ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/04/23 歌舞伎座六世歌右衛門五年祭公演夜の部④「伊勢音頭恋寝刃」

2006-04-29 23:56:26 | 観劇
「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」はこれで2回観たことになる。1回目は昨年8月歌舞伎座での三津五郎の貢初役の時。実はその舞台ではあまり面白く感じなかった作品だった。結局ブログには感想を書くのをさぼったまま放置(^^ゞ
“ぴんとこな”といわれる貢の役を三津五郎は熱演していたのだが、その役の魅力がピンとこなかったのである。勘三郎の憎まれ役の万野も面白いことは面白かったのだが、襟の部分の着付けが乱れているのが気になったりちょっと今ひとつだった。

さて今回、仁左衛門の貢でようやくこの役の魅力がわかった!仁左衛門のもつはんなりした柔らかさが辛抱立役の部分や後半の妖刀「青江下坂」に操られる狂気の蛮行との対比で生きるのだ。和らかみに強みを持たせた特殊な役柄“ぴんとこな”には“つっころばし”役もうまい役者の方がやはりいいのだ。特に前半、油屋で万野にお紺と会うのを邪魔され、その意地悪に困りながらも替り妓を呼ぶのを承服させられるあたりにもその和らかみのある演技がきいている。こんな貢だったらわが身を尽くしてもいう惚れ方をする女が何人もいるだろうなと思わせられる。残念ながら三津五郎の貢にはそこまでの和らかみのある演技ではなかった。
その優しい貢があまりの愚弄のされ方にだんだん腹をたてていく様子の変化の幅の大きさになるのだ。江戸風に刀がないので鯉口を切るように扇子を裂くという演技はなく、帯に手を当てての見得になるのが上方風ということだが、これでもう十分だ。
前回お紺役だった福助が演じた万野。相当ねちっこい意地悪女として演じている。ねちっこいというよりも粘っこいレベルだが、こういう演じ方も私は嫌いではない。しかしながらこの万野の役柄だが、もう少し薹がたってしまっていて「男より金だ」という女として演じる方がいいと思ってしまった。老後のためにも金への執着が強く、だから長い間お鹿を騙してでも金をためこみ、悪人にも協力しているというような感じが漂った方がいいと思う。前回の勘三郎はそういう感じがちゃんとしていた。今回の福助はまだまだ女の色気がぷんぷんと漂いすぎ、ただただ性格が悪いだけの意地悪という雰囲気を感じた。ただし、青江下坂が刀の鞘を割ってしまって斬られて餌食になった時のエビ反りは大したものだった。歌右衛門はお紺も万野も両方当たり役だったらしいので、福助もしっかりと極めていってほしいものだ。

白い浴衣を血で染めた仁左衛門が上方方式で丸窓を破って登場しての大虐殺の立ち回り、背の高い仁左衛門のそれはそれは見栄えがして美しい。歌舞伎の残虐美のカタルシスだ。

お鹿は前回の弥十郎が可愛かった。でかい図体でブスだけど可愛げのある感じ。今回の東蔵は“おかめ”のような顔の拵えだったが、もう少し愛嬌がないと可愛くない。可愛くないと妖刀の餌食になっても悲劇性が薄い。
お紺は前回の福助もよかったが、今回の時蔵やはりいい。青江下坂の折紙を手に入れるための嘘の縁切りを貢にする場面のおさえた感じ、折紙を手に入れて貢に届けようとする時の嬉しそうな感じ...。いいねぇ。
料理人喜助の梅玉も忠義をつくす感じが自然な感じ。お紺も喜助もベタベタしない感じが共通。最後に正気に戻った貢がふたりに持っている刀の正体と折紙も手に入ったことを聞き、これで主人への忠義が果たせると満足してニッコリして三人で決まっての見得が歌舞伎らしい軽く明るく終わる幕切れに合うような気がした。
前回の幕切れはなんかご都合主義を強く感じて不満だったのだが、今回は仁左衛門のニッコリでうまく丸めこんでもらえたというのも大きい。仁左衛門のあの笑顔は矛盾があっても何もかも忘れさせてもらえるニッコリだった。

写真は「伊勢音頭恋寝刃」の看板絵。
以下、夜の部の4本をまとめるためのリンク。
①口上
②「時雨西行」
③「井伊大老」
追記
今年のNHK「伝統芸能入門」の歌舞伎入門をビデオ録画して5回分全部見ました。講師は三津五郎さんで彼の新たな魅力もわかった次第。そして鶴屋南北の資料映像で四谷怪談の直助を仁左衛門さんがやっているのを見て、喉の手術をされる前のお声を初めて聞きました。あんなに野太い声が出ていたんですね。

06/04/28 一歩、前へ...

2006-04-28 23:58:16 | つれづれなるままに
リビングルームに置いてある私のパソコンを娘に占拠されることもなくなり、ホッとはするものの今度は娘が自分の部屋にこもりきりになっていることが心配に。
バイトの話も仕切り直しになった4月半ばになってから「やっぱり絵が描きたい」「××○アニメ△○」とかに通ってみたい」ということを言い出す。学校の公式サイトとかで調べなさいといってもなかなか踏み出さない。

話だけでも聞きにいこうと説得し電話をかけるといつでも来てくださいというので先日フレックスで早上がりして母娘で見学+説明していただくというのをやってきた。全日制でも午前クラスか午後クラスという短時間制なので専門学校でがなく各種学校で通学定期もつくれない学校だということがわかったが、別に資格が欲しいわけではないし。しかしかなりまとまったお金がかかるので全日制にあわてて申し込むことをおすすめしないとのこと。コミック科なら週1回の夜間専科コースもあるのでそちらに通ってみてはいかがかとアドバイスされた。ちょうど2ヶ月ごとにひとつのテーマの区切りがつくので奇数月スタートがいいという。5月の連休あけだとちょうどいい。

実は私もサイトで調べてそのコースあたりがいいかなあと思って娘に言っていたのだが、「ちゃんと毎日行きたい」というので平行線。しかし学校の方にそう助言されると素直にきいている。ちょうど行った日が夜間のコースのある日だったので、午後のクラスの最後と夜間のコースとお茶休憩をはさんで両方見学させていただいた。家から近いし少人数でアットホームだし、やっていけそうという感触をつかんだようだ。

願書に必要な顔写真もないし、作成して届けることにした。その日のうちに早速作成して翌日行くはずだった。しか~し体調悪く2日連続届けられず!
タイムリミットの今日、ひとりでなんとか届けて来ました!ヨシッ!!
そして仕事を終えた私と合流して渋谷で今日までの映画を観にいく約束も果たしてくれた!ヨシヨシ(荒川くんじゃないですけど)!!

映画はル・シネマで明日から封切りの『RENT』上映記念と銘打ったミュージカル映画2本のうちロックミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』。これがまた良かったのだ。男でも美しい人はホント美しいと母と娘はふたりして溜息をつくのであった。
渋谷の学生さんたちがよく行くファミレスのようなお店「ジョイタイム」で遅い夜ごはんを食べて帰宅。
こうして一歩ずつ前進をしていけますように...。

写真は、よく晴れたお昼休みにランチ帰りの小学校のフェンスに吊ってあった花鉢のひとつ。マーガレットによく似ているがちょっと小ぶり。ノースポールだと職場のお姉さまに教えていただいた。

06/04/23 歌舞伎座六世歌右衛門五年祭公演夜の部③「井伊大老」

2006-04-27 23:58:09 | 観劇
2月にTVで「鬼平スペシャル」、歌舞伎座昼の部「幡随長兵衛」と夜の部「人情噺小判一両」を続けて観て、すっかり吉右衛門にハマっている。どうも時代物の吉右衛門は好みではないのだが、世話物の侍や侠客、普通の時代劇はとても味わい深い。これはキリッと渋く決める演技と軽妙な演技のメリハリが活かせるからだと思う。
「鬼平スペシャル」の感想はこちら
「幡随長兵衛」の感想はこちら
さてさて今月の歌舞伎座、北條秀司の「井伊大老」を観た。
三谷幸喜の大河ドラマ「新撰組!」だったと思うが、井伊大老の杉良太郎が好演だった。流し目の杉さまのイメージが強いが、嫌われ者のイメージの井伊大老を気骨ある人物として描いた三谷脚本の功があるが、杉良太郎、ちょっと太めにはなっていたが強面でなかなか魅力的だった。
さて、私には初見の吉右衛門の井伊直弼、これがまたよかった~。井伊家下屋敷の愛妾お静の方の居室の場で桜田門外の変の前夜という場面だけだったのだが、一番愛した女の前で人間井伊直弼の弱さをさらけ出し、その女のひとことで潔く死んでいく覚悟を固めるというそのメリハリの芝居が短時間ながら濃密に味わえた。

この一幕は、ふたりの間のひとり娘の月命日に彦根時代の師である仙英禅師(富十郎)が仏壇の前で読経をしているところから始まる。直弼は元々嫡男ではなかったが、兄たちが次々と亡くなったために井伊家を継ぐことになってしまった。部屋住み時代にふたりが暮らした埋木舎での思い出話になるが、お静は出家して娘の菩提を弔いながら直弼の面影を追いながら余生を埋木舎で過ごしたいと言う。禅師が出家を許すとあわてて撤回。正妻も迎えている直弼は自分をたまにしかたずねてくれないその辛さもあるが、やはり全く会えなくなるのは嫌なのだ。
明日は雛祭りだというのに冷たい風が入ってきて風よけに動かした小屏風には直弼による和歌が書き付けてあり、それを読んだ禅師はお静にその意味を明かす。直弼は死の覚悟をしているという。
そんなところに直弼が娘の命日を忘れずにやってくる。屋敷中が殿様の出迎えに浮き立つところ、禅師はひとり去っていく。仏壇の前で娘に回向したあと、禅師が「一期一会」と書き付けた古笠を残して行ってしまったとわかり、直弼は禅師が全てを悟ったことに気づく。
家来たちにも無礼講で節句の祝いを許し、ふたりで節句の宴を始める。屏風が開いて現れた立派な雛の段飾りが美しく、その前でふたりのやりとりという芝居がとても贅沢だ。
このお静を初役でつとめる魁春がとてもいい。低い身分の出自から側室の身となってはいるが、自分の方になかなかきてくれないことへの嫉妬を可愛くにおわせる。それがまた心地よいらしい直弼。しかしながらやりとりの中でお静が自分の状況をわかっていることに気づくと一気に心の中のものを吐き出す直弼。国政の舵取りとして国難をのりきるために心ならずも尊皇攘夷派の大量処刑を断行し鬼畜と罵られながら生きる苦しみ、まことの夫婦と思うふたりでこのまま死んでしまいたいとまで泣き言を言う。吉右衛門の目が潤んで光っているのが見えて私も涙がにじんできてしまう。

お静の方の「正しいことをしながらも世に埋もれたままの人もいる」という言葉に迷いをふりきる直弼。桃の節句を前に降り出す雪。この雪が降りつもった中で流血の桜田門外の変へ続くのだなとイメージがつながっていく。
その前夜の井伊直弼最後のひとときを濃密に描いた贅沢な舞台。歌右衛門とも組んで何度も直弼を演じている吉右衛門と初役の魁春がとてもいいコンビになっている。富十郎の禅師がその二人の前に実にいい芝居をしているので、三人は同じ板には乗っていないのだが、その三人のバランスがうまくとれた空間が出来上がっている。お静の方付きの老女雲の井役の歌江がまたそのバランスをくずすことなく脇役として要所をうまく締めてくれていた。
こういう芝居を観ることができると「見取り」でもたまにはいいかなあと思うことができるというものだ。

次の吉右衛門を観る舞台は、5/14新橋演舞場昼の部の予定。
写真は「井伊大老」の看板絵。

06/04/23 歌舞伎座六世歌右衛門五年祭公演夜の部②「時雨西行」

2006-04-25 23:56:23 | 観劇
六世歌右衛門自体は本舞台では「時雨西行」を舞踊の舞台でしか踊ったことがなく、歌舞伎の舞台で踊りたいと言っていたことにちなんで今回の追善の演目となったとのこと。
「時雨西行」は昨年の「演劇人祭」で初めて観たのだが、なんだかよくわからなくて眠気に襲われた作品。今回はイヤホンガイドもあるからなんとかなるだろうとのぞむ。
昨年の「演劇人祭」の感想はこちら
まず、衣装が昨年の福助・橋之助コンビと違うな~というのが第一印象。橋之助の西行法師は変な帽子をかぶっていたが、今回の梅玉の方は普通の雲水の僧っぽくて自然な感じがした。髪型は今回の藤十郎の江口の君の髪型に違和感を持ってしまった。昨年の福助の兵庫髷が気に入ったのでそれで江口の君の髪型についてのイメージが刷り込まれてしまったのかもしれない。
作詞は河竹黙阿弥だというし、二世杵屋勝三郎の作曲の長唄囃子なのだが、やはりあまり聞き取れないので睡魔が襲って意識が飛ぶ。小山観翁さんの説明が入るとハッとして...まるで点滅するライトで動きを飛び飛びに見せてくれる演出のような感じ。
観翁さんの説明で昨年観てわかりにくかった話の筋が今回はわかったのはよかった。最初に江口の君が西行に一夜の宿を貸すのを断ったのになぜ泊めることにしたのかがやっとわかった。しかし目をつぶると遊女が普賢菩薩に見えたという伝説を踏まえたとはいえ、こういうシチュエーションでなぜ江口の君が普賢菩薩に見えるのかという疑問はついにとけなかった。

ビジュアル的には昨年の若いふたりの方が圧倒的にいいが、踊りは今回のおふたりの方がいいような気がした。やはり年季の差が大きいと思う。
舞踊の観賞はやはりまだまだ苦手なので難行苦行が続きそう。「道成寺」は詞章もある程度把握したし、メロディもだんだん馴染んできたので観ても眠気がきにくくなっている。こういう積み重ねで楽しめるようになれるのだろうなあ。
それとこの日は観劇前に玉三郎のシネマ歌舞伎も観ていたので舞踊が一日三本になっていたのだった。うーん、私の限界でしょう。かしまし娘さんの仲間状態に限りなく近いなあ。
写真は「時雨西行」の看板絵。

06/04/23 歌舞伎座六世歌右衛門五年祭公演夜の部①「口上」は20人

2006-04-23 23:54:38 | 観劇
4月の歌舞伎座はチケット前売りの時期にあまり乗り気になれなかったこともあり、なかなか観劇予定に入れられなかった。お茶屋娘さんとシネマ歌舞伎に行くついでに夜の部をひとりで観ることにしてようやく行ってきた。
さらに私の場合、六世歌右衛門に全く馴染みがなかったのでなかなかその気になれなかったということもある(歌舞伎界の“女帝”のイメージがあったのもマイナス要因)。昨日NHKの「芸能花舞台」で六世歌右衛門特集を録画しておいて寝る前に予習。それで六世の声を初めて聞き、動く姿も初めて観たという次第。晩年の写真はちょっと私は苦手だったのだが、この特集で声はいいなと思ったし、昭和44年と58年の映像だったのでお姿も大丈夫(好み的に)だった。
写真は歌舞伎座入り口を入って左手にあったパネル写真。なかなかいい笑顔で写っている。
順不同だが、まず「口上」について書く。

歌舞伎座藤十郎襲名公演の口上の記事はこちら
今回は19人並んでいた。あれ~初舞台の新・玉太郎ちゃんがいないぞ~と思っていたら、その番になったら出てきたので20人になった。まあ人数はこれがMAXだろうなあと思った。雀右衛門丈だけでなく又五郎丈もお元気なお姿を見せてくれたのが嬉しかった。
追善興行の口上を見るのは初めてだったが、まあ勘三郎襲名の時は先代の話も出てきたのでその辺はちょっと似ていたなと思う。さらに今回は六世の芸養子の東蔵の息子と孫の襲名披露も兼ねていた。そのあたりの事情で先に書いたように本人の順番が来てからの登場になったことに納得した。こんなにたくさんのおじさんたちがわけのわからない挨拶をしている間に5歳の子どもにじっとしていろというのは無理な話だ。
新・玉太郎ちゃんを除いて一番の若手は勘太郎。中村屋の長男としてのしっかりとした口上で頼もしかった。父の襲名披露の時も弟不在の月の口上もなかなか立派だったことを思い出した。
新・松江丈はなかなか二枚目でイイ感じがした。ところが、イヤホンガイド恒例?の幕間にインタビューを流す企画でちょっとがっかり。彼の個性なのかもしれないが、テンションが相当低い感じ。勘三郎、藤十郎襲名のテンション高いインタビューを聞きなれているので、オイオイもう少しテンション上げてしゃべれないのかい?...と。二枚目なのにもうひとつ花が感じられない印象があったのだが、襲名を期にそのへんも少し期待したかった。「伊勢音頭」の今田万次郎でも頑張っていたし、これからの活躍を応援したい。

06/04/20 無限の地獄...コクーン歌舞伎「東海道四谷怪談」北番

2006-04-20 21:00:46 | 観劇
3/31に「南番」を観て、今日ついに楽しみにしていたコクーン歌舞伎『東海道四谷怪談』の「北番」に行ってきた。
「南番」観劇の感想はこちら
「北番」の方が公演数が少ないので平日の昼の2階席最後列しかチケットがとれず、仕事を休んで観てきたが十分に報われた~。

BGMも通常の囃し方ではなく開幕から洋楽。冒頭の「浅草観音額堂の場」などほとんど同じような場面なのに参詣人の台詞回しから普通の時代劇のようにぐっとくだけてテンポアップしていて、洋楽もちっともおかしくない。直助で登場する勘三郎の七之助のお袖をポンポンとたたみかけてくどく時の愛嬌あるねちっこさ。ぐいぐいと「北番」の世界に引き込まれていく。
「北番」は通常の上演では省かれている場面や細かい説明的な場面も盛り込まれ、関係する端役などの登場人物も多くなっている(2003年7月に歌舞伎座で澤潟屋の通し上演を観ているがそれとは違って「四谷怪談」以外の要素は入っていない)。また、「南番」よりもさらにテンプアップさせている上に従来の歌舞伎を離れた演出で喜劇味も濃い。「南番」の時にもあったにはあったがあまり使われていなかった左右の2階建ての小屋がけの装置。ひとつひとつの部屋の幕が開いて人が見下ろす場面など串田和美演出らしいなと思ってしまった。
また、シアターコクーンでは従来の歌舞伎のように部屋をしつらえた装置を回り盆に乗せても回せない。「南番」は従来のイメージの装置を出してきたり引っ込めたりしていたが、「北番」では省略形の小さい部屋にして「伊右衛門内」「伊藤喜兵衛内」を隣りあわせで作って小さい盆回して舞台転換。その間に笹野高史が按摩宅悦←→喜兵衛の早替りをしたりして本当にテンポが早い。そのテンポに乗ってしまえたので観るのはそんなにつらくなかった。

扇雀の白塗りの佐藤与茂七がまたイイ男!「藤十郎の恋」がよかったので今回かなり期待していたのだが納得のいく二枚目ぶり。七之助のお袖とはかなりの美男美女で、地獄宿で夫婦の再会の後に直助を「フラレ男」にしてしまう。勘三郎のフラレ男ぶりがまた可愛い。ダイエット効果がここでも出ていてふんどし姿も50代とは思えないなかなかの魅力あり。
「北番」では通常の上演では省かれるお袖をめぐる因縁話を「三角屋敷」の場も入れてしっかりと描かれるので、この三人のキャスティングは◎だ。

笹野高史の伊藤喜兵衛は「南番」よりも金満家ぶりをバージョンアップ。金ピカの羽織袴でそっくりかえっているのが可笑しくて仕方がない。そのテンションに合わせるかのように孫娘のお梅を坂東新悟くんが女方の声の合間に地声をはさむ大仰な芝居。私はちょっとひいてしまったけどね(笑)
笹野さんは按摩宅悦とさらに伊右衛門の母お熊の三役を替わる大活躍だ。彼が「北番」の芝居の「軽さ」「テンポのよさ」「喜劇味の濃さ」を支えているように思う。

「南番」で直助で活躍した弥十郎は四谷左門と仏孫兵衛で登場。初めて見た「小仏小兵衛内」の場面で後妻のお熊がいじめる孫のおとぼけ次郎吉(鶴松)をかばったり、息子小兵衛(扇雀二役)の幽霊と再会したりと大活躍。ここでふせっていた主人が橋之助の二役だというのがちょっと意外で笑えた。
お岩と直助は同時に舞台にいることもある二役だが、マスクなしで代役が出ていて勘三郎が声を演じ分けていて楽しかった。また遠見の子役も田んぼの場面で登場し早替りの時間を稼ぐ。遠見のお岩も鶴松くんで大活躍だ。

大活躍といえば、浪衣の衣装をつけた大勢が横たわって表現した隠亡堀!!何をのたうっているのだろうと思ったが、ややしばらくして水面のゆらぎを表していると気づいてここも笑えた。伊藤家没落後のおまきやお弓が溺れる場面など寄ってたかって飲み込んでしまい布をかぶせて左右からひっこませるというのもなかなかの演出だと思った。「戸板返し」も土手を表す台をうまく使っていた。

そして最後の場面。宙に吊られた駕籠の中に夢のお岩と伊右衛門が透けてみえる。そこから一転地獄の場面へ。大セリを下げて口をあけた地獄にどんどんと亡者が落ちていく。伊右衛門は地獄から脱出しようと「蜘蛛の糸」ならぬ梯子を上っている。下の方には何人かの亡者が後から続こうとしている。かたや妹と契ったことを恥じて切腹した直助がロープで吊られて畜生道に落ちていく。
しかし伊右衛門は地獄からは出られないのではないか。蜘蛛の糸のイメージ通り、もう少しのところで落ちるだろう。直助もしばらくしたら梯子を上ってくるのではないか。そうして無限に地獄からの脱出・落下を繰り返すという「地獄」に落ちたのではなかろうか...。それほどお岩やお袖を不幸にした罪は重い...と考えるとなかなか恐ろしい結末を描こうとしたのではないかな、串田さん。昨年のコクーン歌舞伎『桜姫』の最後の姫の狂乱地獄の演出を思い出してそう思ってしまった次第。

私はけっこう今回の「北番」気に入った。チケットとりにくいという不満は残るが、同じ公演期間中に2つのバージョンの演出という快挙には賞賛を贈りたい。これからもこのカンパニーでいろいろ新しいことをやってくれるだろうと確信している。

写真は休憩に食べた500円の「特製あんみつ」をポスターの前で撮影。2階席(中2階より上)だと15分休憩にトイレにも行って1階まで降りてくるのが大変。結局あんみつもかきこんでやっと二幕に間に合った。「南番」の時もこのあんみつ。あんこの隣にある苺にひかれて今回お気に入り。
追記:タイトルを修正しました。やはり今回の終局は「無間地獄」ならぬ「無限の地獄」でしょうから。
追記2:翌日のNHK「生活ほっとモーニング」に出演された勘三郎丈によると、同じ日にクドカンさんも観てらして勘三郎さんに歌舞伎を書く約束をされたとのこと。勘三郎×三谷歌舞伎に続きクドカン歌舞伎もいつの日か実現するようだ。すごく楽しみだが、新橋演舞場くらいの大きな劇場で安い席もつくってくれないと私困る~。チケット争奪戦もこわすぎる~。
また「南番」の千穐楽のカテコ情報によると、来年のコクーンは「北番」中心とか。より一層練り上げられた舞台を観たいと思う。NY公演にも持っていくらしいが、そっちは成功を祈りたい。

06/04/18 渋谷駅近の大衆食堂「かいどう」賛江!

2006-04-18 23:59:07 | つれづれなるままに
渋谷の本部勤務だった頃、残業した後によく食べに行っていた渋谷駅近くの大衆食堂「かいどう」に久しぶりに行き、ご贔屓の餃子とビールを味わってきた。

四ツ谷で仕事を終えた後、渋谷で労組女性部のグループ活動で継続している学習会の企画の打合せ会があった。女性の老後は長い。定年後のセカンドライフのためのグループ内の勉強会や広く参加をよびかける学習会を開いてきた。
1/20の勉強会の記事はこちら
3/3のセカンドライフ学習会(感想アップさぼりですm(_ _)m)は好評で40人の参加があり、シリーズ第2弾を6月に開こうということになっている。
次回の講師として内諾を得ている小川志津子さんは、さいたま市内の自宅を改造してお年寄りの下宿屋さん「グループハウスさくら」を10年前に開設。高齢者グループ支援事業第一号となったこのとりくみは、認知症となった母上の介護を8年間続けた後の選択だったということだ。
私の住むさいたま市内での取り組みだ!私も老いて一人暮らしが不安になったらこんなくらし方ができるといいかもしれないなと思っている。

出張で九州のメンバーが上京したのに会わせて打合せ会を開いたが、オブザーバーの男性1人も含めて13人が集まった。うち9人が「かいどう」へ。写真は注文した第一弾の料理たち。いつもの餃子にオムレツとサラダをプラス。オムレツにはハムのこま切れが入っていてなんかすごく家庭的なお味で皆で絶賛!待ちきれずにお箸が差し出されているのが写っているでしょ!ホイコーロとニラレバ炒めも頼んじゃって...おいおい、さっき打合せでお弁当も出たのに~。食べきれずにちょっと残しちゃってごめんなさいネ。

団塊の世代の女性のパワーはすごい。私はグループ内で一番若いのだが、今からとにかくいろいろな情報を得て考えていかなくては...。

追記:
職場のあるビルを出ようとしたら1階のロビーで大学の1年後輩と遭遇。お風呂のないアパートに住んでいた私はよく彼女のアパートにお風呂に入れてと泊まりに行ったものだ。お互い引っ越したりなんだりで年賀状のやりとりも途絶えてしまっていた。平成6年6月6日(普段は元号を使わない私だが6並びで記憶したため)に大阪である人の葬儀で偶然会って以来だから実に12年ぶり!今も大阪で活躍している女性弁護士さんだ(私も法学部出身だけどちっとも真面目に法律勉強しなかった)。待ち合わせをされている間、30分弱立ち話でお互いや共通の知り合いの近況報告。なんと彼女の誕生日とのことで、「この再会が神様からのプレゼントだね」って私が言う(おしつけがましい私)。なんて嬉しい再会だったことだろう!!

06/04/16 娘はユキにメロメロになる

2006-04-16 21:56:16 | つれづれなるままに
妹が2匹目のマルチーズを飼い、私は11/203/18に会っているが、娘はまだ一度も会っていなかった。「人なつっこくて可愛いよ~」と写真などを見せて羨ましがらせていたが、今日ようやく一緒に会いにいくことができた。娘にデジカメを持たせてGO!

犬も連れて歩けるショッピングモールというのが今は流行りだが、最寄駅で待ち合わせしてさいたま市のステラタウンに一緒に行った。車に乗せてきたユキにひと目会っただけで「うわー、可愛い~」と目尻が下がる娘。人見知りしないのですぐに抱かせてくれて顔を舐められてしまう。毛並みも羊のようにホワホワで年増のチィと毛質が全く違う。同じマルチーズといってもいろいろと個性があるのだとわかる。

駐車場から芝生のエリアを2匹を連れて歩くと犬連れの家族があちこちに来ている。犬用のバギーに2匹を乗せて歩いたり、紐につないで歩かせたりする。同じマルチーズや同じくらいの体格の犬だと大丈夫なのだが、体格が大きな犬だと近づいてくるとこわがって腰がひけているのがおかしくて可愛い。
何色ものトイプードルの多頭飼いをしている方とご挨拶して一緒に写真をとらせてもらうが、なかなかシャッターチャンスは難しい。ユキとチィも女の子だがもっとお嬢さんのような白いマルチーズを連れた方もいて、その小心ぶりに性格もその子によっていろいろなのだと感心してしまった。

「ワイアード・カフェ」という店内に犬を連れて入って一緒に食事ができる店で食事。ドッグ用メニューもある。コーヒーフレッシュを使った後の容器を舐めるのが2匹とも大好き。これほど犬と一緒にいても大丈夫になるとは思わなかった。

食事の後、服を叔母さんにみたててもらって買うことができて娘は上機嫌(支払いは私だけど)。天気も予想以上に持ってくれて途中晴れ間もあって気分のいい一日になった。
我が家ではとてもペットは飼えないが、たまにこうして遊ばせてもらうだけでもいいものだ。
写真は7ヶ月になったユキ(左)と8歳になっているチィ(右)。

06/04/12 初の日生劇場『レミゼ』のバリケード装置で質問?

2006-04-13 23:58:41 | 観劇
帝国劇場が4~5月とアスベスト除去工事のために使えないため、4月『レ・ミゼラブル』は初の日生劇場での上演となった。4/3夜の部・別所バルジャン×今ジャベール初日、4/12夜の部・今井バルジャン×鈴木ジャベールの2公演を観劇。これで今公演の観劇を終える予定だが、なるべく早く感想は書こうと思っている。

今回、最大の関心事はバリケードの装置が帝劇と同じものかということだった。4/3夜の部でやはりかなり小さいことがわかった。「あっ、ちゃっちい...」と思ってしまった。動く時の音も気になったし、パリの街になって左右がつながって橋になるところで人が通るとぐらついてたし...。

初演の大阪公演とその次の大阪公演を梅田コマ劇場で観て以来、東京転勤後は十数年で数十回の観劇を帝劇で続けていたので、帝劇の重厚なバリケード装置を見慣れてしまっていたのだ。
盆回しも小さいから馬車の暴走で群集が大混乱するシーンも迫力なくせせこましく回っているなあっていう印象を持ってしまったし(笑)
私は財政難のため、地方公演への遠征は控えている。最初2回の大阪での観劇は二十年近く前の話なのでそういうところまでの記憶は既にない。地方公演の『レミゼ』ってどんな感じなんだろうという疑問が湧いてきた。帝劇みたいに大きな劇場なんてないだろうし...。

そこで帝劇公演と地方公演を観ている方に教えていただきたいのです。今回、日生劇場で使われているバリケードの装置って、地方公演で使われているものと同じですか?日生劇場公演用にわざわざ作ったのではないですよね。
つまらない質問で恐縮なのですが、ご存知の方、教えてくださいませm(_ _)m

そうそう、政府軍に壊滅させられた後に学生たちが起き上がって後ろにハケていくのも2階席から見えちゃったし、なんか照明の問題もありそう。いつもは帝劇の一番上の方の席からも双眼鏡を使えばキャストの表情がよくわかるのに、今回二階の最前列からも暗くてよく見えない場面が多かった。
全体の印象からすると、今回一回り小さい日生劇場での舞台は空間が小さいからそれなりにいいかなあと予想していたのだが、はっきり言って私はあまり好きではなかった。まあ、慣れの問題かもしれないし、帝劇だって席によっては音響が悪いという問題もあるんだけれど、でもあの大きな空間で大きく鳴り響く音の中であの照明の中であの装置でやっぱり観たいというのが私の正直な気持ちだ。
それに何回も観るのにこんなに高い席しかないのでは困るのだ。もったいなくて娘は今回はお預けにした。母も娘も次の帝劇公演をもう待ち焦がれているのだ。

写真は4/12夜の部を2階最前列の下手側のサイドで観た時に開演前の劇場内を撮影。サイドの手すりが写っているでしょ。

06/04/11 フランスでは若者が政府を動かしましたね!

2006-04-11 21:58:56 | つれづれなるままに
喘息の薬の副作用と思うのだけど相当ひどい倦怠感に襲われて死にそうなだるさと闘っている今日この頃...。久々に私を励ましてくれるような明るいニュースが飛び込んできました。
今月、日生劇場で上演されている『レ・ミゼラブル』の国フランスで若者によるデモが続いていましたが、ついに政府が法案を撤回して再提案することになったようです。

世界的に多国籍企業による経済支配が進んでいて、労働力を少しでも安く買いたたいて儲けを生み出していくという流れが「不況対策」の名の下に野放しにされている...というふうに私は現在の状況認識をしています。

市民革命の経験をもち、資本主義化が早くすすんで労働運動も社会の中にしっかりと根づいている西ヨーロッパの国々。USAなどは比べものにならない労働者の権利を犠牲を払いながらもかちとってきた歴史があります。そんなフランスなのに政府が「雇用してから2年間は十分な説明なしに解雇できる法律」をつくろうとしたことに私はまず驚いていました。しかしながら、その不利益を最も被る若者たちが連日のようにデモ・集会を繰り広げていることを「さすがはフランスの若者!」と頼もしく思っていました。

どうなるかなあと思っていたらこのニュース!さすがにアンジョルラスのような精神が人々の中に息づいている国!!

日本では政府がこんな悪政をしいていても大きな抵抗運動は起きにくいです。「安保闘争」やら「全共闘運動」やらも語り草にはなっていますが、勝利体験を得ることはできませんでした。多くの人々が挫折感をいだいたまま、流されて自分の生活を守るだけで精一杯の状況に追い込まれてしまったのだと思っています。
今の日本の社会にも新しいこれまでと違う希望のもてる励ましあえるようなネットワーク型の運動が起こってくるといいと思うのだけど...。私は何をやろうかな。まあとりあえず文化的なこういうブログでの思いの発信もあり!だと思ってます。

とかなんとか言ってますが、明日は『レ・ミゼラブル』のMy楽の観劇です。今井バルジャンと鈴木ジャベールで夜の部行ってきます。別所バルジャン初日の感想もさぼってますが、まとめて書こうと思います。

写真は先日実家に行って写した星型の花。名前がわからないのです。明日は綜馬さんの「スターズ」も楽しみ~。