![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_do.gif)
2008年の秀山祭で吉右衛門主演の「盛綱陣屋」を観ているが、今回は吉右衛門が和田兵衛秀盛にまわって、仁左衛門が盛綱で主演。その逆の配役は役者のニンとの関係でまずはないだろう。
この「盛綱陣屋」で歌舞伎座こけら落し四月公演の記事アップは完結。頑張ろう!
<第三部>
【近江源氏先陣館 盛綱陣屋】
今回の主な配役は以下の通り。
佐々木盛綱=仁左衛門 微妙=東蔵
篝火=時蔵 早瀬=芝雀
伊吹藤太=翫雀 信楽太郎=橋之助
竹下孫八=進之介 古郡新左衛門=錦吾
四天王=男女蔵、亀三郎、亀寿、宗之助
高綱一子小四郎=金太郎
盛綱一子小三郎=藤間大河
北條時政=我當
和田兵衛秀盛=吉右衛門
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0150.gif)
仁左衛門は目の覚めるような白塗りのきりっとした盛綱で、高い調子で惚れ惚れするような台詞を響かせる。その盛綱の陣屋に、高綱の使者として和田兵衛が生け捕られた高綱一子小四郎を取り返しに単身で乗り込んで来る。吉右衛門の和田兵衛が赤っ面で黒、赤、金の衣裳がよく似合う猛将ぶり。第一部の「熊谷陣屋」ともども、いま義太夫狂言ならこの二人という大立者が舞台二重で並んで極まるとそれだけでぐっときた。こんな大歌舞伎を観ることができるのはなんと贅沢なのだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_setsunai.gif)
弟高綱が小四郎への執着から忠義をつくせぬことをおそれ、小四郎を切腹させるよう盛綱は母の微妙に頼み込むが、その東蔵が初役だというのにどっしりとして情が深い。
御曹司の子役二人がまたよい。金太郎が染五郎によく似た細面で父高綱の計略を健気に遂行する小四郎を演るので観る方はそれだけでぐっときてしまう。さらに驚いたのは小三郎で出てきた藤間大河。この間、丁稚役などでの活躍もみてきたが白塗りの顔が祖父の辰之助の面差しと重なって唸ってしまった。嗚呼!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/m_0084.gif)
相嫁(兄弟の妻どうし)の篝火、早瀬の時蔵、芝雀も揃う。高綱の首実検に現れた北條時政の我當は階段を上がる際に介添えが必要だったが、客席に響きわたる声と不気味な存在感はさすがだ。
その時政を前にしての首実検は客席を向いているのがこの芝居のみそだ。
弟でもあり高綱の首は見たくない、ひと目で偽首であるがわかって声を殺しての笑い、それなのに小四郎は父の首だと言って腹に刀を突きたてたのは解せないぞ、小四郎、和田兵衛の所業の全て計略なのか?小四郎の健気さよ・・・、しかし主に真実を告げないのは不忠であるし・・・
ということを仁左衛門は顔の表情豊かに表現する。「顔で芝居をすることは云々」ともいうが、仁左衛門顔は遠目でも表情の変化がはっきりわかる顔立ちであるし、ここの心理変化が芝居の肝であるこの作品では実にわかりやすくてよい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/good.gif)
真田兄弟が東西陣営に分かれて戦ったことを踏まえた狂言で、時政は徳川家康、和田兵衛は豊臣方の後藤又兵衛に相当する。敵味方に分かれたのは一族の全滅を免れるためと言われていて、佐々木兄弟のいずれもがまさに知将タイプである。高綱の方は子どもの命を捨てさせることまでを計略に使うという極端ぶりだが、兄盛綱には知性に加えて情けの深さがあったというのがドラマになっている。
時政が去っていってから、篝火をも呼び出して小四郎への面会をゆるす。そこで今回の計略を見破った上でそれに騙されたふりをしたことを語り、小四郎の母・祖母・伯母がとりすがっているところに「褒めてやれ」。泣いた上で天地金の扇を開いてかざして小四郎と顔を見合わせての極まりの大きく派手なところがまた実に無類。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_naki.gif)
甥の健気さに不忠を犯した申し開きに切腹しようとするところに和田兵衛から声がかかる。敵味方として正々堂々を戦う中、高綱が生きていることに時政が気づいた時まで止めてみぬかというのだ。最後に二人が揃って絵面に極まっての幕切れ。
やはり、義太夫狂言を観るならいまはこの二人だとつくづく噛みしめる至福の時だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_setsunai.gif)
東京新聞<幕の内外>の「盛綱陣屋」の和田兵衛情報が面白かった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/atten.gif)
冒頭の写真は、今回公演のチラシ画像。新しい歌舞伎座は後ろに聳えるタワーとセットの複合ビルなのだなぁと思い知らされる。後ろのタワーとの関係で劇場部分のロビーや売店配置などのスペースをコンパクトに納めるために3階に「吉兆」が入り、以前は1階にあったような土産店がめで鯛焼き屋と並んでいるのだと納得。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_warai.gif)
4/14歌舞伎座新開場杮葺落四月大歌舞伎(1)第一部の前半の記事
4/14歌舞伎座新開場杮葺落四月大歌舞伎(2)贅沢な大顔合せの「熊谷陣屋」
4/14歌舞伎座新開場杮葺落四月大歌舞伎(3)菊五郎の至芸「弁天娘女男白浪」
4/14歌舞伎座新開場杮葺落四月大歌舞伎(4)玉三郎×松緑の「忍夜恋曲者」
4/25歌舞伎座新開場杮葺落四月大歌舞伎(5)「勧進帳」