ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/03/31 四ツ谷のお濠の堤の桜が満開!

2006-03-31 23:54:07 | つれづれなるままに
職場のあるJR四ツ谷駅麹町出口近辺のお濠の堤の桜が満開。桜の木の下にはヤマブキが黄色い花を咲かせていて、その組み合わせも美しい。
あわてて携帯のカメラで撮影したが、容量オーバーで2枚目は登録できず、出勤前で時間もなくてこの1枚だけ。
カップラーメンとヨーグルトだけの簡単な昼食の後、あわてて渋谷の本部へ移動し、午後だけ研修会に参加。夕方はシアターコクーンでコクーン歌舞伎「四谷怪談」南番を観る。
感想をためないように書きたいとは思うのだけど...。
努力しますね

06/03/30 『ナルニア国物語』全7冊セット買っちゃった!

2006-03-30 21:26:23 | つれづれなるままに
まずはご挨拶m(_ _)m
入院しておりました娘は3/29の昼に退院できました。皆様、ご心配をいただき、また励ましのコメントも寄せていただき、本当にありがとうございました。これからも母と娘のへっぽこ二人三脚で日々暮らしていくつもりです。よろしくお願い申し上げます。

先日の外出日に『ナルニア国物語』を観たのだが、不完全燃焼感が残ってしまった。
その時の感想はこちら
お茶屋娘さんのコメントにもあったが、私もこの作品、どうもアメリカ映画には向かないような気がする。やはり本でちゃんと読まずにこの大作に対する変なイメージを持ち続けてはいけないと決意!アマゾンの5000円以上購入で500円割引キャンペーンにのっかって注文してしまった!!

実は退院翌日だというのに私のPCをふてぶてしく占拠する娘とバトルしてしまった。自分のPCは不調で重たいので母のPCの方が新しいし軽いしでずっと占拠されてきたのだった。もう卒業させたし、私のネット生活を侵害するような我儘は許さ~ん。
娘のPCの不調の話はこちら
ついに自分の貯金で新しく買う宣言をさせたぞ!

バトル前にこの本の話は相談済みだったのでこれはこれ、ケンカはケンカということですかね。
当初書きかけていた『THE有頂天ホテル』の感想は、またあらためて書くことにします。

写真はアマゾンのサイトより『ナルニア国物語』全7冊セットの写真。

06/03/26 三月歌舞伎座昼の部②「吉例寿曽我」「吉野山」

2006-03-27 23:53:02 | 観劇
歌舞伎座玄関を入ってすぐ左手に「十三世片岡仁左衛門の十三回忌追善」と書かれた台が設けられ、大きな写真が飾ってある。お人柄がにじみ出るようないい笑顔のお写真。息子や孫たちが大活躍の三月だった。
1.吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)
①鶴岡石段の場:鎌倉鶴岡八幡宮の大石段のところで工藤祐経の家臣で白塗りの八幡三郎(愛之助)と赤っ面の近江小藤太(進之介)が登場。近江が主を裏切る内容の密書を八幡が入手したことで奪い合いの斬り合い。様々な型で切り結んでくれてなかなか見ごたえ十分。見栄を切って決まっているふたりを乗せたまま石段が「がんどう返し」で富士山を書いた背景画に変わっていく。足首が相当つらいだろうなあと感心しながら拍手。

②大磯曲輪外の場:富士山を望む大磯曲輪外に八幡から密書を渡された工藤祐経(我當)が梶原源太(松也)や大磯の虎(芝雀)などの遊女を従えて登場。そこに曽我十郎(信二郎)五郎(翫雀)の兄弟も加わって対面を果たす場ともなる。背景画は明るいがここは豪華な顔ぶれを見せる場ということで闇の中でまた書状を探り合うだんまりとなる。絵面の見栄をきって幕。二場合わせて30分という短い演目だが、とにかく華やか!

先月の「石切梶原」で赤っ面だった愛之助を久々に白塗りの立役で観て満足、満足。声もいいし本当に眼福。今回赤っ面の進之助とのバランスもよい。こういう組み合わせは今後もいいと思う。信二郎、松也も美しい~。工藤の我當も貫禄十分。この演目でも松嶋屋の面々がしっかりとした舞台をつとめ、追善狂言と銘打ってはいないが立派な追善の舞台となっていたと思う。

2.吉野山(よしのやま)
一昨年の6月に菊五郎・菊之助父子で観て今回が二回目。『義経千本桜』の四段目にあたる道行。
義経を追って満開の桜に彩られた吉野山にやって来た静御前(福助)。静は後白河法皇より義経が拝領した「初音の鼓」を預けられている。その鼓を打つと姿を消していたお供の佐藤忠信(幸四郎)が現れる。この忠信は鼓の皮となった親狐を慕う子狐が化けていて従っていたのだった。道行の最中、桜の中で舞うふたり。忠信も義経より預かった鎧を出してきて屋島合戦の様子、そこでの兄の死を物語る。そこに静を捕らえようとする逸見藤太(東蔵)率いる軍勢が。忠信は通力で簡単に追い払ってしまう。静は再び身支度を整えて義経を追っていき忠信もつき従っていく。
福助の静御前は美しいだけでなく義経の最愛の女だったのも無理からぬと思わせる艶が漂うところがいい。幸四郎の源九郎狐は予想以上によかった。菊五郎のような狐メイクはしていないし狐らしさを漂わせるところもまあこんなものかという感じがしたが、屋島合戦の物語や花四天をやっつける所作はキリッとしていてよかった。実は幸四郎の舞台写真は一枚も持っていなかったのだが、男雛女雛で決まったところを一枚買ってしまった!

富十郎も持っていなかったが、結局「二人椀久」のツーショットを1枚!仁左衛門の菅丞相も予約分を引き取って、今月も4枚になってしまった。ああ、キャビネ用のファイルを買い足さなくては。

三階東1列目で観劇したので花道はよく見えたのでよかったが、義太夫さんが全く見えないのが最大の難点。ガマンガマン。その三階で幕間にEさんに再会。真聖さんと三人でお茶させていただいたのが最初だった。終演後、歌舞伎会カードで5%引いてくれるお店を教えていただきワッフルセットで2時間ほど盛り上がる。三谷幸喜もサンシャインボーイズ時代から観ていらっしゃるとのことでいろいろと教えていただき、三谷歌舞伎の今後への期待がさらに高まった。有難うございましたm(_ _)m

06/03/26 三月歌舞伎座昼の部①菅原伝授手習鑑「道明寺」に涙(T-T)

2006-03-26 23:55:17 | 観劇
歌舞伎座昼の部の十三世片岡仁左衛門13回忌の追善狂言。『菅原伝授手習鑑』の二段目で、菅原道真を祀る道明寺の縁起を描いた道真の奇蹟を伝える一幕。菅丞相を当代仁左衛門、苅屋姫を孝太郎、立田の前を秀太郎と松嶋屋の3人がつとめる。
お話は以下の通り。松竹ウェブサイトよりの抜粋を踏まえて書き足す。
①杖折檻:太宰府への左遷(実質の流刑)の護送途中の菅丞相こと右大臣藤原道真(仁左衛門)。船出の風待ちの間に立ち寄りを許された伯母の覚寿(芝翫)の館には、菅丞相の養女で覚寿の実の娘の苅屋姫(孝太郎)が匿われている。苅屋姫が斎世親王との逢瀬が左大臣藤原時平の讒言のもととなったのだ。姉の立田の前(秀太郎)は丞相と苅屋姫親子を対面させようとするが、覚寿はそれを阻止し娘二人を杖で打ちすえる。その折檻を止めたのは菅丞相の声。しかしその先にあるのは菅丞相自らが彫った丞相の木像だった。
②東天紅:立田の前の夫の宿禰太郎(段四郎)とその父土師兵衛(芦燕)は、時平からの依頼で菅丞相暗殺するため、菅丞相を護送する判官代輝国(富十郎)が訪れる前に鶏を早鳴きさせ、出立時間を誤認させて偽の迎えを仕立てることを企む。立ち聞きしていた立田の前がいさめると騙して殺し池に放り込み、菅丞相を連れ出す。
③丞相名残:本物の迎えに輝国が現れるが覚寿はとうに出立したという。立田の前がいないことに気づき、奴たちが探すと池の中から遺体が見つかり、その口に咥えられた太郎の着物の切れ端で犯人がわかり覚寿は敵である婿を討つ。偽迎えが再度あらわれ丞相のはずが木像だったと抗議するが、そこで悪企みがバレて兵衛も輝国に成敗される。
奇蹟を起こした木像を形見に残し、いよいよ丞相の出立。覚寿は苅屋姫を伏籠に隠しその上の小袖を餞別にと言うが、丞相は小袖をとらず姫の今後を覚寿に託し、別れの和歌を詠ずる。籠を出て丞相の袖に縋りつく姫と顔を合わすことをさけて振り払い去っていく。その途中、一度だけ振り返ってしまうが思いを断ち切って館を後にする。

一幕ものだが2時間たっぷり。子を思う親の気持ちをにじませながら天神と祭られるだけの品格も要求される難しいこの役は精進潔斎をしてつとめると言われている。十三代目仁左衛門による崇高な名演が伝説となっていて、当代の演技はまだまだ普通の人間っぽいという指摘もあるようだ。しかしながら十三代目とて晩年につとめた演技のことだろうし、まだまだ若い当代がそういう風格を求めるのは酷だと思う。
今日の仁左衛門は伯母覚寿の館に自分が立ち寄ったばかりに不幸を招いたとして嘆くあたりからもう頬がびしょびしょだった。舞台写真では綺麗に写っているのに~と思いながら(これって通し稽古での撮影なのかな)、双眼鏡のこちらの目も涙。とにかく前楽の今日の舞台、せつない親の心情を抑えながらもにじませる当代の丞相はしっかりと記憶にとどまった。

十三代目の丞相で苅屋姫をつとめた素朴に可愛い秀太郎の写真をロビーで見た。今回の立田の前も立派だったが、夫の太郎をいさめて効果があったと思った時に見せる可愛い表情!この人にはやはり可愛い笑顔の魅力がある。孝太郎のさびしげな顔はこういう哀しい役にはよくハマっていると思う。

覚寿は三婆のひとつの大役というのがよくわかった。芝翫丈ちょっと聞き取りにくかったが、病気をされた後のためか声が細くなられていた気がする。富十郎は情に厚い捌役の輝国を堂々と演じられていて立派。脇を固める段四郎、芦燕、歌六、市蔵らもよかった。

豪華なキャストによる立派な追善狂言だったと思う。しかしなかなかかからない演目というのもよくわかった。地味な演目で主役が相当抑え目な演技だし、けっこう長い。最後の嘆きの場ではあちこちですすり泣きの声が響いたが、途中では居眠り者が周囲にけっこう目だった。私も途中で少し舟を漕いでしまったが、お隣の女性は自分のいびきで驚いて起きて私に頭下げてたもの。確かにちょっと睨んでたけどね。
たまに観て至高の丞相をまた観て感動するということをあと何回かしたいものだ。それには長生きしないといけないな。

写真はイヤホンガイド『耳で見る歌舞伎』3月号表紙を携帯のカメラで撮影。
追記:天神様について
天神様というのは関東ではなじみが少ないように思う。学問の神様ということで受験前に湯島天神にお守りをもらいにいく人は少なくないけれど。そんな私が福井県のあるおうちに赤ちゃんが生まれた後でうかがう機会があって驚いたこと。天神様が牛の上に座っている絵を描いた掛け軸が床の間に飾ってある!男の子が生まれるとどこの家でもそうするのだということだった。お江戸では武者人形を飾るというのがあるが、そういう感覚なのかな。しかし西の方ではもっと身近な神様なんだねと思ったのだった。そういう経験がなかったらこの作品の菅原道真=神様のようにというのがピンとこなかったと思う。当代仁左衛門の丞相もこの先再演を繰り返す度にどんどん神様度が上がっていくのだろう。

06/03/25 『ナルニア国物語』鑑賞と「せんば自由軒」のランチ

2006-03-25 19:59:51 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)
昨日の昼休み、職場の近くの小学校の校庭の桜も陽あたりのいい木は咲いていたのを確認。今日も朝からいいお天気!娘の病院からの外出日なのだ。

バスで迎えに行ってバスでさいたま新都心のMOVIXへ!お目当ては『ナルニア国物語』。俳優の声をききたいので字幕で観たいところだが、時間の都合で日本語訳バージョンの方の席をとる。始まるまでに「せんば自由軒」で昼食。私は名物のドライカレーとサラダバーのセット、娘はハイシライス。いずれも生たまごを割りいれてあって混ぜて食べるというのが定番。家は甘口カレー御用達なのでたまごで丁度よくなるのだった。大阪に住んでいたころ本店で食べたことが懐かしい。

土曜日の昼だというのに『ナルニア国物語』のお部屋は席に余裕あり。封切り前のTVでの特別番組でも地元イギリスでは誰でも知っているファンタジーの定番だということだったが日本ではあまりなじみがないということだった。日本でも『ハリー・ポッター』でファンタジーブームが再来したのだというが、『指輪物語』三部作もあったし、ファンタジー映画に飽きてきて人気があまりないのかしら。2時間40分観た。うーん、まあこんなもんかねえといった感じ。
観た後でプログラム買うと言ってた娘に1000円札を渡したところ、「これはいいや」だって!ウーコさんにいただいた評論社文庫の『指輪物語』全9巻をあと1巻で読み終わるという娘は「指輪物語の方が面白い」という。映画の三部作を私も全部観たのだが、観たあとの満足度がかなり違う。

導入部はけっこう気に入った。第二次世界大戦でドイツ軍の空襲を受けるロンドンの主人公たち4人の兄弟姉妹。疎開して預けられた田舎の教授のお屋敷。かくれんぼうの最中に末っ子のルーシーが古くて立派な衣装ダンスに隠れると奥がナルニア国につながっていて、段階を追って全員がその世界に入ってしまい...と話が始まる。
ナルニア国は白い魔女が女王を僭称して100年間支配しているが、その支配から解放されるための予言をかなえる者として4人があてはまった。ところが次男エドマンドには兄と姉に確執の気持ちがあり、魔女と出会って4人の中で優位にたちたいという気持ちから魔女の甘言にのってしまう。
結局囚われの身となっているエドマンドを救うため、ナルニア国解放の闘いの守護神のようなライオンのアスランとともに3人は立ち上がる。
しか~し、活躍が地味~。特に長男ピーターと長女スーザンがもっときりっとしていて欲しかったんだけどな~。はるかに敵役の白い魔女ティルダ・スウィントンの方がカッコイイ。日本語吹き替えも大地真央だったらしいし(公式サイトを読んで気づく私)。ライオンの声は津嘉山正種さんだと思うんだけどな(大好きな声なので確信もってますが違う?)。
公式サイトには長男を演じたウィリアム・モーズリーの特別ファンサイトも設けられていたが、私たち母娘とも特に魅力を感じず。末っ子ルーシーのジョージー・ヘンリーの大きな目が可愛かったな。

『指輪物語』の方が私も面白いと思ったが、両者の違いはどこ?『指輪物語』は邪悪なものの邪悪さが際立ち、その悪の魅力に多くのキャラがひかれていた。それに対して闘うから正義の側が際立つのだと思う。正義の側も悩み多いけれどもっとしっかりしたキャラになっていた。ちょっとこの4人のきょうだいだと魅力的に弱いなあ。
今回が第一章ということでシリーズとして製作されるのだろうけれど、次行くかどうか微妙。原作本を買ってと言われるのではとおそれていたが、そういう要望も特に娘から出ず。アマゾンキャンペーンで買おうかと思っていたけど、節約モードでよいのかな。

バスであわてて病院に戻る。主治医との面談にちょっと遅刻m(_ _)m
「月曜日にでも退院したい」と娘は言っていたが、主治医が月火はいないということで水曜日に退院が決まった(家の中は入院騒ぎでとっちらかったままに近いのだが...)。
ご心配いただき、励ましてくださった皆さん、本当に有難うございます。おかげさまで上記のような次第になりました。

写真は公式サイトのグッズコーナー扉画像。

06/03/19 三月歌舞伎座夜の部②「近頃河原達引」「水天宮利生深川」

2006-03-24 00:28:38 | 観劇
三月歌舞伎座は十三世片岡仁左衛門の13回忌の追善興行。追善狂言と銘うつ演目が昼も夜も一本ずつある。入口入ってすぐの左手にはその旨を添書きした13代目のお写真があり、2階ロビーには13代目の舞台写真が展示されていた。写真はその中の与次郎の写真を携帯で撮影したもの。
一月の坂田藤十郎襲名公演「曽根崎心中」の徳兵衛の伯父・平野屋久右衛門で片岡我當の人情味あふれる芝居を観ていたので、今月の夜の部の与次郎も期待していたのだった。
1.「お俊伝兵衛・近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)」~十三世片岡仁左衛門13回忌追善狂言
「四条河原の場」井筒屋の伝兵衛(藤十郎)と遊女お俊(秀太郎)は二世を誓う仲。ところがお俊の身請けがらみで横溝官左衛門(團蔵)が伝兵衛を騙したため、伝兵衛は官左衛門を殺めて逃走。
「堀川与次郎内の場」ゴタゴタに巻き込まれるのをおそれてお俊は京の堀川にある実家に預けられている。お俊の盲目の母ぎん(吉之丞)と兄で貧しい猿廻しの与次郎(我當)は伝兵衛があらわれてお俊を殺しにくるかおそれている。お俊には言い聞かせて離縁のための退き状を書かせる。夜中、皆が寝静まったころ伝兵衛はやって来る。暗闇の中で伝兵衛を追い出したつもりでお俊をたたき出してしまい、家の中には伝兵衛が。追い払うつもりで退き状を見せると盲目と文盲の母と兄にはわからなかっただけで内容は心中をすることを詫びる書置きだった。
お俊の覚悟を知り、どこまでも落ち延びて生きろと母と兄は送り出す。祝言を挙げさせ三々九度と別れの水杯を兼ねての杯ごと。猿廻しで門出を祝って送り出す。

秀太郎のお俊の声はさすがに若い女のそれには聞こえない。しかしながら藤十郎の伝兵衛とはベテランどうしのバランスがよい。父子コンビの「曽根崎心中」よりもはるかに心中までにいたる男女の情感がにじみ出る。「そりゃ聞こえませぬ伝兵衛さん」で始まるクドキのところは追善狂言の見どころその1!
「堀川与次郎内の場」の冒頭は、母ぎんが近所の娘にやはり心中ものの「鳥辺山」の唄の指南をしているところで始まる。吉之丞の老母は自分が子どもたちに苦労をかけていることを気にやむ場面、娘の伝兵衛への真剣な想いに寄り添うところをおさえめながら親心の深さが伝わってくる。
我當は猿廻しの猿の人形をうまく操りながら優しい兄・与次郎を実直に演じてくれた。素朴な人間としてカッコもつけずに妹への想いをさらけだす兄の姿は、片岡家の長男としての我當の姿にイメージも重なり、追善狂言の見どころその2!!
13代目の長男と次男がそれぞれの個性を活かし、坂田藤十郎も加わって上方歌舞伎の味わいが十分にかみしめられる舞台となったように思う。

予想以上に味わい深い演目だった。お俊伝兵衛のベテランの道行の黒の揃いの比翼紋付姿を見て、私やっぱり心中もの好きだなあって思ってしまった。

2.「水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ)」
河竹黙阿弥の散切物。話のスジは以下の通り。
明治維新により武士でなくなった船津幸兵衛(幸四郎)は筆を売って生計を立てている(だから「筆幸」)が、妻は産後の肥立ちが悪くて死んでしまっていた。母の死で目を泣きつぶした16歳の娘お雪(壱太郎)、10歳のお霜(米吉)、乳飲み子の幸太郎の3人の子どもを抱えて貧乏のドン底にいる。剣術家の萩原良作の妻おむら(秀太郎)から乳を貰いお金もめぐんでもらうなどしてやっと家賃も払えるかというところに借金の取立てが。高利貸しの金兵衛(彦三郎)や代言人=弁護士の安蔵(権十郎)はめぐんでもらった赤ん坊の着物まで剥いでゆく。幸兵衛は先行きを悲観して一家で心中することにし娘たちは同意。赤ん坊から殺そうとするがあまりの辛さに発狂。大家をはじめとした長屋連中を相手に暴れた末に家を飛び出し、赤ん坊を抱えて身投げ。ところが常々信心している水天宮の御利益で救われた後は正気に戻り、お雪の目も見えるようになって、川そばで出演者勢ぞろいの大団円で幕。

しかしウーン、あまり面白くない。唯一面白かったのは彦三郎・権十郎の金貸しコンビ。明治時代の成金の趣味の悪いいでたちとこれでもかと幸兵衛をイジメぬく姿がいつものおふたりにない役柄でとってもはじけていたところ。
幸四郎の幸兵衛、情けなさに哀愁が漂わない。息子と違って情けない役がハマらない。狂った姿の演技も真面目すぎて可愛くない。時代物ではききとれないことが多い台詞まわしもけっこうききとれるのだが、ニンじゃないのだろう。幸四郎いいなと思ったのは俊寛、サリエリ、ラ・マンチャの男。なんだ気位の高い爺さんばかりだなあ。筆幸はもう少し気位を落として演じる方がいいと思う。先月の田之助さんの切腹浪人みたいな感じがいいと思うんだけどな。

子役ふたりは頑張っていたが、壱太郎くんの声がちと苦手(変声期でつらそうなの?)。米吉くんはホワッとしていて可愛かった。
昼の部は26日に観る予定。

06/03/21 『越路吹雪物語』によみがえる乙女時代

2006-03-23 01:27:25 | 観劇
池畑慎之介(=ピーター)主演の舞台『越路吹雪物語』は2003年初演の時から観たいと思っていたのだが、なかなか観ることができないできていた。そういう舞台は劇評も気になり、劇評で誉められているのをみると後悔の気持ちがより大きくなってしまう。
さらに昨年のTVドラマシリーズ「女の一代記」でも『越路吹雪と岩谷時子』があったのにノーチェックで見逃してしまっていた。redandblackextraさんのブログでその感想を読んで絶対に次に舞台があったら観るぞと決意を固めていた。そして年末に日生劇場公演のチケットをGET。しっかり観ようと三列目の中央を奮発した。
redandblackextraさんのTVドラマの感想はこちら
3/21夜の部を観劇。大体のスジは以下の通り。
56歳で亡くなったコーちゃん=越路吹雪(池畑慎之介)の遺影の前で岩谷時子(高畑淳子)が追悼する場面から始まる。追想の狂言回しは時子と独身時代のコーちゃんが愛人関係にあった真木小太郎(草刈正雄)がつとめる。
宝塚音楽学校での越路吹雪と岩谷時子の出会いから気が合って二人三脚的な関係へ。時子はスターになったコーちゃんのマネージャー的な役割を担っていく。その中で越路吹雪の歌の訳詞もする機会も多々生まれる。代表曲のようになった「愛の讃歌」の訳詞が生まれ出る場面、高畑淳子による歌詞の朗読は圧巻だった。淡々と始まった朗読が最後には「恋の素晴らしさ」を讃える歌をコーちゃんに歌わせたいという時子の強い思いが伝わるようになり、まずそこで涙してしまった(T-T)
天衣無縫なステージでの姿とは別人のような繊細さをあわせもち、恋多き魅力的な女だったコーちゃん像をその人そのものといったハマリ役で演じている池畑慎之介。細かいしぐさや表情も研究しつくしてちょっと誇張して再現しているその努力が好ましい。コーちゃんが大好きで誠実にずっと支えてしまう控えめだけれども芯の強い時子を自然に造詣している高畑淳子。そのふたりの芝居がこの舞台を支えている。草刈正雄の真木もコーちゃんが惚れるのも無理がないといういい男ぶり。
真木との結婚をあきらめても子どもが欲しいという結婚願望の強いコーちゃんは34歳でピアニストの内藤法美と結婚。内藤が自分よりも関係が古い時子との距離をとるように言うとコーちゃんは断れない。そうして少し距離をおくようになりながらもずっと支えていく時子。そして早すぎるコーちゃんの死、冒頭の遺影の前の場面に戻って幕。しかし、ここからなのだ!

「越路吹雪ロングリサイタル」再現シーンといわれる場面がドーンと最後にあるのだ♪♪短いブロンドの髪、青をきかせたアイメイクとコーちゃんそっくりのメイクで肩もあらわな真っ赤なドレスに身をつつんだ池畑コーちゃん。7曲くらいを次々に歌い、客席からは「コーちゃん」「ブラボー」とかけ声と割れんばかりの拍手(スミマセン、私もやってましたm(_ _)m)。やっぱりロングリサイタルの常連さんたちがいっぱい観にきているのだなとわかる。
「サントワマミー」「ろくでなし」「ラストダンスは私に」「チャンスが欲しいの」「夢の中に君がいる」「人生は過ぎゆく」「愛の讃歌」...確かこんな感じだったと思うが、全部聴きこんだ歌だった。
私は中学3年生で母親に連れられて観た『ベルばら』で宝塚にハマり、母が大好きだったコーちゃんのロングリサイタルのLPを友人のお母さんに借りてしっかりとききこんでいた。舞台は日生劇場で『アプローズ』を高校時代に一回観ただけで、ずっとロングリサイタルを観たいなと思っていたのに実現する前に亡くなってしまったのだ。実際に観たことはないロングリサイタルでのコーちゃん。きっとこんなだったのだろうなあと思いながら、シャンソンをきいて恋に恋していた時代の私の思いがよみがえってきて、泣けた、泣けた(T-T)
こんなにコーちゃんの聴き込んでいる私が聞いても違和感のない池畑コーちゃん。合格だ~!しっかりライフワークとして続けていってください~m(_ _)m

池畑慎之介と高畑淳子の共演は昨年の『もとの黙阿弥』で観ている。華族の女と女座長が繰り広げる演劇論議の丁々発止が見事だったが、その前からこの作品で共演を続けてきたことでいい信頼関係が出来上がっていたのだなと納得。是非このふたりで長く続けていって欲しい。
そしてプログラムを読んで気づいた。演出が『サラ』を演出した宮田慶子によるものだった。なるほど~、感情の襞を浮き立たせるようなきめ細かな演出だった。ここでも女性がいい仕事をしていると思うと嬉しくなった。
『サラ~追想で綴る女優サラ・ベルナールの一生』の感想はこちら

写真は昨年の地方での上演のチラシ写真。今年のチラシ写真はいくらなんでもねえ、ちょっと好きじゃないな。

06/03/22 ド根性キャベツ?(ヘンテコ写真その3)

2006-03-22 20:28:45 | つれづれなるままに
ヘンテコ写真シリーズのその3。今回からシリーズ名をつけましたm(_ _)m

超話題になった「ド根性大根」のような根性にははるかに及ばないので恐縮な話ではある。
冷蔵庫に放っておいたキャベツ。外から葉を少しずつはがしては味噌汁などの具にして食べていたのだが、小さくなったところでしばらく放置されていた。
今日久しぶりに食べようとポリ袋から取り出して発見!芯の部分から花芽が芽吹いてしまい、巻いている葉っぱを破って出てきてしまっていた。料理してしまう前にまな板の上で写真をとった次第。

最近ひとりの食事なので本当に手抜きになってしまっていた。超基本的な野菜食材のキャベツもこんなに放っておくなんて...我ながらあきれた。もう少し真面目な食生活をしなくてはねえ。

06/03/21 あっぱれじゃ!王JAPAN世界一!!

2006-03-21 15:16:07 | つれづれなるままに

WBCで王JAPANが世界一になった。ぎりぎりベスト4にすべりこみ、準決勝で韓国をようやく破っての決勝戦。キューバとの決勝戦も特に勢いこんでみたのではなく、mixiで傾亭さんの日記で6対1で勝っているというのをみて、あわてて途中から見たのだった。
ちょうど6回ウラからみていたのだが、途中で6対5の1点差まで追いつかれてしまった。しかしそこからの反撃がすごかった。イチローがその意地を見せる大活躍。イチロー、あんたはエライ!あっぱれじゃ!
ここまでくる中でアメリカのジャッジにいろいろな問題があったようで、「人種差別なんて普通にちゃんとありますよ、アメリカには」と思っていた。しかしながらそのアメリカで今日は勝ちましたね。
私はどちらかというと天才肌の長島さんよりもコツコツ努力派の王さんの方がご贔屓だったので、王監督での世界一はとってもうれしい。世界のホームラン王が世界一の監督になったというのも感慨深い。
今、ネット検索してみたらWBCってワールド・ベースボール・クラシックの略称で記念すべき第1回の大会だったのね。スミマセン、この間そんなことも知らずにいましたm(_ _)m

さあ、気分を一新して、これから日生劇場へ池畑慎之介主演の『越路吹雪物語』を観にいってこよう。
写真は、王監督の世界一の胴上げ。毎日新聞のウェブサイトより。

06/03/19 三月歌舞伎座夜の部①「二人椀久」

2006-03-19 23:50:12 | 観劇
三月歌舞伎座夜の部を3/19に観劇。まず舞踊「二人椀久」の感想を書く。
富十郎・菊之助の初共演の舞台だが、私はこの舞踊も初めて。富十郎が長く組んだ雀右衛門とのコンビも観たことがない。イヤホンガイドでも新コンビと紹介されていたが、雀右衛門とのコンビはもう観ることができないのかもしれないのがちょっとさびしいな。
1つ目の演目との幕間に舞台写真を先に見る。最大の関心事は菊之助の顔の拵えが改善されているかどうかだ。あっ、よくなった!先月の「二人道成寺」の時の写真からすると格段によくなっていることに顔がニンマリとくずれてしまうほど喜ぶ。早速ひとりで写っている写真を1枚買った!

富十郎・菊之助のツーショットは...今イチなので見送り。やはり年の差が大きいのがもろに出ているのと富十郎さんってやっぱりタッパがなくて顔が大きくて写真だとちょっと見栄えがしないのだな~。

yukariさんが幕見したいというほどの舞台だし、楽しみにして始まり始まり~。
椀久の富十郎が花道から出てきてすぐにその動きの美しさに釘付けになる。3階東1列目の一番奥の席で観たのだが、上から見ると背の低さってあまり気にならないのだ(勘三郎の道成寺の花子も三階から見てほとんど気にならなかった背の低さをDVDで観て「撮影位置の違いでこんなに背が低いのが目立つの~」と驚いた経験あり)。顔の大きいのも表情の変化がよくわかるという長所に変わる!昔の人気役者は顔が大きいというけれどその典型のようなお方だ。松山太夫恋しさのあまり狂って座敷牢を抜け出したという狂気の姿からせつなさがあふれている。椀久の初演時には25歳だったというからおよそ50年も踊りこんでいるだけに全身の表現がもう椀久そのものという感じがした。これがナマの舞台の魅力なんだと痛感。おそれいりましたm(_ _)m

菊之助の松山が舞台の中央で椀久が気を失っている後ろをセリ上がってくるところで客席がどよめく。顔のメイクについても「二人道成寺」の舞台写真の時に勝手に書き散らしてしまったが、道成寺の後半から目頭から鼻筋にかけて黒のラインがきちっと伸ばされていて切れ長のお目目になってはいた。今回、さらに目尻の赤の入れ方もより改善されて相当艶っぽいお目目に!もう顔の拵えも合格だ~。椀久とからむ場面の表情も色っぽく、今まではあまり女の艶を感じなかった菊ちゃんに今回は大人の女を感じたのだった。拗ねて椀久を睨む目付きにもうなってしまう。これなら椀久が恋狂いするのも無理はないという説得力十分だ。今までふとした表情に姉の寺島しのぶにそっくりだなあと思うことがあったが、今日は母の富司純子が藤純子時代に壷ふりのお姐さんを演っていた頃の顔を思い出すことがあった。それだけ色っぽくなったということだろう。つまらない喩えでスミマセンm(_ _)m

富十郎との連舞でも見劣りをしないなんて思ってしまった。また菊之助はあまり背が高くないのもバランス的にいいのかもしれない。打掛や羽織を着せ掛けあったりする場面も息があってスムーズに美しく決まる。色里での相思相愛のふたりの情の濃厚なやりとりをたっぷりと見せてくれる。そんな松山との幻想から覚めた椀久の落胆の大きさもうなづける。
「二人道成寺」は玉三郎の胸を借りてつとめ、「二人椀久」は富十郎と組むという菊之助。今本当に伸び盛りだということなのだろう。この舞踊作品も内容が素晴らしいと思ったし、ぜひまたこのコンビで再演してほしいと思う。さらに成長した松山を見ることができるだろう。

5月歌舞伎座では菊之助の「保名」に海老蔵の「藤娘」がある。この二人、反対の方がいいんじゃないって思ったが、固定的イメージを持たずにいろいろな演目をやってもらいましょう。二人ともまだまだ若いのだからね。

写真は「二人椀久」の看板絵。