Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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本態性振戦の原因遺伝子の発見

2005年02月17日 | その他の変性疾患
 本態性振戦の原因には遺伝・環境・代謝など様々な因子の関与が指摘されている.遺伝に関しては常染色体優性遺伝形式を呈する家系が報告されており,遺伝子座位として3q13(ETM1),2p24.1(ETM2),さらにいずれの遺伝子座位にも連鎖しない家系が報告されている.これら遺伝性本態性振戦の特徴は,家系内もしくは家系間で臨床像はさまざまで(振戦以外に合併する症状が家系によって,ジストニア・悪性過高熱・パーキンソニズム・片頭痛などいろいろなパターンがある),さらに性差によっても症状が異なる(頭部振戦は女性に強いなど).また浸透率は低い.
 今回,アメリカやシンガポールにおいて家系例が報告されているETM2の原因遺伝子が判明した.方法としてはfine mapping studyによりminimal critical regionを同定し,このあとSSCPおよびdirect sequenceで原因遺伝子を同定した.原因遺伝子はHS1-binding protein 3 (HS1-BP3) geneであった.2家系においてmissense mutation (823C→G;Gly→Ala)を認め,150 control sample(300 chromosome)ではこの変異は認めなかった.しかしアメリカにおける遺伝性本態性振戦家系21家系のうちこの遺伝子変異を認めたものは2家系のみで,シンガポール家系73家系のなかには存在しなかった.
 HS1-BP3 geneのヒト脳における機能については良く分かっていないが,マウスおよびヒトにおける研究でHs1蛋白に結合することが判明している(名前の由来でもある).Hs1蛋白は14-3-3 protein familyのひとつで,運動ニューロンやPurkinje細胞などに高発現している.今後,この発見を契機に本態性振戦のメカニズムが明らかになるかもしれない.

Neurology 64; 417-421, 2005 
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