ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

09/08/30 いろいろチェンジの一日に!

2009-08-30 23:25:21 | つれづれなるままに

娘と一緒に衆議院選挙の投票に出かけたら、お盆にも後輪がパンクした私の自転車がまたまた後輪のパンク!
SATYにスニーカーの修理に行く予定だったので自転車の修理も一緒にしてもらうことにして、自転車を押していく。

今乗っている自転車はパンクしにくい薬剤の注入をすすめるサイクルチェーン店で買ったため、その薬剤が他の自転車店には嫌われる。パンクはしにくいのだけれどパンクしてしまえば直し難いのだという。

今回もチューブは最低換えなければならないし、タイヤも劣化しているので全部取り換えになると3500円もかかるという。これなら買い換えようと決意して自転車コーナーの若いスタッフに詳細の相談をする。
身長が低いために24インチのものにこだわって乗ってきたのだが、2万円以上の高いものしかない。26インチで私でも乗れる機種がないか聞いてみたら、あるとのこと。同じ26インチでもサドルの位置をどのくらい下げられるかが機種によって違うのだ。

さらにお手頃価格のものというリクエストに合うものでサドルを下げて大丈夫だったものがあった!トップバリューの自転車でオートライト機能もついている!!今日はラッキーにもカード会員5%オフの日だ。ワオンカードにチャージしてお支払い~。

26インチ自転車デビュー。あとはマンションの駐輪場で入れにくくなるのが心配だが、なるようになれ!だ。

実家の母親が一泊二日のおためし利用のショートステイから戻ってくる。頃合を見計らって実家に行くつもりが、上記の事情で遅くなった。
実家に行って選挙の投票所まで一緒に付き添って歩いていく。自宅では投票所の場所をよく覚えていないから一緒に行ってという娘と同行し、実家では母親の付き添い。なかなか大変(^^ゞ

投票所から実家に戻る途中のデニーズで一緒に早めの夕食をとる。ここでデニーズカードをnanacoカードにチェンジしてもらう。切り替えならカード発行料金が無料になる。流通企業が中心に組織するチャージできるカードの普及が、ワオンカード(イオン系)といいnanacoカード(セブン&アイ系)といい、著しい。そういえばJRのスイカも便利だな。

母親のお墓を買いたいという熱も冷めていた。今回の大型区画の市営霊園の募集には応募しないということで確認しておいた。それよりも今回利用したショートステイの施設のベッドがよかったので同じようなものに買い換えようかとか、膝の人工関節手術とかの情報収集に関心が移っている。まぁ、秋の空のように変わる母の気分感情につきあっていく娘たちも辛抱が肝心のようだ。

TVの選挙の開票速報を見守る。今のアメリカのようにあまり差の大きくない2大政党制になったことには賛同しかねる私だが、とにかく政権交代。日本社会の大きなチェンジの日となった。
投票に行った人が増えたのは嬉しい。投票したらその結果をきちんと見守っていくことの重みが増す。圧倒的に勝った勢力は暴走することなく、地道に活動をしていってほしい。そこにきちんともの申していくパワーも市民の中に育つこと、そうしてせめて軌道修正がかかるような勢力がきちんと確保されることが大事だと思う。
そういうところも含めてしっかり見守り、やれることはやっていきたい。

09/08/13 こまつ座「兄おとうと」に元気をもらう

2009-08-30 01:19:51 | 観劇

紀伊國屋サザンシアターのこまつ座第88回公演「兄おとうと」を職場労組の観劇企画で観た。JR四ツ谷から中央線快速に乗ったがトラブルで電車が停まっている。ただでさえ仕事の区切りがなかなかつかずに職場を出るのが遅くなってしまったので、遅れる覚悟を固めた。それでも新宿に着いて走っていくと開演を遅らせてくれていた。有難い!
【兄おとうと】
作=井上ひさし 演出=鵜山仁 音楽=鵜野誠一郎 振付=謝珠栄
今回の出演者は以下の通り。
辻 萬長=吉野作造 剣 幸=玉乃
大鷹 明良=吉野信次 高橋 礼恵=君代
宮本 裕子=大川勝江ほか 小嶋 尚樹=青木存義ほか
朴 勝哲=ピアニスト

「兄おとうと」は2003年の初演時に観た。主人公の吉野作造は井上ひさしが通った高校の大先輩で、吉野の生地、宮城県古川市にある吉野作造記念館の名誉館長に井上がなっているところから、なにか書かなくてはと願っていたと初演時の『the 座』の前口上に書かれている。
当初のタイトルは「王子と私」で、吉野が家庭教師をつとめていた袁世凱の息子と自分という設定のはずだったが、それが変更されてがっかりしたものだ。

井上ひさしは作品を書く際に綿密に実史料を調べ上げるのが常で(その資料の集積が遅筆堂文庫になっているほどだ)、今回もその最中に弟の信次の生き方との対照にスポットを当てることにしたようだ。

その対照を公式サイトよりの引用より。「兄弟はそろって大秀才。兄は大正デモクラシーの旗手、吉野作造。弟は岸信介や木戸幸一を部下にもつ高級官僚、吉野信次。国家とは国民あってのものだと唱える兄、国家あっての国民だと信じる弟、まるであべこべだ。」
ふたりとも「日本という国」をよくしたいと思っているのに、兄作造は民衆のために何をすべきかと生きている立場から、弟は国を支える官僚という為政者として生きている立場から話がかみあわなくなって対立。それをめぐって姉妹でもある妻2人が夫たち兄弟にわかりあう機会をつくるために機知をめぐらせて、「兄おとうと×姉いもうと」というドラマが展開。
その4人は同じ俳優が演じ、残りの登場人物を男優1人と女優1人が役を替わっていく。

ちょうど浅田次郎の「蒼穹の昴」を読んでいるところだったので、日清戦争終結交渉の清国側全権の李鴻章が繁栄させた天津の街のイメージが頭にあった。李配下の袁世凱の息子の家庭教師として吉野作造が天津に赴き、妻の玉乃も袁の娘に日本語を教えていた。その娘がはるばる日本に吉野夫妻を訪ねてきたところに右翼が天誅にくるという場面があり、妻と娘が天津を懐かしんで歌うところは嬉しくなってしまった。観劇と読書など別々に仕入れる情報が自分の中でつながって、さらにいろいろと考えることができるようになる快感も人生の楽しみのひとつ。

さらに元宝塚トップ男役だったの剣幸とミュージカルでお馴染みの宮本裕子が歌って踊るのだから見ごたえ十分だった。
何役もこなす宮本裕子と小嶋尚樹の演じ分けもうまかった。いかにも姑娘(クーニャン)風の袁世凱の娘と右翼男のからみは笑えた。東大を主席卒業した者に与えられる恩賜の金時計を盗んだ女工さんと恩情ある処置を願う警察官のコンビはせつない。説教強盗夫婦でも10年以上別れ別れになっていた兄妹でも自在だった。

前回観たときにどうにももやもやした気持ちが残ったのは兄と弟の生き方がここまで違った方向を向いてしまったわけがよくわからなかったことだった。前回もあったのになんとなく見過ごしてしまったのか、今回はそこが補筆されていたのか、よくはわからないのだが、今回はしっかりと理解することができた。10歳違いの兄弟の育った境遇に大きな変化があったという。
兄が一人前になるまでの生家は裕福だった。高利貸しも営んでいて父親が貧しい人々を苦しめているのを目にしていたため、その罪を贖いたいという意識が兄をキリスト教に近づけた。海老名弾正が唱える新しい神学を学び東大YMCAをつくるなど、大学での研究だけでなく広く社会運動や社会事業に身を捧げ贖罪の一生を送ったのだ。
かたや10年後の弟の東大時代には事業の失敗で生家の経済がたちゆかなくなっていた。そこで安定した仕事ということで高等文官試験に在学中に合格して役人になったというのだ。国家の秩序を守る役人の職務を全うし、2度も大臣をつとめるくらいになった弟は兄が当局から睨まれることを心配し、忠告するが兄は聞き入れない。
その弟が秩序優先で貧しい人に非情な措置をとろうとすると兄は激しく、妻たちはやんわりと諭し、というエピソードの積み重ね。
市井で生きる人々こそ主人公の社会をつくろうとする吉野作造の姿、大正デモクラシーで普通選挙制度ができても戦争にどんどん突き進んでいってしまった時代に生きた人々、たとえ正反対の生き方をする弟とも情愛は通いあっていたこと、作造たちを支えた家族の姿など、社会と人間をともに鋭く優しく描く作品はバージョンアップされていた。こうして再演を重ねる度に脚本も舞台も磨き上げられていく舞台の素晴らしさを堪能。

さて、今回の『the 座』は後半の資料編が同じだというので買わなかったが、その表紙にあるイラストと今回公演のチラシにあるイラストを並べていて驚いた。同じ絵ではなかった。和田誠がちゃんと描き直してくれていたのだ。舞台にかかわる全てのスタッフの心意気も伝わってきて嬉しかった。写真は公式サイトより今回のチラシ画像。

吉野作造の時代と違って女性も参政権を得てから64年。今日はしっかり投票にいってくるとしよう。

09/08/29 鎌倉でランチ同窓会

2009-08-29 21:38:54 | おでかけ、旅行

玲小姐さんと女子高時代の生徒会本部役員仲間のUさんが住む鎌倉に、ランチ同窓会に行ってきた。
朝9:30大宮発の湘南新宿ライン快速に乗る。大船でUさんも合流し、藤沢まで。江ノ電に乗り換えて鎌倉方面へ戻って極楽寺で下車。
極楽寺の百日紅が目的だが、花の盛りを過ぎていて花だけだったら自宅の隣の施設のものの方が綺麗。しかしながら古木だけあって枝ぶりは見事だった。

そこから長谷方面に歩く。御霊神社近くを通り過ぎる。前回の長谷観音で写経体験もした散策とは反対のルートで歩いた。
日傘をもってきて正解の戻り夏のようなカンカン照り。とにかく暑かった。
Hさんが予約しておいてくれた長谷観音の近くの0467長谷上町に到着。大谷石をふんだんに使った古民家風のイタリアンレストラン。2600円のランチプレート+デザートを食べた。ちゃんと名物の生しらすも醤油皿の向こうにのっていた。大谷石でできたテーブルの個室風のコーナーで食べながらゆっくり話をする。
世代がら、子どもの話だけでなく、家族の介護で利用している福祉サービスの話やらお墓の話やらもしっかりとする。こうして励ましあっていく存在になっているのが有難い。
鎌倉駅まで歩く間にUさんおすすめの「こ寿々」のわらび餅をお土産に買う。明日の衆議院選挙の話にもなる。小選挙区と比例代表区の有効な投票の工夫がいるねというあたりで意見が一致。こういう話までできる仲間がいるのも心強い。

玲小姐さんはヘルパーさん利用で時間をつくってきているので、先にさいたまへ帰るのを鎌倉駅で送り、残る二人はもう少し散策。鎌倉野菜市場は名物のシフォンケーキ屋さんがやっていないので宝戒寺の萩を見に行く。往路は駅からバスに乗る。スイカが使えるのが便利。

その前に近くの和菓子店「美鈴」(こちらもUさんおすすめ)で今月のお菓子を買う。ちょっとお土産奮発しすぎかも(^^ゞ
宝戒寺の萩は・・・・・・早すぎた(^^ゞ白い萩の花が1つ2つついているだけ。残念!
しっかり拝観料100円を払って拝観させていただいた。鎌倉幕府最後の執権北条高時ら一族の菩提を弔うため、後醍醐天皇が足利尊氏に命じ北条執権邸跡に建立させた天台宗のお寺。ご本尊は地蔵菩薩でしっかり拝んできた。裏手にあった百日紅はまだまだ綺麗。しかし今は夏の花と秋の花の境の時期のようだ。別の堂宇には両界曼荼羅に挟まれた歓喜天もあったが秘仏のようで厨子の中。極楽寺と違って仏像を拝めるのがお寺に参った気がして満足できた。
近くのエリアを紹介するサイトをご紹介
復路は鎌倉駅までの散策。幕府の跡の碑やら大仏次郎の茶亭(夏休み中)なども眺めて若宮大路へ。一昨年の厚生企画(今年から制度廃止!)で歩いたことを思い出す。
小町通りを少し入った「納言志るこ店」へ。カキ氷の宇治金時を食べた。この夏最初で最後のカキ氷だ。抹茶シロップも甘くて美味しかった。あっと言う間に氷は溶けたが残った小豆も美味しかった。
帰りは一人で成田空港行きの列車に乗った。おつきあいいただいたUさんに感謝m(_ _)m

帰宅してのんびりしていたら実家の母親から電話が入った。今日明日の一泊二日でショートステイ施設をおためし利用で、そちらから携帯でかけてきたのだった。ちゃんと用意してきたつもりが、一番肝心の睡眠導入剤を忘れてきたという。まぁ一泊だし眠れなかったら仕方がないと開き直ってもらうことにした。
個室のみの施設で、ベッドがとても快適だとのことで今寝ている自分のベッドをこういうのに買い換えたいとのこと。お墓は大きいのを買わずにそういうのにお金をかけたらという話にもなった。

明日は選挙の投票に行ってから、母親が戻るころを見計らって実家に行く予定。

09/08/28 接骨院通院の時の楽しみがなくなった・・・・・・

2009-08-28 23:48:33 | 医療・介護・福祉など

30代で頸肩腕症候群になってから、鍼治療や整体、カイロプラティクなどの通院をしてきたが、ここ数年はスポーツ会館接骨院にお世話になっている。
スポーツ会館のサイトはこちら→詳細はその中の「施設案内」からたどってみてくださいm(_ _)m

ストレートネックから疲れると後頭部から肩・上腕にかけて痺れが走るという症状がある。頸の牽引、低周波治療、柔道整復士さんによるマッサージの3つの治療を受けられて健康保険で自己負担金580円ですむので、有難い(初診と2回目はもう少しかかる)。仕事帰りにJR大久保駅経由で通うので多少の電車賃がかかるが、経済的には本当に助かっている。

そして、JR大久保駅北口を出てすぐのところに○○フードセンターという店があって野菜や果物が並んでいる。八百屋だったのが一般食品も扱うようになったお店だろう。帰り際に立ち寄ってリンゴやズッキーニやトウモロコシなどお買い得品を買うのがけっこう楽しみだった。
ところが、前回の通院時に立ち寄った時、店内に閉店予告の貼紙があった。残念~!そこで閉店の日に通院もすることにして名残を惜しむことにした。

しかしながら、本日行ってみたら早々と店じまいしてしまったらしく、シャッターに「閉店のお知らせ」が貼ってあった。
「大正13年より85年の長きにわたり皆様のお引き立ていただきました○○を閉店いたすことになりました。皆様の長年にわたるご愛顧に心より感謝申し上げます。店主」というような挨拶だった。
隣にあった写真を携帯で撮影。昭和28年(1953)の当店という白黒写真だ。改装開店のお祝いの紙を店の正面に貼り出したところだろう。「祝開店」とか「招福」とかの文字や宝船の絵がみえた。

いまや駅前にはコンビニが何店も競合状態だし、大変だったのだろう。こうして時代は移りゆくのかという感慨にとらわれる。
今度からの通院時には、美味しそうなフルーツを眺める楽しみがなくなってしまった。けっこう寂しいものである。

09/08/27 納涼歌舞伎千穐楽夜の部を観た+歌舞伎座建替え情報など

2009-08-27 23:59:29 | 観劇

お盆に第1部と第2部を続けて観たという記事しか書いていないのに、本日はもう千穐楽。第3部を観てきた。
昼も外食する余裕がなくて「おむす人」でおにぎりを買ってきてすませたので、さすがに夜もコンビニおにぎりという気にならず。
歌舞伎座近くの四つ角のぎんざ日乃出極細巻寿司を買ってみた。見事に細く巻けているのに手が出てしまった。
中に入っていた栞には羽田空港のみの限定商品とあったが、本店では扱いがあるのだろうか。中に巻かれているのは、江戸ごぼう、味付干瓢、海老の甘露煮、蜆佃煮、胡麻昆布、山くらげの醤油煮、飛騨の赤蕪、鯛の昆布巻の8種類。浅草海苔で極細巻きにしたという説明が書かれている。そのうち1本だけとろろ昆布で巻かれているのも嬉しい。美味しかったけれど胸がちょっと焼けたかな(^^ゞ

「怪談乳房榎」の終演後の千穐楽カーテンコール。円朝に扮した勘三郎が納涼歌舞伎20周年の感慨と感謝の気持ちを語り、さよなら公演はまだ8ヶ月もあるので足をお運びくださいと挨拶。そのうち5ヶ月は出演するとも言っていた。また、新しい歌舞伎座でもまたやるのでよろしくお願いしたいというようなことも言っていたので、納涼歌舞伎は演舞場での公演の間はなくなるが、新歌舞伎座でまた復活するのだろうと推測。その時は新勘九郎をはじめ、もっと若い世代が活躍する公演になるのだろうとも思う。楽しみなことだ。

それと26日に歌舞伎座が29階建てのビルになるという発表があったそうだ。ちょっと前に現在の概観デザインを生かす設計案に対して都知事がいちゃもんをつけて、変にポストモダン風のデザインになったという報道があって憤慨していたものだ。今回の発表では、やはり現在の桃山様式のデザインを生かしてくれるようでホッとした。
情報の詳しい六条亭さんの記事をご紹介させていただく。→こちら

勘太郎が2012年に六代目勘九郎を新橋演舞場で襲名するという発表もあったようで、最近の進境著しい様子をみていると納得である。

個々の演目についての感想はまたボチボチ書いていきたい。

09/08/24 新作歌舞伎「石川五右衛門」は終わりよければ全てよし!

2009-08-25 23:59:00 | 観劇

石川五右衛門ものは2001年7月に猿之助奮闘公演の歌舞伎座夜の部で「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」を観ている。その前の年の納涼歌舞伎で歌舞伎座を初体験。2度目の歌舞伎座観劇で南禅寺楼門の「絶景かな絶景かな」の名場面のあまりの美しさに圧倒された。勘三郎→猿之助でスタートを切った歌舞伎座観劇。ここまでハマるとは、当時の私はこれっぽっちも思っていなかった。

さて、新橋演舞場八月歌舞伎公演の海老蔵主演の「石川五右衛門」は漫画の原作者とのコラボで生まれる新作歌舞伎。さてさてどんな感じだろうか?
【石川五右衛門】5幕
作=樹林伸 脚本=川崎哲男・松岡亮
振付・演出=藤間勘十郎
今回の配役は以下の通り。
石川五右衛門=海老蔵 豊臣秀吉=團十郎 
百地三太夫=猿弥 霧隠才蔵=右近
茶々=七之助 前田利家=市蔵

発端は五右衛門の釜茹での場面を義太夫に乗った人形振りで見せる。新作歌舞伎でありながら、歌舞伎のスタイルをきっちり踏まえる宣言をされている感じ。しかし30分くらいで5分間の幕間へ。人形振りの場面としては大したことがないし、これで一回休憩を増やすのはどんなもんだろう。
序幕が伊賀の里での五右衛門の忍者修行。権勢を誇る秀吉の鼻をあかそうと聚楽第に忍び込んで失敗して逃亡の途中で行き倒れているのを伊賀の頭目・百地三太夫と霧隠才蔵らによって鍛えられる。忍者の子どもたちとのからみから入って、海老蔵と右近や若手の忍者たちとのスピーディな立ち回りはスーパー歌舞伎を彷彿とする。書割がどんどん変わって四季の移り変わりを表すのも面白い。猿弥が白い梟に化身して見守っていて、頭目の後継者になれというのを五右衛門はあっさり断る。秀吉へのリベンジへと向かうのだ。秘術を記した巻物を授けて猿弥・海老蔵・右近で引っ張りの見得で極まる。まさに弟子筋の澤潟屋を従える市川宗家の海老蔵という感じ。この場面から始まってもよかったのにと思う。

一幕の聚楽第での茶々との場面。花道から腰元たちが出てきて茶々の様子が語られてから、スッポンから若衆姿で登場した五右衛門が茶々の前に現れて長唄舞踊風に踊る場面。美男美女コンビで美しい。盗人に心も奪われる設定が7月の「桜姫」のようだなぁとか思って観ていたが、やがて眠くなる。

でもこれって秀吉が一番大事にしているものを盗もうという盗人根性で茶々をたらしこんでいるはずだ。どうもそのあたりを最初にくっきりと見せてくれた方が大盗人らしくていいのに、なんとなくの色模様となってしまっているのがつまらない。お互いに家族と離れた孤独の身となっているという境遇に本気の恋になってしまうというあたりをくっきり見せてくれる方が面白いと思う。

果たして茶々は五右衛門の子を懐妊。前田利家は自分が柴田勝家を裏切ったために茶々が仇の側女になったことを嘆いて体調をくずしたのではという自責の念から見舞いに現れる。腰元の唐橋(弘太郎)から懐妊を聞いて安堵。市蔵の赤爺の着付けが似合うこと。

そこに團十郎の秀吉が黒い髪で若い拵えでかけつけるところで登場。懐妊を聞いて世継ぎができたと喜ぶ姿は実に可愛いものだ。茶々は心苦しい表情。袂に隠した五右衛門の銀煙管を秀吉に見つけられてしまうが、秀吉はそれでなにやらを悟った様子。
五右衛門の南禅寺への呼び出しに応じた秀吉。山門の楼内での五右衛門と秀吉のやりとりの場面はなかなか面白い。五右衛門が茶々を身籠らせたことでやりこめたと思ったら、なんの一転、五右衛門は自らの落し胤だと銀煙管によって秀吉が明かすという、このどんでん返しはなかなかのものだ。それも大明国の宋蘇測の娘との一夜の契りときたのには唸った。原作の樹林伸は大したものだ。
このあたりの團十郎の大きさもさすがだ。親子が重なるということもあるが、親子の因縁を明かすやりとりの重厚感がこの後の芝居に大きな意味をもつ。

その後、山門の上で「絶景かな絶景かな」という名場面もちゃんとある。ただし、秀吉が姿を消してから家来の四天と上下に極まる。衣裳もいつもの豪華なドテラ風のものでもなく大百日鬘でもなく、軽めの感じ。

大詰の冒頭は客席も真っ暗にして面灯りまで使った五右衛門の独白の場面。親孝行を決意してしまったということらしい。しかし、海老蔵の思い入れのありそうなこの設定は私にはちょっと疑問だった。

しかし、その後の金の鯱を川でつかまえて大阪城の上に上げるという、いわゆる歌舞伎定番の「鯉つかみ」のアレンジの場面の海老蔵の熱演に、ヒートアップしてしまった!
川の中に水衣がいて、鯱の身体のくねりを海老蔵と息を合わせて作り出す。舞台奥側の川の上流に放ると向こうにいる水衣が動かす。また戻ってくる。本当に大魚と格闘する五右衛門の姿が面白いったらない。最後は奥で鯱の背にしがみついた中吊り場面もあり。こういう稚気溢れる荒事は海老蔵の魅力炸裂だ!!

大阪城の大屋根の上の鯱を盗むという予告をした上での立ち回り。ここで一番面白かったのは激しい煙幕の中で現れた五右衛門の分身たち。海老蔵の顔をつくったラバーマスクで揃えているのが、実に今風。また煙幕で姿を消したのが楽しかった。
最後は捕らえられての釜茹での場面。ここでは人形振りではないが、発端は幕切れと同じで劇中は回想という実に凝った作劇となっている。しかし凝りすぎで休憩を3回にする必要はないように思えた。

五右衛門は釜に飛び込むが、中に隠されていた葛篭が舞い上がる。やっぱり五右衛門につきものの「葛篭抜け」の宙乗りだ。秀吉が釜の中に仕込んでおいてくれたことに感謝しながら、喜びいっぱいで3階の鳥屋に飛んでいく。もちろん桜吹雪が噴き出され、一階客席に桜の花びらが舞う中を派手に引っ込んでいく海老蔵の五右衛門。
今日は3階右一桁の席だったのが幸いし、宙乗りだけでなく気迫あふれる六方の引っ込みもしっかり楽しめたのは儲けもの。

五右衛門ものの名場面をてんこもりに盛り込んで、実に欲張りすぎて凝りすぎて逆に薄味の芝居になってしまっている感は否めない。しかしながら「終りよければ全てよし」的なカッコイイ海老蔵の五右衛門を堪能。それなりに満足して打ち出されてきた。

写真は公式サイトより今回公演のチラシ画像。
ただし、再演時にはもう少し練り上げて欲しい。そうじゃないとリピートまではする気にはならないな。

原作者の樹林伸著の講談社+α新書『マンガの目で見た市川海老蔵「でっけえ歌舞伎」入門』を昨日買ってきたが、読み終わってしまった。5本の連載漫画の原作を担当し小説も書き、と超多忙の彼に馴染みのなかった歌舞伎の新作を書く決意をさせてしまった海老蔵の魅力がよくわかった。私の好みかどうかは別として、常識を超えた天才であるということは認めてしまう。海老蔵を理解するにはいい入門書だった。
(追記)
2006年5月に吉右衛門主演の「増補双級巴 石川五右衛門」を観ていたことを思い出した。吉右衛門が若手育成を意識して始めた新橋演舞場での五月大歌舞伎。鍛え直しがまだ間に合っていない感じのヨッコラショの葛篭抜けが懐かしい。
②五右衛門ものといえば、劇団☆新感線の「五右衛門ロック」も面白かった。シネコンでその作品のゲキ×シネ版と映画「GOEMON」の両方が同時期にかかったりもしていた。今年は五右衛門イヤーだけれど何故だろう。権力に反抗する破天荒ヒーローが受ける時代の雰囲気があるのかな?

09/08/24 久しぶりに蕎麦でランチ

2009-08-24 23:59:11 | つれづれなるままに

昨日の8/23の日曜日の午後一で、ふじみ野市の会場で開催された霊園相談会に行ってきた。その後、近くにお住まいの前の部署で5年間お世話になった女性の先輩のSさんのご自宅に遊びに行ってきた。
朝昼兼用の軽い食事だけとって出かけたのでお腹が空いて、本格的な蕎麦を食べさせる店があるということで行ってみたら、「本日終了」の札があってダメ。当日蕎麦を打ってつくった分が終ると店じまいしてしまうという、こだわりの店とのこと。
またの機会ということになった。
その「天和庵」のサイト
久しぶりにのんびりといろいろと話ができてよかった。有難うございましたm(_ _)m

だからというわけでもないが、今日のランチは久しぶりに蕎麦を食べることにした。首都圏の立ち食いそば屋の中では、最高位に旨いと評判の四谷しんみち通りの「政吉そば」へ。
写真が今回の「冷やし小海老天おろしそば」。長野から山芋つなぎの信州そばが毎朝届き、注文が入ってからその分を茹でて出してくれるのだ。立ち食いそば屋とは思えないほど美味しい!ちゃんと「小」海老天とうたっていて5尾入っているのがまた誠実さを感じさせる。これも美味い!!これで500円というのも有難い。
立ち食いといいつつ、カウンターに5つだけ高い椅子がついている。遅番のお昼だったので混んでいなかったので座って食べた。

そして今日はフレックスで早く仕事を切り上げて、新橋演舞場の「石川五右衛門」へ。幕間にコンビニおにぎり2つと次の幕間もampmに走ってアイスモナカを食べてしのぐ。

前半はこんなもんかぁという感じだったが、後半は俄然おもしろくなってきて、最後は海老蔵の挑戦にエールを送りたい気分に。
筋書も買ってしまったし、帰りがけに教文館書店に寄って講談社α新書で出た原作者・樹林伸の本も買った。早速、電車の中で読みながら帰宅。
食欲と知識欲のバランスがこんな感じの私であった。

09/07/25 「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」ってスーラの話?

2009-08-22 23:59:22 | 観劇

7/25に歌舞伎座昼の部を観に行き、後半をご一緒したsakuramaruさんから急遽お声がかかり観ることになった「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」。(このあたりのことはこちら)
歌舞伎座が建替えになるまでは毎月欠かさず観るし、演舞場の歌舞伎も文楽も全部観るし、蜷川幸雄演出の舞台も優先。そうなるとミュージカルはついついご無沙汰状態の昨今。
ソンドハイム×宮本亜門のミュージカルの舞台は過去2つ観ている。
「Into the Woods」の記事 「スウィーニー・トッド」の記事
劇団四季退団後1年たった石丸幹二が活動を再開。その主演の舞台だなぁくらいしか予備知識がない。sakuramaruさんから画家のスーラの話だと聞いても、ハテどんな絵を描いていたかなぁとピンとこないまま(^^ゞ

画家の話はゴッホを主人公にした「炎の人」を6月にやはり観ている。やはりsakuramaruさんとご一緒していたので、これも縁かなぁと思いつつPARCO劇場へ。

劇場入り口でポスターを見て「この絵なら知ってる知ってる。点描の絵だよね!」ちょっと身近になってひと安心。その絵からインスパイアーされたスティーヴン・ソンドハイムのミュージカル。
冒頭の写真は今回の公演の宣伝画像だが、この絵がスーラの「グランジャット島の日曜の午後」。
開幕するとその絵がふんだんに出てきてくるので、わりとすんなりと入っていけた。

【サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ~日曜日にジョージと公園で~】
作曲・作詞=スティーヴン・ソンドハイム
台本=ジェームス・ラパイン
演出=宮本亜門 翻訳=常田景子
今回の配役は以下の通り。1幕→2幕の役名
石丸幹二=ジョージ・スーラ→スーラの曾孫のジョージ
戸田恵子=恋人ドット→娘のマリーの晩年
諏訪マリー=老婦人(スーラの母)→ブレアー・ダニエルズ
山路和弘=ジュール→ボブ・グリーンパーク
春風ひとみ=イヴォンヌ→ネイオミ・アイゼン
畠中洋=フランツ→デニス
野仲イサオ=ボート屋→チャールズ・レイモンド
花山佳子=看護婦→ハリエット・ボーリング
鈴木蘭々=セレステ2→イレイン
冨平安希子=セレステ1→ウエイトレス
岸祐二=兵隊1→アレックス
石井一彰=兵隊2→カメラマン
岡田誠=ミスター→リー・ランドルフ
南智子=ミセス→美術館アシスタント
中西勝之=ルイ→ビリー・ウェブスター
堂ノ脇恭子=フリーダ→ベティ、ほか

話も思い出しながら書いていこう。
1幕は19世紀末のパリ。英語読みのジョージでジョルジュ・スーラが登場していることに違和感を抱きつつ観るが2幕で納得。スーラの子どもを身籠ったまま彼と別れて別の男とアメリカに渡った恋人ドットの孫のジョージの時代の21世紀が舞台になるからだ。どうせアメリカで上演されたのだからジョージで通したのねと苦笑。しかしフランス人はジョルジュであって欲しかったな。
スーラが描く「化粧する女」のモデルとして恋人のドットを設定。どうも生まれた境遇が違うらしいふたり。デートの約束をとりつけて彼女は喜ぶが、大作の点描画の制作に気をとられるとその約束もないがしろにするスーラ。点描の画法は仲間の画家たちからもあまり評価されていないが、その描き方への確信はスーラの情熱となっている。
大きなキャンバスが透けて向こうで筆をふるうスーラの石丸幹二の早口の歌。劇団四季時代の「壁抜け男」を思い出させる。こういう軽い歌い方ってフランス風なのかとも思うが、相変わらずいい声でかろやかに歌う石丸幹二を堪能(笑)
恋人ドットの戸田恵子は舞台では初見。ドットもよかったが、2幕のマリーおばあちゃんが可愛くて魅力的。アンパンマンの声もつとめているが、七色の声だなぁと感心。

スーラの母役の諏訪マリーがどっしりとした存在感。山路和弘と春風ひとみの夫婦役もいい。鈴木蘭々が2幕ではジョージの別れた妻イレインで落ち着いたところを見せるが1幕のセレステ2の生意気な女の子という感じがハマっている。
スーラは公園でスケッチし、そこにいろいろな人物が登場して1幕の幕切れに「グランジャット島の日曜の午後」の絵を登場人物がその配置で固まって絵になって見せるのが面白い。舞台全体が額縁で縁取られた絵に見えるという装置もなかなか見ごたえあり。犬も影絵で見せたりして芸が細かい。
まさにいろいろな人の人生が交差することで生まれるハーモニーの素晴らしさを謳いあげるのだが、そのアンサンブルの歌声はさすがの歌い手が揃った満足感あり!

2幕はその絵が飾られるシカゴ美術館で曾孫のジョージの作品のプレゼンテーションが行われている。CG映像も駆使するポップアーティストで盛会のようだが、実はどうやら行き詰っている様子。そこに祖母のマリーや別れた妻のイレインやらが登場してという展開になり、マリーおばあちゃんはそこで大往生。
心機一転、曽祖父の絵の原点のグランジャット島を訪ねるが、描かれた頃の面影はすでにない。そこにマリーおばあちゃんが大切にしていたその母親=ドットの手帳を持ってきていたが、現れたのは曾祖母ドットの幻で、その手帳の中の言葉がヒントになり、ジョージは新たに一歩を踏み出していく。

・・・・・・といったところだったと思う。最後は記憶が薄れていて違っていたらごめんなさいm(_ _)m
1幕は絵の中の人物を総出演させてそれぞれの人生を見せるのが楽しいけれど、少々煩わしい感じもあった。幕切れよければ全てよしなのだろうが(^^ゞ
石丸幹二は1幕の髭面のスーラよりも2幕のTシャツ姿のジョージが若々しくてカッコイイ。アーティストをめぐるいろいろと大変な状況がポップに描かれる2幕の展開の方が楽しかった。「芸術家は大変だ」というような歌も説得力あり。

この明るく楽しい舞台の印象で、「亜門版ファンタスティック」を彷彿とする。そういえば山路和弘もこの舞台で初めて観て贔屓になったのだっけと思い出す。
宮本亜門の舞台は中劇場より小さい劇場での上演の方がいいみたいだ。今回もその成功の舞台を増やしたようで、よかったねぇと応援モードになって打ち出されてきた。

後からプログラムを読んだり、ネットで調べたりしてスーラについてもいろいろとわかった。
Wikipediaの「ジョルジュ・スーラ」の項はこちら
ブルジョアの家に生まれ、内縁の妻との間に子どもを一人儲けていたことを31歳で亡くなる直前に母親に明かしたというくらいプライベートは秘密主義だったのだという。そういう家だったら結婚も親の気に入る家のお嬢さんとではないとできなかっただろうとか、子どもにも財産をやるやらないで認知するとかしないとか面倒だったのだろうなとか、いろいろ推測してしまう。

しかし、それだからこそ、スーラの描いた絵からいろいろと想像してこういう虚構のお話も生まれたわけだ。そうそう、大体ドットという恋人の名前もおかしい。点でしょう?まぁ、衣裳にも点々という色が入っていて絵になる時に点描に見えるような衣裳デザインも面白かったし、とにかく遊び心いっぱいの舞台だったと思った。

それと、「ピューリッツァー賞」に輝いたとあった。この賞はジャーナリズムの賞だとばかり思っていたので音楽部門もあるのかと、今回ようやく認識。

09/08/20 ドングリの実が生っているのを見つけた

2009-08-20 23:59:10 | つれづれなるままに

夏らしくない今年の夏。今日は久しぶりに晴れて陽射しがきつい。お豆腐専門店「米永」でランチを食べ、職場に戻る途中、交差点を渡りきったところの歩道にドングリの実が落ちている。

夏なのにドングリの実?と驚き、仰ぎ見ると外濠公園の植え込みの木の葉の間にまだ青いドングリの実があちこちにのぞいているのを見つけた。
強い日差しの中を携帯のカメラでアップで撮影。うまく撮れたかどうかは外の光の中ではわからないので、そのまま自宅に送信しておく。
なかなかうまく撮れていたのでアップ。

秋のような陽気が続いたのでドングリの木が早く実をつけて実ったものから早々と落としているのか、それとも毎年こんなものなのかは、ボンヤリの私にはわからない。実は初めてこんなところにドングリの木があるのに気がついたのだ。隣の木には全く実がついていないので、雌雄の木の違いからしらとか思うが、広葉樹って雌雄の差があったかなぁと大昔の知識を思い出そうとするが、ダメ(^^ゞ

行く夏を惜しむように鳴く蝉の声に、思いついて探すとやっぱりありました。蝉の抜け殻!ドングリの木のあちこちの葉の裏に茶色の抜け殻がしがみついたままの姿で残っていた。

09/07/27 歌舞伎座千穐楽夜の部②バージョンアップの「天守物語」

2009-08-18 23:58:21 | 観劇

鏡花を軸に七月大歌舞伎のイメージの連鎖を考えた記事から書き始めたが、「天守物語」の感想でいよいよ7月歌舞伎を締め括ろう。
【天守物語】作=泉鏡花
あらすじは映画の「天守物語」の記事を参照いただく。
2006年7月の「天守物語」の感想はこちら
今回の配役は以下の通り。( )内は2006年の配役。映画「天守物語」の感想はこちら
天守夫人富姫=玉三郎(同) 姫川図書之助=海老蔵(同)
亀姫=勘太郎(春猿) 朱の盤坊=獅童(右近)
舌長姥=門之助(同) 薄=吉弥(同)
小田原修理=猿弥(薪車) 近江之丞桃六=我當(猿弥)

歌舞伎会会報『ほうおう』7月号の玉三郎インタビューの最後に以下のように書かれていた。
「小さい時から海老蔵さんの気持ちはよく分かり、どのような状況にあって、どのように感じているのかなど、言葉に表れない部分まで理解できる。両役(「海神別荘」の公子と「天守物語」の図書之助)とも彼にぴったりだと思います」 
これは世襲で芸を継承する梨園の中で子どもの頃から御曹司の成長を見守り、相手役に抜擢し磨き上げてきたという、玉三郎の自負の現われだと思えた。
果たして七月歌舞伎座の両方の演目だ。前回は圧倒的に「天守物語」の見ごたえが勝っていたのが、今回は「海神別荘」の充実が素晴らしく、昼夜の2本はまさに東西の横綱が揃った番付のようにバランスよく骨太に公演全体を支えているようだった。

玉三郎×海老蔵が人間と異界の者の役を反対の組合せながら、いずれも出会ってからふたりの恋愛の成就と至福の世界への高まりのドラマを歌舞伎座の広い空間に描ききって見事。当代になっての海老玉コンビの語り継がれる舞台となったことは間違いなく、歌舞伎座さよなら公演のひと月をこれに割いたのはやはり画期的なことであろうと思った。

2006年と同じ配役の役者たちもより身体に入った役役で舞台の上に存在してくれていて、さらに今回のメンバーがまた実によかったのだ。
亀姫の勘太郎を一番危惧していたのだが、前回の春猿や映画の宮沢りえのイメージと全く違う硬質な亀姫が登場。生首を土産に持ってくる血の彩りにミスマッチさを感じない妖怪の姫としての存在感があり、生首を前にした富姫とのやりとりをしながら、富姫に「私がお可愛ゆうございましょう」などと甘える場面は、白鷺城の最上階に妖気があふれ、ゾクゾクしてしまうほどだった。勘太郎の亀姫がいると舌長姥が生首の血を舐める場面がただ笑える場面として変に浮かび上がらず、妖気漂うチャリ場としてしっかり成立したように思えた。コクーンでの七之助の桜姫に負けずに勘太郎も姫を立派につとめられることを見せつけ、兄弟のいずれにも玉三郎からの芸の継承役を果たす力量があると感心した次第。

獅童の朱の盤坊は押し出しもよく、腰元とじゃれあう場面も楽しい。
前回は近江之丞桃六だった猿弥が今回は小田原修理。「海神~」の沖の僧都や「夏祭~」の三婦の老け役から若い敵役まで守備範囲が広い。途中の休演から復帰してくれてよかった。どの役もちゃんと観ることができたのも嬉しい。

今回の近江之丞桃六は我當。情のこもった台詞回しで富姫たちをも超然とする存在として語りかけ、皆を救っての大団円はこういうベテランの存在感こそふさわしい。幕切れの満足度が前回よりも遥かに高いのは、この丈の配役のためである。

「海神~」も「天守~」もカーテンコールが当たり前になっていたようだが、千穐楽のカーテンコールの高揚感は素晴らしいものだった。「海神~」は玉三郎が海老蔵をしっかりと立てたカテコにしていたが、「天守~」は海老蔵→玉三郎→我當→玉三郎という立て方をしていて、それがまた七月公演の座頭としての玉三郎の存在の大きさを実感させていた。

写真は七月大歌舞伎の泉鏡花もの2本を並べた特別ポスターの「天守物語」部分を携帯でアップで撮影したもの。
7/25昼の部①勘太郎と獅童の「五重塔」
7/25昼の部②今回の「海神別荘」で見えたもの
7/27千穐楽夜の部①若手パワー炸裂の「夏祭浪花鑑」