Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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パーキンソン病では血液脳関門に障害がある

2005年02月02日 | パーキンソン病
孤発性パーキンソン病(PD)発症の危険因子として殺虫剤が知られている.とくにMPTPに類似した化学構造を持つ殺虫剤はPDの発症に関与している可能性がある.しかし殺虫剤に曝露したヒトがすべてPDを発症するわけでなく,殺虫剤による神経変性を起こしやすい遺伝的背景が存在する可能性が高い.
MDR1遺伝子によりコードされるP-glycoproteinはABC transporterのひとつで,ATPase活性によりATPを加水分解し,この結果産生したエネルギーを利用して薬剤を細胞の中から外へ輸送する.P-glycoproteinは癌細胞に発現して多くの抗癌剤を細胞外へ排出することによって,癌細胞を薬剤耐性にすることで有名である.しかし癌以外の正常細胞,例えば脳血管内皮細胞にも発現し,脳から血液中に物質を輸送することで血液脳関門の機能を保つ働きも有する.PDにおいてはMDR1遺伝子の3435T多型を有すると,5倍,殺虫剤への曝露が増強するとの報告がある.
今回,オランダから,PDにおけるP-glycoproteinの機能をin vivoにて検討した研究が報告された.このグループはすでに,[11C]-verapamilをプローブとしたPETが,P-glycoproteinの機能評価に有用であることを報告している.対象は孤発性PD5名と対象5名.結果として,PD群では[11C]-verapamilの中脳における取り込み率が対象と比較し18%上昇していることを示した.
本研究は,血液脳関門の障害がPD発症に関与している可能性を初めて示したものであり,重要な報告である.今後,症例数を増やす必要はあるが,P-glycoproteinの機能を増強させることが予防や治療につながる可能性がある(何とグレープフルーツにはP-glycoprotein機能の増強作用がある).また,PD以外の孤発性神経変性疾患ではどのような結果が得られるのか興味深い.

Ann Neurol 57; 176-179, 2005
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