Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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PSP類似の非定型パーキンソニズムを呈し免疫療法が有効であった自己免疫性脳炎の1例

2023年05月01日 | 自己免疫性脳炎
当初,肺炎を合併した進行性核上性麻痺(PSP)と考えられましたが,じつは自己免疫性脳炎であった症例を大野陽哉先生らが報告しました.

81 歳男性が発熱し,その3週間後に意識障害,4週間後に筋強剛,運動緩慢を呈しました.レボドパは無効で体軸性の筋強剛であったことから当初PSPが疑われました.発症から6週間後に当院に紹介され入院したときには,意識障害のため核上性注視麻痺と認知機能の評価できず,MDS PSP基準での評価はできませんでした.意外なことに頭部MRIで両側側頭葉内側と基底核の高信号病変を認め,診断の再考を要しました(図A,B).脳脊髄液の細胞数は正常でしたが,蛋白は上昇(55mg/dL),オリゴクローナルバンドも陽性でした.自己免疫性脳炎によるPSP mimicsの報告は,CRMP-5,DPPX,GAD65,GlyR,Hu,IgLON5,LGI1,Ma2,Ri がありますがこれらを含め測定可能な抗神経抗体は陰性でした.しかしラット凍結切片を用いた患者血清による免疫染色では海馬と小脳顆粒細胞の細胞表面および細胞内抗原を認識する抗体の存在が示唆されました(図F,H,J).ラット海馬初代培養神経細胞も陽性に染色された(図L)(図E,G,I,Kは対照).免疫グロブリン静注療法とステロイドパルス療法を行ったところ,意識レベルは改善,寝たきり状態から介助歩行が可能となりました.DaT-SPECT所見も改善しています!(図C→D).

以上より,非定型パーキンソニズムでもとくに亜急性の増悪の場合,自己免疫異性脳炎を疑う必要があります.今後,原因となる自己抗体を同定することが重要だと考えました.同様の患者さんがいらっしゃいましたらご相談いただければと思います.
Ono Y, Higashida K, Takekoshi A, Kimura A, Shimohata T. Autoimmune encephalitis presenting with atypical parkinsonism: A case report and review of the literature. Neurol Clin Neurosci 28 April 2023

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