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Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

When things go wrong....

2005-08-13 00:08:53 | music
─On an ordinary day the extraordinary way you take what I can give and you treasure it.
              -Conjure One "Extraordinary Way".


──もう深夜の二時を回ったところだ。この地域と海岸特有の湿り気が絡みつくような暑さとなって部屋を満たしている。この1週間というもの、季節はずれの雨の監牢に閉じ込められたままだ。これならいっそ、雨だろうが海で泳いでいた方がマシかもしれない。とにかく貴重な休暇に失望を抱き始めた私は、今夜もアルコールの助けを借りてどうにかうだるような熱帯夜をやり過ごすところだった。グラスから漂うささやかな冷気の心地良さにすがりながら、とりとめのない謬見を巡らす。その暗い曲線を伝う水滴が、まるで外の闇を背負う窓の景色を切り出したようだ。ふと、先刻まで窓をたたきつけていた風雨が、何時の間にか穏やかになっていることに気付く。

コトコトと揺れる窓をよそに照明を落とし、ベッドに沈んだ。考えごとから感情が拗れる時は、眠りに委ねるのが一番だと経験的に知っていたし、事実そういう時に睡魔はやってきた。雨音は弱まっている。しばらくは遠くの雷鳴を意識半分で聞いていたが、静寂が訪れると同時に、その圧迫感が安らぎを妨げはじめた。私は灯かりの点かないスタンド───これは北欧を旅した友人の贈り物だが──に立て掛けてあった本を手に取り、以前読み終えた箇所を探したが、それも虚しい行為に終わる。とにかくこの部屋の置き物は、なにもかもがその歩みを踏み留めているようだった。一度そこに置いたら最後、あたかも岩が景観に貼りつくかのように、こうして虚ろな質量で空間を徐々に蝕んでいく。うんざりした私は再び眠気を手繰りよせようと、無駄な抵抗を決め込むのだった。

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□ Rosy Parlane / Iris

Iris (Part 2)


大きな蜘蛛を見た。といっても夢の中かもしれないし、定かではない。まだ暗い部屋の中で飛び起きた私の体は、汗でぐっしょりと濡れていた。お盆にはよく、田舎に遊びにきた子供が悪い夢を見てむずかるという話を聞くが、これが丁度そのような感じなのかもしれない。青白くゆったりと揺れる天井の枝影を見つめながら、先ほど見かけた蜘蛛がまだそこらにいやしないかと不安に駆られた。とても大きく、毛の生えた蜘蛛だ。私の最も苦手とする生物である。子供の頃、家の庭でかくれんぼをしていた時に、まったく気付かずに巨大な蜘蛛の巣に絡めとられてしまったことがトラウマになっている。鬼をやっていたミリタリー好きの友人(彼は常にエアガンで虫を獲物にしていた。)は、鬼気迫る私の悲鳴に驚いて隣家まで走って逃げ出したそうである。まったく面白くないが、巣を壊された当の蜘蛛はもっと面白くなかっただろう。

□ Enya

Pax Deorum
Book of Days


そういえば、あの友人とは良く一緒に映画を観た。「ランボー」とか「プラトーン」特に戦争やアクションものを多く見せられていたと思う。彼は今や結婚して子持ちだが、相変わらず銃の玩具なんかを買い与えているのだろうかと、少し訝しく苦笑する。千々に乱れる私の妄想は、遂にこうした馬鹿げた回顧癖への批難へと変わり、次いでそこに何らかの意味を与えて自己満足を得ると、もっと前向きに明日へ思いを馳せようという気持ちを起こさせた。まだ夜は長い。しかし実際、今頃この闇の帷の向こうでは、ペルセウス座流星群が光のシャワーを注いでいるに違いなかった。私にとって自然の美しさは、退屈に重ねた時の重さを補って余りある程に、生きることへの報いとしては充分だった。それは他でもない、その美を定義し、共感し得る人々の存在への繋がりを感じさせるものであった。朝はきっと晴れるだろう。そしたらこの連日のツケを償うように、蒼い海へと駆け込むのだ。置きっぱなしのグラスには、溶けた氷水が仄かに輝いていた。

□ Alucard pres. The 49th Line feat. Jennifer Grimm

Blue On Blue (Hydroid's Vocal Dream Mix)


今日と明日が出会う時、クロスオ~バ~イレブン。
今宵も私、津嘉山 正種がお送りしました。