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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Les Friction / "Les Friction"

2012-01-30 21:03:14 | music12
Lesfriction


□ Les Friction / "Les Friction"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Come Back to Me
Sunday

Louder Than Words (Instrumental)
Come Back to Me (Instrumental)

Release Date; 24/01/2012
Label: Mariposa Lane Music Inc./ Would Work Sound LLC
Cat.No.; 885767991538
Format: CD + digitally.

>> http://lesfriction.com/
>> http://www.esposthumus.com/



>> tracklisting.


01. Louder Than Words
02. Torture
03. What You Need
04. Here Comes The Reign
05. World On Fire
06. Save Your Life
07. Sunday
08. String Theory
09. Come Back To Me


Instrumental Bonus Tracks Version (Download Only)
10. Louder Than Words (Intrumental)
11. Torture (Intrumental)
12. What You Need (Intrumental)
13. Here Comes The Reign (Intrumental)
14. World On Fire (Intrumental)
15. Save Your Life (Intrumental)
16. Sunday (Intrumental)
17. String Theory (Intrumental)
18. Come Back To Me (Intrumental)



Les Friction is Helmut Vonlitchen & Nihl Finch
Vocals: Paint



The year is 2048 AD. Humans are now able to leave their earthly home and travel to other dimensions. While traveling, a shell of their body remains on earth and functions at a reduced capacity.



However, with the sweetness of life often there follows the bitterness of mortality..... my brother, Franz, passed away in May. It was entirely unexpected. / As for me, I will begin to rebuild what was washed away, albeit in a form other than ES Posthumus. / Franz was an extraordinary talent...Most of all, however, I will miss his wit and humor... -Helmut Vonlichten.




双子の兄弟であり、それぞれ音響技師・考古学者という異色の取り合わせで作曲活動を行っていた、Franz VonlichtenとHelmut Vonlichten。

彼らの立ち上げたes.Posthumusというユニットは、まさに二人のセンスや世界観が融合した、遥遠の時と大地に憧憬を馳せる雄心勃々の音楽であり、これまでに数多の銀幕を賑わせて来たトレーラー・ミュージック(映画予告編音楽)の草分けとして、世界中の数十億人もの視線をスクリーンに釘付けにし、未知の体験に期待の胸の高鳴りを抱かせてきたに違いない。



その作曲手法の多くの部分に寄与していたFranz Vonlichtenがこの世を去ったのは、2年前の5月のことであるという。死因は公にされていないが、この悲劇には国境や人種を超えて膨大な数の哀悼の意が寄せられ、そして今また、彼の死に打ち拉がれる者が後を絶たない。


私も、その一人だ。2001年、E.S.Posthumusが衝撃的なデビューを飾った頃、おそらく私は人生でもっとも昏いどん底、絶望の中で右も左も知らず手探りで彷徨い歩いていた。あの時の私を支えてくれたのは、"Antissa"の哀愁に満ちながら、あてども無く悠久の地平を踏みしめていく力強さを分け与えてくれるような旋律で、あの暗闇の中、今の道程に導いてくれた篝火そのものであった。



"Les Friction"=(摩擦・衝突)という意味を持つ単語だが、兄とのユニットから"ES"の文字を受け継いでいるのも、どこか心憎い。セルフタイトルを冠したこのアルバムには、一つの舞台設定とともに、楽曲の世界観の主軸となるストーリーラインを設けている。以下に引用する。


西暦2048年、今や人類は故郷である地球を離れ、異次元へと旅立つことが可能であった。旅の最中、彼らの身体は生体機能を低下させたまま地球上に遺される。

多くの人にとって、これら異次元との往来は人生の余暇を豊かにし、刺激に駆り立てた。しかし、いつしか人は故郷において愛した者たちを省みることを忘れ、地球上の社会は退廃の途を辿り始めた。無政府状態に拍車がかかる頃、トラベラー達のもとに、数百万にも及ぶS.O.S.信号が届き出していた。それは彼らの家族たちからのものだった。

そして今、彼らは戦い、葛藤し、地球への帰路を拓こうとしていた。破滅の一途にある故郷を救うために。ここに物語が幕を開ける…




これをHelmutからFranzへの想いだとするのなら、このアルバムは、亡くなった兄弟へと託したメッセンジャーに他ならないのだろう。そう遠くない未来の出来事。たとえ空想の中であっても、いや、それが空想という兄弟の共有言語であったが故に、音楽という表現を以て、遥かな彼岸に届くかもしれない、そのメッセージを描く必要があったのだ。

それは空想の世界に没入することでも、煩わしい現実から逃れることでもない。人と人とが呼び交す『物語』に込められた、感情を突き動かす想いの力。愛であり、絆の寓話である。




Les Frictionのサウンド・ディレクションは事実、es.Posthumusを踏襲したものでありながら、『Furious』と評されるほどに、かつてないほど激情的で、叩き付けるような刺々しい響きに彩られる。新メンバーであるNihl Finchの指導のもと、神々しく、時に扇情的なPaintの歌声は、それ自体でフィルム・スコアとして流用可能なオペラチックな楽曲に、どこか時代回帰的な作用をもたらしている。



ESPの後進であったGlobus(Immediate Music)の成功以降、仰々しいオーケストラや大迫力の混声合唱に、甘美なポップネスを相乗するという手法は、一見目新しく映りながらも、この数年は、ある意味閉塞的とも言える楽曲の均一化・硬直を招いていた感も否めない。誰もが映画予告の音楽に一定の高揚感を覚えながらも、大して相違ない楽曲の定式化にウンザリする向きも少なくなかったはずだ。


Les Frictionも全く斬新な方向性を築いているとは言えず、むしろ"Makara"の頃から顕著であった、Hans ZimmerやCraig Armstrongなどに代表されるハリウッド・スコア風の楽曲への接近が、ここに来て確信に至ったと言えるほどに、ESPとしての独創性を欠いていると評することも出来るかもしれない。


しかしながら、そのような劇伴音楽市場において無視出来ない求心力とオリジナリティを積み重ねて来たのは、Vonlichten兄弟自身に他ならない。楽曲の節々に現れる『ポステュマス・クレッシェンド』とでも呼ぶべき、一点に向かって上り詰めていく展開は、彼らのトレードマークでもあり、今や映画音楽家の間でも類似の技法が多用されるほどだ。


レーベルはLes Frictionを"Rock Opera"ともGenreしているが、正に回帰とはそのことであり、Les Frictionが審らかにしたのは、1960年代から劇伴音楽に脈々と受け継がれる往年のロック・オペラの要素、それらを現代のサウンドに再び吹き込み、入れ子にした「今までにない試み」と言っても過言ではない。そして人々が囚われがちな『予告編音楽』というジャンル定義が、如何に還元的であったかという気付きも促されるものである。



"Les Friction"の内容に立ち返ると、その世界観を彩るトーンは余りにもダークで、同時に、どんな映像技術をもってしても表現に能わない、未体験かつ壮大な情景を描き出している。es.Poshumusのサウンドはループ要素が強くBGM性を持ち、どこか俯瞰的な音楽性を兼ね備えていたが、それに比して、Les Frictionは『物語』そのものに身を投じる内容と言い切って良い。


"Louder Than Words"は、アルバムのリード・トラックとして総ての要素が注ぎ込まれた会心作ではあるが、それでも豊穣な音楽世界を代弁するには及ばない。ここに刻まれた9つの楽曲の辿るドラマの連続性こそが、ストーリーテラーであるLes Frictionの輪郭をなぞる唯一の道程なのだ。


数少ないポップ・トラックである"What You Need"や"Sunday" ("Louder…"のメロディが一部引用)においても、Posthumus時代からのトレードマークである特徴的なクレッシェンドが登場する。(ただ、この技法自体は、1990年代中期のTrailer Musicプロダクションにおいて既に確立されていたものだと、私は記憶している。)


また今作では、とりわけ"World on Fire"などに顕著な様に、映画本編にも使用されていそうな最先端のサウンド・エフェクト、プログラミングが施されている部位が多く聴き取れ、このプロジェクトが、ESPの"進化形"であると銘打ったコンセプトを一際印象づけている。

(※ダウンロード盤限定の"Instrumental"は若干楽曲構成やミキシングが異なる。)


そして物語は、私が慟哭を禁じ得なかった"Come Back to Me"へと至る。




ピタゴラス哲学の教示『音楽は相反するあらゆるものの共鳴』は、es.Posthumusの挙げた作曲コンセプトの一つであった。そしてES,Posthumus = "Experimental Sounds, all things Past"という名に倣う如く、Vonlichten兄弟の物語は一つ幕を閉じ、そして今また、見えざる彼岸に向かい合って創作を交わしているのだ。




人は物語に生きているのではないのに、音楽だけは、人の生きる時間を、どうしようもなく物語に変えてしまう。過去は否応もなく、夢と現実とを一つにつないでいく。

「物語」は生存競争の手段を伝播する手段であり、モチベーションを高める作用がある。「音楽」は、そのような適応度地形において、ノイズと意味のある秩序性とを区別する本能の副産物でもあり、この情報量や負荷の度合いをコルモゴロフ複雑性と関連付ける洞察も可能である。


音楽が物語を、情動の揺らぎとともに伝播するということについて、そこに芸術以上の価値を認めることが出来そうだ。他でもない、音楽は人と人を繋ぐ想いを、時間という結晶に閉ざしたメッセンジャーである。太古のシャーマンや吟遊詩人が、そしてロック・スターがそうであったように。


そこでは人が空想に「耽る」ためではない、お互いに物語を共感し、誰かとの愛を、家族の絆を省みるという、人の営みにおいて普遍的な行為のきっかけとなる、感動の復権こそが図られている。



"Les Friction"は、人々の想いが衝突し擦れ合う不協和音のその先に、結び合う調和の行く果て、かつてes. Posthumusが夢見た音楽を、今も変わらぬ姿勢で標し続けているのだ。




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"Come Back to Me"

Do you hear me?

If I sing with Angels,
Will you hear me?
If I sing with Angels,
Will you cross the line?

I hear your voice but you're not here.
I walk the halls and I'm alone.
You're not coming home.

I'm holding out 'til we're out of time.
Would you pierce the veil?
Would you cross the line?
I can feel you here, souls redefined.
I can't let go of our design.
Would you pierce the veil?
Would you cross the line?

Come back to me!




私の声が聞こえる?

もし天使と歌えたなら、
あなたには届くかしら?
もし天使と歌えたのなら、
あなたは踏み越えて来てくれる?

君の声が聞こえる。だけどここには居ないんだ。
玄関を通っても 僕は一人。
この家には もう君が戻ってこないから

時の果てるまで待ち続けるよ
そのベールを破り捨てて
踏み越えて来てくれ
君の存在を感じる 魂が再定義されたんだ
僕は自分の殻を捨てられないよ
だから そのベールを破って
踏み越えて来て

僕のところに帰って来て