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「さらば、わが愛 覇王別姫(はおうべっき)」は1993年にカンヌ映画祭パルムドール受賞した頃から気になっていたが、あまりの3時間近い大作ゆえに見逃していた。それが蜷川幸雄の演出する舞台となるからには観なければならない!
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玲小姐さんに映画のプログラムをお借りして観劇前にしっかり予習して開演を待つ!!
ウィキペディアの「さらば、わが愛/覇王別姫」の項はこちら
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原作:李碧華(リー・ピクワー) 脚本:岸田理生
演出:蜷川幸雄 音楽:宮川彬良
主な配役は以下の通り。
小豆子(シャオ・トウツー)→程蝶衣(チョン・ティエイー):東山紀之
小石頭(シャオ・シートウ)→段小樓(トァン・シャオロウ):遠藤憲一
菊仙(チューシェン):木村佳乃
關師傳(クアン師匠):沢竜二
袁四爺(ユアン):西岡馬
小四(シャオスー):中村友也
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カーテンが風に揺れ、小豆子が母親に追いかけられ、奇形の6本目の指を鉈で切り落とされ、京劇の劇団に入れられ、子どもどうしのいじめから小石頭に守られてその二人に絆が結ばれるまでがスピーディに展開する。「エレンディラ」のカーテン、「オセロー」のカーテン、そして今回もカーテンがうまく使われていると感心しきり。
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京劇の大スターになった主役二人が「覇王別姫」の舞台で登場。虞姫のヒガシくん綺麗~。項羽の歌はこの間の評判通り全く聞き取れないが、ストーリーには影響があまりないので気にしないことにする。遠藤憲一の低いハスキーボイスは台詞の時はまだいいが、歌を響かせるのは無理な感じだし、さらに髭を垂らしたあの扮装では絶望的に無理。プログラムの予習によると段小樓という男はカッコイイ男ではなさそうなのでこれくらいで十分なんだろうと解釈。
小樓は、蝶衣の自分への思いを知りつつも、娼館でなじみになった菊仙を現実世界の虞姫として選ぶ。
2時間で休憩なしの舞台はスピーディに進行。日本軍に支配された様子は大きな日の丸の旗を吊って表し、権力の移行はその旗を引き摺り下ろして晴天白日旗に変えられ、さらに中華人民共和国の赤旗へと変えられていくことで表される。
小樓は短気で血の気が多く思慮も足りずに時の権力に反抗して捕らえられたりするような男で、菊仙は恋敵の蝶衣に夫を救い出すよう頼む。蝶衣は京劇界の権力者である袁四爺を頼り、その思いのままになることで小樓を助ける。
蝶衣の楽屋には若い頃に拾って親方に育ててもらった捨て子の小四がやってきて、あなたのような役者になりたいと言う。「私を母さんと呼んで」という蝶衣にすがりつく小四。母に捨てられた傷を母になることで癒そうとする蝶衣。妊娠できた菊仙への対抗意識でもあるのだろうなぁと思いながら見ていた。
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兵隊から夫をかばったために流産した菊仙。袁四爺に覚えさせられた阿片に溺れ禁断症状で暴れる蝶衣を小樓・菊仙は必死に看病する。幻を見る蝶衣を生まれてくるはずだった子どもへの子守唄で慰める菊仙。
不思議な三角関係が長い年月続いていく。
それを壊したのが1960年代後半から吹き荒れた文化大革命の嵐だ。紅衛兵は批判の対象とされた人々に自己批判を強要。袁四爺、小樓、蝶衣も首に批判の対象だという象徴の名札を下げられて引きずり出される。小樓は菊仙のためにと蝶衣を告発するが、その裏切りに憤った蝶衣も小樓は娼婦だった菊仙と結婚していると告発。「娼婦だった女を愛しているのか」と聞かれて保身のために「愛していない」と言ってしまった小樓。
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カーテンの向こうには菊仙の首吊り死体。それを引きずり降ろして泣きじゃくる小樓の前で虞姫の最後の剣舞を舞った蝶衣は袁四爺が贈った古代の真剣で喉を掻き切る。
二人の愛する者の死体を前に小樓は自らの愚かさにただただ泣くばかり・・・・・・・。
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そのカーテンの向こうに冒頭の場面が繰り返され、2時間に濃密にまとめられた舞台が終わった。
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カーテンコールで現実に戻り、赤い提灯と中国の京劇の舞台を模した劇場空間を愛でつつ引き上げた。コクーンシートの左席だったので手すりのところに提灯を吊る赤い紐も見えているし、出口は中国の赤い柱状態だし、2階の最前列の手すりが邪魔だと見る席よりもいい感じだった。
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岸田理生の脚本で宮川彬良作曲の音楽劇としての舞台化だったが、特に違和感はなく、面白く観ることができた。岸田理生がどんな人かも知らず、今回ネット検索して初めて女性の脚本家とわかった。原作も女性、脚本も女性だからこその感性もしっかり感じ取れた。
プログラムを読んで気になったこと。ヒガシでこの作品をやろうという企画でヒガシが女形の蝶衣を希望したことに蜷川幸雄が驚いている。「ヒガシはもっと違う自分に出会いたいんだな」と。当初は小樓あたりを考えていたのだろう。それでは蜷川氏は誰を蝶衣に考えていたのかなぁと楽しい推測をば。月川悠貴じゃないかなぁとニンマリ。そういうキャスティングで再演してくれないだろうかとまたまた楽しい想像をば!
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(ちょっと追記)ユアンの西岡馬が素敵だったことを書くのを忘れていた。というか、今回の舞台で一番カッコよかったのだ。若い美しい男を愛する金も地位もある男の役といえば、「ヴェニスの商人」の時のアントーニオ役と重なるが、今回もとっても魅力的!
スケジュールがきつかったのに短期間の稽古でもなんとかと蜷川幸雄がくどいたという。確かに蝶衣と菊仙の二人が愛した小樓という男が器が小さい人物なのに、ユアンは蝶衣の心まで手に入れることはできないとわかりつつ愛し支える人物の大きさがあってこそ、このドラマが面白くなったと思えた。このキーパーソンに西岡馬がいてくれたからこそ、楽しめたということも大きかった。
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(追記その2)京劇のある場面で程蝶衣が歌った内容から「牡丹亭」だと気づいた。この3月は京都では玉三郎が、東京ではヒガシが「牡丹亭」を舞台に乗せている。昆劇→京劇と「牡丹亭」も引き継がれていると納得。また東西で京劇がらみの舞台を上演しているのは、北京オリンピックイヤーだからだろうとも気づいた。無事に開催できるといいけれどね。
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写真は今回公演のチラシを携帯で撮影。
Bunkamura連動企画の映画版のル・シネマの上映企画も4/10に観る予定。