脳梗塞におけるt-PA治療の開始を目前に控え,いかにt-PA使用可能な症例を増やすかということが今後の重要な課題となる.今回,MGHよりラットを用いた動物モデルにおいて,大気圧下における高濃度酸素療法がtherapeutic time windowを2時間延長するという報告があった.モデルはsuture model(頚動脈からMCAへナイロン糸を挿入する方法)を用いている.永久虚血,ないし一過性虚血(虚血時間1, 2, 3, 4hrで糸を抜去)を行い,48時間後に梗塞のサイズを比較すると,一過性虚血の時間が1時間までであれば梗塞のサイズは永久虚血群と比較し,有意に小さいことが分かり,このモデルでのtherapeutic time windowは1時間と2時間の間であることが言える.一方,虚血開始5分後より100%酸素を使用した群では(対照群は30%酸素),同様の実験の結果,therapeutic time windowは3時間と4時間の間であることが分かった.また高濃度酸素使用によりfree radical産生や,酸化的ストレスにより誘導されるmetalloptoteinase(MMP)の誘導が心配されたため(注;MMPは血液脳関門を破壊する),それぞれをhydroxyethidineによる組織染色,および抗MMP-2, MMP-9抗体によるWestern blotにて両群間を比較したところ有意差を認めなかった.以上の結果は,intraischemicに行う高濃度酸素療法は少なくともラットsuture modelにおいてはfree radicalやMMPの産生を誘導することなく,脳梗塞therapeutic time windowを延長することを意味する.
非常に興味深いものの,問題点は,①作用機序が分からないこと,②100%酸素投与が虚血開始後5分という時間に開始されるということは,実際の臨床の場ではありえない,ということである.はたして救急車が到着してから,病院でt-PAが使用されるまでの間に高濃度酸素を使用するだけでもtherapeutic time windowが延長するのか,今後の検討が必要であろう.
Ann Neurol 57; 571-575, 2005
非常に興味深いものの,問題点は,①作用機序が分からないこと,②100%酸素投与が虚血開始後5分という時間に開始されるということは,実際の臨床の場ではありえない,ということである.はたして救急車が到着してから,病院でt-PAが使用されるまでの間に高濃度酸素を使用するだけでもtherapeutic time windowが延長するのか,今後の検討が必要であろう.
Ann Neurol 57; 571-575, 2005
