



事実、彼の楽曲は『演奏』というよりは、より『擬態的』で、概念的な構造を模しているように響く。特筆すべきはサクソフォンの音色。波打つような粒子の壁が、まるで楽器という形質を借りて顕現する有機体を紡ぐかの如く、観念上の空間でモーフィングを繰り返す視覚的なイメージを喚起する。


その固有振動によって生成される音色の境界面は、あたかも生物の骨格を擬えており、他の音色の境界に干渉・浸潤する。更にその時間発生プロセスを凝縮して、この仮想的な生命体の『背骨』を形作りながら、軸から分岐発達していく音の有機体の呼吸となり、「嘶き」となって、また一個の生命体である私たちの原初の本能を揺さぶるようだ。



私はかつてBerioの"Sinfonia"を、時空に閉ざされた結晶構造の共鳴と擬えたが、ここにあるのはもっと不確定性に満ち、絶えざる揺らぎを充溢させた存在の原理、自己結晶化の過程の本質に根ざしたものだと感じられる。







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