Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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研修医の勤務時間と医療過誤の関係

2004年10月28日 | 医学と医療
Harvard Medical Schoolから非常に意義深い2つの報告がなされた.1つ目は「レジデントの勤務時間の短縮が睡眠と注意力欠如に及ぼす影響」.レジデントの勤務時間と,睡眠時間・注意力欠如の関係について,長時間勤務シフトを含む伝統的なスケジュールと,連続勤務時間を16時間以内に制限した介入スケジュールとで比較.対象は1 年目のレジデント20 人で,観察期間はICUでの3週間の勤務を各スケジュール 1 回ずつとした.毎日,睡眠日誌と勤務日誌を記入し,睡眠日誌の妥当性はPSGにても確認した.結果は,勤務時間は従来のスケジュールでは週平均84.9時間,介入スケジュールでは平均65.4時間と,週19.5時間の短縮.これにより,睡眠時間は週5.8時間延長し(P<0.001),当直中に注意力欠如がみられた割合は半数未満となった(P=0.02).
2つ目は,「勤務時間短縮がICUにおける重大な医療過誤に与える影響」.上記の勤務スケジュール間で,レジデントによる重大な医療過誤の発生率を比較.観察期間は634件の入院を含む2203患者・日.従来スケジュールは介入スケジュールと比較し,医療過誤は35.9%多く(P<0.001),うち重大な過誤も56.6%多かった(P<0.001).重大な投薬ミス,および重大な診断ミスもそれぞれ20.8%(P=0.03),5.6 倍(P<0.001)と多くなった.
以上の結果はレジデントの長時間勤務を減らすことで,夜間勤務時の注意力欠如が減少し,ICUにおける重大な医療過誤も減らせることを示唆する.当然予測される結果であるが,このようなエビデンスを持ったデータはこれまで存在しなかったことからその意義はきわめて大きいものと思われる.当直翌日の勤務をどうすべきかなど,あらためて検討していく必要がある.

N Engl J Med 351;1829-37, 2004
N Engl J Med 351;1838-48, 2004
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