12/05/02 NODA・MAP「THE BEE」 JAPANESE VERSIONを水天宮ピットで観た


GWの前半と後半の間の5/2(水)、仕事帰りの大雨の中、NODA・MAP番外公演「THE BEE」 JAPANESE VERSIONの夜公演を水天宮ピットに観に行った。
この作品の日本初演は見送っていた。世田谷のシアタートラムで遠いということもあるが、蜂が大写しになっているポスター、チラシにげんなりしてしまったことも大きい。
NODA・MAP公式サイトの2007「THE BEE 日本バージョン」の公演情報はこちら

今回は、再演になるほどの作品で、しかも宮沢りえの出演ということもあって即決断。2010年の「表に出ろいっ!」に続く、野田芝居の小劇場バージョン観劇となった。冒頭のチラシ画像も蜂のイメージで気持ちは悪いが、まぁ我慢できる範囲かな(^^ゞ
【NODA・MAP「THE BEE」 JAPANESE VERSION】
原作:筒井康隆「毟りあい」 共同脚本:野田秀樹&Colin Teevan
演出:野田秀樹
配役は以下の通り。
宮沢りえ=小古呂の妻/リポーター
池田成志=百百山警部/シェフ/リポーター
近藤良平=安直/小古呂/小古呂の息子/リポーター
野田秀樹=井戸

水天宮ピットは、移転した都立高校の旧校舎を利用した東京芸術劇場管理の施設で、稽古場の提供を中心としている。その大スタジオが会場で、簡単な椅子に座布団が敷かれている(まるで平成中村座!)。
舞台の上に広がる大きな紙には「ザ・キャラクター」を思い出す。天井から吊られて、壁になったり、ちぎり取られて封筒になったり、大道具にも小道具にもなるのには感心至極。

以下、公式サイトの説明を引用。
2001年9月11日アメリカで発生した「同時多発テロ事件」に野田秀樹が触発され、誕生しました。筒井康隆の小説『毟りあい』を題材に、平凡なサラリーマンが妻子を人質にとられたことで、自らも犯人の妻と子を人質にとって応酬する心理戦が繰り広げられます。 日常と非日常の危うい境界線、平凡な人間が隠し持つ怒りと憎悪、恐怖にさえも適応してしまう人間の強靭さ……(以下略)。

主役のサラリーマン井戸をのぞく3人は早替りで複数の役をこなす。脱獄囚の小古呂(おごろ)は井戸の妻子を人質にとり、自分の妻子に会わせろと要求。井戸は何も知らないで帰宅、立ち入り禁止にされた自宅付近でTVのリポーターに囲まれて状況を把握する。マスコミは被害者の嘆き悲しむ様子をリポートしたいのだが、井戸はその要求に答えられない。それどころか同じように加害者になって相手に対抗することにし、小古呂の妻子のいるアパートを占拠する。
警察もマスコミもその両者の板挟みになって問題解決能力を発揮できない。マスコミは世間の注目度が落ちると取材をやめ、警察は両者の仲介役に堕する。
人質にとって女子どもを支配する男は、腹がへったら人質の女に食事を用意させ、欲望を満たしたくなったら妻の代わりにその女を抱く。人質の子どもはちょっと可愛いと思うこともあるが、相手を脅すためには指を一本ずつ切り落として相手に送りつける。

食事を作らせた包丁で指を切り落とし、その包丁で次の食事を作らせる。子どもが使う鉛筆は握るとそれが指になり、包丁でボキっと断ち切るという演劇的な仕掛けが巧妙でこわい。

人質の女も子どもも抵抗するのは最初のうちで、次第に男の指示を先読みして指を身体をさしのべる。恐怖によるマインドコントロールのなせるわざだ。
井戸の立て籠もる部屋に一匹の蜂が紛れ込み、煩わしい羽音を響かせる(この音は小古呂の妻の役が口で「ズズズズズ・・・・・・・」という雑音を発して表現される)。
人質は子どもが、やがて女が死んでいき、舞台に敷かれた紙で部屋ごと包まれて、蜂の羽音が効果音で響いて幕切れとなった。

9.11のアルカイダとアメリカの報復の連鎖というよりも、イスラエルとパレスチナの長く続く戦争とアメリカによる仲介をイメージしながら観た。イスラエルのシオニズムを許容したアメリカは本気で解決するつもりなどないし、均衡を保つために適当に役割を果たしているだけだ。百百山警部が井戸と小古呂が切った人質の指を入れた封書を預かっては届けるという場面にアメリカのイメージが重なる。

なぜ「THE BEE」=蜂が登場するのかがよくわからなかったのだが、舞台の中の異物感として印象に残っていた。プログラムを買って帰宅時に読むと、井戸の意のままにならない唯一のものとして登場させていて、原作になかったのをあえて加えたらしい。それでなるほどと納得した。

野田芝居の宮沢りえは「ロープ」「パイパー」「ザ・キャラクター」と観ていて、今回ここまで小劇場の芝居で大丈夫かと思っていたが杞憂だった。小古呂の妻はストリッパーという汚れ役だが、色気はあるがこういう商売にまで身を落とした女の儚さがあるのがいい。実生活でも結婚して子どもを産んでおり、子どもへの接し方、子どもが傷つけられ死んでしまうことへの嘆きまで情感が漂っている。最近、離婚したという報道もあったが、結婚、出産、離婚という人生経験も全て女優としての成長に活きていると思えた。今年は蜷川演出の「下谷万年町物語」とこの作品で、舞台女優としての活躍も本格化しているのが嬉しい。

池田成志は、本当に嫌な男ぶり満開で百百山警部を好演。それが愛嬌になるところがこの人の良さだと思う。
コンドルズの近藤良平は「パイパー」で観た時は台詞なしだったが、台詞も問題なし。身体を小さく丸めたら髭があるのも気にならず、ちゃんと小さく可愛い男の子に見えた(^^ゞ
野田秀樹が主役になる芝居は実は初めてで、お馴染みの甲高い声が、神経質な男の役にはぴったりだし、一番年長なのに身体能力が高いところも見せつけてくれる。脚本、演出だけでなく、役者としても今後の活躍を楽しみにしていようという気になった。

平成中村座のようなお尻の痛くなりそうな椅子で、こんな短い芝居で、7500円というのはちょっと高い気がしたが、ワールドツアーへのカンパということでまぁ、いいことにしよう。
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12/05/26 国立小劇場文楽公演観劇後、四ツ谷まで歩く途中の稲荷社


毎年1月と5月は観劇回数が多くなる。この5月は今日の国立小劇場文楽公演第一部で予定の7回の観劇を終了。第二部は職場から直行したが、今日の第一部は逆に職場の最寄駅のJR四ツ谷まで歩くことにした。
お天気もよいのでいつもはさっと通り過ぎる稲荷社を撮影してみたのが冒頭の写真。「麹町太田姫稲荷社」という幟が裏側からだがはっきりと写っている。

NHKの「ブラタモリ」第3シリーズ(完結済み)にも東京の稲荷社の話が出てきた。東京の町中にもあちこちに町内単位という感じで小さな稲荷社がある。それを研究している方が登場し、それを線でつないでみると地図の上に「狐」の形が浮かび上がった。その稲荷社の中にこの「麹町太田姫稲荷社」もあった。2009年5月の王子散策で行った「王子稲荷神社」も勿論その中に入っていた。

BS朝日で亀治郎がナビゲーターをつとめている「京都1200年の旅」という番組の「北野天満宮と学問の神・菅原道真」の回で、稲荷社への言及があり、しっかり覚えたこと。日本で一番多いのが八幡社、二番目が稲荷社、三番目が天神社だという。なるほど稲荷社をあちこちに見かけるのもむべなるかなだ。

いろいろと日本の歴史・文化について学んでいると、町を歩いていてもその具体的な例があちこちにあるのが目にとまるようになる。そうなると知識として学んだことがより具体的なものとして補強されて、よけいに面白くなってくる。
そういうことを面白く思えることが有難い。
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12/05/12 平成中村座観劇後の散策(3)ローヤル珈琲店→デニーズ(^^ゞ

5/12平成中村座昼の部観劇後の散策その3。これで完結する。
(1)「待乳山聖天」の記事はこちら
(2)待乳山聖天から浅草寺まで歩いた記事はこちら

「たまごのなかみ」のmayumiさんの記事で締めに入られたレトロな珈琲店に見覚えあり。新春浅草歌舞伎観劇前のランチの釜飯屋さんの近くで見かけたと記憶がある。浅草散策の折に時間がとれれば行ってみようと思っていて、さちぎくさんにもおつきあいいただいた。

あったぞ、あったぞ。混んでいたが、カウンターなら空いているということでせっかくの機会なので名物の珈琲を飲もうと着席!
食べログの「ローヤル珈琲店 本店」の情報はこちら
「自家焙煎珈琲の店」ということで、店頭に黒くてレトロな珈琲豆の焙煎機がどーんと置いてあった。鎌倉山のチーズケーキがセットになるのは平日のみなので、名物の「ロワイヤル珈琲」というホットコーヒーを注文。中沢乳業特製の100%純粋生クリーム使用ということだったので、砂糖も入れて美味しくいただいた。
下の写真は、カウンター席なのでお皿やサラダボウルなどを重ねて並べてある前で、品書きとロワイヤル珈琲を撮影したもの。灰皿はいらないんだけどねぇ(笑)



その後、いつもの雷門前のデニーズへ移動。ゆっくりと時間の許すまでしゃべり倒せるのはお替り自由コーヒーのあるファミレスでしょう(^^ゞ
そうしたら店内が綺麗になっていて改装したとのこと。リニューアル記念メニューのカットステーキセットをしっかり頼んでしまった。三社祭前にリニューアルするとは、さすがに商売上手だと感心至極。
平成中村座昼の部は少々物足りなかったが、その後の散策、ローヤル珈琲店、観劇談義で「お後はよろしいようで」になって満足の一日となった。
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12/05/12 平成中村座観劇後の散策(2)バスに乗らずに歩く


5/12平成中村座昼の部観劇後の散策その2。
(1)「待乳山聖天」の記事はこちら
冒頭の写真は、待乳山聖天の庭園から見えた東京スカイツリー。昨日(5/22)、悪天候の中でついに開業し、雨で上方は雲に隠れてしまい、夕方には強風で第一展望台から第二展望台へのエレベーターの運転が中止になったという。私は流行ものには飛びつかない方なので、落ち着くまでは登るつもりなし。まぁ、遠くから眺めるだけで満足だ(^^ゞ

浅草は観光の街だけというだけでなく、中小企業の街であり、平成中村座へ向かう道沿いにはいろいろな会社があるなぁと思っていた。この日の昼の部観劇後、バスに乗らずに明るいうちに来た時とは同じ道の反対側を歩いていたら見落としていたポイントに気づいた。地下鉄浅草駅の地下の構内のお神輿展示スペースに立札が出ていた「宮本卯之助商店」本社のシャッターの白い文字で気づき、「えっ、ここにあったの?!」と思わず声に出してしまった。

Wikipediaの「宮本卯之助商店」の項はこちら
ちょっと先の十字路の角にある駐車場には「宮本卯之助商店」と名の入ったトラックも停まっていて、神輿や太鼓の納品に使われているのだろうなぁと推測。
山本一力の『損料屋喜八郎始末控え』の中で初めて町として神輿をつくって祭りに出すというエピソードがあり、そこに宮本卯之助という名前が出てきて嬉しかったっけ。

九世市川団十郎が建てた「助六の碑」、「姥ガ池旧跡の碑」、「履物問屋街発祥の地碑」がある花川戸公園の脇を通り、浅草寺の東参道へ。
往路はいつも仲見世通りの賑わいを楽しみ、境内を二天門から抜けて東参道を通っていくのだが、帰路にこのコースを逆にたどるのは初めてだった。
下の写真は、二天門から本堂の屋根や大きな提灯が見えるのが新鮮で撮影したもの。ちょうど人力車が通りかかってラッキー!


そこから伝法院通りに抜け、行きたかったレトロな喫茶店へ向かう。
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12/05/12 平成中村座観劇後の散策(1)「待乳山聖天」


5/12平成中村座の観劇は昼の部だったので、ご一緒したさちぎくさんと散策へ。道を挟んで真向いの「待乳山聖天」に行くのは2回目で、昨年12/11にも夜の部観劇前に散策した。
その時にひいたお御籤が1/8にひいた浅草寺のものと全く同じ版だったことだけ記事アップしている。
最近、電車の中で若い人の背中にしょわれたデイパックに紫色の「待乳山聖天」の巾着型のお守りがついているのが目にとまった。「違い鷹の羽」ならぬ「違い大根」ともいうべき2本の大根が交差した意匠は、良縁を成就、夫婦円満のご加護の功徳をあらわしている。前回は気が付かなかったけれど、あれなら欲しいなぁと思っていたので、近くに来たチャンスを活かすことにした。
待乳山聖天(まつちやましょうでん、本龍院)のHPはこちら
前回は本殿の外にあるグッズ販売コーナーをのぞき、お御籤も外でひいたのだが、今回は履物を脱いで本殿に入ってお参り。下の写真はその入り口を「違い大根」と「巾着」の
待乳山聖天の2つのシンボルが入るように撮影したもの。本殿にはお供えの大根も山と積まれていて堂内はうっすら大根のニオイが漂う。三浦大根の箱が積んであり、お供え用の大根の仕入れ先判明(笑)
欲しかった巾着型のお守りは本堂内で売っていた。赤と紫があったが紫を500円でGET!→このお守りは何かあった時用にデイパックに入れてあるミニホイッスルに取り付けた(高尾山のお守りと一緒になるが気にしない)。


待乳山聖天は江戸時代に造られた築地塀が残っているのも有名で、それが入るように庭園を撮影したのが下の写真。

ちょうど午後4時を回ったところで、外のお御籤やグッズ販売コーナーはシャッターが下ろされたりして店じまい。住職さんがお御籤などの売り上げの小銭を賽銭箱にまとめて入れるお金の音が鳴り響いたのには驚いた。まぁ、これもありということで(^^ゞ

「さんぽしようよ」さんのHPの待乳山聖天散策の記事の写真がよいのでご紹介させていただく。
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12/05/21 金環日食を堪能、職場で新しい扇風機始動


今朝は、東京で173年ぶりの「金環日食」が観察できるということで、娘が早起きしてスタンバイ。私はTVでいいかなぁというくらいだったのだが、張り切って出かけた娘に呼び出された。
携帯から電話がかかってきて、近視用のメガネとデジカメを忘れたので持ってきて欲しいという。

当初、観察場所をはっきり決めていなかったのだが、結局はうちのマンションの隣地の県の施設の駐車場にいた。さいたま市の上空には大きなうろこ雲が出ていたのが印象的。太陽はその雲の中に見えたので、快晴よりは目に優しく上を向くことができた。
同様に日食を観ようといくつかの家族連れが日食グラスをのぞきこんでいて、私も日食グラスを回してもらってしっかりと見せてもらった。
冒頭の写真は、私が届けたデジカメを日食グラスに押し当てて、娘が撮影した写真の中で輪になってボケも少ない一枚。まぁ、輪っかになっているからいいでしょう(笑)

輪になった時には、さらに隣地の小学校の校庭の方から歓声が上がった。その小学校では始業前に観察会をもったらしい。
出勤したらやはりその話題で盛り上がったが、同僚の地域の小学校は登校時間を遅らせたという。学校に観察会を指導できる教員がいるところとそうでないところで対応が違ったのではないかと推測。

さて、先週の木曜日に渋谷に出かけた際に電機店に立ち寄り、職場用に新しい扇風機を買い、宅配便で配達日指定しておいたものが予定通りに月曜の午後指定で届いた。
従来あった1台は、人事異動した同僚が安物を買ってしまい、弱風でもブーンと大きな音がした。今年から同じ執務スペースに多い日は5人が揃うことになり机も増え、狭い空間で使うことになった。初夏になってその安物を動かしてみたら、その凶暴な音でイライラしてしまい、もう限界!

うるさい方は別のスペースに持っていき、自分たちの執務スペース用にとにかく送風音の静かなものを買うことにし、上司のOKをとりつけた。
事務用品を買うカタログにも事務所用の家電のページはあるが、震災以来、扇風機やサーキュレーターのページの品揃えは名前を聞いたことのないようなメーカーのものばかりになっている。
そこで直接店で見て買うことにしていた。上のフロアが震災以降のエコオフィス用に昨年の夏に3台買った機種の後継機が広告の品で並んでいたのでそれにした。そして、従来の安物と違ってハイポジションタイプ=従来のものよりも15㎝背が高く、上方に35度まで向けられるのがよい。これで室内の空気を循環させて、室温のムラをなくすことができると思う。
充電機能がついたハイポジション機種はかなり高価だし、夏場に職場に籠城する事態が起きたら起きたで非常時であり、各自が団扇で対応してもらうことにしようと割り切った。

頑張ってひとりで組み立てててスイッチオン。心地良い弱風がリズム運転で吹いてきたらちょっと嬉しい気分になった。
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12/05/19 演舞場昼の部観劇前後の歌舞伎座建築工事現場


ここ数日で3・4・5月の歌舞伎公演の感想を続けて書いた。5月の演舞場の花形歌舞伎も書くつもりでいる。その前に昨日演舞場昼の部を観劇前後に通りかかった歌舞伎座建築工事現場を撮影した写真をアップしておく。冒頭は観劇前に建築工事現場を正面から道路の反対側から撮影したもの。16日に夜の部観劇前の撮影は西日がガラス面に光ってうまく撮影できなかったが、晴天の午前中だと実に綺麗に撮れる。

歌舞伎座解体・建築工事現場定点チェックの写真掲載の記事は以下の通り。比べてみると工事の進行がわかって面白い。
2012年4/223/262/191/21
2011年11/139/251/10
2010年10/167/265/224/28さよなら公演千穐楽

下の写真は観劇後、文明堂の喫茶室があるビルのところを入って木挽堂書店に立ち寄る時に気がついて撮影。新しい歌舞伎座の劇場部分の側面の白い壁が出来上がり、チタン製の瓦が載って軒瓦が並んでいるし、窓枠が赤く塗られているのもわかる。ガラスが入ったところには貼り紙があるのが工事中らしくてよい。

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12/05/12 平成中村座ファイナル五月昼の部の感想


昨年11月から東京スカイツリー開業の5月までの平成中村座ロングラン公演もついにファイナル公演となった。今月は「十種香」での中村屋兄弟の共演を一番の楽しみに昼の部を観劇。
【本朝廿四孝 十種香】
浅草駅から急いで歩いたが、少々遅刻。冒頭の扇雀の勝頼の台詞の最中に着席。
勘九郎の腰元濡衣の登場から風情がよく、期待が高まる。七之助の八重垣姫も登場から赤姫姿が綺麗で展開を楽しみに観ていく。
ところが、義太夫の糸にのってはっきりとした身の動きはいいのだが、どうもわざとらしさが鼻につきだす。死んだと思った許嫁の勝頼が目の前にいて、腰元濡衣に仲立ちを頼むというあたりにも、なんだか八重垣姫らしい格の高さを伴っての大胆さという感じがない。どうにも安っぽい八重垣姫だ。
勘九郎の腰元濡衣もオーバーアクション気味。仲立ちのために諏訪法性の兜を姫に所望するという辺りから抑制を効かせて女間者ぶりを垣間見せるというよりも、女スパイとでもいうような露骨な目の芝居にびっくりさせられた。
先月の「小笠原騒動」では、二人を誉めた私だが、この「十種香」にはがっかりだった。日によって仕上がりにバラツキがあるのか?格調高い丸本物のお役を安定的につとめるのは、まだまだ無理なのだろうか?

彌十郎の謙信が重厚感があってよく、白須賀六郎(橘太郎)と原小文治(亀蔵)が続けざまに勝頼の刺客に放たれる場面でようやく安心して観ていられる丸本物の舞台となった。特に橘太郎の白須賀六郎が動きが実によく小柄ながら立派で感心した。

【三社祭七百年記念 四変化 弥生の花浅草祭】
染五郎と勘九郎の変化舞踊。「神功皇后・武内宿禰」「三社祭」「通人・野暮大尽」「石橋」の四段に替わる。
武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精=染五郎
神功皇后/善玉/通人/獅子の精=勘九郎
三社祭七百年記念ということだから、「三社祭」がメインでそれを膨らませたもの。客演の染五郎のコミカルさが武内宿禰や野暮大尽(=国侍?)で楽しめようになっているのはよい。ただ、神宮皇后の赤ん坊を武内宿禰が装置の変なところにチョイ置きするのはいただけない。
「三社祭」の善玉悪玉を二人が若々しく達者に踊っている。三津五郎と勘三郎のコンビのような深い味わいまでは感じられないのは仕方がないだろうと思うが、染五郎の踊りがもう少し一本調子でなく柔らか味も出るとよいと感じられる。
「石橋」で早替りのためだろうが、馬連つきの四天のような衣装に隈取をして紅白のカシラをつけて登場したのには驚いた。あまりセンスはよくないように思う。それと高麗屋三代の連獅子の時も感じたが、染五郎の毛の振り方は少しクセがありすぎなのではないだろうか?同世代の勘九郎が普通に振っているので気になってしまった。

【神明恵和合取組(かみのめぐみわごうとりくみ) め組の喧嘩】
「め組の喧嘩」は菊五郎劇団で2回観ている(2007年の團菊祭の公演の感想はこちら)。
六代目の外孫の勘三郎の辰五郎を初めて観る。今回の主な配役は以下の通り。
め組辰五郎=勘三郎 女房お仲=扇雀
四ツ車大八=橋之助 九竜山浪右衛門=亀蔵
焚出し喜三郎=梅玉 女房おいの=歌女之丞
尾花屋女房おくら=萬次郎 江戸座喜太郎=彦三郎
柴井町藤松=勘九郎 島崎抱おさき=新悟
露月町亀右衛門=錦之助 宇田川町長次郎=男女蔵               
おもちゃの文次=萬太郎 ととまじりの栄次=虎之介

貴乃花親方が橋之助のパパ友ということで応援し、初めて歌舞伎を観たということが話題になっていた。その橋之助の四ツ車がいかにも立派。亀蔵の九竜山ともども相撲取りの若々しい勢いがあってよい。
勘三郎の辰五郎はいなせでよい。ただ声がかすれて少々聞き取りにくいが、小さい小屋なので大丈夫。鳶の中では勘九郎の藤松と錦之助の亀右衛門の台詞が若々しく響いて気持ちがよい。
扇雀の子息の虎之介まで若手が勢揃いし、その勢いで鳶と相撲の喧嘩場を賑やかに見せるのが「め組の喧嘩」の最大の見せ場。平成中村座の大きさでのこの喧嘩場は、ファイナル公演にふさわしいと思えた。

それにしても喧嘩の仲裁で梅玉の焚出し喜三郎がハシゴにのって両者の間に割って入るように飛び降りる場面で、客席に驚きのどよめきが上がったのに私の方が驚いた。平成中村座は明らかに観客層が違い、ふだん歌舞伎をあまり観ない人たちが観に来ているのがよくわかった。これが歌舞伎界の観客層を広げることにつながるとよいのだが、他の座組みの公演は観ないというお客さんたちではいかにも残念だ。

さて、スカイツリー開業の5月までの長丁場となったが、それは少々無理があったようだ。
この日はよく晴れて、ぐんぐんと気温が上がり、昼の部開演後の2階席はむっとする感じが増してきた。正面最後列の梅席で観ながら、はおっていたものをどんどん脱いで半袖シャツ一枚となっていたら、右列でドタっと大きな音がした。しばらくするとスタッフさんに左右を抱えられて具合が悪そうな女性客が出て行き、連れの方が荷物を持って続いた。最初の幕間で外に出たら救急隊が到着したところだった。

異常気象で猛暑が例年続く近年であり、初夏とはいえ、この空調のレベルの仮設小屋での公演はやはり無理がある。
途中から2階席脇の通路に扇風機をもってきて風を送るようになって少しましになったが、幕切れまで舞台の熱気ともども、顔がほてって我慢の観劇となった。

今月一番の楽しみにしていた「十種香」で肩すかしをくい、この暑さとの我慢比べの中、苦手な舞踊でも意地でも居眠りせまいぞとこの日もブラックガムを噛みながら修行モードでの観劇。「め組の喧嘩」で打ち出され、これで隅田公演通いも終ったと思ったら心底ホッとした。この日は1万円では割にあわなかったというのが正直な感想。

観劇後、この場所まで来ることはしばらくないということで平成中村座の真向いにある「待乳山聖天」や行きたいと思っていたレトロな喫茶店などを巡ることにし、いざ出発!
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12/04/15 「小笠原騒動」初見となった平成中村座第2部の感想


平成中村座も1月をのぞいては毎月足を運んでいる。また、さすがにチケット代が高いために二部とも観るのは厳しい。四月は珍しい演目の「小笠原騒動」の第2部を観た。
4/15の観劇前の浅草寺「大絵馬・寺宝展と庭園拝観」などについての記事はこちら
【通し狂言 小笠原騒動】本外題:小笠原諸礼忠孝(おがさわらしょれいのおくのて)
序幕 明神ヶ嶽芒原の場より 大詰 小笠原城内奥庭の場まで
元々は猿之助の復活通し狂言十八番であり、猿之助四十八撰になっている。それを1999年に橋之助ら若手が京都南座にてさらにブラッシュアップした舞台にしたらしい。
以下、あらすじを「歌舞伎美人」の京都南座2009年五月花形歌舞伎より引用、加筆。
<あらすじ>今回の主な配役に差し替える。
ここは九州・豊前国。小笠原家では、お家乗っ取りを企む執権・犬神兵部(勘九郎)とお大の方(七之助)一味の陰謀が着々と進んでいた。
そんな中、狩りに出た藩主の小笠原豊前守(彌十郎)が白狐を射ようとするのを家臣の小笠原隼人(扇雀)は押し止め、また藩政の乱れを意見するが、兵部やお大の方の言いなりとなっている豊前守の逆鱗に触れ閉門を言い渡される。兵部は、大望の妨げになると隼人に刺客を差し向ける。絶体絶命に陥った隼人の前に、最前助けた白狐の化身である奴菊平(扇雀)が現れ隼人を救い出す。
隼人から分家小笠原遠江守(勘三郎)への密書を託された召使のお早(七之助)は、その道中で兵部に加担する足軽の岡田良助(橋之助)に殺され密書を奪われる。
妻のお早を殺された飛脚の小平次(勘九郎)は、すぐさま敵が良助と知る。一方の良助は、お早の怨霊にとりつかれた末に自らの愚かさを悟り、真人間に改心するが、女房のおかの(扇雀)をはじめ、家族を一度に失ってしまう。
それを知らない小平次は、水車小屋で激闘の末、良助を討つのだが、断末魔の良助から遠江守へ届ける兵部一味の連判状と訴状を託される。程なく通りかかる遠江守の行列に小平次は直訴をするのだが、その瞬間、一発の銃声が辺り一面に響いたのだった......。

二役、三役を替わるという役者が何人もいるが、座組みによってどの役を兼ねるかが変わるのも歌舞伎の面白いところだ(2009年京都南座公演との比較でもよくわかる)。
「歌舞伎美人」の平成中村座 四月大歌舞伎
ストーリー的には、お家騒動の中で狐の恩返しあり、亡霊あり、悪人の「もどり」あり、本水の立ち回りありでエンターテインメント性が高い。さすがに猿之助が復活上演の演目に選んだだけのことはある。
今回の公演では、勘九郎・七之助兄弟が善悪の二役で夫婦役になっているのが楽しめた。
七之助のお大の方は藩主の妾でありながら愛人の執権兵部の子を宿してともにお家乗っ取りを企み、その妨げになる養父佐兵衛(勘之丞)を冒頭に殺害する。綺麗な顔に冷酷な微笑みを浮かべながら、赤い紐でくびり殺す場面が絵になっていた。反対に善人役の小平次女房お早では早々に密書を奪われて殺されるが、ちゃんと亡霊になって祟ることでお主への忠義を果たす。このような役では七之助の硬質な美しさが活きるなぁと感心。
勘九郎の小平次が主の敵を本水の立ち回りの中で討つ場面は、「怪談乳房榎」を彷彿としたが、悪役の犬神兵部を兼ね、不気味な味をしっかり出しているのもよかった。これから実悪のお役をいろいろとやってくれるだろうと楽しみになる。

橋之助は兵部を勘九郎に譲って、岡田良助と林帯刀の二役だったが、岡田良助という小悪党が実に魅力的だった。兵部に唆され、家族に少しでもよい目をみせたいということから悪事に手を染めたのだが、結局はその家族に不幸を招いたことで悔い改める。その「もどり」の述懐に情がこもっていてよく、いつかこの人で「いがみの権太」が観てみたいと思った。
良助が姿を隠している間の面倒はみるとの兵部の約束は違えられ、押しかけた借金取りたちは幼い娘にほだされる。娘の子役が実にほろりとさせるし、借金とりの米屋市兵衛に笹野高史を起用したのも憎い。
父の悪事を諌めるために、娘がまず自害。女房おかのと母お浦(歌女之丞)が胸を刺して死をもって諌めるがこれは陰腹ならずして、陰胸とでもいうのだろうか。
水車小屋での立ち回りでは水車の取っ手に役者がつかまってぐるぐると回る演出を南座から加えたらしく、よい見せ場となっていた。
  
三役(隼人・菊平・おかの)を替わった扇雀もよかった。白狐の化身の菊平や白い狐の衣装も似合った。平成中村座では「葛の葉子別れ」もやったっけ。
小平次が取り戻した密書で直訴して、捌き役の遠江守で勘三郎が最後に出てきて大団円。平成中村座の座頭としての存在を示しての幕切れ。
この「小笠原騒動」の舞台であれば、梅席に1万円出してもリーズナブル!大満足だった。
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12/04/08 悪役・悪婆の魅力たっぷり「通し狂言 絵本合邦衢」


4月の観劇では「通し狂言 絵本合邦衢(えほんがっぽうがつじ)」についても書いておきたい。昨年3月の公演も観たが、リピートしようとチケットをとったら東日本大震災で公演中止になってしまった。国立劇場開場四十五周年記念の歌舞伎公演の掉尾を飾る公演として再演は嬉しい限り(特設サイトはこちら)。
4/8(日)に観劇し、さくらまつりの最終日だったので観桜の記事のみアップ済み。
筋書も昨年分を持参して今回の見本と比較したところ、一部は重なっていたが工夫して読み応えのあるものとなっていることを確認してしっかり購入!こうしてコレクションが増えるのが嬉しい悩みでもある(^^ゞ

大阪天王寺の合邦辻閻魔堂で実際に起こった敵打ちを踏まえた狂言。四世鶴屋南北が読本『絵本合邦辻』を原作として、左枝大学之助と立場の太平次という極悪人を主人公に据え、悪事の限りを尽くさせる筋立てとなっている。座頭役者がその二役を演じるのが眼目のようだ。仁左衛門は、孝夫時代に玉三郎とのコンビで新橋演舞場でも公演しており、20年ぶりの再演、今回の舞台はさらにブラッシュアップされていた。
大阪松竹座での「霊験亀山鉾」や「盟三五大切」など、このところ悪役に力を入れて取り組んでいる仁左衛門だが、遠征をしない私は「絵本合邦衢」の悪役二役で仁左衛門の悪の魅力を存分に堪能した。
Wikipediaの「絵本合法衢」にある話のあらすじよりもすっきりと刈り込まれていてスピード感があり、もたつなかい展開。 文化デジタルライブラリーの「絵本合法衢」の項のあらすじは国立劇場での初演(幸四郎の悪の二役)の時のものだが、そこでの場面とも少々違っていた。ずいぶんと工夫しての通し上演になっていることがわかる。戯曲を練り上げる努力の積み重ねの大事さを痛感。

今回の主な配役は以下の通り。
左枝大学之助、立場の太平次=仁左衛門
高橋瀬左衛門、高橋弥十郎=左團次
太平次女房お道=秀太郎
うんざりお松、弥十郎妻皐月=時蔵
田代屋後家おりよ=秀調 田代屋娘お亀=孝太郎
田代屋与兵衛=愛之助 佐五右衛門=市蔵
お米=梅枝 孫七=高麗蔵
松浦玄蕃=男女蔵
昨年は段四郎がつとめた高橋瀬左衛門を、今回は左團次が弟弥十郎と二役替わった(国立の初演時は同じ二役とのこと)が、兄の敵を弟が討つということで二役替わる方が効果的だと思う(眉のメイクを変えるバンドで早替りで雰囲気が変わっているのもよかった)。当初は段四郎出演予定だったのを降板しているのでちょっと心配。
それと太平次女房お道を昨年は吉弥がつとめていてよかったが、秀太郎に代わっていて、夫に殺される哀れな感じが増していた。

仁左衛門は大学之助と太平次の二役を音遣いを変えた声で自在な台詞回し。五十日鬘に黒羽織袴姿の大学之助は、分家ながら御家乗っ取りをねらう大悪党で、愛鷹を殺してしまった百姓の子どもを斬り捨てる場面でその残虐性が浮かび上がる。
太平次の方はごろつきで、愛嬌ある軽みと凄みをきかせる小悪党ぶりがいい。安達元右衛門風の見得もあって、「敵討天下茶屋聚」を彷彿とし、歌舞伎は型をうまく使うものだ。それにしても時代がかった大悪党も生世話っぽい小悪党もいずれも魅力たっぷりに演じられるのは、当代では仁左衛門だよなぁと感心至極。

うんざりお松は悪婆の原点的なお役らしいが、時蔵のお松が実によい。あだっぽさはあまり感じないが、蛇の皮を剥き毒を絞る場面、田代屋での強請場、太平次に甘えかかる場面がよく、そのいじらしい女が愛する男に殺されてしまうという哀れさがいいのだ。
斬られて井戸に突き落とされ、ここで早替わりになって弥十郎妻皐月ですぐに登場するので観ている方は少しほっとできるのも嬉しい。
子息の梅枝が綺麗で儚げで、夫の孫七ともども返り討ちにあって殺されるお米にはまっている。おりよも巻き込まれて毒殺されるし、与兵衛とお亀夫婦も死ぬ。敵討ちの機会をねらって大学之助の妾奉公に出たお亀は返り討ちされて幽霊になって夫与兵衛に会いに来る。二世の誓いの言葉を聞かなければ成仏できないといういじらしい孝太郎のお亀。愛之助の与兵衛は、半殺しにされて自害に追い込まれてやっと生き別れだった兄弥十郎と名乗りあうことができるという哀れさが際立っていた。百姓佐五右衛門は冒頭に息子を、娘のお亀・お米も殺されている。とにかく何人殺されるのかという、まさに南北の芝居だ。

原作では太平次は最後に敵として討たれるらしいが、今回は主人の大学之助に殺されたとしてその死の場面は省かれる。その分、大学之助が弥十郎夫婦によって討たれる場面が丁寧に描かれる。仁木弾正が最後に討たれる時のような下に黒い網を着込んだ白装束で最後も返り討ちをねらうが、弥十郎たちの計略で油断させられて討たれての大団円。

悪の華咲く二役の仁左衛門と悪婆の魅力をあらためてみせてくれた時蔵。二役での大活躍は仁左衛門、時蔵、左團次というのも特筆しておこう。

我が家に飾られている『演劇界』2月号の付録の役者の舞台写真カレンダーの5月は仁左衛門の大学之助だったし、『演劇界』6月号の表紙は時蔵のうんざりお松。やっぱりちゃんと書いておくようにと背中をおされたようだ。
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