lens, align.

Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

President Obama's inauguration.

2009-01-21 07:25:14 | Science
Obama
(オバマ大統領の就任演説:CNN)



第44代アメリカ大統領となったBarack Obama氏の就任式が、つい先ほど執り行われました。(今現在パレード中)注目されるスピーチの内容は、キャンペーン時の煽情性を抑制した真摯で粛々とした現実的な色を帯びつつも、相変わらず求心力に満ちたもの。若干27歳のスピーチ・ライターが手直したという文面は、手堅くも瑞々しいエネルギーを感じさせるものでした。


時間が限られているので率直な感想だけ述べさせてもらうと、最も印象的だったのが、自国の経済復興に言及した中で「自己利益の為に他者を犠牲にした者たち」を批判する内容があったこと。多くの資本主義国家にはもちろん、とりわけ日本のトップにはまずできない論説に違いないですね。「新時代には一人一人の責任が求められる」という要旨に照らして、これほど決意を明示する一節は他に無いでしょう。


個人的な最関心事である環境/科学政策については、まずはEPA主導による温暖化対策の一環として、2009年末のコペンハーゲン会議までに指針を定めること。これは国際的な科学研究従事者の大きな共通了解でもあります。日常的にレポートされる世界各国の研究機関からの多角的なデータに触れていれば、それが現実の問題であるのは自明なことなのですが。。


(※ しかしながら、昨今は温暖化懐疑論の主流として、IPCCの示した二酸化炭素要因の「確信性の高さ」を、「確定事項か否か」と二元論に挿げ替えてしまう、凡そ『科学的論議』とはかけ離れた物言いが、科学従事者【ではない】弁者(特に専門知識に疎いエコノミスト)の間でスタンダードを得つつある由々しい実態がある。

つまりは環境問題がプライマリかどうかを議論の対象にしている愚である。包括的に問題を解決するフレームを構築・維持していくことが堅実であるべき姿勢なのだ。その中で人為的CO2排出要因が90%以上の確度を以て、【目下検証されている】。その姿勢すら否定するのなら、温暖化政策が飢餓問題や経済問題に優先、あるいはスポイルしているという「実態」が如何程に深刻な影響を及ぼしているか、ということこそ、彼らは説得に足る根拠を示して訴えるべきだ。


彼ら「一部のエコノミスト」の第一の問題点は、その論拠が画一的なソースに偏りすぎるということ。彼らは自身でリサーチできるはずもなく、任意のデータひとつとっても、イロハを知った如きの見聞に憶測の上塗りで論駁し、おこがましくも数値に基づいた論議を阻害、翻訳による解釈の違いや、誤謬についての攻撃的な言葉いじりに明け暮れ、「国際的にはそれほど問題とされていない」「環境利権のプロパガンダだ」(モチベーションとしても、良くも悪くもビジネス性を伴うのは必然ではあるのですが)と極端な印象にミスリードしてしまう。

これはもはや環境問題がどうのと議論するステージに上がる以前の話で、自身の専門外の分野について、誤った権威的・一時的なトレンドに降り回されているに過ぎない。自身こそが操作・利用されている存在だという自覚が無いのだ。)



次いで、目下直接的な影響を波及させている"Primary Problem"、飢餓・健康問題へのFDAの早急な対処。そして、ブッシュ政権下で不遇の時を迎えていた、NIHによるStem-cell(幹細胞)研究の強化を公約したオバマ大統領の‘ゴーサイン’が待たれています。



私にとってサプライズだったのは、この就任式典の為の音楽が、John Williamsに委嘱されていたこと。そのタイトルは"Air and Simple Gifts"というヴァイオリン・チェロ・クラリネットとピアノによる四重奏曲。

アメリカを代表する作曲家、コープランドが1944年に作曲した『アパラチアの春』を引用した楽曲で、あの有名な"Simple Gifts"の主題が大胆に盛り込まれています。



□ Variations of "Simple Gifts"

"Simple Gifts" by Empire Brass
"Simple Gifts" by Cincinnati Pops Orchestra, Erich Kunzel & James Galway
"Simple Gifts" by Laura Sullivan



アメリカ生まれのアメリカ育ちと言っても良いこの曲は、元々はシェーカー教が発祥の伝統歌で、多くのAmericanに親しまれているクリスチャン・スタンダード。シェーカーの母体、クェーカーのルーツのあるイギリス/スコットランドに絡めて、しばしばCelt Songとしても演奏されます。



Tis the gift to be simple,
'tis the gift to be free,
'Tis the gift to come down where we ought to be,
And when we find ourselves in the place just right,
'Twill be in the valley of love and delight.

When true simplicity is gain'd,
To bow and to bend we shan't be asham'd,
To turn,turn will be our delight,
Till by turning,turning we come round right.
     
      -Elder Joseph Brackett (1797-1882) America


つつましくあることは天与のもの
自由であることは天与のもの
私たちの行き着くべき場所を見つけることも また天与であり
そしてその場所に辿り着いたときこそ
その谷間は愛と喜びに満たされるだろう。

私たちが真の慎ましさを手にしたとき
真っ直ぐに、そして謙虚に生きることは
もはや恥ずべきことではなくなり
変わることも 変わることも私たちの喜びとなるだろう
変わろう 変わるのだ あるべき居場所に巡ってくるまで



John WilliamsがObama氏に捧げる言辞(楽曲に歌詞は無いのだけど)として、これ以上相応しいものは有り得ないという気がしますね。その大部分が、大統領の就任演説に大きくオーバーラップするものでもありました。