ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

08/01/26 壽 初春歌舞伎座千穐楽夜の部③團十郎の「助六」

2008-01-31 22:42:12 | 観劇

「助六」は海老蔵襲名披露公演で玉三郎の揚巻が見たくて観に行ったのが初回。その時はやたらと冗長な芝居だなぁと思ったものだ。さて2回目の今回ようやく團十郎の助六を観ることができる。1/2のNHK「初芝居中継」もながら見ではあるが観ていて、今回はずいぶんと楽しめそうだなという気がしていた。千穐楽でやっと観る。
かしまし娘さんのブログでご紹介のあった河東節で出演中のnaojiroさんのブログ「直隠居の余噺日記」に「助六」の河東節の歌詞を載せていただいているのを発見。事前にプリントアウトして予習と膝の上でチェックしつつ鑑賞することができ、感謝m(_ _)m

【歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)】 
ウィキペディアの「助六」の項はこちら
あらすじ等は上記を参照してくださいm(_ _)m
口上で段四郎が格子の向こうに向かって「河東節御連中様なにとぞお始めくださりましょう」と呼びかけると、タテ三味線が「はっおー」とかけ声をかけて演奏が始まる。これは河東節独特のかけ声らしい。タテ三味線の方のお声は女性のようだった。なんかそれもいい感じだと思えてしまった。詞章をチェックしながらだと聞き流すこともなく、ぐぐ~っとその世界に入っていきやすい。
今回の主な配役は以下の通り。( )内は先ほどアマゾンで20%引きにつられて申し込んでしまったDVD収録の時の2003年1月歌舞伎座の配役。
花川戸助六:團十郎(同左) 白酒売新兵衛:梅玉(菊五郎)
三浦屋揚巻:福助(雀右衛門) 同 白玉:孝太郎(芝雀)
福山のかつぎ:錦之助(松緑) 朝顔仙平:歌昇(権十郎)
くわんぺら門兵衛:段四郎(同左) 通人:東蔵(松助)
髭の意休:左團次(同左) 曽我満江:芝翫(田之助)
金棒引き:廣太郎・廣松

今月の東京の歌舞伎4座競演のためか、新吉原三浦屋見世先の並び傾城たちが従来よりも若く美しい。芝のぶや京妙、京紫も出ている。傾城が居並ぶところへ、花道から揚巻登場。3階B席からは福助の頭の方しか見えないが、美しく立派な揚巻。舟に乗っているように揺れる酔態も色っぽく、立女形としての堂々たる存在感に感慨深い。

左團次の髭の意休が孝太郎の白玉とともに花道から登場する。孝太郎も初役ということで初々しい様子がまたいい。意休は本命の揚巻を口説きたいのだが、揚巻には助六という間夫がいるのが悔しいので助六を盗人よばわりする。それに怒った揚巻が意休に悪態をつく「悪態の初音」の名台詞も可愛げたっぷりの憎憎しさでいい。意休をしっかり振って見世の中へと入ってしまう。
そこに助六の「出端」。傘をさして花道に出てきて河東節にのってしばらく踊る。やはり團十郎の頭の方しか見えないが、見えるところだけでも引き締まった顔で気力が漲っているのがわかる。
並び傾城「助六さんその鉢巻きはえぇ」
助六「この鉢巻きのご不審か~」
この声でしびれた。いつも台詞回しはいいと思えない團十郎だが、17回目の助六の気力の充実した台詞には降参だ。私も聴き慣れてきてしまったせいもあるだろう(^^ゞ並び傾城や新造から吸い付け煙管がどんどん受け取ったり、髭の意休を挑発したりするところも余裕たっぷり!海老蔵とずいぶん違うなぁ。

福山のかつぎの錦之助がとにかくいなせでカッコイイ!赤い下帯と法被だけの姿から踊りこんで引き締まった身体がのぞくのがまたセクシー。やっぱりこの役はこれでなくっちゃ。くわんぺら門兵衛の段四郎と朝顔仙平の歌昇のしどころも楽しめる。
意休の子分どもとの立ち回り。その喧嘩を白酒売が花道に現れて止めるので、助六は白酒売にも喧嘩をしかける。「どいつだ。大どぶへさらい込むぞ、鼻の穴へ屋形船を蹴込むぞ。こりゃまた何のこったい」。こりゃまた何のこったいのところの節回しと悪態をつくオーバーな顔がまた可愛いのだ。もうこのへんで團十郎助六の可愛さにハマった。

梅玉の白酒売の新兵衛も初役だというが、これがまたすごくよかった。この役は江戸和事の役ということだが、なんともやわらかな風情がよい。ここで助六が実は曽我五郎で、新兵衛がその兄の十郎だと明かされるのだが、やわらかいだけでなく武士としての品位がちゃんとにじむのだ。さすがに義経役者だ。紛失した源氏の重宝友切丸の行方を訊ねるための刀検めのために相手に刀を抜かせるための行動と知った兄は弟に謝って、ともに喧嘩をすることにする。喧嘩の練習の鸚鵡が可笑しいったらない。足を踏み込んでも内股になってしまい、「おおどぶへ、さらいこむぞ」と繰り返す言葉のコワイ内容と優しいしゃべり方のギャップ!梅玉にこんなに笑わされるなんて初めてだ。

ふたりが国侍や通人に喧嘩をしかけて股をくぐらせるところがまた可笑しい。東蔵の通人が時事ギャグネタを炸裂させ、二人の受賞ネタで爆笑をとっていた。ギャグは噂では知っているが見たことのないものばかり(「ウソ~」「どんだけ~」「おっぱっぴー」「そんなの関係ない」等等)。TVのバラエティ番組は極力見ないのだが、こういうところで教えてもらって有難いばかり(笑)
そこへ揚巻が侍を送って出てくる。助六は揚巻の浮気を怒って侍に喧嘩を売る。顔を見て次々と萎れる兄弟。母の曽我満江だった。五郎の放埓を戒めにやってきた母は五郎の本意を知ると赦してはくれる。仇討ちのための大事な身体を守るために無茶ができないように紙衣を与えて着替えさせる。神妙になる助六ってこんなに可愛かったっけ。芝翫の満江も貫禄十分だった。揚巻に預けた紙衣は「御誂」と大書された畳紙にくるまれているのがちょっと変だったけど(笑)

満江と兄が去ると意休が再び現れて、助六の本性を見抜いた上で仇討ちの本懐をとげるための意見をするという意外な場面へ。その手段として香炉台を刀で斬るが、そこで友切丸と知れてしまう。意休は本当は何者なのか。これは省かれている前の方の段でわかるらしい。五郎がすぐに取り替えそうとするところを揚巻が意見。意休の帰りを待ち伏せすることにして退場していく。

って、2回目の今回は退屈もせずに観ることができてしまった。世代交代した傾城役の女方陣と大顔合わせの立役が揃った舞台は華やかで芝居も濃厚だった。還暦を過ぎた市川宗家の助六は上演史上で初めてということだ。病気から復活した当代團十郎がそれを成し遂げ、それも十分若々しい助六だったのを褒め讃えたい気持ちだ。

世代交代前の「助六」を観ておかないといけないと思ってしまって、2003年1月歌舞伎座収録のDVDを買ってしまった次第。雀右衛門がもっと元気なうちに歌舞伎を観始めていればよかったが仕方がない。DVDでしっかり見せていただくことにしよう。
写真はDVDの表面だが、3階でここをしっかり観るなら東に行かないといけないが、ウェブ松竹だと指定してとれないんだよなぁ。
1/26千穐楽夜の部①「鶴寿千歳」
1/26千穐楽夜の部②高麗屋父子の「連獅子」

08/01/26 壽 初春歌舞伎座千穐楽夜の部②高麗屋父子の「連獅子」

2008-01-29 23:50:24 | 観劇

「連獅子」は、高麗屋父子のを一昨年正月のNHK新春桧舞台という番組で観たのが初めて。舞台で観た初回は昨年の中村屋父子3人のもの。
昨年10月の錦秋演舞場祭の「三人連獅子」の感想はこちら
さて今回の高麗屋父子の舞台はどうだろう。しっかり詞章も聞き取りながら観ようと、今回は以下のサイトをプリントして予習と膝に置きながらの鑑賞。
連獅子(正治郎連獅子)の詞章はこちら
【連獅子】
今回の配役は以下の通り。
狂言師右近後に親獅子の精:幸四郎
狂言師左近後に仔獅子の精:染五郎
時宗の僧遍念:高麗蔵 法華の僧蓮念:松江

やはり詞章を手元に置いていると意味も聞き取れて眠くならない。三味線は杵屋栄津三郎だなぁとか唄は誰だろうとか、いつもよりもしっかり双眼鏡を覗いてしまう。ただプリントアウトした詞章全ては唄われず、上演も長い短いいろいろあるのかなぁと推測。
染五郎はいつも切れのよい踊りを見せてくれるからまぁいい。踊りがあまり上手いと思ったことのない幸四郎だから、あまり期待をしないで観たのだが、思ったよりも丁寧に踊っているような気がした。
ちょうどこの週にNHKの「この人にトキメキ」に出ていたのを見ていたので、贔屓目に見てしまったのだろうか(^^ゞ
それにしても獅子が仔獅子を千尋の谷へ突き落して、なかなか登ってこないので「登り得ざるは臆せしか あら育てつるかいなやと」と嘆く様子はなかなか情感たっぷりの表情を見せていた。やはり幸四郎には悲嘆の芝居がよく似合う。(子どもに厳しくしてそれに応えてくれないからガッカリというのでは現代の子育てはできないなぁと思いつつ見てしまうのだが(^^ゞ)

時宗の僧と法華の僧の宗論の間狂言のところはやはり眠くなって目を閉じるところが多かったが、耳は起きていてしっかりとやりとりは聞いていた。なかなか面白い内容ではある。獅子が現れる気配を感じて怖くなった僧ふたりが山を下りて退場。
後シテの白いカシラの親獅子と赤いカシラの仔獅子が登場。3階B席なので後ろ向きの引っ込みが見えないところは残念。
髪洗いも毛振りも2人が揃っていないのを観たら、中村屋が3人で揃ったのはすごかったんだなぁとあらためて思った。しかしである。幸四郎はそれなりに一生懸命振っているように見えた。ゆっくりではあるが45回ほど毛振りをしてくれて、おぉ頑張ったじゃないかぁと感心。染五郎は何回か余計に振っていたが身体の回し方にメリハリがないような気がした。毛の振り方って役者によってこんなに違うものなんだろうか。

筋書に幸四郎のひとことのところで白鸚がつくった前シテの衣裳が新品のまま倉庫から出てきてそれを使うと書いてあった。着物の方が古風な感じがいいなぁと思っていたところだった。その姿で二人で極まったところの写真を1枚買った。多分高麗屋の3代で連獅子をするということはないんじゃないかという気がする。

写真は歌舞伎座前の酒樽の飾りと本日千穐楽のタテ看板。そういえばこの酒樽って中身は入っていないよねとかフッと疑問が湧いた。どなたかご存知だろうか(^^ゞ
1/26千穐楽夜の部①「鶴寿千歳」

08/01/27 演舞場千穐楽オフ会→保育所同窓会の忙しい一日

2008-01-27 23:59:04 | 観劇

新橋演舞場で「通し狂言 雷神不動北山櫻」千穐楽を観て、なかなか意欲的な舞台だと満足してオフ会へ。今日の観劇をしなかった白熊さんが6人分の席を先にとっておいていただいたので、演舞場組は終演後、有難くもすぐに座ることができた。そういえば、2006年3月の慶応大学歌舞伎研究会の中村錦之助襲名前の信二郎丈の芸談を聴く会にご一緒に参加したのとほぼ同じ顔ぶれで久しぶりにお会いできたのだと気がついた。
「雷神不動北山櫻」の海老蔵の奮闘ぶりはしっかり褒めていい。出演者の健闘を讃えて盛り上がる。また、様々な劇場の情報も飛び交い、近況報告も飛び交ってあっという間に2時間くらい過ぎてしまう。「ヤマトタケル」「風林火山」も先にチケットをとった人と同じ日に一緒に観る事にしようとか、そういう相談がすすむのも楽しいものである。こういう時にデニーズのよくばりドリンクは何杯でもおかわりができるので有難い。今日のところは次の予定が入っている私に合わせていただき、早めに散会となった。皆様、有難うございましたm(_ _)m

さて、次は娘の通っていた保育所時代の同窓会。お泊り保育とか親子の茶話会とかいろいろと保護者会活動が盛んだった年だったので、毎年毎年おかあさんたちの忘年会もしくは新年会が続いてきたのだ。中学校卒業の年にお世話になった保育士の先生もお招きして親子で集まったのだが、今回は成人を祝って同じように先生をお招きして親子で集まる。保護者の方でスナック経営の方がいらっしゃって、そのお店を貸し切っての一次会は今回はパス。二次会からの参加にしたが、子どもたちはカラオケに回るとのことで、バイトから回ってきた娘はカラオケへ、私は一次会に続けての二次会に合流した。本人が一次会に行けなくて先生たちも残念がってくださったが、成人式の写真も持っていって皆さんに見ていただいた。幹事さんが保育所時代の写真を貼ったアルバムを持ってきてくれたので、それも皆で懐かしがって回し見る。我が家のアルバムも整理し直してコンパクトに保存しやすくしたいと最近思いついていたので、その思いを強くした。

最後まで残った5人でたくさんしゃべったが、私ともう一人はこの地にもう住んでいないのでタクシーを呼んで駅まで向かった。帰宅はほぼ娘と同じような時間になった。それぞれ懐かしいメンバーとしゃべることができてよかったんじゃないかな。それにしても忙しくも充実した一日だった。
(ここ1/28追記)一次会までで帰られたメンバーで大分県に引っ越した母娘さんがいて、会えなかったのがとても残念だと思っていたら、翌日にメールをくれたので本当に嬉しかった。メルアドを幹事さんに聞いてくれたのだろう。是非、次回に上京の際には会いたいなぁ。

写真は、新橋演舞場のロビー等のあちこちにかかっていた海老蔵の写真パネルのひとつ。鳴神上人の姿のこれが一番気に入ったので、ガラスが光らないように斜めの角度で携帯で撮影したもの。美形が楽しめる写真。雰囲気はおわかりいただけると思う。感想はまた後日!


08/01/26 壽 初春歌舞伎座千穐楽夜の部①「鶴寿千歳」

2008-01-27 02:38:57 | 観劇

昨晩は市村×鹿賀両ご贔屓共演の「ペテン師と詐欺師」観劇でテンションが上がってしまい、夜なべしてしまった。そのために昼過ぎまで寝てしまい、夜の部というのにギリギリに到着するのがやっとの事態となった。
「鶴寿千歳」って観たことあるしなぁという油断がいけなかった(^^ゞ
【鶴寿千歳(かくじゅせんざい)】
今回の配役は以下の通り。
姥:芝翫 尉:富十郎
松:歌昇 竹:錦之助 梅:孝太郎
幕が開いて松竹梅の踊りが始まったところで着席。箏曲中心の御祝儀舞踊はお正月らしくっていいなぁとしみじみする。舞台の奥は普通の松羽目じゃなくて松などを描いたもの。次が「連獅子」だからちゃんと変えているのねと思う。
3人がそれぞれ松竹梅の枝を持っての踊っているが、松の濃い緑と竹の明るい緑の両方が綺麗だなぁ、錦之助、華があっていいなぁと見惚れる。萬屋、松嶋屋の掛け声がバンバンかかるのも千穐楽っぽくていい。
さて、後半の人間国宝のお二人は舞台後方の細長く切ったセリで上がってくる。エッ?二人とも白髪で翁と媼の姿なの??事前にネットで確認もしていなかったので、予想外の新鮮さを感じてしっかり見てしまった。

富十郎は茶筅髷というのか後ろに立てた髷に被り物で太閤になった秀吉みたいな頭。ここまで老けメイクのお姿は初めて見た。芝翫は私の媼のイメージの下げ髪ではなく、片はづし?のような鬘で政岡のように赤い着物の上に片袖だけはずした織の上着を巻きつけている面白い着付けだった。
芝翫の媼の方がシャキシャキと元気に踊り、富十郎の翁の方が動作が鈍く、おこつくと媼が介添えしてというしぐさが入った踊りが面白い。元気そうでも媼もおこつき、すると翁が気づかうという振りが微笑ましい。
小島に生えた松の根元に翁と媼が寄り添う人形を見た記憶が甦る。「なんでこんな人形があるの?」と聞いたら「長生きを願うんだよ」という答えを聞いた。あれは誰とのやりとりだったのだろう。
歌舞伎座百二十年の正月興行にふさわしいご祝儀舞踊だったというわけだ。舞踊は眠くなりやすい私も集中して見ることができた。うーん、歌舞伎は侮れないと痛感した幕開きの演目だった。

6日に観た昼の部の感想もまだ書いていないが、その日には気づかなかったが、今日1回のポスター掲示場所を見て驚いた。2月公演のポスター3種にびっくり。真ん中の染五郎の「春興鏡獅子」の弥生と獅子の写真を使った物はポスター用撮影の物だろう。以前の何かの公演用の写真の使い回しかもしれない。驚いたのはその両側だ。右に七段目の由良之介の幸四郎、左に「積恋雪関扉」の関守関兵衛の吉右衛門の舞台写真のポスターだ。初代松本白鸚二十七回忌追善興行ということで子と孫の3人のポスターを揃えてきたのか。気合を入れているなぁとかなり感心。ハイハイ、ちゃんと来月も観ますからね。

写真は今月の千穐楽の垂れ幕。明日は演舞場の千穐楽に行くので、今日はこれまで~m(_ _)m

08/01/25 ソニンで大化け!「ペテン師と詐欺師」

2008-01-26 23:59:23 | 観劇

「ペテン師と詐欺師」は「天王洲 銀河劇場」杮落とし公演の千穐楽で観た。鹿賀丈史と市村正親のミュージカルでの久々の共演で面白かった。
再演することはその時点でわかっていたのだが、感想でもリピートしたいかどうか微妙と書いている。ところが日生劇場での再演ということで安い席もあることがわかり、先行予約で2階B席最前列センターをすぐに確保。
二人がハートGETを賭けにするクリスティーン役が交代してソニンになったことで期待度がさらにアップ。ソニンは市村正親主演の「スウィーニー・トッド」で主人公の娘役で出ていてその綺麗な歌声に驚いたものだ。
今回の主な配役は以下の通り。‘’内の形容詞はチラシより。
‘洗練された手口で女性を虜にする’ローレンス:鹿賀丈史
‘バイタリティと愛嬌に溢れる’フレディ:市村正親
アンドレ:鶴見辰吾 ミュリエル:愛華みれ
クリスティーン:ソニン ジョリーン:香寿たつき

ローレンスの鹿賀丈史。初演時には以下にも初老の男の役で白髪を混ぜたオールバックのヘアスタイルの鬘だったのがあまりよくなかった。今回は白髪を入れずに前髪部分を少しふんわりと膨らみをもたせて後ろに流すヘアに改善されていてイイ感じになっていた。年齢にサバを読んで36歳になっているんだからこうでなくっちゃぁ!
冒頭からアップテンポな歌になるが、ここはどうも聞き取りにくい。音響のせいもあるが、鹿賀丈史はアップテンポな歌は苦手かも。それと舞台中心にやってきていないせいかもしれないと思いつつ聞いている。私が作品に思い入れがあまりないせいか、聞きとれなくてもリズムに乗って楽しければいいやと思っているせいか腹も立たない。

金持ちの女情報はぐるになっている地元警察署長のアンドレからもらって荒稼ぎしている詐欺師だが、鶴見辰吾とのコンビが絶妙でいい。鶴見辰吾は真面目くさって実務的にサポートしているのが実にいいのだ。
仕事をした後にほとぼりをさます旅行の列車の中でフレディと知り合い、フレディに気に入られて弟子入りを懇望されると、あまりの下品なキャラクターに興味を覚えてしまい、キャンディー代わりに特訓を開始。知性と教養を磨くためのオペラの場面とかも前よりも笑える。ローレンスがフレディに「その下品さがいい」とか褒めるが、それが馬鹿にしたように感じられないところに市村正親のキャラが生きている。アップテンポな歌は市村正親の方が聞き取れる。しゃべるように歌うタイプだから「ヴァンパイヤ」の博士の時の早口言葉のような歌も見事だった。

カモにしたアメリカの石油成金の娘ジョリーンが結婚を強引にすすめるのを愛想づかしをさせるためにフレディを狂気の弟に仕立て上げての大芝居。初演の高田聖子がよかったので、香寿たつきはどうか懸念を持っていたのだが、それを覆す大健闘。芝居の上手い人だとは思っていたが、そばかすたっぷりメイクの「強引グマイウウェイ」の成金娘をここまでやるんだ!歌も踊りもバッチリだし、さすが元宝塚のトップだと大いに見直した。

同じく宝塚トップの愛華みれのミュリエルも練り上げられていい出来。「美人だけどちょっと変な女」と前に書いたが、今まで出会っていないだろう恋愛に不器用な男アンドレに惹かれてしまうという可愛さのところの魅力が増した。
愛華みれがオケピの方に「あら貴女、可愛いわね。でも負けないわよ」と声をかけていたのは女性指揮者に向けてだった。恭穂さんの「瓔珞の音」の記事で女性指揮者が登場した感慨を書かれていたのを読んでいたので開幕してすぐに気がついていた。背中の半分くらいまで届く長い髪を束ねもせずに身体全体を躍らせての指揮がいいなぁと思っていた。ようやくこういう時代がきたのねぇと私も感慨深い。

さて、いよいよソニンのクリスティーン登場。カ、カワイイ!台詞が日本語らしくないところがやはりあるが、気にならない。日本のミュージカル界にマルシアやパク・トンハとか外国出身者が増えてきたのでに観ている方ももう慣れてきてしまった感がある。ちゃんと綺麗な声で聞き取れればよい。アップテンポな歌も初演の奥菜恵よりは聞き取りやすかった。とにかく身体の動きもいいし、胸の大きく開いた衣裳の胸もセクシー。顔も派手ではないのだが、描きようでどうにでも変化させられる舞台向きという感じ。そういえば次の「ミス・サイゴン」でキムに抜擢されていたんだっけ。

このクリスティーンから5万ドルを巻き上げるという勝負がペテン師と詐欺師の間に始まった。フレディはメンタル要因で歩けない男が治療費の工面に苦労しているという芝居に打って出る。素朴で健気なクリスティーンがほだされかかるとローレンスは休暇でホテルにやってきた世界的名医に化けて応戦。
クリスティーンは思っていた金持ちの娘ではなく、自分のお金を用立ててまで献身しようとしていると聞いたローレンスが逆にほだされる。今までこんな女の子とここまで向かいあったことがないので新鮮な驚き。クリスティーンがそのフレディに騙されたと聞いて5万ドルを弁償してしまうローレンス。
このあたりのローレンスの鹿賀丈史のせつない表情にやられる。ダンスシーンで軽やかに踊るのは若手に任せてもいい。せつないソロも聞かせてくれるし、こういう魅力が活かせるいい役だ。

バカンスの季節も終わり、二人ともこの地を去ろうとしているところにやってきた女。クリスティーン、じゃなくジャッカル!この変身後のソニンがまたワイルドでよい。ジャッカルの歌もしっかりと決まって、金持ちから金を巻き上げる新しいトリオの結成だ。金持ちしか騙さないっていうのは悪人に思えないという金のない多数派に痛快さを感じさせる設定なんだな。

3人の最後のポーズも決まった!思わず嬉しくなって思わず早めに拍手を始めてしまった。「ソニンで化けた!」という感動だ。「ペテン師と詐欺師」魅力度アップだ!!
これなら再演の度に一回くらい観てもいいなぁと思ってしまった。DVD出ないかなぁ。それで歌を聞き込んでまた観たいなぁという感じだ。でも今回くらいの席でいい。それで定点チェックを続けたいと思えた。

写真は前回の公演時に携帯で撮影した舞台上の幕。開演前とか幕間に下がっている。鹿賀丈史と市村正親の顔を英米の紙幣の人物の絵にアレンジしてあるのが楽しい。再演の今回はこのデザインを使ったオリジナルグッズがつくられていた(ハンドタオル・ストラップ・マグカップ)。原題の「DIRTY ROTTEN SCOUNDALs」のロゴを使ったプログラムやTシャツもあった。これは本腰が入っている!また再演があると思うなぁ。
追記
ホリプロの公式サイトの「ペテン師と詐欺師」はこちら。出演者動画コメントで二人はソニンのことをベタ褒めしている。
②鹿賀×市村共演の次の舞台はなんといっても「ラ・カージュ・オ・フォール」!99年の中日劇場公演で観てついについに12月の日生劇場で復活だ!!これは絶対はずせない!!!

08/01/19 新春浅草歌舞伎第二部②愛之助×七之助の「切られ与三」

2008-01-24 23:58:15 | 観劇

「切られ与三」を観るのは3回目。以下、過去2回の感想。そして今回は前評判も上々の愛之助×七之助!
仁左衛門×玉三郎 海老蔵×菊之助
【与話情浮名横櫛】
あらすじは上記の記事にあるので省略。
今回の主な配役。
与三郎=愛之助 お富=七之助
鳶頭金五郎=獅童 蝙蝠安=亀鶴
和泉屋多左衛門=男女蔵 番頭藤八=松之助
「木更津海岸見染の場」
浅草公会堂の3階席は花道がかなり見えるのが嬉しい。七之助のお富の登場で客席がどよめく。私の視界にも入ってきた!美しい~!!菊之助も綺麗だったが健康的な美しさ。七之助の方がお水っぽい美しさのような気がする。侠客に身請けされて妾になっているという女にふさわしい仇っぽさ。小山三が下女としてついてきているのが嬉しい。小さな頃から世話をしてきた七之助がこんなになって小山三もさぞ嬉しいだろうなぁとか勝手に思いながら見てしまう。
七之助は玉三郎に教わってつとめているというが、雰囲気が玉三郎そっくりだ。七之助の女方を初めて見た時からそう思ってきたのだが、玉三郎の若い時はこんな感じだったのかもという気がして仕方がない。女方としての色気が増しつつある七之助、本当にいい若女方になったなぁと思った。これなら与三郎が見とれて羽織が落ちても気がつかないほどというのも無理がないと思える。

愛之助の与三郎が獅童の鳶頭金五郎とともに登場すると二度目のどよめき。愛之助の台詞回しは仁左衛門そっくり!大店の若旦那らしい軟らかさが出せるのがいい。海老蔵の時はやっぱり無理かぁだったが、二人のニンの違いだろう。
花道の七三で浜から来た男とぶつかって「誰かに似ているねぇ」~「よっ松嶋屋」とかのやりとりがあるのだが、ここで羽織の片方の襟がぐっと下がりすぎた。そこで初めてここで下げておく段取りなんだとあらためて気づいた。下がりすぎが私は気になりつつだったが、直さずに舞台へ。
与三郎とお富が浜で偶然ぶつかって、目が合っての一目ぼれ。仁左衛門×玉三郎の時とは違って、なんとも可愛らしい恋の芽生えって感じがいい、可愛いぞ可愛いぞ。この可愛さは愛之助の和事の立役のなんともいえない可愛さがあるからだと思う。何度「可愛い」って書いてるんだろうか(^^ゞ
この可愛さに心引かれた七之助のお富が立ち止まり、下女とのやりとりの中で「いい景色だねぇ」とごまかす。七之助の声がいい(若手の女方の声では菊之助と並んで美しい)。それとこの場面は「梅ごよみ」の仇吉が船べりに立って丹次郎を見初めた時と似ているんだなぁと気づく。歌舞伎って受ける場面は使い回すんだなぁ。

舞台で見とれている与三郎。なで肩に引っかかっていた羽織がするすると滑り落ちる。この肩は女方を長くつとめた愛之助ならではという気がする。金五郎に羽織を拾われて指摘されて「知ってるよ」という声の可愛さ。しっかり裏返しになっていても見とれ続けるという茫然自失。やっぱり愛之助、可愛い。ミーハーモード全開でごめんなさいm(_ _)m
獅童の鳶頭も好演。
「源氏店」
お富の風呂帰り姿も一層色っぽい。番頭藤八とのやりとりはポンポンときっぱりしていて元深川芸者というのがわかる。藤八にせがまれて塗った白粉は玉三郎の時は「資生堂なんですよ」と言っていたが、今回は「芝居用の白粉なんですよ」だった。こっちが台本通りなのかな(笑)
亀鶴の蝙蝠安と連れ立って愛之助の傷だらけの与三登場。流し目のカッコいい亀鶴がきったな~いこんな役じゃ勿体ないよ~と思いつつ、上方歌舞伎役者どうしの共演が多いのか息が合っているのはいい。

「ご新造さん、おかみさん、イヤサお富、久しぶりだなぁ」~の与三の名台詞。愛之助は若手なのに音の上げ下げを伴う台詞回しも安心して聞くことができて、惚れ惚れした。これを楽しみに夜の部だけ観に来たのだ。満足~。
多左衛門が登場。父の持ち役をつとめる男女蔵。世話になっている多左衛門の前で与三を兄だといいつくろうお富。多左衛門が出かける間際に渡した守り袋?で兄妹とわかり「お前が兄さん!」。その真実をお富は与三郎に告げ、二人は多左衛門が出て行った方向を向けて拝むようにしながら、晴れて成就した恋の喜びが湧いてくる。

そうか、幕切れはこういうことだったんだ!これまで2回とも面白くない芝居だと書いてきたが、3回目にしてようやくこの芝居の面白さがわかったぞ。歌舞伎って何回も観るうちに面白さがわかってくる演目が多いのだが、これもそうだった。

「金閣寺」もこれも予想を上回る充実度!筋書は買わなかったが、雪姫の亀治郎と七之助と小山三のツーショットの2枚の舞台写真を買う(愛之助の可愛さが舞台写真では味わえずに見送り)。
るんるんと浮き立つ気分で帰る。芋の菓子屋さんで1個まるごとの焼きリンゴにスイートポテトを詰めた「アップルポテト」を思わず娘への土産に買ってしまった。私は観劇時には基本的には家族への土産を買わないのだが、ここまで浮き立った浅草歌舞伎だった。

写真は公演ポスターを撮影。チラシはヨコ版でこちらはタテ版。写っているみんなの表情・ポーズが少しずつ違うのがいい。誰はどっちの方が写りがいいとか楽しめる。いいんじゃない?!
第二部①亀治郎の雪姫+亀鶴の挨拶

08/01/19 新春浅草歌舞伎第二部①亀治郎の雪姫+亀鶴の挨拶

2008-01-23 23:57:49 | 観劇

この冬の私にとっての初雪。雪だから浅草歌舞伎の雪姫の感想を書こう。
「金閣寺」を観るのは4回目。雪姫は雀右衛門→福助→玉三郎、そして今回の亀治郎だ。感想を書いてあるのは玉三郎の時だけなのだが、今回は書く気十分!
2007年1/23歌舞伎座夜の部「玉三郎の雪姫」の記事はこちら
【祇園祭礼信仰記 金閣寺】
あらすじは上記の記事にあるので省略。
亀治郎の雪姫以外の今回の主な配役は以下の通り。
松永大膳=獅童 此下東吉=勘太郎
狩野之介直信=七之助 十河軍平実は佐藤正清=男女蔵
慶寿院尼=亀鶴 松永鬼藤太=いてう

獅童の大膳は初日あたりの評判が今ひとつようだったが、この日はなかなかどうして立派だった。国崩しの王子の鬘と悪役の拵えがよく似合う。獅童は大敵役を精進すると大歌舞伎の中で成功しそうな気がする。台詞回しも時代物風ではなかったけれどしっかり聞き取れた。私が一番最初に観た雀右衛門の雪姫の時の幸四郎の大膳よりもはるかに聞き取りやすかった。歌舞伎絵のようなメイクが映える顔だと思うし、もっと歌舞伎を本腰を入れて頑張って欲しい。

弟鬼藤太役のいてうは弟子らしいが、兄弟の囲碁の場面のやりとりも予想よりはかなりよくて、いい感じのすべりだし。

さて、いよいよ上手の屋台の障子が開いて亀治郎の雪姫が現われる。うっ、美しい~。それと雀右衛門そっくり!3階席から双眼鏡でしっかり見たが、目に入れた朱の形がおんなじだぁ。今回は雀右衛門に教わってつとめるとのことで、楽屋に雀右衛門の写真も飾っているという情報も聞いていたが、亀治郎の凝り性に感動。雀右衛門の雪姫は一回しか観ていないのに、亀治郎の雪姫のしぐさや動き方でふっと雀右衛門を思い出す。丸々そっくりなのだ。ここまで写してくるとは思わなかった。雀右衛門から亀治郎へという伝承が目の前でこの雪姫として動いている。そのことに胸が熱くなりながらの観劇。

勘太郎の此下東吉が生締頭、瓢箪柄の裃姿で出てくると、これも立派になってと感慨深い。吉右衛門の此下東吉の立派さにこの役の良さがわかったのだが、この座組の中で勘太郎は負けていなかった。「遅れをとること大嫌い~」が心地よく響く。
男女蔵の十河軍平実は佐藤正清も立派でよく、東吉と大膳の囲碁を軍平が見守り、雪姫が後ろ姿でうなだれているという場面も、これが浅草歌舞伎なのかという充実感でいっぱい。

大膳が倶利伽羅丸を取り出して滝に竜の姿を浮かばせるので、大膳こそ父の敵と知れて討とうとするところの凛々しさもいい。雪姫ってやっぱり三姫の中でも一番私好みかもとか思ってしまう。しかしながら非力。大膳に足蹴にされる姿もしっかり極まる~。
そして雪姫が縛られるのは玉三郎の時(文楽通り)と違ってやっぱり上手の桜の樹。雪姫が夫直信を意識して見ていた上手から縛られた七之助の直信が出てくるところは、上手どうしだとちょっと不自然だなぁと思いつつ、まぁ歌舞伎で定着してしまった型だからありかなぁと我慢。それよりも黒の着流し姿では七之助のあまりの華奢さが目だってしまい、ちょっと可哀相な気がした。
ドカ雪のように桜が散るのは雀右衛門襲名披露公演の時からだと『サライ』の雀右衛門の記事にあった。それがもう当たり前になってしまっているのねぇと妙に感心。

爪先鼠のくだりの亀治郎の身体の動きはすっきりしない感じがしてしまう。差し金の先についた鼠が縄を食い切ると身体が割れて中から花びらがまた盛大に撒かれるのを見てうまい仕掛けだなぁとあらためて感心。そういえば今年の干支だし、正月の演目にぴったりだと思った。

陣羽織姿にあらたまった東吉に促され、刑場に向かった直信を追っての花道の引っ込みでは刀が鞘走ったことに気づいて刀身で身づくろいをする型。玉三郎は大事な刀をしっかり袋にしまわずに走り出すことはありえないという解釈。その差もしっかり味わえるようになったのが嬉しい。

勘太郎の東吉は金閣寺の楼上へと下手の桜の樹を登る。その身の軽さが好ましい。姿を現した亀鶴の慶寿院尼。2年前の「御所の五郎蔵」でも留女をやっていたことを思い出す。
浅草の間口の狭い舞台でも金閣寺の大道具がちゃんと下がり上がりして、贅沢だなぁと嬉しくなる。再び階下になると東吉の軍勢に踏み込まれて槍を振り回して抵抗する大膳が登場。軍平も実は東吉がスパイとして送り込んでいた佐藤正清として花道から登場し、立役3人が絵面に極まっての幕切れとなる。獅童・勘太郎・男女蔵ともしっかりと拮抗していて、満足~。

先に昼の部を観た玲小姐さんから「浅草はもう新人公演じゃないよ(2年前は宝塚の新人公演みたいだとしゃべっていた)」と興奮冷めやらぬ報告があったが、納得の舞台だった。

【お年玉(年始ご挨拶)】=中村亀鶴
亀鶴の切れ長の目はかなり魅力的。「盲長屋梅加賀鳶」で亀鶴の御守殿門次のアップの舞台写真にクラクラして買ってしまったことを書いたが、今回も袴姿にニマニマしてしまった。大阪での歌舞伎鑑賞教室とかで慣れているような感じで、客席を巻き込んで拍手の仕方教室を始めてしまった。大道具のツケ打ちさんも紹介。ツケが打たれるところで拍手すれば間違いないという初心者向けのレクチャー。客席に降りるようで階段に向かったと思いきや、袴姿でトンボを切って降りたのでビ、ビックリ~。ご贔屓度なおさらアップ。

着物姿のおばさまを指名して見得も伝授。大きな封筒に入ったプレゼントを渡してた。サイン入り色紙かなぁ。いいなぁ、最前列(^^ゞ
写真は公式サイトからの公演チラシの画像。
第二部②愛之助×七之助の「切られ与三」

08/01/21 前進座の嵐圭史に遭遇↑と共済制度の不利益変更↓

2008-01-21 23:58:03 | つれづれなるままに

お返事コメントがすぐできていなくて恐縮ですm(_ _)m
明日以降きちんとさせていただきますのでお赦しくださいませm(_ _)m

勤め先の共済制度の大幅変更の説明会参加のために渋谷の本部に行った。エレベーターホールで見覚えのある役者さんが着物姿でマネージャー?と話しているところに遭遇。前進座の嵐圭史さんだ!
私の勤め先は前進座の全国公演に協力してきた歴史があるので、10数年前の「怒る富士」も嵐圭史主演で観たことがあるのだ。
追っかけていってお声をかけた。その話から今は自分でも「前進座友の会」に入って観ていますというような話をした。今年は10数年ぶりに「怒る富士」の全国公演企画があるので、それについての営業?にいらしたということだった。
「梅雨小袖昔八丈」の弥太五郎源七がよかったと褒めたかったのだが、なんとド忘れして出てこない(^^ゞ最新作を観てくれたか聞かれたが、それは観ていないけれど浅草に梅之助さんを観に行ったと答えたら「俊寛ですね」と言っていただいてようやく次に進むというテイタラク(T-T)
ボーっとしていてすぐに演目名が出ないというボケボケ状態が恥ずかしい。前進座の「俊寛」の独自演出の面白さを3点ほど褒めたら「ちゃんと観ていただいているんですね」と言っていただいたので救われた。
「ご活躍を祈ってます」と握手していただいて、「5月国立劇場の『怒る富士』を皆さんで観に来てください」と言われてしまった。本当は梅之助と共演の「法然と親鸞」の方に食指が動いていたのだが、こう言われると弱い。職場で「怒る富士」観劇のお仲間も募ることにしよう。
写真は2月の大阪・国立文楽劇場の「赤ひげ」公演のチラシ画像。やはり嵐圭史主演。素顔はこわくないです。笑顔の素敵なナイスミドルです。
前進座の公式サイトはこちら
肝心の説明会に出て落胆。改正保険業法の影響での制度変更=不利益変更の説明会だった。
①退職してから5年間毎月2万円ずつもらえる制度は継続されず、今までの積み立て分がいっせいに返却されてしまう。チェーっ。
②医療保険部分が共済では認められず、民間の団体保険を組み込んで対応することになる。そこで適応してもらえる病気の種類が減る、等々。
共済担当部門が役所に相当頑張ってくい下がったが認められず、保険会社とも折衝の末にぎりぎりのところでつくったという。そういう努力には頭が下がるが、結局働く者への皺寄せを強める政策の延長線上にあるわけだ。

気持ちをどこにぶつけよう?マイケル・ムーアの映画「シッコ」で観たように、要するに医療費を国で全額出す制度をつくってもらえば医療保険なんていらないのだ。そちらに気持ちを持っていこう。今回のようなことを重箱の隅をつついて怒っても自分が疲れるだけだ。国の政策を変えさせるようにしなくちゃ問題の抜本的な解決にはならない。
上野千鶴子の「軍隊での男女平等を議論するのは無駄」という話を思い出した。権力装置の有無を問うことが先であり、男女平等の問題はその先の話だ。そういう発想の転換で乗り切りたい。

08/01/20 中古のマッサージチェアとウォンカのチョコレート!

2008-01-20 23:59:42 | つれづれなるままに

娘の成人式の疲れをとろうと、木曜日の仕事の後でマッサージに行くはずが、風邪っぽいので職場の近くの耳鼻科に行った。前の日にゾクゾクしたと話したところ、子どもにも使いやすい大きなデジタル体温計を渡されて測る。計測が終ると大きな音で「メリーさんの羊」のメロディが流れるのがちょっと恥ずかしい。やはり微熱があり、風邪薬を処方された。

それを飲みつつ、金曜日の夜は国立劇場、土曜日は浅草歌舞伎の第二部を観劇。国立では舞踊の時に睡魔に勝てなかった。感想はゆっくり書かせていただく。

予定を入れていなかった日曜日。実家からお下がりで回ってきたマッサージチェアが配送されてくる日。何時に届くのか実家に問い合わせたが、そちらに連絡がいくはずという。母親が「どうせあんたの家は片付いていないだろうから私が行って片付けてやる」と言う。嬉しくないが、言い出したらきかないので「ホント散らかってるからね」と言ってきてもらうことにした。
さて当日は業者からの配送時間の電話連絡で起こされる。午後3時から6時の間の配達とのことだったと母親に電話。午前中にくると言っていたのになかなか来ない。乗換駅から電話をもらって、最寄り駅に出迎えに行く。1年くらい来ていなかったので駅前に新しい建物ができてしまっていてこれではわからなかったと言っていた。妹の家に行くのに1時間も迷子になっている人だから迎えに行って正解だった。

昼過ぎに来て弁当を買って持ってきてくれたので一緒に食べて、片付け始める。ベランダのアイビーやらの刈り込みもやってくれたのでお任せ。リビングに置くことにして、テーブルの位置やPCのプリンタを乗せていた場所なども変更。PCの電源をとる場所も変更しないといけなくなり、電気コードを別場所から伸ばすようにして、ガタガタといろいろ動かして、ようやく場所を確保してコーヒー休憩していたら、配送業者がやってきた。無事に設置!

遅くならないうちに帰らないと父親が心配だと帰るというのを自転車で駅まで送る。元々ひどいO脚なのが高じて変形性膝関節症になっていて定期的に膝に注射しているのだが、いくら言ってもステッキを使おうとしない。今日も指摘したが「使っても痛いのは同じだ」と言う。「それは使い方が下手だからで、うまく使えると負担が減ってもっと長く歩けるらしいよ。お母さん、カッコ悪いのが嫌なだけでしょう」と言っておいたが、まだまだ使いそうにない。自転車依存だからなぁ(人のことは言えない(^^ゞ)。

来る時はバイトに出かける娘とすれ違ったが、母親が帰ってしばらくしてから娘が帰宅。
「ウォンカのチョコレート買ってきたよ!」
バレンタインチョコの売り場に並んでいたとのこと。映画「チャーリーとチョコレート工場」のジョニー・デップが演じていたウォンカ氏の工場で作られているチョコレートを模したものだ。「WIN GOLDEN TICKET」と金色の部分に書かれているのもおんなじだと思う(写真参照)。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」で母娘でジョニー・デップにハマったのでTVでのオンエアを楽しく観たことで、現物を見た娘が喜んで早速買ってきたという次第。面白すぎ!
新作の「スウィーニー・トッド」も早く観たいと思っている。ジョニー・デップがソンドハイムの難曲をどう歌うのか楽しみだ。

08/01/15 NHK「プロフェッショナル」の玉三郎

2008-01-19 23:58:45 | テレビ

娘の成人式の疲れを引きずる1週間ではあったが、翌日のNHK「プロフェッショナル」の玉三郎の回はビデオ録画しながらちゃんと観た。
9・10・12月歌舞伎座での出演演目の稽古の様子や舞台裏、初日の舞台などの映像が続くとぐいぐいと引き込まれてしまう。
玉三郎は小児麻痺にかかり1歳半頃には歩けなかったし、その後遺症で右足が少し短いのだという。衣裳を着る時に足袋の中にフェルトを敷いている映像に驚いた。幼少期にかかった小児麻痺で足が不自由だったので日本舞踊を始めたという話を聞いたことがあるが、今でもそこまでしないといけないということは知らなかった。

5歳で観た六世歌右衛門に憧れ、6歳から14代目守田勘弥の許で日本舞踊を始め、踊りが大好きな子になった。才能を見込まれて14歳で勘弥の養子となり、5代目坂東玉三郎を襲名。女方としては背が高すぎて客席から笑いが起こった。背の高い女方の写真を見て必死に研究。衣裳の中で腰を曲げ膝を曲げて低く見せるという、身体に無理をしながら舞台に立っている。もともと病弱だった上にそういう無理をしながらの舞台。
ウィキペディアの「坂東玉三郎(5代目)」の項はこちら
19歳で主演抜擢して脚光を浴び大役が次々と舞い込む。翌1970年海老玉コンビで「鳴神」→その映像が流れたのだと思う。壮絶な仕事漬けの日々。30ヶ月も休みなしに舞台に立っていた24歳の時に心が折れたようになり立ち上がれなくなった。鬱になってしまう。「もうすぐ踊れなくなる。踊れなくなったら自分はどうなってしまうのだろう」という不安が強くなる。舞台に立てなくなった時のことを考えるようになり、30代には新劇の演出や映画の監督にも挑戦、高い評価を得た。しかしそれだけでは満たされない何かがあったという。
→そうか、多角的な活躍は試行錯誤の産物だったのか!!
「肉体的にはいつまで続けられるかわからない。しかし自分は踊りから離れることはできない」「いつしかこう考えるようになった」「ただ明日の事だけを考えよう」
その日の舞台が終ると家に真っ直ぐ帰って、身体のケアを徹底しひたすら身体を休めた(専属のトレーナーに身体をほぐしてもらって疲れをとり、ぐっすり眠る。声を気づかって友人との長電話もしない。初日の打ち上げにも出ない、等)。
気がつけば初舞台から50年。明日だけを見つめる一途な日々は今も続いている......。

予想を遥かに上回るストイックな方だった。またここまで踊りが好きな人なんだということに感心。駆り立てるものは名前のついた目標ではなく、生理的な衝動だという。
役者の華論議で出た話。「舞台には生き方が現われてしまう」。その生き方とは向上心があるか、ちゃんとやろうと思っているかということ。品行方正かどうかじゃないようだ(笑)
「漠とした何かのためにやっているが、それを見失う時がある。そういう時には天から見られているという思いが最後の拠所。嘘はつけない。生真面目にやる」
玉三郎の公式サイトの「今月の言葉」でも、自然環境と人間の関係のような視点で語っていることも少なくない。今回の番組でもやはりそういう意識が現われたようだ。地方巡業の時に海辺に立ち寄った場面。「自然の何気ない美しさ」に惹かれ、「さも無意識にそういう雰囲気が出たらいい」という。
無意識に美しいということを追求するというのは究極に難しいことではないのだろうか。

特に舞台の工夫で長く見せた2つの演目。「牡丹燈籠」ではベテランの仁左衛門が最後の場面の演技に迷っているのを助けられるような女方の演技を初日まで工夫していた。仁左衛門は玉三郎お峰の死に様を絶賛。この死に方を受けた仁左衛門の絶叫が思い出される。長年培った信頼関係を見せつけられる名コンビ。
「信濃路紅葉鬼揃」では振付師とともに動きを決めていくという演出の現場の映像が興味深かった。自分の稽古は後回しにして後進の女方を厳しく指導する姿にも納得。通し稽古で不安にさいなまれる様子にも本当に繊細な人間なんだなぁと感じたり(^^ゞ
後シテの鬼女の見得のアップも可愛い。
「安心して舞台に立ったら、これほどつまらないことはない」→常に不安にさいなまれることもおそれていないのね!
「プロフェッショナルとは、どんな状態でもこれだけのものをお客様に提供できるという線をきちっと保てること」→これぞ、玉さまの美意識!

自分でも見習いたいと思うことは数々あれど、なかなかできないことばかり。とりあえず東京での玉三郎の舞台はなるべくしっかり観ていくことをあらためて決意した次第。
写真は、NHK公式サイトのこの番組のコーナーより。この笑顔がまたいいんだよね。そうそう再放送があるようですよ(^O^)/
放送日:1月21日(月) NHK総合/デジタル総合
放送時間:翌日午前1:30~翌日午前2:30

9月「阿古屋」
10月「羽衣」
10月「牡丹燈籠」
12月「信濃路紅葉鬼揃」