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lens, align.

Lang ist Die Zeit, es ereignet sich aber Das Wahre.

The Wonder.

2022-12-31 22:10:10 | 映画


□ 『The Wonder (聖なる証)』

>> https://www.netflix.com/jp/title/81426931

Directed by Sebastián Lelio
Based on the book by Emma Donoghue
Writteb by Emma Donoghue / Sebastián Lelio / Alice Birch
Music by Matthew Herbert
Cinematography by Ari Wegner

19世紀アイルランド、神の奇蹟を体現する少女と、監視を担う看護師。導入からメタフィクションであることが明かされる。欺瞞と支配構造を支えるシンボルの脱構築。我々観察者は外にいるのか、或いは内に囚われたままなのか。反復するだけの入れ子構造には過去も未来もない。







Les Traducteurs.

2022-12-31 17:48:11 | 映画


□ 『Les Traducteurs』(9人の翻訳家)

Directed by  Régis Roinsard

Writing by
Romain Compingt
Daniel Presley
Régis Roinsard

フランス・ベルギー合作のクライムミステリー。ソリッドシチュエーションスリラー → 叙述トリックの切り替えが鮮やかだけど、割と序盤で結末が予想できた程度には王道。文学ネタも適度に塗されていて、特にJames Joyceの引用の件でピンと来るように仕掛けられているのも、ジョイス読者には嬉しい。

and then I asked him with my eyes to ask again yes and then he asked me would I yes to say yes my mountain flower and first I put my arms around him yes and drew him down to me so he could feel my breasts all perfume yes and his heart was going like mad and yes I said yes I will Yes.

─Episode 18: Penelope. James Joyce, Ulysses.

Avatar: The Way of Water

2022-12-30 00:12:12 | 映画


□ 『Avatar: The Way of Water』(4K3D+HFR)

>> https://www.avatar.com/movies/avatar-the-way-of-water

Directed by James Cameron
Produced by Richard Baneham / John Landau
Music by Simon Franglen
Cinematography by Russell Carpenter


人類未到の映像領域。極彩色に揺蕩う『水』の世界。HFRで描写される水面の揺らぎ、水棲動物の躍動は、まさに可視化された(共有可能な)至宝の幻想体験。夢と現実、過去と未来、神話とSFはやがて一つに至る。争いも平穏も、破壊も贖罪も、犠牲も彼岸も、全てがそこに解け合う。この叙事詩の辿り着く先を見てみたい。



□ The Weeknd - Nothing Is Lost (You Give Me Strength) (Official Visualizer)


□ Simon Franglen - From Darkness to Light (From "Avatar: The Way of Water"

映画や音楽において、序盤で呈示された主題やモノローグが、終盤の異なる場面においてリフレインされる瞬間のカタルシス。







Alice.

2022-12-12 00:00:00 | 映画

□ Jan Švankmajer / “Něco z Alenky” (Alice) excerpt from the elevator scene.

Directed by Jan Švankmajer
Screenplay by Jan Švankmajer
Based on the Novel by Lewis Carroll
Produced by Peter-Christian Fueter

Starring:
Kristýna Kohoutová

Cinematography by Svatopluk Malý
Edited by Marie Zemanová

Production companies: Film Four International / Condor Films

Distributed by First Run Features
Release dates: 3 August 1988 (United States) / 1 November 1990 (Czechoslovakia)

Running time: 86 minutes
Countries: Czechoslovakia / Switzerland / United Kingdom / West Germany
Language: Czech


シュヴァンクマイエルの処女作。幼い少女が白ウサギを追って迷い込んだエレベーター。地下深くへ降りていくに従って、幼い頃の記憶に埋もれていた感覚と、自我形成の根源を辿る背徳感にも似た情動に胸が高鳴る。歯車の軋む音、被膜の破ける音、粘液の擦れる音。遠い記憶を刺激するミュージックコンクレートとしても完成度が高い。

#映画の中のエレベーター・エスカレーター



PIG

2022-12-08 22:12:24 | 映画



□ 『PIG』

>> https://neonrated.com/films/pig

Directed by Michael Sarnoski

Story by Vanessa Block / Michael Sarnoski
Written by Michael Sarnoski
Cast: Nicolas Cage / Alex Wolff / Cassandra Violet
Music by Alexis Grapsas / Philip Klein
Cinematography by Patrick Scola

愛豚の奪還劇、というよりは『喪失』へ至る旅路。『食』や『料理界』に限らず、虚栄を糧とする産業と、その支配構造へのアンチテーゼ。『本物』じゃなければ人の心は動かせない。喪失こそが愛を雄弁にし、その過程で新たな絆を得ることが叶う。

『PIG』『DÉLICIEUX』『The MENU』奇しくも立て続けに鑑賞することが叶った『料理』にまつわる3本の映画、どれも共通したテーマが『価値』や『支配』についての戯画的批判であった。偶然とはいえ、今こういった映画が出揃ったのは、上流の権力構造を矢面にしながらも、誰もが無責任に消費し、批評を行う当世への警鐘として受け取るべきなのかもしれない。





『PIG』数日経っても鑑賞後の余韻が抜けなくて、いまだにニコラス・ケイジの演技とシーンの数々を思い出しては涙ぐんでるので、少し語りたい。先日も述べた通り、この映画は決して『復讐劇』などではなく、かつて料理人であった一人の男が、自らのルーツを辿って『過去』と『喪失』を受け入れるまでの道程を描いた作品だった。


主人公は『与える側』であって、決して誰からも『奪わない』。バイオレンス描写はあるものの、主人公は目的のために受容する側であって、誰かを傷つけるわけではない。ただ、「なぜ豚のためにそこまでするのか」という、異質だが極めてシンプルな動機が、作劇に終始張り詰めた緊張感を与えている。

※ここで『ブタ』のメタファー的な位置付けを論じるよりも、むしろ重要なのは主人公の慈愛の深さ、率直さの象徴であること、あるいは彼がただ愛情を注いだという事実そのものである。

この映画には明確な『解答』が示されている。それは強力な『演技』と”Context”によって観客の解釈を誘導するものだけれど、決して”Sentence”で全てを説明するようなことはしない。むしろそれは意図的に欠落している。セリフが欠落しているからこそコンテクストが強化され、メッセージが胸に迫る。



この映画は喪失によって『愛』を語る物語だ。劇中の登場人物の誰もが、『誰かのために間違ったことをしている』。虚飾に溺れて自らを見失っているかつての弟子を、主人公が『それが本当にやりたかったことなのか?』と諭すシーンがある。「客も料理も本物じゃない」と。


本物だけが人の心を動かすことが出来る。「単なる職業じゃない、生き様だ」は”Top Gun: Maverick”のセリフだけれど、嘘のないメッセージは、必ずしも言葉にしなくていい。そして愛と喪失は、善悪の境なく誰もが経験する共通言語だ。喪失は愛を雄弁にする。過去を受け入れて踏み出す先に、差し伸べられる手がきっとある。



□ Alexis Grapsas & Philip Klein - Hunting - PIG (Original Motion Picture Soundtrack)





DÉLICIEUX.

2022-12-08 20:08:08 | 映画


□ 『DÉLICIEUX』

>> https://en.unifrance.org/movie/48924/delicieux

Directed by Éric Besnar
Music by Christophe Julien
Cinematography by Jean-Marie Dreujou
Art Direction by Sandrine Jarron

フランス革命前夜、『シェフ』と『料理』は貴族の虚栄と権力闘争に利用され、大衆は飢えと貧しさに喘いでいた。供する者と食する者の資格と価値、その相補性。「生きる力の湧き出るところ」を一般大衆に解放し、初めて「レストラン」を開業した男の実話。男の実話。まるで一枚一枚の静物画や風景画を切り取ったかのような構図やライティングが美しく、ずっと見惚れていた。







Amsterdam

2022-11-21 20:35:42 | 映画

□ 『Amsterdam』

>> https://www.20thcenturystudios.com/movies/amsterdam

Directed by David O. Russel
Music by Daniel Pemberton

Cast
Christian Bale
Margot Robbie
John David Washington




戦時下の史実を背景に、陰謀に巻き込まれていく男女3人の友情と絆をコミカルに描いた、異色のサスペンス。豪華絢爛なキャスト陣と画が観られるだけでお腹いっぱい。捻くれた構図にユーモアを感じられるかどうかが、評価の分水嶺。Taylor Swiftの扱いに泣いた。






the MENU.

2022-11-21 19:47:41 | 映画


□ 『the MENU』

>> https://www.searchlightpictures.com/the-menu/

Directed by Mark Mylod
Music by Colin Stetson

Cast
Ralph Fiennes
Anya Taylor-Joy
Nicholas Hoult

限りなくソリッド・シチュエーションスリラーに近いけれど、ブラック・コメディとして鑑賞するのが正解。スクリーンの内と外、双方の『お客様』を支配するシェフの狂気とカリスマ性。批評という行為の相補性。価値と支配の力学構造。


Colin Stetsonによる格調高くも前衛的な劇伴音楽が、おぞましく美しい。


□ Colin Stetson - All Aboard | The Menu (Original Motion Picture Soundtrack)





Where the Crawdads Sing.

2022-11-19 22:01:50 | 映画


□ 『Where the Crawdads Sing(ザリガニの鳴くところ)』

>> https://www.sonypictures.com/movies/wherethecrawdadssing

Directed by Olivia Newman
Delia Owens (based upon the novel by)
Lucy Alibar (screenplay by)

Music by Mychael Danna
Song “Carolina” by Taylor Swif

Cast
Daisy Edgar-Jones
Taylor John Smith
Harris Dickinson


奥深い湿地の自然光が描く陰翳と、生態系の描写がただひたすらに美しいサスペンス。
「──沼は死を悲劇にしないし、罪にもしない。」

”湿地の娘”は、動物学者であった原作者の投影であるのかもしれない。
ただ生きるために美しく、擬態し、強くあることを求められた少女の半生譚であり、
それが自然の本質であった。



□ Taylor Swift - Carolina (From The Motion Picture “Where The Crawdads Sing” / Lyric Video)







すずめの戸締り

2022-11-19 13:39:42 | 映画

□ 『すずめの戸締り』

>> https://suzume-tojimari-movie.jp/

Directed by Makoto Shinkai

『すずめの戸締り』災厄と日常、出会いと別離、過去と未来、旅路と家路、1と0…その狭間でイーブンであるはずの両側を分つものは何か。『扉の前では興味深いことが起きる。そこは物事の境界だから』と綴ったのは作家のダン・ブラウンだったか。心が幻であるならば、現世もまた幻であり、幻は心を映す。





A Trip to Infinity.

2022-10-31 22:09:08 | 映画


□ 『A Trip to Infinity』(Netflix)

>> https://www.netflix.com/jp/title/81273453

“Eminent mathematicians, particle physicists and cosmologists dive into infinity and its mind-bending implications for the universe.”

著名な数学者・理論物理学者たちが、『無限』の概念や定義について、それぞれの領域における知見を語る。中学生の頃、私の世界観を永遠に変えてしまった数学者、Steven Strogatz氏の出演も感慨深い。 - ”That the universe itself gets to have its window of life.”





Lamb.

2022-10-31 18:06:06 | 映画


□ 『Lamb』

>> https://a24films.com/films/lamb

Director: Valdimar Jóhannsson
A24 films

アイスランドの白夜が美しく映える怪異スリラー。一見シュールに映る光景は記号の配置に依るものに過ぎず、出自と形質の『特異点』である子羊は、ただ純粋に『心を持つ子供』として描かれている。自然の掟と世界だけが、彼女を置き去りにしていく。


STAR WARS: ANDOR

2022-10-10 10:07:03 | 映画



□ 『STAR WARS: ANDOR』(4K Dolby Vision/Atmos)

>> https://disneyplus.com/series/star-wars-andor/

3話まで視聴。 Blade Runnerの世界観で名画『Casablanca』を観ているような感じ。
今の所スターウォーズ色が意図的に払拭されている印象。
シリーズの新たな門出を象徴する3話終盤、
若き名匠Nicholas Britellによる劇中音楽がとても儚げで美しく耳に残る。



『STAR WARS: ANDOR』第4話。展開の遅さを除けば、現在のところスターウォーズ・スピンオフとしては屈指の品質と言える。帝国統治下の首都惑星コルサントの政治やレジスタンス活動の描写、演技派俳優たちが重厚で緻密な作劇を繰り広げる白眉のエピソード。











Jurassic World Dominion.

2022-07-31 01:10:37 | 映画


□ 『Jurassic World Dominion』

>> https://www.jurassicworld.com

Release Year: 2022
Directed by Colin Trevorrow
Cast: Chris Pratt, Bryce Dallas Howard


『Jurassic World Dominion』(IMAX 3D)。最終作らしく唐突に背景がスケールしている。
とはいえ、マルタ島のラプトルとのカーチェイスシーンは、
これまで全く未体験と言えるシリーズ屈指のハイライト。

絶滅か共存か。

クライトンの代弁者であるマルコム博士の警鐘は、
当世に至って更に重みを増している。

















Prehistoric Planet.

2022-07-16 12:39:40 | 映画
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□ 『Prehistoric Planet』(Apple TV+)

>> https://www.apple.com/tv-pr/originals/prehistoric-planet/

驚くべき視覚効果リソースを用いて描かれる、恐竜の生態ドキュメンタリー。“Jurassic World”級のラージバジェット水準のCGクオリティと、最新学説に基づく作劇。冒頭の大海原を泳ぐT-REXでクソデカ感情が溢れた🦕✨ Hans Zimmerによるテーマも💯。




□ 『HOME』Season2 (apple TV+)、A24 filmsと提携した建築ドキュメンタリー。南アフリカの自然豊かな崖に建てられた”House of the Big Arch”は、『自然の要求によって建てられた』、樹木や土地の形状に寄り添った湾曲構造を持つ。地元の学生たちの環境教育の場としても役割を果たしている。