Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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急増が予測される小児期発症AIDS脳症の特徴

2004年10月27日 | 感染症
症例は過去4年にわたる上気道感染の繰り返しと,進行性の神経症状を認める13歳のインド人男子.1年前より学業成績の低下,6ヶ月前より両下肢・体幹の筋力低下を認め,2ヶ月前より起立不能.一般身体所見では肝腫大と肺ラ音,神経学的には近時記憶の低下(MMSE 10/30)と両側錐体路症状を認めた.頭部MRI FLAIRでは大脳白質のびまん性高信号を認めた.遅発性白質脳症と感染を伴う気管支拡張症と診断されたものの,知能低下が進行性であるため診断の見直しを要した.父が結核にて死亡していることから,HIV感染の可能性を疑い,血清抗体価,CD4細胞数,血漿HIV DNA-PCRの結果から感染が確認された.また中枢神経日和見感染症が否定されたことからHIV-dementiaと診断した.母親にもHIV感染が確認された.治療としてHAARTが開始され,知能低下は改善した.
 今後,小児の原因不明の白質脳症としてAIDS-dementiaも鑑別に挙げる必要がある.小児発症AIDS中枢神経症状の特徴としてcortical atrophy,錐体路症状,仮性球麻痺,精神症状を呈することが知られているが,周産期に感染し,未治療の症例では成人と比較して進行が急速であることも報告されている.本邦でも若年者におけるAIDS感染の増加が指摘されており,今後,周産期~乳幼児期感染・小児期発症パターンのAIDS脳症が増加する可能性が高いことを医療従事者は認識すべきである.

Lancet 364; 1460, 2004
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