07/09/28 TVで平成中村座NY公演「法界坊」


ついにNHK教育TVで「平成中村座ニューヨーク公演2007“法界坊~隅田川続俤~”」を観られる日がやってきた!前回の「夏祭浪花鑑」も同様にTV鑑賞。
友人が転職の合間にちょうどその時期のNYに短期の勉強に行っていたので、メールで観劇をすすめて当日券で観てもらったら面白かったという。筋書をお土産に買ってきてくれたが、納涼歌舞伎の時に歌舞伎座でも売っていて日本で買うほうが安かったような。まぁ日本でつくってNYに運んだ経費が乗っているということで(^^ゞ写真はその裏表紙のロゴマーク部分を撮影したもの。
(追記)スキップさんの「地獄ごくらくdiary」の筋書についての記事もご紹介

2005年の納涼歌舞伎で「串田戯場(くしだワールド)法界坊」観た時の感想はこちら
一昨年の納涼歌舞伎が「法界坊」の初見。歌舞伎座の舞台の上に江戸時代の芝居小屋の雰囲気を作り出した装置が印象的だった。勘三郎の左右を塗り分けた顔の合体霊による宙乗りまでは楽しかったのだが、「双面」の舞踊劇でガラッと雰囲気が変わるのについていけなかった。
今年の純歌舞伎版の「法界坊」が2回目。「双面」の舞踊劇の合体霊は野分姫をやった染五郎で見てこういうのもアリかなぁと思えるようになった。前半→後半も歌舞伎テイストの統一感があったせいかもしれない。
今年の演舞場の「隅田川続俤」の感想はこちら
はてさて今度の「串田版・法界坊」はどうだろう。
主な配役は以下の通り。
法界坊=勘三郎 道具屋甚三=橋之助
永楽屋権左衛門=彌十郎 娘お組=扇雀
手代要助実は吉田松若丸=勘太郎
番頭=亀蔵 大阪屋源右衛門=笹野高史        
松若丸許婚・野分姫=七之助 若党五百平=山左衛門

今回は串田和美が黒衣姿で舞台に登場。要所要所に出て狂言回し的な役割も演じる。要助に筆と紙などの小道具を渡すところでは勘太郎を自分の方に気づかせるためにトントン叩いたりして存在感のある黒衣という本来のありようを真逆に使った手法で笑いをとる。
全体に歌舞伎座版よりもかなり派手に笑いをとる演出になっている。評判になっていた勘三郎の法界坊の独り言の英語の台詞もなかなか堂々としていた。客席との英語のやりとりも盛り上がっている。さすがにいい役者は耳がいいから普段使い慣れていない外国語の台詞でもきちんとこなせるのだなぁと思った(「大地の子」の上川隆也も然り)。             
笹野高史の半端な白塗り顔の大阪屋源右衛門が滅茶苦茶可笑しい。お組に言い寄るところ、かなりドギツイ下半身の動きにまいった。最後に顔をスッパリ切られてから短いトランペットを吹いたのにはもっとまいった。「上海バンスキング」のバクマツの技だ。終演後の観客インタビューでもここが面白かったという声もあり、NYでウケル演出になっていたわけだ。

それと私が一番気になっていた、前半の芝居から後半の「双面水照月」の移行部分がとてもわかりやすくなっていた。法界坊と野分姫の合体霊の宙乗りはない。合体霊が赤姫の衣裳からしのぶ売りに身をやつしたお組の衣裳に変わるところも見せ、後半の舞踊劇に偽のお組に化けて出てくるのを無理なく受け止めることができる。

前回の違和感=「合体霊が後シテ、甚三郎が押し戻しのようになって終わるのがなんか道成寺みたいで変」って思ったのが、今回は肯定的に受け取れた。
「双面水照月」だし、川水デザインの衝立を何枚も動かして合体霊が少しずつ変身していくのが見事。美しい女→本性をさらけだしてハジケを出した状態→ぶっかえった状態→また引き抜いて顔も髪型も悪霊的な男のようになった状態で赤い台の上にたっての幕切れ。これは超喜劇→歌舞伎の舞踊→荒事風の絵面の幕切れと、歌舞伎の面白い要素を全部見せてくれた感じだ。

ブロードウェイもあるNYの演劇界でも、これならば相当インパクトがあったはずだと納得。歌舞伎座建替えの際はしっかりとNYで本格的な公演をうってほしい。
ただし、気になったのはけっこう空き席があるのが映像でもわかったこと。友人も「当日券ですぐ観れたけどチケット代が高い。これじゃぁ普通の人が観られないから勿体ないよ」と言っていた。空き席が出ないレベルの価格設定も検討すべきだろう。

あとひとつ気づいたこと。以前、朝日新聞の夕刊で読んだ勘太郎の記事。勘三郎の一家は世界のディズニーランドを全部制覇しているという。歌舞伎役者の家ではうちだけでしょうとのこと。フロリダのあるアトラクションでは夢の世界に感動して泣いてしまったとのこと。なるほど、中村屋のエンタメ度の高い芝居はディズニーのエンターテインメントと通ずるところがある!アメリカでもウケルはずだし、日本のディズニーランド好きの世代にもウケルはずだ!!
                        
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07/09/27 お返事コメント遅れのお詫び、他

今日も接骨院で首の牽引で遅くなってしまい、帰り道に職場の先輩に偶然に出会ってしまって御飯も食べてきてしまった。久しぶりだし嬉しかった。

しかしまたまた記事アップできず(^^ゞ
今は秋の花粉の喘息のため、飲み薬による倦怠感もすごくて昼間も意識が遠のいていることもある。接骨院で「上を向いて横になると寝苦しい」と言ったら柔道整復士さんに「気管支が弱っていると肺の重みで気管支が圧迫されると苦しい」と指摘されてしまった。だから電車の中で座れると楽に息が出来てすぐにおちいる様に(笑)寝入ってしまうのねぇ。

秀山祭は「竜馬がゆく」しか書けてないし、文楽も手付かずでちょっとあせるが、ボチボチ書いていくことにする。
皆様、お返事コメント遅れててごめんなさいm(_ _)m
少しずつお返事しますので、気長にお待ちくださいませ。

追記
マイミクシィさんのところで明日9/28(金)22:25 ~1:00、NHK教育 劇場への招待-平成中村座ニューヨーク公演“隅田川続俤 法界坊”放映の情報が!
見たい番組もチェックが甘いのでついつい見忘れることが多いので有難い。しっかり観ようと思っている。
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07/09/24 9月文楽千穐楽は吉田玉男師一周忌の命日


9月の国立劇場小劇場文楽は17日で昼の部、24日千穐楽に夜の部を観劇。千穐楽は吉田玉男師一周忌の命日ということもあってその日のチケットをしっかりとった。ロビーには命日ということで顔写真にお花を飾ったコーナーが設けられていた。実にいい笑顔の写真。私の文楽デビューは2年前の9月。その公演から玉男師は体調をくずして休演され、ついに舞台で姿を見せていただくことがかなわなかった。5月公演でデビューしていたら間に合ったのにと、とても残念に思っている。

小劇場ロビーには玉男師の遺品が展示され、裃やら人形拵えの針道具やらもガラスケースに入れられて並べられていた。壁には楽屋のれんが2種類。写真は「曽根崎心中」柄ののれん。

2階の食堂の横のスペースには小規模ながら「吉田玉男写真展」が開催されていた(さちぎくさんの記事をご紹介)。

また『吉田玉男文楽藝話』発売についてのさちぎくさんの記事も読んで、昼の部を観た時に筋書とともに買ってきた。もちろん今月の演目は最優先で読んだ。こういう芸談を読んだ上で舞台を観るとさらに味わいが深くなるのが有難い。実際の舞台は観ていないが、こうした形で経験を世に残していただけることは大きな文化功労だと思う。感謝m(_ _)m

また今年のNHK日本の伝統芸能の「文楽入門」も第2クールの放送の今月、しっかりビデオ録画しながら観ている。今年は住大夫・文雀という人間国宝コンビが解説者になっているためか、文楽が5週分を確保しているので見ごたえがある。時代物の映像は2月に観た「合邦」というのも嬉しい(国立劇場11月の歌舞伎公演もしっかり観る予定)。
「文楽入門」も3年観ている。少しずつわかるようになってきたので上記の芸談もなんとか読みすすんでいくのに大きな支障がないようなレベルになってきた。嬉しいことである。
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07/09/23 井上ひさしの「ロマンス」!


こまつ座とシス・カンパニーとの初の共同制作による「ロマンス」。井上ひさしのチェーホフ評伝劇!出演者の豪華な顔ぶれに観るしかないと即決。
チェーホフ劇は高校時代に劇団四季の「桜の園」、何年か前の岩松了演出の「三人姉妹」を観ただけだが、何を言いたいドラマなのかよくわからないという印象でリピートしようという気がおこらない。それなのに世界中でもてはやされている。そこらへんもハッキリさせたいという思いが私にはあった。

チラシにあるストーリーが初日ギリギリに仕上がる脚本では全く別の展開になることも少なくない井上作品だが、今回も同様だった。8月に開幕して皆さんのブログレポを読むとやっぱり状態。
朝日新聞のサイトのインタビュー記事に下記のようにあった。
「初めはチェーホフに尽くした妹マリヤ(松たか子)と、妻になった女優オリガ(大竹しのぶ)の葛藤を軸にするつもりだったが、「素晴らしい男優陣(木場勝己、段田安則、生瀬勝久、井上芳雄)を女優激突の間で便利に使うのは申し訳ない」と、チェーホフの生涯を年代ごとに4人が演じるスタイルを考えた。」

4人の交代は自然に無理がなく、6人全員が中心となる役として登場しない場面では別の脇役を本格的にやっている。井上ひさしはどの人物も魅力的に書くが、芸達者が揃っているだけにどの役も本当に血肉が通っている。また、既存の音楽も使いこなすおなじみの宇野誠一郎の音楽で、全員が歌う。チャイコフスキーの「ロマンス」がいい。ミュージカルスター井上芳雄や松たか子の歌も突出していないので全体のバランスもよい。

田舎町の中学生時代から芝居小屋に潜り込んででも観続けたボードヴィル(ボロボロの貧乏苦学生は井上芳雄)。「アメリカンボードヴィル」とは違う「欧州型ボードヴィル」だという。歌も笑いの要素てんこもりの軽演劇といったところだろうか。浅草フランス座の文芸部員だった井上ひさしと重なるわけで、まさにこの評伝劇時代も「井上風ボードヴィル」としての上質な舞台となっている。
その中で大きな役割を果たしたのが生瀬勝久だと思った。NHKの「サラリーマンNEO」でも御馴染みのコメディセンス。大竹しのぶと共演した「メディア」では彼女を裏切った夫役を正統派として演じていて見直していたのだが、今回はその両面をきっちりと演じ分けて絶妙。苦学をして優秀な成績で医師になるあたりの正統派演技と、晩年の場面で見舞いにあらわれるトルストイ翁が人生訓を披露するときの喜劇味の軽妙さ(語りだしは「ワシは人生は拷問室だと思っているから、君が今苦しいのは仕方がない」。それをどうやり過ごすかの人生訓)。
井上芳雄もマリヤに求婚するイワンが予想以上の出来。蜷川演出「ハムレット」のレアティーズで苦しんでいた頃が嘘のようだ。チェーホフにつく実習生のド近眼の青年医師もよし。こまつ座の舞台は頻繁に観ているようで、「私はだれでしょう」観劇会で遭遇したのも懐かしい。今回は前から3列目で見たが、あらためて「井上くん、足長いなぁ」と感心。最後の役、ごま塩頭の鬘と髭をつけた演出家スタニフラフスキーは秋篠宮にそっくりで「やっぱりプリンス役者だなぁ」とクスっと笑えた。

チェーホフをめぐる妹と妻の葛藤劇のドロドロだったらちょっとコワイかもと恐れていたが、それほどでもなくてちょっと気が楽だった。妹と妻が親友になるが、オリガがチェーホフと結婚してからのマリヤの微妙な感情を松たか子が好演。
大竹しのぶは前半のチェーホフの診療所にあらわれる14等官の妻役もよかったが、逞しい老婆の役をこれまた楽しそうに演じていてこちらまで愉快になる。後半のオリガもまさに女優という業も感じさせながら、チェーホフにとっては可愛い妻。チェーホフ劇に主演して押しも押されぬ大女優になってしまったオリガ。彼女の活躍するモスクワの冬に耐えられない肺結核のチェーホフ。ふたりの間の書簡は公開されているだけでも400通を超しているという。その冒頭の呼びかけを回顧しながら交わされるふたりの愛にあふれる会話を見聞きしてしまった妹マリヤの驚き!妹である自分では兄にかなえてあげられないことがあるというショック。
兄のために生涯独身を通してしまったマリヤ。彼女は自身では夫婦愛の幸せを知ることがなかったのだ。そして二人はチェーホフが44歳で早世した後も長生きする。晩年に二人で写った写真がプログラムに載っているが立派だ。

段田安則と木場勝己については長くは書かないがとにかくもう達者。木場チェーホフと大竹オリガの愛の囁きなどは若くない夫婦の愛情表現の温かさに包まれてしまう。
井上ひさしボードヴィルは、人生に対して熱い姿勢が根底にあるので心が温かくなる。舞台を観て感動、観劇後にプログラムを読んでまたまた感動の余韻にひたっていた。

冒頭の朝日の記事によるとモリエール(当初書いたモーパッサンは間違いですm(_ _)m)、晩年のシェイクスピアの評伝劇も書きたいと言う。海外作家の評伝劇3部作だ。そちらもはや楽しみになっている。

写真は公式サイトより今回のチラシ画像。
追記
冒頭に書いたことについての考察も書く。チェーホフは初期の頃は滑稽小説を多く書いていたのにだんだん文学文学したものになってしまい、そして戯曲に重点を移した。晩年の作品もあくまでもボードヴィルとして書いたつもりなのに演出家が叙情劇に仕上げてしまうのだという。本人が意図したことが実現しないギャップによる失望感も抱いていたようだ。そういう事情をわかった上でも「桜の園」や「三人姉妹」の滑稽味さというのは、単純なストレートさがないために全体に埋もれてしまうのではないのかと推測した。
6月につくった「井上ひさし作品の観劇の感想のリンク記事」もつけておく
②次に観る予定のこまつ座の「円生と志ん生」のサイトもご紹介。職場の観劇会の幹事に立候補済み!
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07/09/20 「ドラクル GOD FEARING DRACUL」にやられた!


吸血鬼物はクリストファー・リー主演の映画をTVで観たのが最初。少女期に萩尾望都の漫画「ポーの一族」にハマり、TVで映画「インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア」で永遠に死ねない呪わしい運命に生きるせつない吸血鬼物こそ王道と思うようになった。以下、ウィキペディアの項をご紹介。
「ポーの一族」 映画「インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア」
しかし、帝劇のミュージカル「ダンス・オブ・ヴァンパイア」でずっこける。呪わしい運命をせつなく歌い上げていたら主な出演者全員が吸血鬼になって踊って終るというその統一感のなさにガッカリし、感想アップもできなかった。
久しぶりの吸血鬼物。海老蔵も悪くないが宮沢りえが観たい。長塚圭史の作品も今回が初めて。力を入れすぎずに観ることにした。
さて、どうだったか?

【作・演出】 長塚圭史
主な配役は以下の通り。
ブランシェ(狂言回し役を兼ねる)=山崎一
レイ=市川海老蔵 リリス=宮沢りえ
アダム=勝村政信 エヴァ=永作博美
吸血鬼マリー=明星真由美 吸血鬼ジャン・ジャック=山本亨
医師カミュギル=渡辺哲 司教=手塚とおる
(アダムの臣下)ラーム=市川しんぺー (同)プット=中山祐一朗

宮沢りえの華奢な美しい姿に長引く病気に伏せる美女のリリス役はまさにぴったりだ。医師カミュギルが往診にきて惚れこみ、なんとか自分の手に入れようと毒を使ってまで策を弄するのも無理がないと思える。医師カミュギルの渡辺哲は老いらくの恋に狂う男の可愛さを好演。
宮沢りえの大きな目は、その強い意思をのぞかせる。無邪気に子どもの血を吸っては内臓をえぐりだす悪魔だったレイに手をさしのべ、ともに贖罪の生活に入ろうと説得する力があったリリスという役にこれほどふさわしい女優はいないように思えた。
レイが人間だった時の名はジル・ド・レ。ジャンヌ・ダルクにさしのべられた手をとり仕え、ともに闘った。彼が子どもを大量虐殺したのは、火刑にあったジャンヌを生き返らせる黒魔術に生血を使うからだったという。その罪でジャンヌ同様火刑にあった彼が吸血鬼レイとして甦る。この設定には少々無理を感じたが(^^ゞ。
そして狂言回しのブランシェ。先祖が主だったジル・ド・レの狂った行動を止められなかった責めを負って、子孫代々レイを見つめ続ける定めを果たしている。そしてジャンヌ・ダルクに山崎一といえば、同じこのコクーンで2月に観た「ひばり」のイメージが重なってゾクゾクしてくる(これってねらってない?!)。

レイを元の吸血鬼の仲間にしようとするマリーとジャン・ジャック。マリーの明星真由美は宮沢りえともども「ロープ」でこの舞台に立っていた。プロレスラーの愛人役だった明星の大柄な肉体派のイメージがうまく活かされた女吸血鬼。キャスティングがよすぎる~。

ある日、一人の使者プットがリリスを訪ね、かつて彼女が領主の妻として過ごした街に戻って欲しいと懇願する。断るがその上使のラームに誘拐される。邪魔立てしたプットをラームが刺して流れた血とリリスの不在がレイの自制心を打ち砕く。
それまでの衰弱しきったレイからプットの血を吸うとパワー全開。リリスを追っていくところで一幕終了。
衰弱し神に祈る吸血鬼の役の海老蔵、予想以上によい。また気合を入れてダイエットしたと思われ、宮沢りえと並んでもひけをとらない顔の細さ。八の字眉が似合う男になってきた(第一位は仁左衛門だが(^^ゞ)。発声もいつものつっころばしのように気が抜けた声になっていないし、○。ただ、課題としていた300年生きている憂いはまだまだ漂ってこない。このあたりは山口祐一郎のクロロック公爵の憂いは素晴らしかったので年の功が必要なのではと思う。

二幕目はリリスの元の夫の国が舞台。領主アダムと現在の妻エヴァの夫婦仲はしっくりいっていない。アダムはリリスが忘れられず、エヴァは夫の愛を得られない怨みのこもった表情を始終見せている。永作博美は大河ドラマの淀の方の凄味の効いた演技を思い出すが丸顔があまり好みではなかった。今回のエヴァは驚いた。額を広く出して結い上げた髪形だと丸顔に見えない。眉もなくアイシャドゥを効かせたメイクも夜叉のような顔を作り出し、愛する男への怨みに支配された哀しい女がそこにいた。生臭な司教と通じ、リリスを激しく憎み罵る。しかしリリスの口から過去の真実を聞いた時に初めてお互いの不幸に気づく。
アダムの勝村政信は剛柔どちらの役もうまい。「コリオレイナス」で猛将をやっていたと思ったら映画「HERO」ではふられ男だった。今回のアダムは領主の器量もなく子種もないのにその地位を守るために、司教の奸計に乗せられるという哀れ極まりない男。愛する妻リリスを不幸のどん底に突き落とした。

生臭司教の手塚とおるは初見だが、この物語で一番悪い男を飄々と演じる。ただし残念ながらあまり好みではない(^^ゞそんな男が我らが(オイオイやられているゾ)レイを聖水をふりかけることでやすやすと捕まえるのはちょっとちょっとそんなぁという感じがしてしまった。アレ?ジャン・ジャックとラームをやっつけただけでレイのパワーの見せ所はおしまいか。
またまた衰弱した吸血鬼レイは極めて労力を要しない処刑方法をとられる。檻に入れられて朝日のあたる場所に放置されるのだ(→アダムの慈悲で朝日の射しこむ天窓が開けられたという台詞を聞き逃がしていた。司教は神の権威を高める道具として生かしておくつもりだったようだ。お詫び訂正するm(_ _)m)
リリスは教会の塔の上で白い衣を纏う聖女としてペストに冒された街の人々に勇気を振るい起こさせるために祈りの姿をさらさねばならない。
残されたわずかな時間にリリスはレイに話していなかった自分の罪を告白する。夫の子どもではない赤ん坊を床にたたきつけて殺してしまったという罪。その大罪を神に赦してもらうためにレイという悪魔の贖罪を並べたかったのだという真実の姿を曝け出す。その身勝手さを「赦す」というレイ。ふたりで過ごした日々を「楽しかった~」「だから赦す」と無邪気な子どもにかえったような声で言う。そして最後の時までリリスに手を握っていて欲しいとせがむのだ。そこに小さな奇跡が起こる。冷たかったレイの手にぬくもりが宿り、それを確かめるように強く強く握りあう二人の手。プログラムの裏表紙の写真はこの手のアップなのだ。
人と人の「信じる」「赦す」心。そのために「手をとりあうこと」。
最初から最後まで弦楽の演奏をバックに原田保の青い光を主に使う照明の中に沈鬱にすすんだドラマの最後は、ぬくもりを救いの予感をもって終る。私が今一番欲しいものだ。
スプラッタドラマを書くという長塚圭史。まぁ吸血鬼物だからスプラッタ場面いっぱいあったけどそれは違和感なし。プログラムも熟読したが、いつもと違って翻訳調で書いたのだという。それもアヌイ劇「ひばり」のイメージと重なったかもしれない。海老蔵と組んで吸血鬼物をやることになっていろいろ調べてジル・ド・レが吸血鬼になった設定にしたという(本物はジャンヌ復活を望んで大量虐殺をしたわけでなかった)。リリスという名前も聖書にあるアダムと別れてルシフェル(悪魔)と結婚した女の名だという。なかなか有望な人材だと認識。だからといって続けて観たいとまでは思わないけれど、一応チェック対象には入れておきたいかな(^^ゞ

家で娘にこの話をしたら登場人物の名前がまるで「エヴァンゲリオン」みたいだという。綾波レイ、リリス、アダム、エヴァ。「エヴァ」の世界にハマるオタクたちもけっこう奥深そうだ。

プログラム掲載の海老蔵×長塚圭史の対談。海老蔵は長塚に歌舞伎を書けとも言っていた。海老蔵の意欲は買える。しゃべり方がまるでヤンキー。ヤンキーが生理的に苦手な私には好みではない。好みではないのに舞台のこの魅力はなんだ?!やっぱり要チェックな役者ではある。
そうそう歌舞伎で復活ものをやるとも言っている。そうしたら私が買わなかった「憑神」の筋書に来年1月演舞場で「鳴神不動北山桜」の通し上演をやるという予告があったとharukiさんの「くだま記」の記事に書かれていた。これはしっかり観ないといけないなぁ。
写真はチケット発売当初のチラシ画像。
bunkamura公式サイトの特集ページはこちら
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07/09/16 新橋演舞場「憑神(つきがみ)」


橋之助とG2がタッグを組んでの新橋演舞場第2弾は「憑神(つきがみ)」。昨年9月の「魔界転生」は予想以上に面白かった。そこで今回も迷うことなく3階B席GET。花道の真上だけど1列目だし全く文句なし。
両脇を熟年の男性陣の中に紅一点(笑)で座った。やっぱり原作が浅田次郎だからそちらのファンが多いのだろうかと思った。しかしすぐ左2列のおば様たちが開演してもしゃべっている。それも5~6人のグループ。役者が誰よねとか確認しあってなかなか静かにならない。両脇のおじさんたちが露骨に嫌がっていたが、私の方が先に堪忍袋を切って暗い中を立ち上がって押し殺した声で「静かに」と注意させていただいた。効果アリ。冒頭は土手の上での主人公の立ちションの場面だから緊張感がないといえばそうなんだけど、自分たちのグループだけ楽しければいいという態度はいかがなものか?!またうるさくなったら幕間に係員に注意を頼もうと思ったけど、それはしないですんだのが幸い。

概要は以下の通り(あらすじは松竹の公式サイトのものに配役を追加)。
脚本・演出=G2 美術=金井勇一郎
幕末の江戸。下級武士の別所彦四郎(中村橋之助)は、婿養子先から離縁され、妻(藤谷美紀)や子と離れ離れに。もともと別所家は、代々将軍の影武者をつとめる由緒ある家柄であったが、今は雑用ばかりの御徒士の中で甲冑の管理を請け負っていた。実家に出戻った彦四郎であったが、別所家のお役目は兄(デビット伊東)がつとめ、兄嫁(秋本奈緒美)にも邪魔者扱い。タダ飯食いの毎日で母(野川由美子)と肩身の狭い思いをしていた。
そんなある日、ひょんなことから朽ちかけた祠に出合う。三巡…?出世稲荷と名高い三囲稲荷と字が違えど、困ったときの神頼み!と、手を合わせたのがはじまりだった…。なんと現れたのは、神は神でも憑神さまだったのだ!以下省略。

「三巡」とは憑神が3人巡ってくるということなんだという。3人の憑神は人間にも見える姿で現れる。
1番目:貧乏神(伊勢屋)=升毅
2番目:疫病神(九頭竜関)=コング桑田
3番目:死神(おつや)=鈴木杏
主人公の彦四郎は榎本武揚の親友という設定。「新選組!!」スペシャル番組で土方歳三とともに片岡愛之助演じる榎本武揚が五稜郭にたてこもっていたっけ。榎本武揚のウィキペディアの項はこちら
釜次郎と名乗っていた頃からの榎本を葛山信吾。「宝塚BOYS」でもよかったけれど、今回も海軍の制服が長身に似合ってカッコいい!今回一番美味しい役かもしれない。

彦四郎は婿入り先の家がつとめる御家人としてのお役目を生真面目につとめていたことが裏目に出た。ゆるくおつとめをしたい同僚に疎まれて、追い払うべく罠を仕掛けられて失職。そのために舅(螢雪次朗)に愛想をつかされ離縁させられた。剣術の腕も半端でなく三河以来の徳川家の家臣であることに誇りをもった武士。しかしながら倒幕側の勢いは増し、大政奉還、江戸の無血開城、慶喜は水戸に蟄居と醸成は大きく動く。
それにしても榎本釜次郎が乗り込む開陽丸と薩長軍の軍船の海戦の場面は秀逸だった。貧乏神と疫病神の2人がこの海戦についての解説もしてくれる。今回のために特別につくられた2つの盆が回ってそれぞれの船が横に向いて砲撃を放つ。赤い火と煙の絵が黒衣に差し上げられ、黒衣がサッと横になってV字開脚をすると足の裏側の水色が見えて水柱がたっているという表現。
洪水の水を表す巨大な水色の装置も面白かったし、全体にはシンプルな金井勇一郎の舞台装置がよかった。

彦四郎を慕っていた元部下の小文吾の福田転球。修験者のような術を身につけているということなのだが数珠も持って「臨兵闘者皆陣列在前(りん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)」って九字の呪文を唱えると升毅の疫病神がヘロヘロするところで大爆笑。升毅ってカッコいい役だけじゃなくて笑いもOKの人だったのね。疫病神のコング桑田も関取り姿なので肉襦袢を着て大熱演。レミゼのテナルディエが初見だったのだが、今回も涙もろい疫病神が可愛くてよかった。
とにかく予想以上の大コメディだった。
貧乏神と疫病神の2人は「憑神」はそれぞれ一度だけ「宿替え」をお願いすることができることになっているという。貧乏神と疫病神の2人にはしかるべきところに行っていただいて、局面を変えるのに大いに役立っていただいた。
ところが最後の死神は九字の呪文もきかないほどの通力を持っている。ところがおつやは彦四郎に情が移ってしまって命を奪いきれない。「宿替え」を頼んでよと言い出す始末だが、彦四郎は死神だけは他の人におしつけられないと断る。

そして彦四郎は時代の変化に悩んだ末、家康の影武者の子孫としての誇りを全うする死に場所を見つけてしまった。上野の彰義隊に慶喜になりすまして行って2000人の浪人たちとともに徳川家への忠義のために死のうというのだ。息子の覚悟を知って母も決然と送り出す。結末は「死神」の運命を前向きに受けとめての「死」。彦四郎に情が湧いている私には素直に受け止められない。

あれあれ、さっきまで楽しく楽しく観てたのになんだよ~。こういう最後は嫌いなんだよ~。原作を知らなかったから結末も予想ついてなかったからなぁ。
好みでない結末にかなりテンションが下がってしまった。

いいのよ、いいの。要は結末が好みに合わなかっただけだし、2500円なんだから金と時間を損したとまでは思わない。
橋之助×G2のカンパニーの第二弾としては成功でしょう。次回作も期待したい。当面3階B席で楽しむのがちょうどよさそう。
写真は松竹の公式サイトよりチラシの画像。
G2プロデュースのサイトはこちら升毅×コング桑田×福田転球の対談が面白かった。

観劇後は彩の国芸術劇場で源氏物語の朗読会に行かれていたさちぎくさんと私がお互いの中間点の赤羽駅で落ち合ってお茶会。ベッカーズが改札を出なくてもいい構内にあって禁煙コーナーもある。玲小姐さんも合流してくれてこの間それぞれが観た舞台の報告など2時間ばかり盛り上がる。下がっていたテンションもここで回復できた。皆様に感謝m(_ _)m
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07/09/18 2008年9月、勘三郎「赤坂歌舞伎」始動

2008年の『赤坂ACTシアター』のこけら落しシリーズ公演に勘三郎が名乗りを上げ、「赤坂歌舞伎」が始動するようだ。
2008年9月6日(土)~9月25日(木)の予定で、劇場まわりには、たくさんの屋台やのぼり、提灯で江戸情緒を演出するという。
『赤坂ACTシアター』の公式サイトで2008年のラインナップが発表されていてわかった。→こちら
この劇場は元々劇団四季の『赤坂ミュージカル劇場』としてできて「美女と野獣」「オペラ座の怪人」とロングラン公演があり、その頃は何回も通ったものだ。
歌舞伎座も建替えが延びているようだし、「秀山祭」と「赤坂歌舞伎」で9月は盛り上がりそうで、ますます楽しみになってくる。
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07/09/17 9月の観劇予定


月も半ばになってしまったが、一応今月の観劇などの予定を書いておこう。
1(土)さいたま彩の国芸術劇場「エレンディラ」昼の部(前楽)
5(水)MOVIXさいたま「ハリー・ポッター 不死鳥の騎士団」
9(日)歌舞伎座秀山祭昼の部
 「竜馬がゆく」のみアップ
12(水)MOVIXさいたま「HERO」
15(土)シャンテシネ「SiCKO(シッコ)」
16(日)新橋演舞場「憑神」
17(月)国立劇場小劇場文楽第一部「夏祭浪花鑑」
20(木)シアターコクーン「ドラクル」
23(日)世田谷パブリックシアター「ロマンス」
24(月)国立劇場小劇場文楽千穐楽第二部「菅原伝授手習鑑」
26(水)歌舞伎座秀山祭千穐楽夜の部
*書き漏らしていました。追加しますm(_ _)m
30(日)銀河劇場「ヴェニスの商人」

9月の観劇回数は9回だが、恒例のように月の後半に集中し、前半は映画のレディスデイに映画館に出陣してしまった(^^ゞ
3連休もそれぞれ映画や観劇で埋めてしまい、それぞれお茶会もあったりしてしゃべりたおしている。ウィークデイは2人の職場だと日中はほとんどしゃべらない日もあるので、それでバランスを保っているのだ。

今日は娘の20歳の誕生日だが、昨日に続き父親と出かける。昨日は私のお薦めの「SiCKO」も二人で観て、娘はやはり泣いて笑ったという。持ち歩き用のゲーム機は却下されたらしいが、化粧品とかいろいろ買ってもらっちゃっている。
成人式に着物を着るのをこの間すすめてきたのだが、本人は「絶対似合わない」とためらっている。友人のおすすめの記念写真撮影だけ先にやってみるというのを提案したら、少し悩み始めた。そうそうそれくらいやってみればいい。しかし下に着るものとか何もないから面倒くさいのも本音。実家に協力してもらいたいけど、あまり期待しないでおこう。

写真はこの9月に北浦和の美術館で開かれたステンドアート展で銅賞をとった父の作品。
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07/09/15 「SiCKO」は他人事ではない?!


最近のニュースで産気づいた妊婦が救急車で運ばれたが受入れてくれる病院がなかなか見つからずについに死産になったという事件があった。解せない。「満床だ」「産科の初診の患者は受入れない」という回答が続いたという。何故こういうことが起きるのだろうと考え続け、思い当たったのはその妊婦さんはもしかしたらお金がない人だったんじゃあないだろうかということ。妊娠しても産科医院のかかりつけがないというのはそういうことではないだろうか。詳しい状況はわからないが、もしそういうことだったらお金がないための悲劇だったのかもしれないと想像した時にはゾッとした。

そんな時にマイケル・ムーアの新作ドキュメンタリー映画「SiCKO(シッコ)」。観たいと思いつつ8/25に封切られて日が経つ。近くのシネコンでも上映回数が極端に少なくなっている。しかしながら、「HERO」の記事にももんがさんから「Sicko(シッコ)」のおすすめのコメントをいただいて勢いがつく。先日のミニミニ同窓会でイギリスの医療制度が破綻しているはずと言っていた友人と観て真偽を確かめようと思いつき電話してみると秋葉原にいた。そして夕方まで時間があるというので日比谷のシャンテシネで一緒に観ることに決定。

座席指定券をとっておいてもらって合流。上映時間まで日比谷公園の松本楼でお茶。私は初めてだったがなかなかいい感じで苺シュークリームとフレーバーティーが美味!

マイケル・ムーアの作品は「華氏911」は観ていないが、「ボウリング・フォー・コロンバイン」を職場の有志の上映会で観ている。→関連記事はこちら

先進国で唯一「国民皆保険制度」のない国アメリカ。中流の人々でも医療費や介護費用が払えなくなって破産するという話は聞いたことがあった。さてその実態をどう見せてくれる?!
マイケル・ムーアが医療問題の事例を募集したら短期間に25000件のメールが集中。取材が始まる。
まずは保険会社に入れない5000万人の人々の例。既往症があったり肥りすぎ・痩せすぎだったりすると入れない。既往症リストをスターウォーズのエンディングのパロディで見せた手法は大爆笑もの。受付センターで働く女性は気持ちを入れたら精神がもたないと思い出しただけで泣き出してしまう。入っていない人が指2本を切断する事故にあっても手術費用の高い方の指はあきらめたというすごい例。
次は入れた2億5000万人の人々の例。そんな病気まで書かないと調べられて虚偽申告という理由で支払い拒否されるのかという例。今では保険会社に事前の許可を得て系列の病院で受診して始めて医療費がもらえるのだという。
また安い保険では保障範囲も少ない。夫が心臓病、妻がガンになった老夫婦は家を処分して娘の家の物置に住むことになった姿に医療費破産の実態を見せつけられる。
一番ショックだったのは保険でお金が入ってこない患者がスラムの救護施設前に捨てられている事例。病院のスタッフが車で患者を棄てに来るのだ。

国境を接するカナダに無料の医療を非合法に受けにいく人の例。カナダの友人の内縁関係ということにして受診すれば無料で診てもらえる。
ムーアは医療費が無料の国への取材を続ける。カナダ、イギリス、フランス、キューバ。
9.11同時多発テロ事件に関わった人々。「英雄」と活躍を讃えられた消防士や救命士たち。粉塵の中の作業に疾患の医療費を保障するための基金も鳴り物入りでできていた。ところが対象は任務についていた職員限定で医療機関の因果関係の証明がいる。エリア外からもボランティアで駆けつけた人々は対象外で治療を拒否され、今も呼吸困難やトラウマによる衰弱性疾患に苦しんでいる。一方犯人のアルカイダメンバーが収容されている施設の医療体制の充実ぶり。ムーアは苦しむ消防士たちを乗せて3隻の船でグアンタナモ海軍基地に海から近づいていく。ハンドマイクで「アルカイダたちと同じレベルの医療を受けさせて」とよびかける。もちろん答える声はない。

そしてグアンタナモ基地近くで国境を接するキューバに彼らを連れていくと......。同じ薬が信じられないくらい安く売られている事実に泣き出す女性救命士。薬局からハバナ病院に回ると名前と生年月日だけできちんと診察・検査・ケアプランづくりまでしてくれた。

アメリカの医療制度がどうしてこうなったかもきちんと論証される。医療がビジネスになり、いかに儲かるかという論理で動かされている。医療関係のロビイストは議員の4倍もいるという。ヒラリー・クリントンの「アメリカでも国民皆保険制度を」という試みもつぶされている。居並ぶ政治家の映像にその分野の企業からの政治献金額のタグが貼り付けられるのも凄かった。もちろん最高額はブッシュ大統領。
アメリカの議会で証言した医師。医療の否認率の数字が定期的に発表され、否認率が高いほど評価が高まるという。今はこれまで否認状にサインしてきた6000人に申し訳ないと思っていると。
一方、医療費無料の国のイギリスでは患者の状態がよくなったり禁煙させたりすると医師にボーナスが出るのだという。この医師に対するモチベーションの持たせ方の違い。
アメリカでは「医療費を無料にすると社会主義になってしまう」というのが最大の攻撃の論拠。反共の国アメリカ。社会主義=自由のない国というイメージのおしつけ。アメリカでもお金がない人には自由も権利保障もないと思うのだが、それは頑張れば得られるものでそれを求めて人は力を発揮するという考え方が正義だとされる。じゃぁ頑張れない人は頑張らないのが悪いので劣悪な状況にあるのも自業自得という論理。
しかし今回紹介された国で社会主義の国はキューバだけ。キューバの消防士たちが9.11の英雄たちを暖かく迎えた姿も感動的。キューバの支援の申し出をアメリカの政府が断ってかけつけられなかったという。
あとのカナダ・イギリス・フランスは資本主義国だ。カナダで医療費無料の制度を提案した人物は自国で尊敬する人の第一位になったという。この医療制度の素晴らしさを語った老人は保守党党員だという。「医療はそういうこととは別さ。助け合いの精神さ」という。イギリスでもフランスでも「助け合いの精神」というキーワードが聞かれる。
医療費が無料の国の人々に「支払いはどれくらい?」という質問を繰り返すムーア。「?(質問の意味がわからない)」→「フリー。アメリカはそうじゃないの?」という反応が相次ぐ。
子どもの出産も無料。乳児のいる家には週2回の家事援助サービスが無料で派遣される国。フランスの出生率回復の実態もよくわかった。日本でできないのは税金の使い道の優先順位を間違えているからだろう。

国民全員が無料医療の恩恵を受ける国の実情。確かに税金は高い。その負担をしている人たちが「助け合いの精神」をきちんと自覚的に持っているからこそ成り立つ制度。そして制度を維持しているのはピープルズパワーだということも語られている。そしていろいろな集会やデモの映像。そこには昨年のフランスの若者が政府に勝利した時の映像もあった。
さてアメリカ型社会の後を追っているような日本人にはそういう意識があるのだろうか。「自分だけよければいい」という価値観が蔓延していないだろうか。だからこそ、標題のように「Sicko」は他人事ではないと思うのだがいかがだろうか。
まだ観ていない方、是非観にいかれることをおすすめしたい。笑えるし泣ける素晴らしい力を持ったドキュメンタリー映画だ。
公式サイトはこちら
写真はYahoo映画にあった「sicko」の宣伝用画像。9.11の英雄の女性救命士と男性消防士とともに船上から「アルカイダと同じレベルの医療を」と呼びかけるマイケル・ムーア。
追記
社会保険を税金とわざわざ別の制度としてつくったのは国民に重税感を持たせないためだ。目的をハッキリさせて集めれば文句も出ないという国民意識も利用されている。そのための社会保険庁という別組織・その外郭団体をたくさん作って官僚が天下りしたり、問題を起こしていても国民の目を届きにくくするというようになってしまったのだ。
この際、社会保険を別立てで集めるのはやめて全部税金にすれば良いというのが私の持論。税務署は社会保険事務所よりも優秀だ。脱税している輩ももちろん少なくないが税を取り立てる能力は高い。給食代とかも受益者負担とかで市町村で集めるのではなく全部税金でまかなえばよい。その使い道をもっと納税者が関心を寄せて選挙にも行くようになるだろう。
そもそも修正資本主義国家では、政治が富の社会的再配分機能を果たすべきなのに、急速に「受益者負担」という考え方でそこをくずしてきてしまったのだ。「助け合い精神」とは「ほとんど助けられるだけの人」と「ほとんど助けるだけの人」の存在もあってよいし、それがまた時期や条件によって入れ替わるというのを前提としている。
社会保険料だとか給食代とか払えない・払わない人の対策を立てるよりも取れる人から取って必要な人のために保障すればいいのだ。個人から取るよりも企業減税にストップをかけてきっちり企業にも税金を払ってもらえばいいことだ。そういう声の方が政治献金を払う企業よりも弱く、弱い国民の中で払った人が払わない人を避難する方にエネルギーをかける方がエネロスだと思う。もっと巨悪を見つめる方にエネルギーを使うべきだろう。
「誰が議員になっても同じ」という諦め感を持つ国民が多いうちは、権力者が好き勝手をやれる。資本主義国家でも政財界を牽制する力があれば修正資本主義国家として成熟していける。それが今回のイギリス、フランス、カナダなのではないか。政財界を牽制する力が弱いとアメリカのようになってしまう。私はピープルズパワーの一員になりたい。
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07/09/12 映画「HERO」、こりゃあヒットするわけだ!


今週も映画のレディスデイに出陣。娘は「キムタクなんて興味ない」と言い張ってつきあってくれない。私だってメインは高麗屋父娘のチェックなんだぞ~。

昼間ネットでニュースチェックをすると「安倍晋三、総理大臣を辞任」の文字が!米軍への給油継続のために政局を一新したいという。国民に隠れてやっていたことがバレてそれでもUSAとの関係維持のためってなんじゃぁそりゃぁ。といいつつ健康状態が極端に悪いというのが本当の原因とも。ご自身のHEROの祖父・岸信介元首相にたたきこまれて身体に沁みこんだ政治哲学でやってきただけと思える安倍晋三。ご自分で考えた信念があると思えないしゃべり方だったし、御曹司として頑張らなくてはいけなかったストレスが大きかったのか。とにかく政党内閣制というのも微妙。首相公選制でもやってもらいたい。でもヒトラー的人物が通ってしまうかもしれないような社会不安の現在、それも危ない気がする。

途中で何度か娘に電話して確認するが付き合う気がない上に態度悪し。そんな家には帰りたくないし御飯なんてまともにつくってやる気がしない。やっぱり駅からシネコンMOVIXさいたまに自転車でGO!

写真も以下のみどころ・ストーリーもMOVIXの作品紹介のサイトより。
「2001年にフジテレビ系列で放送され、同局歴代ナンバーワン大ヒットドラマとなった「HERO」の劇場版。初の映画版では、ある傷害致死事件をめぐる巨大な陰謀劇に、主人公の検事・久利生公平が立ち向かっていく。久利生役の木村拓哉、彼の事務官役の松たか子らレギュラーメンバーが再集結するほか、松本幸四郎、森田一義、イ・ビョンホンなど超豪華キャストが参戦。全シリーズを踏まえた映画オリジナルの展開に注目。」
「東京地検城西支部に再び戻った久利生(木村拓哉)は、ある傷害致死事件の裁判を任されるが、容疑者が初公判で犯行を全面否認、無罪を主張したために思わぬ事態を迎えてしまう。被告側の弁護士・蒲生(松本幸四郎)は“刑事事件無罪獲得数日本一”の超ヤリ手。さらに事件の背後には、大物政治家の花岡練三郎(森田一義)が糸を引いていることを突き止める。」
主な配役。
木村拓哉、松たか子、大塚寧々、阿部寛、勝村政信、児玉清、松本幸四郎、森田一義、イ・ビョンホン、ほか

私がオンエア時に見たのは最後のスペシャル番組だけ。久利生検事は山口地検で中井貴一演じる犯人を追い詰めていたのを覚えている。キムタクは茶髪でカジュアルな格好といういつものイメージで変わり者の検事を演じていた。法廷に立つ時は黒の革のジャケットに検察官バッジをつける。
松たか子が演じる事務官とは仕事の上ではよい相棒なのだが、プライベートになると口喧嘩をしている仲。6年ぶりに東京地検城西支部に戻ってまた一緒に組んでいる。どうもお互いに好意を抱いているのに意地を張っているらしい。松たか子、眼鏡をかけたくそ真面目な事務官を好演。蜷川演出の舞台「ひばり」以来のショートヘアなのかな。6年ぶりという変化を髪型と香水をつけるようになったということで象徴させていた。
城西支部の検事の役は木村拓哉、大塚寧々、阿部寛、勝村政信。それぞれに事務官がついている。阿部寛には八嶋智人がつくなど凸凹コンビというのもビジュアル的に相当可笑しい。勝村検事は松に惚れているが箸にも棒にもひっかかってくれない。写真のスペースが共有スペースで、それを上から映す手法が多用されていたが、このドラマに馴染んでいない私にはこのアングルの映像はうざったかった。
キムタク検事は阿部寛の検事が抱えた事件を引き継ぐが、自白もしているから簡単に終ると思ったらさにあらず。贈収賄事件の政治家のアリバイを証明する証人になるべくその犯行を否認。その弁護士が幸四郎というわけだ。
幸四郎は歌舞伎ではあまりよいと思えないのだが、どうしてこういう役はいいのだろう。あまりにも濃いその存在感が検事をやめて弁護士になった屈折もかかえる豪腕弁護士の役にピッタリ。自分の事務所で思いに沈む場面なんてかなりカッコよかった。
贈収賄事件を追う特捜部の検事を香川照之。地検に乗り込んできて事件を譲れと迫るが、キムタク検事はつっぱねる。巨悪を暴くための道具にされては堪らない。しっかりと犯人に自分の犯した罪をわからせるための裁判をするのだときっちり主張する。香川照之も濃いねぇ。「君たちは志が低い」とか鼻につく台詞も無理がない。

犯人が乗っていて処分されたワゴン車が韓国に不法輸出されていて、それを確認しに韓国・釜山にキムタク・松コンビが出かけていく。上司(児玉清)が韓国の検察に協力依頼をかけておいてくれて、日本語のできる事務官が協力してくれる。しかしあまりにしつこく何日も捜すのについていけないとイ・ビョンホンの検事にこぼしつつ、それでも徐々に感化されていく様子がなかなか可愛い。
ついに買った男をつきとめたところで松が襲われ、それをイ・ビョンホンの検事が登場して救う。声がいいねぇ、カッコいいねぇ。一番観てみたいと思える韓流スターだったので、ここでも美味しい思いをした(韓流は未デビューの私)。

幸四郎弁護士の鋭い攻撃に闘志を燃やすキムタク検事。「千本ノック大歓迎」だって!昔同僚だった児玉清に幸四郎が「お前はいい検察官を育てたなぁ」なんて大人の男の会話の場面もGood!
傷害致死事件の証人にアリバイを証明しあう関係の政治家を申請。森田一義(タモリ)が現れるがトレードマークのサングラス姿に違和感。サングラスで代議士になった奴なんているのか?タレントで参議院議員になるのはわかるが地元に受けないといけない代議士でこんな姿ではダメだろう。胡散臭さを出したかったのはわかるが、このキャスティングだけは無理を感じた。

放火による火事の野次馬たちの中に犯人がいたのではないかという推理のもとに写真を探し出す仲間たち。決め手になったのがナイスキャスティングの放火魔の古田新太というのがまたいい。
途中で末期ガンで医療刑務所にいる中井貴一も見舞ってタモリ代議士との山口での関わりもわかるし、キムタク検事に出会ったことの幸せなんていうのも語らせたりしている。中井貴一もしっかりとダイエットして末期ガン患者に見えるようにしているのにプロ根性を感じてしまった。

キムタク検事に「ちんちくりんのゆでたまごみたいなやつ」とか言われていた松だが、結局はお互いを必要としていることに気づくのだが、意地の張り合いで言い出せない。それがとけるのは旅行用の音声翻訳機だというのが変で可笑しい。田中要次のマスターも仏頂面に味わいたっぷり。KISSでHAPPY END。

こりゃあヒットするわけだ!ひとつの事件にこんなにヒト・モノ・カネを注ぎ込む体制などあるわけがないが、これはお話だからいいのだ。客席はカップルが多かった。常識を打ち破る格好の主人公がヒューマンなHEROを演じてくれる。政治問題に関わる事件よりも平凡な市民の命が奪われた事件に情熱を傾けつつ、ついでに巨悪を暴くことにつながる。正面から巨悪を暴く事件に関わる苦悩とかいう物語じゃないのが気軽に見ることができるのだろう。そしてしっかり恋愛が主軸にあるのがミソなんだなぁ。

高麗屋父娘が頑張っている姿もしっかり観た。キムタクもまぁよかったかな。
先週は「ハリー・ポッター」も観たのでそちらもしっかり書きたいと思っている。
追記
オンエア時に観ていないので登場人物の把握が甘い。勝村政信は検事だと思っていたのに中途半端にプログラムを見たせいで事務官に直したら、後からよく読むとやっぱり検事だった。すみませんm(_ _)m
それと今回のプログラムは写真もいいが読むところも多し。フジTVとのタイアップ企画で大成功との読みでちゃんと人手をかけたのかな。600円出しても惜しくない。
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