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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

Massive Attack / "Heligoland"

2010-02-11 14:56:07 | music10
Mah



□ Massive Attack / "Heligoland"

♪ <script type="text/javascript" src="http://mediaplayer.yahoo.com/js"></script>Splitting the Atom
Paradice Circus

Release Date; 08/02/2010
Label; Virgin
Cat.No.; 5099960946621
Format: 1xCD

>> http://massiveattack.com/

>> tracklisting.

01. Pray for Rain (vocals by Tunde Adebimpe)
02. Babel (vocals by Martina Topley-Bird)
03. Splitting the Atom (vocals by Grant Marshall, Horace Andy and Robert Del Naja)
04. Girl I Love You (vocals by Horace Andy)
05. Psyche (vocals by Martina Topley-Bird)
06. Flat of the Blade (vocals by Guy Garvey)
07. Paradise Circus (vocals by Hope Sandoval)
08. Rush Minute (vocals by Robert Del Naja)
09. Saturday Come Slow (vocals by Damon Albarn)
10. Atlas Air (vocals by Robert Del Naja)


□ "Splitting the Atom" film by Edouard Salier

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このアートワークは、混乱をきたした人間のコラージュだ。自分の来し方も行き方も、どの国の人間で、どこの旗を振るべきなのかも、何もわからなくなっている人間。』-Massive Attack.


マッシヴ・アタックという音楽ユニットを語る時、そこには彼らを取り巻く様々な芸術的志向性や思想を持った人脈からなる、ある種のコミューンが縁取られていくという。これはソウルやhip-hopにも共通する挙動だが、常に実験的でダークな音響に絡めた、極めて当世風刺的なリリックも、彼らのサウンド・ディレクションが如何にシステマタイズされたものかを物語る徴証と言えるだろう。



湾岸戦争時の改名騒動、イラク戦争時の反戦運動など、"Massive Attack"は政治情勢に大きく関わりながら活動を続けて来た。1990年代の世紀末、世相においても音楽シーンにおいても、どこか退廃的で厭世観の漂う風潮にあって、彼らの暗鬱たるスピリチュアルな楽曲は多大な支持を獲得した。


世界不況、飢餓・環境問題...この2010年に至って、世界の歪みはより深刻さを増し、もはや10年も前の安易なペシミズムにも浸ってはいられなくなった。計り知れない失望と悲境を突きつけられ、将又それを経験する人の増した分だけ、そこに生じた間隙を埋める反動を欲する。だからマッシヴ・アタックの音楽は、人によっては、その絶望の淵が深ければ深い程、その響きが共鳴しあって、より玲瓏な音色となって届くのかもしれない。



先史時代から近代まで、多くの曰くを背負って来たドイツの有名な景勝地『ヘルゴラント島』("Hell Ego Land"とのダブルミーニング)名を冠した今作は、この8年あまりの歳月を経たライブ活動の下で積み上げられてきたワーキングや素材の集成であり、最終的なディレクションはリリース直近の半年間に完成された。従って、このアルバムには一貫した方向性やコンセプトというものは存在しない。


にも関わらず、新旧多数のゲストを招いて装いを新たにしながらも、全ての楽曲に通じてブレが見当たらないのは、Massive Attackの音楽性が、実はもっと普遍的で旧態としたドラマツルギーに根差したものであるからに違いない。もっと分かり切ったことを言えば、それはブラック・ミュージックが露呈するスピリットそのものだ。しかし、彼らの書法において、それらは凝然と形骸化された手段では有り得ない。



とは言え、リリックが世相を反映するものである以上、その音楽性もトレンドの大きな影響は免れない。そんな中で、「一つ一つのシンプルな音色」が際立つよう構成を心がけたという"Heligoland"の響きは、プログラミング中心に沸くエレクトロニカ・シーンに迎合するようでありながら、実は抗おうとする機微も垣間見えるし、これは長い年月をかけたライブ活動の水面下でこそ培われた指向性なのだろう。合間に関わった数々の映像作品とのコラボレーションも、そのディレクションを語る上で無関係では無い筈だ。



というわけで、この作品が製作過程に辿った経緯や、縁辺の参加アーティストを巡る、広大なバックボーンについては、ここには書き切れない事情もあり、興味をもたれた方には是非自身で紐解いてみることをお薦めしたい。