CHARCOT-MARIE-TOOTH DISEASE, PROGRESSIVE ATAXIA, AND TREMOR(OMIM #214380)という遺伝性疾患が1980年に報告されている.この疾患はFrench-Canadianの大家系に認められたもので,神経学的には進行性の小脳失調,振戦,四肢遠位部の筋萎縮を認める.表現型としてはAOA1(ataxia-oculomotor ataxia 1;aprataxin欠損症),AOA2,SCAN1(spinocerebellar ataxia, autosomal recessive, with axonal neuropathy type 1)およびCMTに一部類似するとも言える.ちなみにAOA2は,小脳失調,眼球運動失行,およびAFP上昇が特徴的で,発症はAOA1よりやや遅い.原因遺伝子は昨年同定されsenataxinと命名された.Senataxin遺伝子変異は,ヘリカーゼ活性の障害またはRNA processingの障害によって神経変性を引き起こすと推測されている.
今回,French-Canadianの10家系に対する連鎖解析の結果がカナダより報告された.計24症例の表現型は均一で,2~20歳で発症(平均14.8歳),失調,振戦,構音障害,眼振,四肢筋力低下・筋萎縮,DTR低下,深部覚低下はほぼ必発だが,眼球運動失行は1例もなし.痙性もなし.連鎖解析の結果はAOA2と同じ9q34の遺伝子マーカーとの間に連鎖不平衡を認め,Senataxin遺伝子のdirect sequenceしたところ,4つの遺伝子変異を同定し,うち2つは報告のない新規ミスセンス変異であった(L1976R,E65K).L1976Rはcarrier chromosomeの85%(17/20)を占め, French-Canadian家系において最も頻度の高いfounder mutationであることが判明した.以上の結果は,senataxin遺伝子変異がFrench-Canadianの家系に見られる疾患の原因遺伝子であったことを明らかにしたとともに,senataxin遺伝子変異イコールAOA2とは限らないことを示している.
実はこれ以外にもsenataxin遺伝子変異は,昨年6月に若年発症ALS(ALS4)の原因遺伝子として同定されている(Am J Hum Genet 74; 1128-35, 2004).ALS4は常染色体優性遺伝を呈し,四肢遠位部の筋力低下・筋萎縮を主徴とし,錐体路症状を呈する.25歳未満で発症するが生命予後は良い(健常人と変わらない).ALS4を呈する遺伝子変異は3種類知られているが,AOA2や今回のFrench-Canadian家系で認められた変異とは異なる.いずれにしてもsenataxin遺伝子変異によって引き起こされる疾患の表現型は様々であり,中核症状は四肢遠位部の筋力低下・筋萎縮で,そこに変異の種類によって小脳失調や眼球運動失行などを合併しうるということなのであろう.いずれこれらの疾患を包括する概念としてsenataxinopathy (?) などという表現も使われるのかもしれない.文献を検索した限り本邦からの報告例はないが,表現型が多様であることから診断は難しいかもしれない.
Ann Neurol 57; 408-414, 2005
今回,French-Canadianの10家系に対する連鎖解析の結果がカナダより報告された.計24症例の表現型は均一で,2~20歳で発症(平均14.8歳),失調,振戦,構音障害,眼振,四肢筋力低下・筋萎縮,DTR低下,深部覚低下はほぼ必発だが,眼球運動失行は1例もなし.痙性もなし.連鎖解析の結果はAOA2と同じ9q34の遺伝子マーカーとの間に連鎖不平衡を認め,Senataxin遺伝子のdirect sequenceしたところ,4つの遺伝子変異を同定し,うち2つは報告のない新規ミスセンス変異であった(L1976R,E65K).L1976Rはcarrier chromosomeの85%(17/20)を占め, French-Canadian家系において最も頻度の高いfounder mutationであることが判明した.以上の結果は,senataxin遺伝子変異がFrench-Canadianの家系に見られる疾患の原因遺伝子であったことを明らかにしたとともに,senataxin遺伝子変異イコールAOA2とは限らないことを示している.
実はこれ以外にもsenataxin遺伝子変異は,昨年6月に若年発症ALS(ALS4)の原因遺伝子として同定されている(Am J Hum Genet 74; 1128-35, 2004).ALS4は常染色体優性遺伝を呈し,四肢遠位部の筋力低下・筋萎縮を主徴とし,錐体路症状を呈する.25歳未満で発症するが生命予後は良い(健常人と変わらない).ALS4を呈する遺伝子変異は3種類知られているが,AOA2や今回のFrench-Canadian家系で認められた変異とは異なる.いずれにしてもsenataxin遺伝子変異によって引き起こされる疾患の表現型は様々であり,中核症状は四肢遠位部の筋力低下・筋萎縮で,そこに変異の種類によって小脳失調や眼球運動失行などを合併しうるということなのであろう.いずれこれらの疾患を包括する概念としてsenataxinopathy (?) などという表現も使われるのかもしれない.文献を検索した限り本邦からの報告例はないが,表現型が多様であることから診断は難しいかもしれない.
Ann Neurol 57; 408-414, 2005