07/05/19 五月大歌舞伎昼の部③「鳴神」


新橋演舞場五月大歌舞伎昼の部の幕開けの「鳴神」が最後になってしまった。吉右衛門が出ていないせいかも(^^ゞとにかくこの演目も今回が初見。
【歌舞伎十八番の内 鳴神(なるかみ)】
この演目の概要はこちらをご紹介→ウィキペディアの「鳴神」
二代目左團次の復活上演以降は、成田屋版、弟子筋の高麗屋版といろいろな演出があるらしい。もちろん染五郎は祖父譲りの型で演じるわけだ。
今回の配役は以下の通り。
鳴神上人=染五郎  雲の絶間姫=芝雀
所化白雲坊=吉次郎  黒雲坊=吉之助
まずは鳴神上人と弟子の白雲坊・黒雲坊とのやりとり。吉次郎・吉之助がベテランさん達ということもあり、染五郎の鳴神がこの弟子たちのお師匠様に見えない。声もお上人様らしい威厳がない。こんな青二才のくせにどうしてこの地位にまで登りつめられたのだろう。祈祷の力が強いというテクニックが評価されたのだろうか?というくらい青二才の鳴神上人。ちょっとイメージが違うなぁ。

花道に鉦をチンチンと鳴らしつつ芝雀の雲の絶間姫が登場。アレレ、雲の絶間姫の舞台写真で通常見る顔の拵えと違うぞ!紫帽子の下にかかる上がり眉じゃなく、普通のお姫様みたいな眉の書き方だ。こういうのもありなのか。そうか、「双面」のおくみの顔の拵えと同じにならないようにしているのかなぁ?などと思い巡らす。

語りが始まると、雲の絶間姫しゃべるしゃべる。こんなにしゃべる役なんだと驚く。雲の絶間姫は帝のお側近く使える官女だから気品もあり、その容色を見込まれて鳴神篭絡を図るように送り込まれた女の色気の両方を兼ね備えないといけない役なのだろう。さらに芝雀の持ち味の可愛さもある。予想を遥かに上回る芝雀の雲の絶間姫に目が引き付けられた。またまた見直してしまった。絶品!!こんな素敵な美しいオネエ様に現役の男が落ちないわけがない。

染五郎の鳴神上人と並ぶと青くさい若者が熟女の魅力にたぶらかされた感じがある。それも芝雀の熟女は色気がありながらも清潔感もある。だから鳴神に一度は自分を篭絡にきたのだろうと疑われたのを悲しんで滝に身を投げようとするところの説得力も増すような気がした。

姫を出家させる道具をとりに行けと弟子たちを下山させた後のやりとり。鳴神は姫の策にはまる。姫の身体にふれることになったことから姫が欲しくなり、破戒・還俗の覚悟を固めると姫に主導権を握られる。酒を飲まされて秘法を解く秘密まで言わされてしまい、酔いつぶれてしまう(今回のように舞台の中央でぶったおれた鳴神を赤い布で隠して次の準備をするのが古風な型らしい)。
姫は鳴神から聞き出したように滝壺に張った注連縄を切り、竜神を解き放つ。全世界の竜神を封じ込めたはずだが登っていくのはただ一匹(匹でいいのかな?)。まぁ象徴ということだろう。振り出した雷雨の中、姫はさっさと下山していく。

弟子たちが大勢かけつけてきて起こされた鳴神は鬘も顔の拵えも準備完了。騙されたことに怒ってぶっかえって姫を追いかけようとする。ここからの染五郎は奮闘する姿がなかなか好ましい。とめだてする弟子たちをぶんなげて荒れ狂う。気合十分の花道の引っ込み。指先まで力にあふれ、踏み鳴らす足音も高く引っ込んでいく!

このコンビだと最後はハッピーエンドになりそうな気がする。雲の絶間姫には文屋康秀という想い人がいてその男と添いたいためにこのお役を引き受けたということになっているらしい。それでも染五郎の鳴神上人がこんな迫力で追いかけてきたら、その勢いにほだされて一緒になってしまいそうな感じだ。そういうハッピーエンドで漫画にしたのが木原敏江の「轟く滝の下で」(ご紹介の記事はこちら)。最後は若さの勝利ということで(笑)

また、この染五郎の若さにあふれる鳴神上人についてのイメージを膨らませた「てぬぐいぶろ。」さんの記事もご紹介しておきたい(→こちら)。すごく納得できてしまうと思う。

予習のために買った本を観劇後に読了。前進座の亡くなった女方、嵐芳三郎さんの『役者の書置き』(岩波新書)。前進座の歴史もよくわかるし、「鳴神」の前進座での演出もよくわかった。嵐芳三郎・圭史兄弟による上演の写真が載っていた。今年5月の国立劇場公演(「毛抜」「新門辰五郎」)は残念ながら見送ってしまったが、来年は圭史の「鳴神」をやっていただければと思ってしまった。

写真は、今回公演のチラシより鳴神の染五郎の部分をアップで撮影。
以下、この公演の別の演目の感想
5/19昼の部①「鬼平犯科帳 大川の隠居」
5/19昼の部②「釣女」
5/22夜の部①「法界坊」「双面」
5/22夜の部②福助のお三輪
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07/05/22 五月大歌舞伎夜の部②哀れ!福助のお三輪


夜の部の幕開けは「妹背山婦女庭訓 三笠山御殿の場」。今年2月の国立小劇場での「妹背山婦女庭訓」で《道行恋苧環》《鱶七上使の段》《姫戻りの段》《金殿の段》《入鹿誅伐の段》を観ている。その中の《姫戻りの段》と《金殿の段》が歌舞伎の「三笠山御殿の場」にあたるようだ。そこで今回の観劇をけっこう楽しみにしていた。
【妹背山婦女庭訓 三笠山御殿の場】
今回の主な配役は以下の通り。
杉酒屋娘お三輪=福助
烏帽子折求女実は藤原淡海=染五郎
入鹿妹橘姫=高麗蔵 豆腐買おむら=歌六
漁師鱶七実は金輪五郎今国=吉右衛門

15分くらい前に演舞場に着くなと思いながら、ごったがえす歌舞伎座正面を通り抜けて演舞場へ。その入り口付近の静けさに・・・・・・。入り口の掲示を見たらガーン、4時開演だった。歌舞伎座と同じ4時半開演だとばかり思い込んでいた(T-T)
《姫戻りの段》のあたりの求女の染五郎、橘姫の高麗蔵は全く観ることができなかった。求女の後を追うお三輪が入鹿の御殿(三笠山御殿)にやってきて通りかかった「豆腐の御用」の下女に年の頃は二十三・四のいい男が来なかったかを尋ねるところも歌六の花道の引っ込みの場面でようやく着席。歌舞伎ではおむらという名前がついていて、おむらは下女にしては衣裳も立派。歌舞伎ではもう少し地位の高そうな使用人にしているのかなと思った。

今回の観劇前に「歌舞伎美人」の「歌舞伎今日のことば」のところで「苧環」について読んでいたのが役に立った(→こちら)。白い糸と赤い糸を苧環に巻いたものを七夕さまに備えて求女の心変わりがないように祈った後で、その苧環をふたりで持つことにして夫婦約束をしたのだ。それがわかっているとお三輪が苧環を投げ捨てて七夕さまに恨み言をいう場面もよくわかった。この場面の福助のお三輪が可愛いこと。
それが官女たちにいたぶられるギャップの激しさ。立役をいじめ官女にすることでいじめの陰湿さはあまりないように感じるが、迫力はすごい。長い銚子を使ってのお酌の稽古や馬子唄の強要、最後は笑いものにしただけで置き去りにされる。
お三輪は下々の者とはいえ、酒屋のお嬢様。身分が違うとここまで馬鹿にされ辱めを受けたことの仕返しを使用人にさせようとぶつぶつ言いながら花道を帰りかける。さすがに気丈な娘という感じがした。

ところが御殿の奥から聞こえてきた「三国一の婿とりました~」と騒ぐ声に、求女が心変わりするから自分がこんな目に合うのだと、悔しさと求女への恨みの心がないまぜになって“疑着の相”になるのだというのがよくわかる。福助お三輪の“疑着の相”、髪をさばいてたけり狂う様のものすごさといったらなかった。この女パワー炸裂の態の生血だったら入鹿の超能力を奪う力がありそう!またそれがすごく可愛いのだ。こういう顔に可愛さを感じてしまったのに自分でも驚く。

鱶七上使の段がないので吉右衛門の鱶七は最後にやっと登場。たけり狂うお三輪をいきなりぐっさり刺してしまう。それからおもむろに「女でかした~」と褒める。実はお三輪が慕う求女が藤原淡海であること、お三輪の生血が入鹿征伐に役に立つから淡海公の役に立つのだからお前の死はあっぱれなことなのだと褒めるのだ。
最後に鱶七に殺されることで初めてこの世に生きた甲斐があったことを得心しながらも、やはり求女を恋いながらのお三輪の死。お三輪の哀れさが際立った。吉右衛門の鱶七もそれを際立たせるための存在くらいに思えた。

福助のお三輪を観るための一幕と割り切って観ることができた。前半の可愛さと後半の情念の爆発、最後の哀れさ。実によかった。7月の国立劇場の「野崎村」のお光への期待が高まってしまった。
写真は、今回公演のチラシよりお三輪の福助の部分をアップで撮影。
以下、この公演の別の演目の感想
5/19昼の部①「鬼平犯科帳 大川の隠居」
5/19昼の部②「釣女」
5/19昼の部③「鳴神」
5/22夜の部①「法界坊」「双面」
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07/05/26 続・第34回俳優祭レポ!


先にアップした「白雪姫」レポはこちら
開幕前に羽織袴姿の三津五郎実行委員長からご挨拶とともに諸注意があった。模擬店タイムでサインとツーショットなど時間をとるものは原則×というもの。まぁそうでしょうねと納得。
さて、開幕!梅之さんのブログにもあった“三段返し”の舞踊。
【郷土巡旅情面影(くにめぐりたびのおもかげ)】
企画構成:坂東三津五郎
上、加賀「勧進帳」(小松市の小・中・高校生による長唄囃子演奏)
中、肥後「山鹿灯籠踊」
下、阿波「阿波踊」
上の巻「勧進帳」。さすがに安宅の関のある小松では地元の歴史的出来事にちなんだ伝統芸能の継承をしているんだなと感心。でもだんだん眠くなってしまう。しまった、詞章をプリントアウトした紙を持ってくればよかったと後悔。カメラの用意だけで気が回らず。こういう機会も逃さないようにしなければと真面目に思ってしまう(まだまだマジメな開幕時)。
中の巻「山鹿灯籠踊」。頭にのせる紙細工の灯篭が見事!暗い中を千人の女性が踊るお祭り。NHKの朝ドラ「オードリー」で主人公の家のお手伝いさん役の藤山直美が山鹿出身で別れの場面が灯篭踊の場面だったのを思い出す。八千代座に歌舞伎公演が定期的にかかるようになったご縁ということでこういう取り組みって大事だなとつくづく思った。名題下の女方さんたちが澤潟屋などの若手と一緒に一生懸命踊ってくれて、こういうのはいい企画だと思った。
下の巻「阿波踊」。実家の方で「南越谷阿波踊」が盛んになっているので、けっこう見ているのでついそれと比べてしまった。今回の女方踊りは本物の女性による踊りよりも優美!素人の夏の祭りの踊りとは別物という感じ。それはそれでいい。男踊りも頑張っていた。奴凧を真似た踊りはもう少し凧の硬い感じが出るといいのにと思いながらも短期間の練習の頑張りをたたえたい。猿弥さんが「エンヤ~コラヤ」のドリフの曲に乗せてしつこく繰り返すワルノリを段治郎がハリセンでやめさせるオチはやはり笑えた~(ハリセンは夜の部だけだったようだ)。

前回の俳優祭はTVで見ただけだが、前半も寸劇で関所の代官の前でグループが芸を見せて通行の許可を得るというものだった。今回は三津五郎丈らしく舞踊企画だったが、やはり若手の名題下の若手まで舞台に立つことのできる企画だったことがよかったと思う。

【模擬店タイム】
模擬店の配置図がプログラムに鋏こまれていたのを帰宅してから気づいた。お馬鹿な私は半分くらいしか回れなかった(^^ゞ時間いっぱい何も食べずに写真をいっぱい撮った。デジカメではないので現像に出さないと結果がわからないというのがドキドキ。うまく写っているといいなぁ。

まずは地下にダッシュ。役者さんたち到着前に錦之助(以下も敬称略)の店で先着100名様襲名記念の卓上カレンダー付きのお握り2個セットを買う。そうこうしていると続々役者さんたち到着。團十郎・海老蔵親子の店は並んでいる。それぞれすごい行列ができる。買わずに脇から撮影。時蔵・錦之助兄弟の店も並び。息子くんたちも含めてちゃんと撮影。ドリンク・小倉アイスに心が動いたが食べていると時間がなくなると我慢して撮影。
1階西の舞台写真売り場のあたりで仁左衛門店のTシャツ、すでに黒のM売り切れ。そこで仁左衛門さんに「布の巾着ありますか」とお聞きしたら赤?柿色をパッとつかんで出されたので「他の色はないですか」ともう一回きいて紺色を見つけてもらって買った。巾着1500円(ぐるぐる回ってきたら千之助ちゃんがTシャツの宣伝に声を張り上げていたのでしっかりとほだされて白でもいいやと買ってしまった=3000円)。
奥の田之助店で人形焼を買ったのに、リュックと一緒に持ち歩いていたはずが撮影に夢中になってどこかにいってしまった。気づいたのは終演後!いかに舞い上がっていたかということだ。
段四郎店できんつば10個は重いので焼き栗入り饅頭を箱で買って大河ドラマの絵葉書をつけてもらう。「外記がよかったです~」と言いながら握手していただく。
富十郎・鷹之資店で鷹之資くんを撮影しようとしたらお弟子さんに「買った人だけですよ~」と言われてしまい、引き出し付きの箱に入った名入り煎餅2000円があと4箱になっていた。「7歳の子があんなに頑張って売っているんですから」にほだされて買ってしまった。うーん、お子様にほだされてるなぁ(^^ゞ
フリーマーケットではサイン入りクリアファイル@500×2枚を買う。売り子の彌十郎・亀蔵お二人がマジックでサインしながら売っているので亀三郎のファイルの裏と松緑のファイルの裏にそれぞれサインしていただく~。
菊之助店をたずねると売り切れのため既に閉店。そこで引き返したのですぐそこに愛之助・秀太郎店があったのも気づかず。ここが一番痛かった。

開演前に下見した2階のギャラリー。押し隈にサインが入ったものが一枚20万円にやっぱりこういう相場なのねぇと感心。一階で遭遇する役者さんたちの撮影でいっぱいいっぱいになっていて上にまで行けなくなってしまった。とにかく舞い上がっている!
西に戻って一番盛り上がっている松緑店の周り。若手の役者が来て飲んでいるのでここに一番長くいた。ブログで勉強になっている梅之さんも来たのでお話しできて嬉しかった。酔っ払っている亀三郎さんに「買いましたよ」とクリアファイルを見せたら「エライ!」と頭をなでられた!亀鶴の阿波踊の女連メイクのアップはちょっと迫力でいきなり目が合ったらひいてしまった。しかし笠の上にディズニー白雪姫の絵が乗せてあったので「撮らせてください!」と頼んでアップで撮影。松緑店のシャンパンで初めてお腹にいれたら胃がちょっと痛くなってしまった。ロイヤルミルクティでおなかをあたためたら落ち着いたので無事「白雪姫」を観ることができた(^^ゞ
幕切れのご挨拶は芝翫丈・手締めが富十郎丈であった。アリゾナの休暇から戻った勘三郎が又五郎丈の手を引いて登場。又五郎丈のお元気な姿を観られたのは嬉しかった。
写真はTシャツと巾着に入った「34thHAIYUSAI Snow White」のリンゴのデザインと日本俳優協会50周年記念のロゴのシール(これは見えないね)。

それにしてもプログラムの担当理事の團十郎丈のご挨拶の文章からは、来年もあるのかしらと期待してしまう。以下、引用。
“私たちにとっても大切な歌舞伎座が改築されると一部に報道されましたが、できれば改築前にもう一度「俳優祭」をやらせていただきたいと思っております”
さて、来年も團菊祭の後くらいにもう一度やっていただけるのだろうか(追記:来年と書いたが2009年くらいまで建替えがないような感じもするし・・・)。やっていただけると嬉しいなぁ。
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07/05/26 第34回俳優祭「白雪姫」レポ!

日本俳優協会主催の「俳優祭」に初めて行ってきた(夜の部)!明日は文楽の通し観劇なので「白雪姫」に絞って書く。
協会サイトの「第34回俳優祭」の記事
【白雪姫】
上記のサイトで予習したことのメモ。
「白雪姫」の初演は今から32年前の第16回俳優祭(昭和50年=1975年)。当時まだ若手だった菊五郎(脚本)、團十郎(美術)、初代辰之助(振付)、梅玉(演出)という製作チームによる創作。
主なキャストの変遷は以下の通り。初演→昭和58年の再演→平成9年の再々演→今回の4演目
白雪姫:六代目歌右衛門→同→雀右衛門→玉三郎
王子:先代幸四郎→二代目松緑→当代幸四郎→同
お妃実ハ魔女が勘三郎→同→團十郎→同
昭和58年の再演時、お妃と鏡の精は先代勘三郎と勘九郎の親子共演となってあまりの可笑しさに今も語り草になっているという。

今回の配役は以下の通り。
白雪姫=玉三郎  王子様=幸四郎  
お妃実ハ魔女=團十郎  鏡の精=海老蔵
7人の童=吉右衛門、仁左衛門、梅玉、左團次、段四郎、秀太郎、波乃久里子
動物たち=(クマ)橋之助、(シカ)染五郎、(タヌキ)松緑、(ウサギ)菊之助、(キツネ)愛之助、(リス)勘太郎、(サル)右近、(イノシシ)獅童
小鳥=時蔵、芝雀、扇雀、福助、孝太郎、七之助、高麗蔵、門之助
狩人=彦三郎  北千住観音=菊五郎

過去の上演歴を踏まえるとキャストの関係もなぁるほどである。
玉三郎の白雪姫は赤姫姿で美しく、冒頭には亡き母を偲んで形見の琴を弾く場面もあり、未見の「阿古屋」を観たくなった。そこから箏曲社中の演奏にもつながっていく。長唄連中、竹本連中も出てとにかく豪華な舞台。
團十郎の継母のお妃は「先代萩」の八汐のような拵え。大きな鏡に向かってつっころぶと同様の拵えの海老蔵もつっころんで鏡の後ろに出てくるという登場。幕も何もないのだから登場に仕掛けがいらなくていい(ガッテン)。顔の拵えは海老蔵は更科姫風で八汐風ではない。「白雪姫の方が千倍も万倍も美しい」という答えをお妃が何度も何度も繰り返すと鏡の精が「くどい」と言って笑いをとる。さらに鏡に向かってのいろいろな仕草で團十郎の後を必死に海老蔵が対照になぞる様が可笑しい。鏡を拭いた懐紙を客席に投げるサービスあり。
狩人の彦三郎に森の奥に連れてこられ、命は助けられた白雪姫。気を失っているところを動物たちが7人の童の家に運んでいく。何人かで本当に持ち上げて運んでしまう!(ここで童との幸せな日々が過ぎている)
花道から7人の童の帰宅場面。仁左衛門を先頭に上記の7人の可愛らしい拵えでの登場に客席が湧く。秀太郎のかむろ姿は女優に勝つ愛らしさ?!。最後にまさかりかついだ赤丸ほっぺと丸めがねの吉右衛門!演舞場の醜女に続く大ウケ!!
童の家では白雪姫が頭に白いてぬぐいを大きくかぶった姿で出迎える。この姿は雀右衛門の何かの舞台写真で見たことあり(六条亭さまの記事で「鎌倉三代記」の時姫と判明。感謝m(_ _)m)。まだまだ未見の演目も多いのでわからないが、いろんな舞台のパロディ満載なのだろう。でっかい三角おにぎりをつくって待っていておにぎりを渡してパクついたりする所作が可愛らしいことこのうえない。
今度こそ自分が一番美しいだろうと言ってもらおうとお妃は久々に鏡の精に問う。ところが白雪姫の生存と所在を聞かされて魔女の本性をあらわしてのぶっかえり。箒とはたきを鏡の精にもらって襟にはたきをさし、箒にまたがっての六方ひっこみというものすごさ~。
白雪姫と魔女の場面はなし。三宝にのせた林檎を持って登場した白雪姫は悩んだ末に食べて倒れる。またまた動物たちが見つけて小鳥たちに飛んでいって童たちにしらせてもらう。みんなが揃って白雪姫が死んだと嘆いているところへ、幸四郎の王子様が花道のスッポンから登場(あれ?人間じゃない扱い?とひとりツッコミ)。七三で青いハンカチを取り出して汗を拭く。本舞台で金の扇子で顔を隠してはにかむ。こういう気障な所作はお似合いである。
そこに奥から現れたのは菊五郎の北千住観音。児雷也のマダムメイクを数段バージョンアップした感じ。手には長い長いつけ爪つき。千手観音をもじっているので後ろに若手が何人もいて光背のように手を広げたり伸ばしたりのパフォーマンス。金粉が降ってくる中を後ろもつけ爪つきの手のパフォーマンスで、最後は1月の国立劇場の化け猫のパラパラパフォーマンスを彷彿とするパラパラに乗っての華麗なショーとなる(かげみつ様に同じ曲と教えていただく。感謝m(_ _)m)。その部分だけスポットが当たっていて、他の舞台の上は暗い中、倒れている白雪姫まで起き上がって北千住観音を出演者まで見て楽しんでいた。
観音のお告げ「北千住~、北千住~、次は南千住~」
ややしばらく後の観音のお告げ「よく寝てるけど、乗り過ごさないでね」
要は姫は死んではいない。眠っているだけだという。観音が去った後で、王子は倒れているのは白雪姫ときき、夢のお告げを思い出し、鏡で生き返らせる。そして求婚。めでたしめでたしの大団円~。

模擬店の時間もめちゃくちゃに舞い上がってしまったが、この「白雪姫」も観にきた甲斐を十二分にかみしめられるものだった。NHKの収録が入っていた(カメラにNHKとあるのをちゃんとチェック)。今回歌舞伎座に来られた方も来られなかった方もTVでしっかり観ていただけます。私も観るのが今から楽しみ(追記:7月オンエアのようです!)。
こうやって書いているだけで脳内再現して楽しめてしまった~。

それではとりあえず、「白雪姫」のレポアップでした。間違いやお気づきの点などがあればどんどんご指摘くださいますようお願い申し上げますm(_ _)m
写真は前出の公式サイトより今回の俳優祭のチラシ画像。
追記
①吉右衛門のまさかりは「関の扉」の関兵衛の持っているものらしい。他の方のレポで気がつく。昼の部では持っていなかったとのこと。昼と夜でいろいろ違うところもあるようだ。
②北千住観音の元ネタについて「くだま記」のharukiさんの記事で知ることができた。ご紹介しておきたい(→こちらへ)

「続・第34回俳優祭レポ!」で前半の舞台と模擬店タイムについて書いたので、あわせてよろしくお願いしますm(_ _)m
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07/05/25 團菊祭千穐楽夜の部①「雨の五郎」「三ツ面子守」


時間があまりとれないので、まずは舞踊2本から。いずれも初見。奥村書店で古本を手に入れていた『歌舞伎名作舞踊』にそれぞれ見開きで載っていたのを事前に読めずに重たいのに本を持ち込んで直前に読むという付け焼刃!イヤホンガイドとあわせてしっかりチェックしたおかげか睡魔はやってこなかった(^^ゞ

【雨の五郎】長唄舞踊
奥に長唄の台がある。その前に曽我五郎(松緑)が蛇の目傘をしょっている。花道から登場するんじゃなかった。雨をあらわす吊り物もなかなかいい感じだ。
父の敵討ちを控えているというのに、大磯の廓の馴染みの傾城・化粧坂の少将のもとに向かっている。少将からの恋文に心を動かされてのことらしく、天紅の手紙を読み直したりしている。隈取をとった荒事の拵えに女にほだされての廓通いというのがいいらしい。そこを若い男ふたりにからまれて立ち回り風になってという変化も入ってくる。短いので退屈する間もないのも有難い。
松緑は昼の部の「泥棒と若殿」もよかったし、夜の最初の「女暫」の男鯰もよかった。こういう荒事の拵えはとても似合う面構えだし、登場の時から、衣裳が写真などでよく見る黒繻子ではなく白地だしと登場から喜んでしまった(あとから筋書を読むと祖父に倣ってとのことだった)。けっこう満足できてよかった。

【三ツ面子守(みつめんこもり)】常磐津舞踊
赤ん坊を背負いねんねこを着て、手にお面をつけた笹を持った子守の少女姿の三津五郎が駆けてきて登場。子守の女の子がてぬぐいを頭に巻いているのは赤ん坊に髪の毛がさわらぬようにするためだということをイヤホンガイドで聞いて「へぇ~」とやけに感心してしまった。子守のトレードマークに合点!
本舞台でねんねこと赤ん坊を下に降ろして寝かしつけてしまう。赤ん坊が寝ている間が子守の自由時間。そこで踊り始めるのだが、頭のてぬぐいをとってニッコリするとその可愛さにまた驚く!TVで観た「京鹿子道成寺」の花子などより遥かに似合っている。また前観たなんとか坊主よりも数段観る気になる可愛さだ。
赤ん坊が起きてしまうと笹についた3つのお面を付け替えて踊って赤ん坊をあやす。おかめ、恵比寿、ひょっとこの面をつけ替えるのだが、くわえて踊るというお面は歌舞伎独特だという。差し金付きの鞠をついたりと小道具も多いが、後見との息もあってスムーズで感心。変化の多い踊りでこれも飽きない。三津五郎の踊りの巧さに心地よく観ることができたし、庶民の少女役がこんなに可愛いなんてと新たな魅力発見。
考えてみると「泥棒と若殿」のコンビだった。2本の舞踊を続けざまに観たが、それぞれ面白く、予想以上に楽しめたのがよかった。
写真は歌舞伎座正面の「御礼本日千穐楽」の垂れ幕。雨風に揺さぶられている。
以下、この公演の別の演目の感想
5/13昼の部①團菊の「勧進帳」
5/13昼の部②「泥棒と若殿」
5/13昼の部③「切られ与三」「女伊達」
5/25千穐楽夜の部②萬次郎の「女暫」
5/25千穐楽夜の部③「め組の喧嘩」
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07/05/25 眠気に負けるな3レンチャン!


写真は娘が焼いたクッキー。NAMACHA500㍉PETボトルを4本買うと今付いてくるお盆にのせて撮影してみた。
昨晩、仕事から帰るとバイトが休みだった娘がクッキーづくりに燃えていた。久しぶりに作りたくなったんだという。まだ焼いていないタネがいっぱいボールに入っている。うわー、何時までかかるんだぁ。
夜ご飯の用意は当然できない。ブログで「法界坊」の感想を書きながら待つしかない。キリのいいところでバトンタッチ。食事が終った後、クッキーづくり再開。ホットケーキミックスを2袋使って、バターもほとんど1個使われてしまった~。
「つくりすぎた~」と本人も言っていたが、結局全部焼き終ったのは夜中の2時くらい。それから洗い物とかをするのは私だった!「半分あげるからさ~」と言われてもあんまり嬉しくないぞ~!!

それから入浴したりなんだかんだとしていたらいつもより寝るのが遅くなってしまった。
今日、職場に持っていって「娘が焼いたんです」って言いながら食べてもらった。好評ではあったけれど、仕事はつらかった~。エクセル入力画面に続けて向かえる時間がいつもより短い。4時間ちょっとしか寝てないもんね。寝不足は喘息の症状も悪化させる。睡眠障害と喘息がセットというのが私の今のつらいところだ。

バイト先でちゃんとバターを帰ってきた娘、小麦粉やら無塩バターも買ってきてる~。なんかはずみがついてしまったみたいだ。危険~。

さて、明日からは團菊祭千穐楽夜の部→俳優祭夜の部→文楽「絵本太功記」一部二部通しという3レンチャンだ(NAMACHAはその時に役に立つ!)。
大丈夫か?大丈夫にしなければ・・・・・・。
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07/05/22 五月大歌舞伎夜の部①「双面」までまとまり感があった「法界坊」


2005年の納涼歌舞伎で「串田版・法界坊」を観たのが初めて。期待しすぎたせいか、前半のお芝居と後半の浄瑠璃がうまくつながらないように強く感じてしまって納得できなかった(その時の感想はこちら)
さて、今回はちゃんとした純歌舞伎で観るとどうなのかとリベンジに臨んだ。

2.「隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)」
【法界坊】
今回の配役は以下の通り。
聖天町法界坊=吉右衛門 大阪屋源右衛門=歌六
永楽屋おらく=吉之丞  娘おくみ=芝雀            
手代要助実は吉田松若丸=錦之助  丁稚長太=玉太郎
道具屋甚三=富十郎  松若丸許婚・野分姫=染五郎
若党五百平=歌昇

あらすじを「歌舞伎美人」のみどころで確認したら間違い発見。おくみは永楽屋権左衛門の娘なのに大阪屋源右衛門の娘になっていた。嫁にもらおうとする男だよ(笑)(こちら)公式サイトの作成内容のチェックが甘いぞ。
とにかく、串田版ではその父を彌十郎がやっていたが、今回は母おらくが出てくるバージョン。吉田家は主筋なので嫡子松若を手代要助として世話していて、お家断絶になった原因の“鯉魚の一軸”を取り戻すために娘の縁談をすすめてはいるが、手に入れたらなんとでもなると言い放つ。すごいおっかさんだ。吉之丞がしたたかな女将をやってくれているのがまたよかった。

錦之助の要助と芝雀のおくみはベストカップル。昨年の「ひと夜」を彷彿としながらこのコンビのよさに悦に入る。周りの男にことごとく言い寄られるおくみという役だが、芝雀があまりにも可愛い女なのでとても納得できてしまう。そのおくみがぞっこんなのが錦之助の要助というのもそうだろうそうだろうと思ってしまう。向島の料亭大七の座敷でふたりがじゃらじゃらする場面は見ていてホワホワしてしまう。

その隙に“鯉魚の一軸”をすり替えて後ろで「バーカ」とばかりに変な格好をしている吉右衛門の法界坊。まことにほどのいい可笑しさでいい。登場からして汚い格好で鐘の建立のために寄付を集めていても自分で使いこんでしまっているインチキ臭い坊主。ちょっと身体が立派すぎる感じはあるが、いっつもグニャグニャしていて気持ちが悪いこと、この上ない。生臭坊主のはずだがあんまり好色な感じはしない。「おくみちゃんおくみちゃん」への言い寄り様には純情を感じてしまったのは吉右衛門のニンのせい?おくみの間男が要助だと源右衛門に言い立てる法界坊だが、富十郎の道具屋甚三に恋文をすりかえられて自分の恋文を読まれてしまってあわててトンズラした時もちょっと可哀相になってしまったくらいだ(^^ゞ
この作品は「当世ですから~」ということで流行のギャグネタを取り込むことが通例になっていて今回も「ちょっとちょっとちょっと」とか盛り込まれていたが、吉右衛門が当世のギャグを言うということだけで喜んでしまうんだから、贔屓は仕方がない。もちろん私も喜んでいる。

それにしても恋仲がバレそうだと後ろ向きにうなだれている錦之助の要助の後ろ姿の風情のよさも絶品!

この作品は、同じ台詞を鸚鵡で何人も続けていくのが面白い。松江の長男・玉太郎も丁稚長太で頑張っていた。玉太郎は昨年の国立劇場の弥三松で自分の台詞以外気が抜けていたのに、今回は張り切ってくれていてちょっと安心。台詞が歌舞伎の子役調でないのがもう少しという感じで鸚鵡の最後に気が抜けるのもちょっとなんだったが、前を思えば成長してくれたかなぁでまぁいいことにしよう。

染五郎の野分姫はとにかく綺麗。でも声があれでは姿形とのギャップが大きすぎる。昨年の更科姫でもそうだった。この声はどうしようもないのだろうか。幽霊になってからは凄みがあっていいんだけど。

三囲土手での法界坊と道具屋甚三との立ち回りも立派。傘をしょっての決まりポーズで、うわ~足が長い~とかそういうところに喜んでしまう。ついに道具屋甚三に殺されて穴から幽霊の裾の長い着物で宙吊りになるが宙乗りはなし。自分が殺した野分姫と半々の顔になる「双面」の顔の拵えもなし。宙乗りがあるかと3階席の下手にしたのだが、なくてちょっと残念。そういえばチラシにも「宙乗りあい勤め候」と書いていなかった。

【浄瑠璃 双面水照月】
法界坊の霊/野分姫の霊=染五郎  渡し守おしづ=福助
甚三の働きで“鯉魚の一軸”も取り戻し、都へ向かうためにまずは甚三の妹おしづの手引きで舟に乗ろうとやってきた要助とおくみ。福助のおしづも落ち着いていていい。野分姫の形見の袱紗を焼いて成仏を祈るところへ亡霊が追いついてくる。それもおくみと同じ姿形に化けていて見分けがつかない。
合体霊ということで法界坊の役者がやっても野分姫の役者がやってもいいのだろうが、今回は染五郎の合体霊。芝雀のおくみと並んでも背格好に大差なく見分けがつかない設定に無理がない。
これも以前は吉右衛門がつとめたらしい。昼の部を観た帰りに奥村書店で『吉右衛門の歌舞伎ワールド』を買っていて、その中にあった「法界坊」のページでしっかり合体霊の写真を観ていた。うーん、絶対おくみと見分けがつかないなんてことはない。デカするし、最初から怖過ぎ~。

染五郎の合体霊で正解。登場のあたりは綺麗だし、亡霊の本性を出すとちゃんと怖い。舞踊ということでも踊りには自信があるだろう染五郎なのでなかなか見ごたえアリ。合体霊が要助とおくみの両方に執着して上手側に要助、下手側におくみとぎっちり掴んで離さない様子も絵になって決まった~。
人魂模様の襦袢にぶっかえって髪もさばいてハジケも出して亡霊があばれまくる。おしづが観音像をかざして亡霊の力を封じ込める。赤い台が出てきて絵面に決まって、幕。

前半の面白さだけだったら、「串田版・法界坊」の方が面白いだろう。しかし「双面」までのまとまり感がこちらの方にはあった。だから見終わった後の満足感が強く残った。
写真は、今回公演のチラシより「法界坊」の吉右衛門部分をアップで撮影。
以下、この公演の別の演目の感想
5/19昼の部①「鬼平犯科帳 大川の隠居」
5/19昼の部②「釣女」
5/19昼の部③「鳴神」
5/22夜の部②福助のお三輪
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07/05/22 『演劇界 月報』4月号をGET!


『演劇界』が今年の3月公演の記録を載せた5月号で休刊になっている。8月上旬発売の9月号でリニューアル創刊ということらしい。その間、歌舞伎公演記録として『演劇界 月報』を発行しているということを知った。
そこで演舞場昼の部を観た19日に奥村書店に寄ったら「売り切れました」と言われてショック。

気を取り直して再入荷予定をお聞きしたら「月曜日には入るはず」とのことだった。さっそく火曜日に夜の部に行く前に寄ってGET!山積みになっていた。とっても薄くて表紙しかカラー写真はなく、劇評も各公演1本ずつだが名古屋や関西での公演の様子も白黒写真ともどもわかる。ちゃんと「歌舞伎公演記録」になっている。300円というのもとても嬉しい。毎月、要チェックだ!(公式サイトの記事はこちら)

写真は4月号の表紙の錦之助襲公演の虎蔵。
追記
15分くらい前に演舞場に着くなと思いながら、ごったがえす歌舞伎座正面を通り抜けて演舞場へ。その入り口付近の静けさに・・・・・・。ガーン、4時半開演だとばかり思い込んでいたら4時開演だった~。豆腐買いおむらの歌六の花道の引っ込みの場面でようやく着席。求女の染五郎、橘姫の高麗蔵は観ることができなかった~。
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07/05/19 五月大歌舞伎昼の部②吉・昇・芝・錦の「釣女」


順不同もいいところだが、夜の部を明日観劇するので昼の部大爆笑の打ち出しとなった「釣女」を2番目に書いておこう。
2.「釣女(つりおんな)」
狂言をもとにした松羽目物の舞踊。あらすじは“こんぴら歌舞伎名菓「釣女」”の紹介サイトが楽しいのでそちらをご紹介m(_ _)m
配役は以下の通り。
大名某=錦之助  太郎冠者=歌昇
上=芝雀  醜女=吉右衛門

錦之助の大名某が物語を始める声にまず聞き惚れる。錦之助は二枚目として顔や姿とともに声の魅力が大きい。くせがなく涼やかさで口跡もよい。歌昇も口跡がいいし、三枚目としての太郎冠者のしぐさ、顔の表情の豊かさといい、本当にハマリ役。
大名が釣竿で釣り上げた美女の芝雀は上姿も美しい。対して家来の太郎冠者が釣り上げた醜女(しこめと入力しても自動変換せず!差別用語なのか??)が吉右衛門。
文楽でこの役に使われる面の写真が検索で見つかったのでご紹介するが、本当にこんな風に顔を拵えていて、被っていた薄物を太郎冠者がとって顔を見せただけで客席がどっと大爆笑で湧く。

180cmもある身長を少し殺しながらもそれでもデカイ赤姫姿の吉右衛門の醜女。ちゃんと女方の動きで予想以上に可愛かった。その上に口をすぼめて嫌がる太郎冠者を追い掛け回すその表情が両者ともに見ものだった(うまく撮影した舞台写真をしっかりとGET!→帰宅後、娘に大うけした!!)。これがさっきの「鬼平」と同じ人間か?!というところが吉右衛門の魅力なのだ。

大名夫婦の祝言のために太郎冠者が舞い、その後、嫌々ながらも祝言をあげた太郎冠者夫婦のために大名が舞おうとすると、何やら奇声が!
「きんちゃーん」(間)「すてき~」

一瞬へっとなってしまった私。脳内変換して理解して吹き出した時には醜女さんが錦ちゃん大名にお手手をパチパチさせていた!!

このパフォーマンスにやられた~。新橋演舞場は錦之助襲名公演の2ヶ月目と化していた。
みんなニコニコ顔でしっかり打ち出されてくる。吉右衛門贔屓は贔屓度を深め、「鬼平」を観にきたお客さんも役者・吉右衛門の贔屓になって帰ったことだろう。私もそうとう深みに入ってきた(^^ゞ

追記
歌昇の後見に種太郎が袴姿で頑張っているのを見て嬉しくなった。
写真は「釣女」幕開け前の幕。
以下、この公演の別の演目の感想
5/19昼の部①「鬼平犯科帳 大川の隠居」
5/19昼の部③「鳴神」
5/22夜の部①「法界坊」「双面」
5/22夜の部②福助のお三輪
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07/05/19 五月大歌舞伎昼の部①やっぱり「鬼平」はいい!


先月の二代目錦之助襲名披露公演の歌舞伎座の座組がそのまま引っ越してきたような今月の演舞場。その昼の部、3本ともよかった。まずはやっぱり話題の「鬼平」から感想を書く。
1.「鬼平犯科帳 大川の隠居」
主な配役は以下の通り。
長谷川平蔵=吉右衛門  妻・久栄=福助
船頭友五郎=歌六  小房の粂八=歌昇
岸井左馬之助=富十郎  与力佐嶋忠介=段四郎
同心酒井祐助=錦之助  同心木村忠吾=松江

大川端の船宿に年老いた船頭の友五郎が客を乗せた舟をつけて一服しているところに花道から平蔵が乗った舟がやってくる。ちゃんと七三のところで笠をとるから客席が湧くというちゃんと歌舞伎仕立ての楽しさにあふれた幕開け。
千住小唄?を歌っている友五郎に平蔵が煙草盆を貸して欲しいと声をかけたところから話がはずむ。“大川の隠居”と呼ばれる大きな鯉がいるという話もしていると友五郎が取り出した煙管は平蔵が盗まれた銀煙管そのもの。平蔵が何食わぬ顔をして釣りにいくと平蔵の舟の船頭をつとめていた粂八が友五郎に名乗りを上げ、盗みの師弟の再会。友五郎が評判の火付盗賊改方長官長谷川平蔵の鼻を明かすため、平蔵の役宅に盗みに入ってきたことがわかる。
友五郎が行ってしまうと平蔵があらわれるが隠れて事情を聞いていたのだった。父親の形見の煙管を盗んだ友五郎に怒る平蔵に土下座して友五郎の赦しを乞う粂八。その姿にほだされた平蔵は穏便に煙管を取り戻すための思案をめぐらす・・・・・・以下あらすじは省略。
歌六と歌昇の兄弟が大活躍。歌六の友五郎の思わず笑ってしまう時のククククッともケケケケッとも聞こえる可笑しみのある笑い方がいい。闇の世界に生きた過去を持ちながらも茶目っ気がある男らしさを感じる。鬼平の鼻を明かすためだけのさして迷惑にもならないだろう煙管を盗み出すということを如何にもしそうに見える。
歌昇の粂八も一生懸命さがいい。お頭に心酔しているが恩義のある友五郎も助けたい。その間に挟まれた苦悩に満ちた命乞い。お頭の吉右衛門とのやりとりをする時の顔やしぐさの表情の豊かさに歌昇の芝居の充実ぶりを感じた。

福助は相手役に本当に惚れるようにしているとかいう芸談を最近聞いたことがある。そういう目で見てみるとなるほど久栄の平蔵としゃべっている時の表情や声の可愛らしさに納得。煎れたお茶をほめられて喜ぶ場面も可愛かった。夫婦で会話しているうちに自然に平蔵を膝枕してしまう奥方っていいなぁ(私にはできないだろうから?)。映像版だともうこんな色っぽいお年頃の夫婦は望めないだろうから舞台版の美味しいところだとも言える。

そこを「エヘンエヘン」とご用向きのことで入ってくるのが段四郎の与力佐嶋と錦之助の同心酒井。二人ともちょっとだけの登場なのに真面目さの際立つコンビなのがまたよかった。錦之助の真面目な二枚目がカッコいい。いい使われ方しているなぁ。うさ忠が松江、エッ?エッ?三枚目、大丈夫?大丈夫だった~。松江もやってくれた。

平蔵の親友・左馬之助も富十郎。煙管を吸う姿が親父殿に似てきたなんて煙管事件の解決を楽しみにしている風に言うためだけの一場面に特別出演のように登場。いいねぇ。

最後の一場、平蔵が友五郎を初鰹の刺身で一杯やるのにつき合わせてのふたりのやりとりがもう最高。吉右衛門と歌六のポンポンというやりとりが可笑しいし、しみじみするし、スカッとする。二人は言いたいことを言って機嫌が悪くなり、本気で自分の身の上も交えながらどんどん言いたいことを言い続ける。その中で共感したり、やはり違うと思うところはきちんと言い、それが通じた時のさわやかさ。先に友五郎が「旦那に惚れた」と言い、それだからこそと本音をぶつけてくる。こういうやりとりができるということは素晴らしい。こういうやりとりができる人間関係をもっとつくりたいものだと思う。
平蔵の友五郎に対しての感情も大きく変化している。最初は単純に怒っていたのに粂八にほだされ、こうして口喧嘩をしながら腹を割って話してみるとこの老人の苦労の多い人生に胸を打たれる。息子に早くに先立たれた老人が自分に息子の姿を重ねていることにも憐れみを覚える。そんな中で友五郎が身につけた「盗人でもきれいな仕事だったら」という価値観を最後はやはり打ち砕く。「まともに生きようとする人の心を盗む」から赦せないと。友五郎はもう何も言えない。
「敵味方でもわかりあえるヤツがいる」と満足げな平蔵が銀煙管を出して煙草を吸うのを見た友五郎はやっと目の前にいる旦那が誰かわかるのだ。でもすでに心が通じているのでおそれいるが、楽しい時間は途切れない。そこに姿を見せる“大川の隠居”。舞台で飛び跳ねたのには私が驚いた。やはり歌舞伎の舞台は洒落てるねぇ。
(そうそうこの場面、初鰹の刺身が鰹に見えずに鮪に見えたのがご愛嬌。刺身として本当に口に入れる場合、羊羹のような消え物が使われているらしいがもう少し色が工夫されているとよかったのにと一人ツッコミしていた(^^ゞ)

團菊祭の「勧進帳」「泥棒と若殿」同様、男どうしのドラマにやられてしまった。吉右衛門×歌六×歌昇がすごい芝居を見せてくれて大満足。

写真は、松竹の公式サイトより今公演のチラシ画像。
以下、この公演の別の演目の感想
5/19昼の部②「釣女」
5/19昼の部③「鳴神」
5/22夜の部①「法界坊」「双面」
5/22夜の部②福助のお三輪
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