僕達日本人が持つ磨崖石仏の概念を見事に打ち砕いてしまうような石仏です。
8日間の韓国石仏巡訪の旅で唯一雨に降られた日の9月29日、忠南の地方都市、論山市を訪れたのは巨大で妙な顔つきのこの石仏を見るのが第一の目的でした。
論山市街を少し離れた郊外、幹線道から少し入った参道に建つ「磐石山灌燭寺」の山門脇をタクシーで通過・・・・
参道奥に有る、多分四王門と書かれた門前で車を降りる。
ブルー基調で見事な満艦飾の門内両脇にこれも見事な彩色を施された四天王??
どうもケバケバしくて、なんとも日本人の僕には馴染がたい様相です。
山内に足を踏み入れると、この大雄殿でもそうで有った様に韓国の寺では、どこに行ってもあの木魚をポクポク叩くリズミカルな音と「五体投地」で祈る姿を見かける。
まさに観光寺院ではなく今に信仰が生きている寺だと強く感じないわけにはいかない。
しかし、此処ではちゃんと1500ウォン(約100円強)の拝観料は払いましたけど。
問題の石仏はなだらかな岩山斜面を背にして、巨大で奇妙な顔立ちで立っている・・・・、どうも日本の石仏を見慣れてる僕にはちょっと異質なものを感じないでもないが。
石仏正面には拝堂があり、その円窓からはこの尊顔が飛び込むように出来ているようです・
拝堂と石仏の間には五層石塔とちょっと見慣れない石灯篭が一直線に配されている。
石仏の前にはやはり「五体投地」用の長方形の敷物・・・、しかしこの石仏が磨崖だとは俄には信じ難い・・・。
屹立していた岩山を切り刻み下半身を彫り出し、上半身と顔は別石で繋ぎ合わせている。
高麗初期の 光宗19年(968)に着工、約38年を要して1006年に完成したといわれる韓国最大の石仏です。
胴回り約11m、総高18mを越える巨大さで、顔部や体躯に比して手が異常に大きいのが目に付く。
しかしなんと言ってもその特徴的な巨大カッパの親玉の様な頭に長い宝冠を被せ、その上に二重の四角い宝蓋を載せ四隅には風鈴を吊下げている。
これが韓国高麗期石仏のひとつの特徴、丸彫り石仏に天蓋、どうも馴染めない姿です。
それでも良く見ると石仏としての完成度は並離れて素晴らしく、顔の彫などはまるで大理石を磨き上げたように滑らかです。
1000年以上も前、この地にこんな巨大な石仏を造る必要があったのだろうか??
この地で1000年という気の遠くなる時代を見続けてきた弥勒仏、さぞや目を覆いたくなる事もいっぱい有っただろう・・・・・
今はちょっと奇妙な顔に穏やかな笑みをたたえているように見える。
撮影2011.9.29