ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/06/19 こまつ座「父と暮せば」の奥の深さ(追記あり)

2008-06-30 23:48:55 | 観劇

井上ひさしの「父と暮せば」は、原爆投下後の広島を舞台にした二人芝居だが、観劇は今回が初めて。2004年に黒木和雄監督が映画化したものを岩波ホールで鑑賞している。
古本屋でGETして積んでおいた新潮文庫版の戯曲を読んで今回の観劇の予習。映画の場面も思い出せて楽しかったし、作者自身の前口上とあとがき、今村忠純氏の解説で劇の構造についても把握してから観ることができた。いきなり白紙状態で観るよりもこういう状態で観劇したいのだが、ほとんどできないのが現状。

あらすじは、こまつ座の公式サイトから下記を引用。
「原爆投下から三年後の広島。市立図書館で働きながらひとり静かに暮らす美津江の胸の中には、ほのかな恋心が芽生え始めていた。そんな美津江の目の前に、まったく突然に父竹造があらわれる。自分の恋心を必死で抑えつけようとする美津江に、竹造は全身全霊、懸命なエールを送るのだが……。」
新宿の紀伊國屋サザンシアターの最前列で鑑賞。今回の配役は美津江を栗田桃子、竹造を辻萬長。今回公演からポスターやチラシも辻萬長に似せたイラストになっている(各国翻訳版の表紙と同じもの)。

井上ひさしの戯曲は方言を駆使したものが多いが、広島弁をしっかり身に付けたふたりが熱演。笑わされながらぐいぐいと引き込まれてしまう。ふたりが住んでいた旅館の跡地に建てたバラック小屋に毛の生えたような美津江の家での4日間の父娘の会話劇を休憩なしの80分でぎゅっとみせる。
美津江は、原爆で身近な人たちが大勢死んでしまったのに生き残ってしまった後ろめたさに支配されて3年を生きてきた。自分自身に幸福になることを禁じてしまっている美津江が木下青年に出会ってお互いにひとめ惚れ。積極的に近づいてくる木下に自分も近づきたい思いと遠ざけなければと思う気持ちの間で揺れる美津江。その「恋の応援団長」として父親が姿をあらわした。
娘の幸福を願う父親の言葉に反発しながら後ろめたい気持ちを吐き出していく。それに反論し励ましの言葉を投げかけ続ける父竹造。
一歩を踏み出した彼女は木下青年が集めた原爆資料を自宅で預かることにしたのだが、顔のただれた地蔵の頭を見て封印してしまっていた記憶を甦らせる。記憶の封印の経験を最近したことがあるだけにその思いはリアルに伝わってきた。
爆風でつぶれた家の下敷きになった父親を救い出せず、父の言葉に従って逃げてしまった自分を思い出す。父は娘に自分の最後の言葉を思い出させる。
「わしの分まで生きてちょんだいよォー」
原爆でむごい死を迎えた大勢の人たちの思いを背負って伝えていって欲しいという父のメッセージをしっかりと受けとめた美津江は再生した。前向きに生きていく姿勢を取り戻した。この救われる幕切れによって観ている私たちも勇気づけられる。
観客を笑わせ、強く揺さぶり、最後には勇気づけられる。井上作品の素晴らしさがここにある。
また本のあとがきにあったことで印象に強く残ったことを紹介させていただく。
「戯曲にするには、ここで劇場の機知に登場してもらわなくてはなりません。(中略)美津江を『いましめる娘』と『願う娘』にまず分ける。そして対立するドラマをつくる。しかし一人の女優さんが演じ分けるのはたいへんですから、亡くなった者たちの代表として、彼女の父親に『願う娘』を演じてもらおうと思いつきました。べつに言えば、『娘のしあわせを願う父』は、美津江のこころの中の幻なのです。」
竹造は単に幽霊として描かれているのではなかった。このあたりも井上作品の大きな魅力なのだ。奥が深い。

そして本日6/30の夜、職場の観劇企画でこの作品を観たメンバーとの感想交流会に参加してきた。渋谷のいつもの店「かいどう」でビールや料理を食べながら賑やかに交流。次回公演「闇に咲く花」も観ようと盛り上がっていた。楽しい時間をもてたことに感謝(^O^)/

ウィキペディアの「父と暮せば」の項はこちら
写真はこまつ座の公式サイトより今回公演のチラシ画像。
7/2追記
井上ひさし作品の観劇のまとめ記事をこちらにリンクしておこう。「円生と志ん生」、「人間合格」も追加!

08/06/28 急遽、母に携帯電話を買う

2008-06-29 23:59:08 | 医療・介護・福祉など

27日は歌舞伎座千穐楽から帰ってから、子ども会の資源回収に新聞包みなどをまとめたりして夜更かし。マンションの配管清掃が朝一番なのでゆっくり寝てもいられず。娘のひったくり後の再発行のカードの不在配達の再配達等々、忙しい午前中。
食パンの在庫もないのでホットケーキを焼いてブランチ時間に食べて、ようやく実家に電話を入れる。香典返しの請求書をチェックして欲しいという母親のリクエストに応えて、これから行くからねと連絡しようとしても電話に出ず。
妹2から電話が入り、これから実家に行こうと思うけれどいないし、公民館の唱歌のサークルかなぁと話しつつ、夕食を食べに一緒に行こうと相談がまとまった。


私は電車で妹2は車で向かい、実家の近くで合流。実家に入り、母の寝室に行ってびっくり!寝込んでいた!!

午前中に整形外科に行って電気治療などいつものコースを受けている間に気持ちが悪くなり、脳神経外科に回り、血圧も下がっていて静脈注射をしてもらい、ファミレスに寄ってランチを注文したがちょっとしか食べられずに帰宅。もらった薬を飲んで寝ていて、あまりにつらいのでSOSの電話を30分前くらいに妹2の家にしたところだったという。マルチーズのユキと一緒に留守番していたツレアイ君が驚いて「お姉さんと一緒にそちらに行くと言って家を出ていますよ」と言ってくれていて、じっと待っていたのだ。

この間、私が携帯電話を買ってあげるよと言っていたのを断り続けていた母だったが、今回は自分から買って枕元におけるようにして欲しいと言ってきた。
布団の上げ下ろしが大変になったので父の寝室だった部屋にベッドで寝るようになっていたが、その部屋だと居間の電話機が鳴っても聞こえにくいし、寝込むと電話をとりに行けない。電話は玄関のインターホンと連動しているタイプ。古くなって不調なので新しくしようという話が出ていたところだったが、もう待ったなしだ。

以前から見つけておいたソフトバンクショップに出かけ、母本人がこれないので私の名義でもう一台買うことにした。高齢者でも使いやすい機種は2種類しかなく、ワンタッチ機能がある方にする。そうなるとけっこう高いけれど仕方がない。
すいていたけれど、なんだかんだと一時間はかかる。その間に母から私の携帯に「早く帰って来て」と電話が入る。
帰って簡単に説明して買った携帯を見てもらっている間に、冷蔵庫にあるもので食事をつくる。一緒に食べると少しずつだが食欲も出てきてけっこう食べてくれた。
薬も飲んで安心して横になっていたので回復してきたのだろう。看護婦だった妹がこれは駄目そうと判断したら彼女の家に連れていこうと話し合っていたが、本人も大丈夫という状態になったので、娘2人はそれぞれ帰宅した。

帰る前に3つのワンタッチボタンに娘3人の番号を登録し、電話をとったりかけたりする練習。名古屋の妹1に電話をかけてびっくりさせた。詳しい事情はまた後でということにして、ソフトバンクどうしの私とはメールを簡単にやりとりできることも教えてきた。
早速、私が自宅に到着したことを知らせるメールを送ると、おりかえし母から携帯で電話をかけてきた。ちゃんとメールを読んで電話をかけることもできたねと褒める。

こうして母のひとり暮らしも少しずつ大変になっていく。母も自分で独居老人向けの民生委員さんがやっている会食にも申し込み、一回目に行ってきて、そこで高齢者支援センターの所長さんに風呂場に手すりをつけたいと相談したら、介護認定を受けてみてと言われたとのこどだった。自分からそういうサービスを受ける気持ちになってくれたのは大事だ。
妹2が妹1がきた時に車でセンターに連れていこうという相談をしていたところなのでちょうどいい。
来月19日には父の百日祭で娘とそのツレアイも集まる。父の関係が収束しつつあるが、今後は母の老いの看とりに移行していくのだ。人生はずっと試行錯誤ということか。

写真は娘が父親の親戚から送られた日本の桜桃をもらってきたもの。ギフトの桜桃はスーパーで買うものよりも格段に美味しい。我が家では食費の予算の関係上、アメリカ産ダークチェリーしか買わないので、こういうご馳走は嬉しい(^^ゞ
29日の日曜日は新橋演舞場で新派120周年公演の昼夜を通して観劇。昼の部はけろちゃんさん、夜の部は真あささんとお会いしておしゃべりできたことに感謝。

08/06/27 「皿うどん、紅生姜抜き!」

2008-06-27 23:58:37 | つれづれなるままに

私の職場の近くに「スクワール麹町」がある(公式サイトはこちら)。

とにかく近いので遠出をしたくない時のランチ場所としては有難かった。上の方のレストランにも行くが、一階のコーヒーハウス「フローラル」の「皿うどん」が気に入って月に4~5回は食べていた。外食で野菜をたっぷりとれるメニューは貴重で、少し歩いたところにあるラーメン屋さんのタンメンとこちらの皿うどんは毎週1回は食べていたのだ。
私の定番の「皿うどん」の食べ方。紅生姜抜きで辛子が全部使い、お酢をたっぷりかけ、揚げた焼きそば部分を野菜のあんかけ部分とよくからませて食べる。お酢は小さな卓上瓶をほとんどかけてしまうので、私が注文するとたっぷり入ったお酢の瓶も一緒に出してくれた。「皿うどん、紅生姜抜き!」も定番になってしまった(^^ゞ
広くはない喫茶室なので煙草は分煙になっていないので、遅番のお昼で行くようにしていた。煙草が嫌いなのも覚えてもらってしまった。そのうちに厨房に近い1卓だけ禁煙コーナーになって、パソコンで描いた禁煙表示の立て札も立つようになって、あいていればそこに座った。
写真は「皿うどん」と禁煙札を携帯で撮影。食後にデミタスコーヒーがつく。これで800円。人事異動してきた頃は700円だったっけ。

ところがスクワール麹町が外壁や各種設備等の改修工事のため3ヶ月も全館休館するということを昨日聞いてびっくり。

3ヵ月後はもう食べられないかもしれないので、今日も皿うどんを食べに2日連続で行ったのだ。それで撮影とかもしている次第。
最後にお世話になったスタッフの方に御礼のご挨拶。
本当に長い間、お世話になって有難うございますm(_ _)m
皆さん、お元気でいてくださいね(^O^)/

08/06/15 歌舞伎座昼の部「新薄雪物語」「俄獅子」

2008-06-26 23:59:59 | 観劇

明日は六月歌舞伎座千穐楽で夜の部を観るので、昼の部をざっくりと書いておこう。
【新薄雪物語(しんうすゆきものがたり)】三幕四場
寛保元年(1741年)、仮名草紙「薄雪物語」を踏まえて文耕堂・三好松洛らが合作した時代浄瑠璃で、すぐに歌舞伎版も上演。だから「新」をつけているらしい。
上演頻度の少ない演目だが、先月の「青砥稿花紅彩画」の初瀬寺花見の場はこちらの場面を踏まえてつくられているというし、興味深深の観劇。

今回の主な配役は以下の通り。
園部左衛門=錦之助 奴妻平=染五郎
園部兵衛=幸四郎 梅の方=芝翫 
薄雪姫=芝雀 腰元籬(まがき)=福助
幸崎伊賀守=吉右衛門 松ヶ枝=魁春
葛城民部・秋月大膳=富十郎 秋月大学=彦三郎          
団九郎=段四郎 来国行=家橘                       奴袖平=友右衛門 刎川兵蔵=歌昇
超あらすじ!。   
「新清水花見」の場。将軍家の跡継ぎ誕生を祝うための奉納刀の刀鍛冶の推挙争いの末、園部兵衛方の来国行が推挙され影の刀を子息・左衛門が新清水寺に奉納にきた。そこで許婚どうしであった幸崎家の息女・薄雪姫と左衛門は、先に深い仲になっている腰元籬と奴妻平との手引きにより恋仲となる。薄雪姫が書いた「後日忍んできて欲しい」という意味の艶書を左衛門に渡すが取り落としたのを気づかずに別れる。
敗れた秋月大膳方の団九郎がその刀に調伏のやすり目を入れているところを見咎めた来国行を小柄で殺害したのは秋月大膳その人。落ちていた艶書を拾って悪用を思いつく。
「幸崎邸詮議」の場。約束通りに姫のもとに左衛門が忍んでくる。姫の母である松ヶ枝にみつかるが、ふたりを約束通り夫婦にするので今日のところは帰れとさとす。そこに幸崎伊賀守が上使の葛城民部と秋月大膳の弟大学、園部兵衛ともどもあらわれる。両家が将軍家に謀反の疑いがある詮議だという。大学は艶書がその証拠とこじつける。来国行の遺骸が運ばれてきてその傷から民部は真犯人を悟る。伊賀守と兵衛は子どもを交換して預けたいと申し出、民部はそれを受け入れる。
大膳の家臣の渋川藤馬が恋慕する籬が妻平のものになった意趣返しを謀り、奴たちと共に妻平を襲う派手な立ち回りで幕。
「園部邸広間・同合腹」
薄雪姫を預かった園部家では奥方である梅の方が嫁として扱って世話をしている。
兵衛が現れて薄雪姫が捕らえられて責め殺されるおそれありと姫を説得。奴袖平らをつけて館から落とす。そこへ幸崎からの使いである刎川兵蔵がやって来て、兵衛が悪事を白状した左衛門の首を打ち、薄雪姫の首を打つようにと太刀を届けて言上。梅の方は嘆くが、その太刀をみて兵衛ははっとして奥に入ってしまう。
幸崎伊賀守も首桶を手にして現れるが様子がおかしい。兵衛も奥から首桶を携えて登場。ふたつの首桶の中にはふたつの願書。子どもの命を助けるために蔭腹を切った二人。以心伝心に快心の笑いをせよと梅の方にもいっての「三人笑い」。揃って出仕するところで三人で極まって幕。

「妹背山婦女庭訓」では子どもを二人の親が殺して添わせるが、こちらはふたりを生かして添わせるために親が命を投げ出すのだ。なんという重たい話だろう。時代狂言の重厚さがどど~んと迫ってくる。
幕開けは満開の桜の明るい色っぽい場面からで、最後はこうくる。登場人物は最後は松ヶ枝もかけつけて親が4人。「三人笑い」と言っても梅の方は泣くのをこらえて笑ってみせている。合腹のふたりも運命を笑うようなつくった大笑いだ。これは役者が揃わないと上演できない作品だ。なかなか上演されないのも納得した。

国崩しの大悪人大膳と正義の味方の捌役の民部という二役をやれる富十郎の大きさ。梅の方の複雑な表情がハマる芝翫。吉右衛門の伊賀守の蔭腹をこらえてやってくる動きの見事さ。幸四郎の兵衛の蔭腹後の声は少々気が抜ける。吉右衛門の低音とはかぶらない高音の音遣いかもとか、良い方に解釈。確かに幸四郎は吉右衛門と共演する時は気合の入り方が違うように見える。さすがに兄弟で声が高低で響くとなかなかよかったと思う。

しかし、今回のお気に入りは錦之助・芝雀コンビだ。「新清水花見の場」で相思相愛になるところの上品なふわふわ感が堪らなく可愛い。福助・染五郎のカップルも悪くはないのだが(^^ゞ

染五郎の序幕最後の立ち回りはよかった。水奴は「阿古屋」でも出てきたがそちらの水奴(竹田奴)は人形浄瑠璃のツメ人形を模した感じでコミカルだった。こちらの水奴は本格的に敵キャラ(笑)染五郎のキビキビした動きは見ていて楽しかったからよし!

【俄獅子(にわかじし)】(長唄舞踊)
江戸の新吉原で芸者(福助)と鳶頭(染五郎)の踊り。「相生獅子」の詞章を使っているらしいがいずれも未見だったし、相変わらずよく聞き取れず(^^ゞ。「吉原俄」は仮装して廓を練り歩く賑やかな年中行事とのこと。福助の芸者姿の踊りは仇っぽくてよい。それぞれが紅白の二枚の扇で獅子頭を模しているところに感心。最後は立ち回りになって幕。昼の部で趣向が違う2回の立ち回りがあったわけだ。
「新薄雪物語」が暗く終るので、明るく打ち出してもらって正解。

写真は公式サイトより今回の公演のチラシ画像。
6/27千穐楽夜の部①「身替座禅」
6/27千穐楽夜の部②「すし屋」
6/27千穐楽夜の部③「生きている小平次」「三人形」

08/06/21 シネマ歌舞伎「ふるあめりかに袖はぬらさじ」を堪能

2008-06-24 23:59:23 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)

昨年12月の歌舞伎座の「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は千穐楽に観劇(その時の感想はこちら)。
こんなに早くシネマ歌舞伎にしてくれるとは思わなかった。先に撮影した中村屋の10月新橋演舞場公演のシネマ歌舞伎化よりも先になってしまっている。12月の歌舞伎座の舞台の完成度が高く、素直にきちんと撮影すればちゃんとシネマ歌舞伎にすることができたのではないかと推測。通常の撮影よりはカメラの台数を増やしているというあたりが今回のこだわりだろうか。
それに中村屋の方は、山田洋次監督が初めて撮影したということで念入りに編集して仕上げるのだろうとこちらも勝手に推測。

三幕冒頭の場面をうまく処理して使って、贅沢な配役を紹介するオープニングからして美しい。そうくるか!という感じ。
10倍の双眼鏡を使って3階席から頑張って観劇したが、やはりシネマ歌舞伎は贅沢にアップが楽しめるのが嬉しい。主人公のお園のオバサン顔が大写しになっても、役の年齢が薹のたった大年増なんだし、全く問題ないと思う。最近の玉三郎のオバサン役の表情のオーバーぶりの魅力にとりつかれているからかもしれないが(笑)あのニヤニヤ笑いもいいし、驚いた時に大きく見開いた目も好ましい。ここまでくれば立派な玉さまフリークじゃないかと自覚する。

七之助の遊女亀遊は、まさに腺病質の薄幸の美女で横を向いたときに多少喉仏がわかっても一向に気にならない。獅童の藤吉との濡れ場も哀れに美しい。このふたりの場面がせつないので、以降の展開も引き込まれていく。
同様に映像で観た新派に玉三郎が客演しての舞台よりも、オール歌舞伎俳優で上演された今回の舞台ははるかにバランスもとれているし、コメディシーンのはじけっぷりも含めて完成度が高い。勘三郎の岩亀楼主人と玉三郎お園との息もぴったりで映画にしても隙を全く感じない。彌十郎のイルウスも大写しになってもアメリカ人役に全く無理を感じないのは、さすがというべきか(笑)
唐人口女郎や浪人という端役にまで豪華な顔ぶれを配置しての豪華さも、今の玉三郎座長の持つ力をみせつける。

それにしても7月の「夜叉池」をダブルヒロインで抜擢されている春猿・笑三郎のふたりがやはり芸者役でいい役についていたのだなぁとシネマ歌舞伎で大写しになっているのをみてしみじみ思ってしまった。お園がひっぱって芸者衆が三味線を弾く場面も大画面では圧巻だった。

この芝居は一幕目の行灯部屋以外は、全て岩亀楼の引付部屋で展開する。その障子の外の海が見え方は3階で観るよりも一層印象的。この部屋をいろいろに変化させて使っての芝居なので、キャストの顔ぶれやその力の均衡などによってつまらないものになるか見応えがあるものになるかを左右すると思った。今回はもう文句のつけようがないものだった。まさにシネマ歌舞伎にして永久保存するにふさわしい舞台だったと思えた。

写真は公式サイトより今回の上演のチラシ画像。
これまでの玉三郎主演のシネマ歌舞伎の記事はこちら→「京鹿子娘二人道成寺」「鷺娘」「日高川入相花王」
(追記)
NHKのプロフェッショナル等も観て、玉三郎をアーティストと褒め称えるsakuramaruさんと並んで観ていたが、途中の休憩でまず「面白い!」と絶賛。終わった後も話し込んだが「玉三郎さんはこんなコメディもできるのね」と感心しきり。お誘いした甲斐があったというものだ。ちゃんと7月も観ていただくことになっている。

08/06/21 娘、バッグをひったくられる

2008-06-21 23:59:19 | つれづれなるままに

昨日の携帯からの記事アップに書いたように、金曜日に実家に泊まりこんでいた私。母と話し込んでいてようやく寝入ったと思ったら夜中の3時に電話でたたき起こされた。
娘「お母さん?ワタシ」
母「今どこから?」
娘「警察。終電近くでお父さんの家から帰る途中、自転車で信号待ちしていたらバッグをひったくられちゃったの」(実は娘の不登校から意見があわず、別居状態になってしまっている)

娘「携帯もとられちゃったから、おばあちゃんちの電話番号の最後の4ケタだけ覚えていたから電話帳で警察の人が調べてくれた。今から帰れないよね。お父さんの家まで警察の人が送ってくれるから、お父さんに連絡とれるかな」
とここで、左手に固定電話、右手に携帯で両方に連絡をとり、話をまとめ、父母の携帯の電話番号をメモさせ、いったん電話を切って報告を待つ。もう一度電話が鳴るのを母が起きないようにすぐにとり、明日は私がいったん自宅に戻るのでその間に帰宅するように言い添えて電話を切った。

娘は怪我もしていなかったのが幸いとひと安心。朝まで寝ようと思ったが、睡眠導入剤を二分の一錠追加して飲んだが、結局うつらうつらしか眠れず・・・・・・。

6時には母親が起き出してきた。事情を話すとびっくりし、さらに私が泊まってと頼んだのが悪かったねと反省されてしまった。一緒にごみ出しに行って、朝食を食べ、8時には自宅へと戻った。
鍵もとられたので、自宅が無事か心配だったが無事だった。9時過ぎには東村山警察署から電話がきた。盗難届けが出ている品がみつかったとのこと。4人分みつかったので全員立会いで確認の上で引き取ってほしいという連絡だ。詳細を本人に知らせるというので父親の家にかけてもらった。
東銀座で4時のオフ会に間に合うように帰ってくる娘を待つ間、少々仮眠をとる。

40分かけて自転車で帰ってきたが、意外に落ち込んでいないので安心。引きこもり状態から徐々に回復モードに入っていたところだったので心配だった。月曜日に一人で行けるかな。行き方を検索してちゃんと行ってもらいたいな。

オフ会のち、東劇でシネマ歌舞伎「ふるあめりかに袖はぬらさじ」を観る。素晴らしい出来で堪能。
明日は自宅でゆっくりしたい。

08/06/20 昼休みにちょっぴり遠出(笑)

2008-06-20 18:24:20 | つれづれなるままに
朝方はポツポツっときたが雨はやんでいる。梅雨空が広がって夕方のような暗さなので、昼の外出の友・日傘(ロッカーに常備)は不要。じめっとしてはいるけれど暑くない今日、ちょうど経費の締め日だし、職場の台所周りの消耗品の買い物に遠出することを思い立つ。

しんみち通りのお豆腐料理の「米長」で日替わり定食。豚肉と厚揚げのピリ辛煮が美味しい。うちでもつくってみようかなぁと思ったりする。しっかり水を切るのがポイントなんだろうけれど、そういう下ごしらえをする手間暇をかける意欲がないのが私の現状。まぁ、やれるときにね(笑)
食後に新宿通りをどんどん歩き、ようやく話にだけ聞いていた雑貨店を発見。ストックのなくなっていた薄いスポンジタイプのテーブルふきんを購入。今日は少しだけ職場の周りの行動範囲が広がった!

四ツ谷駅前の植え込みの紫陽花が何種類もいろいろな色で咲いている。写真はガクアジサイを接写で撮影。あまりにも日がさしていないので葉っぱの緑色が出るように撮影するのにちょっと手間どったが、一時間休憩でここまでできた!!
今夜は実家に泊り込む。明日の朝は名古屋に帰った妹1がまとめておいた大量の衣類ごみを出すのを手伝う。雨になったらポリ袋に入れて出さなければ。
明日は友人とのお茶会とシネマ歌舞伎に実家から直行する予定。日曜日は久しぶりに自分の家でゆっくりしたい。次週の子ども会の資源回収に新聞を出せるように束ねなくては!!
(携帯からのアップです)

08/06/18 舞台裏からコクーン「夏祭浪花鑑」(^^ゞ

2008-06-18 23:59:03 | 観劇

コクーン歌舞伎第9弾「夏祭浪花鑑」は気力・体力・懐具合の関係から見送っていた。それなのに・・・・・・。

午後4時少し前、月1回の用事のある渋谷の東急本店の裏側に急いでいると、いつも通るBunkamuraの駐車場の出入り口に人がたむろしている。楽屋口の出待ちなら場所が違うのにと思ったが、ハッとひらめいた。シアターコクーンの大道具搬入口があるところだ。コクーン歌舞伎「夏祭浪花鑑」なら、最後に舞台の後ろが開いて主役二人が逃げていったり、現代にワープしてパトカーが姿を現す演出があるはずだから、それを待っているのか?!
よく見ると、スタッフTシャツをきた若い男女が何人も待機している。声をかけて聞いてみるとやはりそうで、4時に終演予定なのでもうすぐ開くという。これは見ていかざるをえない!

すでに立ち回りの音が聞こえている。合図はパトカーの音だとのこと。
団七・徳兵衛が壁を蹴破って逃げるその壁の後ろでは割れるパーツのひとつひとつに紐がついている。壁の方向にライトが当たりだし、スモークが流れ始め、数人の男性スタッフが何本かずつ紐を握った。だんじり囃子の音が高まっていく。
きたきた~、パトカーの音!紐が引かれて一気に壁が崩れ、出てきた出てきた~、勘三郎と橋之助!!
駐車場の出口まで走って車の陰で方向転換。待っていた私たちは一斉に拍手~。緊張感を保って表情も変えずに間をはかって舞台に戻る二人。客席にもライトがあたって拍手する観客たちの姿が見える。
そして駐車場からくだんのパトカー出動!!車体に書かれた文字はpoliceではなかった。「polizei」はドイツ語かな?この5月にはベルリン、ルーマニアと公演しているからそのためだろう。スタッフに確認したらアタリだった。「ポリツァイ」と読むらしい。

カーテンコールでも舞台裏の扉は開いたままで、黒い捕り方たちも並んでお辞儀をしている。彌十郎の姿も見える。客席と舞台裏の私たちと一緒に拍手だ。
おっと、パトカーもカテコにもう一度出動した。

いやぁ全くの偶然だが、なんと素晴らしい場面に遭遇したのだろう。この間、いろいろと苦労が続く日々なのだが、たまにこういうことがあると元気が出るというものだ。素直に喜んでおこう。

写真は松竹のサイトより今回公演のチラシ画像。
関連で、一昨年の新橋演舞場五月大歌舞伎「夏祭浪花鑑」の記事はこちら

08/05/24 五月大歌舞伎夜の部①吉右衛門の「四谷怪談」

2008-06-16 23:59:01 | 観劇

5月の公演の感想が滞ってしまっているが、書けるだけは書いていきたい。
新橋演舞場五月大歌舞伎を、まずは夜の部の「四谷怪談」から。
四谷怪談は勘九郎時代のお岩で歌舞伎座、猿之助の七月歌舞伎「東海道四谷怪談忠臣蔵」、一昨年のコクーン歌舞伎の南番北番で各一回観ている。
ウィキペディアの「四谷怪談」の項はこちら
【通し狂言 東海道四谷怪談】四幕十場
今回の主な配役は以下の通り。
民谷伊右衛門:吉右衛門 お岩・小仏小平・女房お花:福助
佐藤与茂七:染五郎 奥田庄三郎:錦之助
四谷左門:桂三 伊藤喜兵衛:由次郎
お岩妹お袖:芝雀 直助権兵衛:段四郎
按摩宅悦:歌六 伊藤後家お弓:京蔵
孫娘お梅:京妙 乳母おまき:芝喜松

印象に残った点を中心に書く。
お岩の妹お袖の芝雀がとにかく可愛い。染五郎の与茂七と夫婦仲というのにも無理がなく、つくづく貴重な女形になってきたと思う。
吉右衛門の伊右衛門は初役とのことだが、塩冶のお家の公金横領をふてぶてしくやってのけた前歴もさもありなんという線の太い悪人。劇評家で「実悪の伊右衛門」と評している方もいたが、なるほどと納得した。この役は色悪の代表的役柄で、私がこれまで観たのは橋之助と段治郎。長身の段治郎はかなり前だったが本当にカッコよかった!それとは全く違う吉右衛門の伊右衛門だが、線の太い伊右衛門が座頭でどっしり座った芝居になっていて、こんな芝居もいいなぁと思えた。

段四郎の直助権兵衛も予想以上に若々しく、吉右衛門の伊右衛門と並んでもバランスがいい。ナイスキャストだ。ついでに伊右衛門に横恋慕するお梅も京妙でよかったし、京蔵も後家お弓と京屋の女形陣に日が当たって嬉しい!
福助のお岩は、芝雀のお袖と並ぶとしっかりした姉の貫禄があり、こちらもバランスがいい。ただし「伊右衛門浪宅の場」で現われた産後の姿、胸に肋骨が浮き出たという黒い影はいいが、両頬にベッタリと青黛を塗っているのはいかがなものか。それと血の道の薬を飲む時に伊藤の家への感謝の「有難うございます」の連呼が少々しつこかった。私の見た公演でハプニング。宅悦に元結を切ってもらうところで抜け落ちてゾッとさせる髪がひとつかみ分、早いタイミングではずれて床に落ちてしまった。福助がタイミングをみてなんとか行灯の向こうの目立たないところへ投げていた。このせいか、先に見た方の何人かからおききしていた過剰な演技はあまり感じなかった。宅悦の歌六も吉右衛門の伊右衛門に無理を言われても従うところなど蛇に睨まれた蛙のような関係性がいい。顔の崩れたお岩を怖がりながらも哀れむ人情も滲み出ていて芝居に奥行きが出た。
「蛇山庵室の場」の提灯抜けなどは、歌舞伎座と違った演舞場バージョンだなぁと気がついた。まぁ劇場に合わせて演出も変わるんだなぁと納得。
福助は今回小仏小平・女房お花も合わせて3役をつとめる。「砂村隠亡堀の場」のだんまりで女房お花として並び、最後の「仇討の場」でもお花として夫の仇を与茂七とともに討つという設定になるんだなぁと、役者の見せ場をどうつくるかで融通無碍になる歌舞伎をまたまた面白いと思ってしまった。

「仇討の場」の立ち回り半ばで吉右衛門・染五郎・福助が座って口上となり、「本日はこれ切り~」で幕引きとなったが、ここまで暗くて濃厚な芝居だとこういう幕切れもかえってさっぱりしていいかもと思えた。
座組みが変わればまた別の味わい。歌舞伎は本当に面白い。

写真はこの公演のチラシより吉右衛門の伊右衛門の部分を撮影したもの。
6月も歌舞伎座昼の部「新薄雪物語」も楽しんできた。少しずつ巻きを入れていこう。

08/06/14 踏みしめる大地の確かさが大事......

2008-06-15 23:59:20 | つれづれなるままに

いただいているコメントの返事も滞ってしまっていることをまずはお詫びしたいm(_ _)mボチボチ書かせていただくが、まずはこちらをアップさせていただくことにする。

14日の土曜日は疲れ切ってようやく寝付いて10時前の目覚まし音で起き、TVのスイッチをつけたら東北の地震被害報道に驚いた。携帯にもPCにも職場の「安否ネット」からのメールや留守電が入っていた。要は震災等で職員の安否を把握し、さらに出勤体制がどのくらい見込めるかを把握するシステムなのだが、最初はメール、それで応答がない場合に自動音声による電話が入るので、要は気がつくのが遅いということだ。
娘も夜更かしして寝たので気づかなかったという。妹たちに電話したら「TVを見ていたら警戒警報報道もやっていて、しばらくしたらけっこう揺れたよ。あれで気づかないなら姉ちゃんたちは二人とも死ぬよ」とあきれられた。

中国四川省で発生した大地震災害とは被害の大きさがずいぶん違うが、やはり今回も亡くなった方のご冥福を祈り、被災された方にはお見舞い申し上げたいm(_ _)m

さて、写真はアシックスのウォーキングシューズの専門店「歩人館」で計測してもらった私の足型だ。娘が歯が痛いというので歯医者に連れていったついでに一緒に行き、二人とも計測してもらった。
歯痛は虫歯ではなく、私同様歯ぎしりのためだと診断され、経過観察となった。20歳ですでに奥歯が磨り減って平たくなってしまっているという。それでも落ち着かないようであれば、私同様マウスピースをつくるハメになるだろう。

歯医者のある大宮にあるウォーキングシューズの専門店に急遽行くことにしたのは、夏場に履くサンダルが欲しいが靴擦れが過激にできやすい母娘なので一度行ってみようということになったのだ。
娘は私の足よりもいろいろと大変な状態だと画像が語っていた。大体5本の指のうち小指が全く接地していないのだ。それで歩いているのだからかなり大変だ。なんだかんだと試し履きしている間に1足買うことになり、資金援助するハメになった。バイトをやめてからのひきこもりも長期化していて、最近ようやく一人で外出する練習も始めたようだが、外に出るはずみになって欲しい。

東北の地震との関連では、足で踏みしめる大地の確かさはやはり安心の前提だと痛感したりもする。

名古屋から妹1もきていて実家関連の用事等々に忙殺される。今日は合間を縫って歌舞伎座昼の部を観てきたが、泊まりこんだ実家から観劇に向かい、その後も実家に回り、先ほど帰宅。こういう調子なので観劇記事のアップがなかなか難しいが、ボチボチやっていこうと思う。