Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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どの抗てんかん薬が骨粗しょう症を引き起こすか?

2005年02月01日 | てんかん
 抗てんかん薬(AEDs)のなかでもcytochrome P450を誘導する薬剤(carbamazepine;CBZ,phenobarbital,phenytoin;PHT)は骨代謝に障害を及ぼすと言われている.しかし,近年,cytochrome P450に対し阻害作用を持つvalproate;VPAも骨代謝に障害を来たすという報告が散見される.一方,lamotrigine; LTG(商品名Lamictal;日本未承認.部分発作の治療の補助薬として使用されるが,躁うつ病にも有効である可能性がある)のような新しい薬剤については骨代謝への影響は検討されていない.
 今回,コロンビア大およびスタンフォード大の共同研究により,AEDsが骨代謝に及ぼす影響を閉経前の女性を対象として行った.対象は93名の閉経前の女性で(18歳~40歳),いずれもAEDs単剤(PHT 19名,CBZ 37名,VPA 18名,LTG 19名)を最低6ヶ月以上内服している者とした.方法としては,血清Ca,25(OH)D,PTH,IGF-I,IGFBP-3,骨型ALP,osteocalcin(骨形成マーカー),および尿N-telopeptide of type I bone collagen (NTX;骨吸収マーカー)を測定した.ちなみにIGFは骨芽細胞にて産生され細胞増殖因子として作用する(オートクライン・バラクライン的に骨細胞の増殖や活性を制御しているらしい).   
結果として,血清CaはLTG群と比較し,PHT群,CBZ 群,VPA 群では有意に低下していた(p=0.008).IGF-IはLTG群と比較し,PHT群で有意に低下していた(p=0.017).骨型ALPはVPA群,LTG群と比較しPHT群で有意に上昇していた(p=0.007).以上の結果は,PHTは骨代謝に影響を与え,bone turnoverを促進することを意味する.CBZ 群,VPA 群でも血清Ca値の低下が見られたことは,長期内服により骨密度減少をきたす可能性を示唆する.LTGはこれらの薬剤の中では骨に影響を及ぼしにくいものと考えられた.
以上より,AEDsを内服している場合は,単剤投与であっても,定期的に骨密度の測定などを行い,骨粗しょう症の発症・増悪を防ぐ必要がある.

Ann Neurol 57; 252-257, 2005 
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