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Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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原発性側索硬化症は家族性ALSの家系内に出現しうる?

2005年06月03日 | 運動ニューロン疾患
原発性側索硬化症primary lateral sclerosis(PLS)は上位運動ニューロンのみが障害される変性疾患で,非常にまれな疾患である.成人期に発症し,主に痙性対麻痺を呈するが,数十年にわたり非常に緩徐に進行する点が特徴的である.しかしPLS,ALSとも発症年齢,性差(男性に多い)が類似し,PLSからALSに移行した症例も報告されていることから,PLSはALSの亜型である可能性が示唆されている.
一方,ALSでは約5~10%が家族性に発症するが(よく出てくるフレーズだが,とてもそうは思えない),PLSでは一般に家族性発症は見られない.1992年Brain誌に提唱された診断基準においても,項目のひとつに家族性ではないことが挙げられている.ただ,近年,劣性遺伝性家族性ALS(ALS2)の原因遺伝子であるALS2遺伝子(Alsinをコードする)の変異で,家族性若年発症性PLSを呈することは報告されている.
今回,SOD1遺伝子変異を持たない家族性ALS家系(2家系)のなかに,PLSを呈した症例が存在したというレポートが報告された.いずれの家系も2世代にわたり発症し,うち1家系ではmale to male transmissionを認めていることから常染色体優性遺伝が考えられる(他方は常染色体優性遺伝とは断定できない).症例は50歳代から歩行障害,球麻痺で発症し,緩徐に進行,1例は発症後30年生存している.剖検例はない.下位運動ニューロン徴候(筋萎縮,線維束攣縮)が見られない点をもってALSの診断を否定している.
以上の結果は,PLSが家族性ALSの一表現型として出現する可能性を示唆するものであり,おそらくPLSの診断基準の中から「家族内発症をのぞく」の項目は削除してよいのかもしれない.ただし,下位運動ニューロン徴候がはっきりしないからといって,病理的に下位運動ニューロン障害がないかは別の話であり,なかなか話は単純に行かないような気がする.

Neurology 64; 1778-1779, 2005
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