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シェイクスピアが活躍した時代、女性が舞台に上がることは禁じられていた。映画「恋に落ちたシェイクスピア」でも女役が少年俳優によって演じられていた様子がよくわかった。日本の歌舞伎も阿国歌舞伎で発祥→女郎歌舞伎→若衆歌舞伎→野郎歌舞伎とお上の規制で同様に男優ばかりになったのと似ている。蜷川シェイクスピア・シリーズの中で全員男性による上演が“オール・メール・シリーズ”で今回はその3作目。彩の国シェイクスピア・シリーズ第17弾となる。
1作目の「お気に召すまま」「間違いの喜劇」と観てきて今回も期待していたので「コリオレイナス」と2作品先行予約で早々とチケットGET。
「間違いの喜劇」の感想はこちら
あらすじは以下の通り。
ナヴァールの若き国王ファーディナンド(北村一輝)は、国中にある法令を発布。臣下であり親友でもあるビローン(高橋洋)、デュメイン(窪塚俊介)、ロンガヴィル(須賀貴匡)の3人にも「その法令を守って3年の間、あらゆる欲望を捨てて学業に専念する」誓約書に署名しろという。一番の理論家だが皮肉屋のビローンも最後にはサインする。その法令には①1週間に1度断食をすること、②睡眠は1日3時間とすること、③女性には近づかず、恋もしないという条項もあった。
そんなところへフランスの王女(姜暢雄)が3人の侍女、ロザライン(内田滋)、マライア(月川悠貴)、キャサリン(中村友也)を連れてやってくる。病床の父王の代理として両国間の借金完済に伴う土地返還の交渉のためだ。ところが上記の法令があるために国賓の皇女を宮廷に迎え入れずに、野外に張った天幕の中で接見。なんと4人対4人で会った彼らはそれぞれに一目ぼれをしてしまう。
ある日、その法令にひっかかったとして田舎者のコスタード(大石継太)がしょっぴかれてきた。田舎娘のジャケネッタ(沢田冬樹)に言い寄った罪だ。そして宮廷には国王に気に入られて出入りしている風変わりなスペイン人の旅行家アーマードー(藤井びん)がいいたが、やはりジャケネッタに恋してしまい、彼女あての恋文をコスタードに託す。さらにコスタードにはビローンもロザラインに宛てた手紙を預け、取り間違いが起こる。そこで人目をしのんだ恋が全て露見。
4バカ大将となっていたことを全員がわかるまでのドタバタを経て、ビローンが無理がある誓約を守ることで自分を失うことを愚かさを解き、王も皆で恋心を打ち明けようと王女たちのために宴を開く。
ところが王女たちは愚かな男たちの気持ちをすぐに受け入れるのではなく、懲らしめるために一芝居うち、男たちをさんざんに笑いものにする。
喜劇が最高潮に達した時に、フランス王の死を伝える使者がやってくる。そこで雰囲気が一変。せっかく素直に心を打ち明けた王は王女を引き止めるが、すぐに帰国するという。そして一年間の服喪期間の間に心変わりがしなければ訪ねてきてほしいと答える。侍女たちも愛する人に一年の間につとめるべき宿題を課す。あまりの浮ついた男たちの恋はすぐには実らない。1年間の試練を与える女たちの冷静な賢さが際立つ。
最後はアーマードーが浮ついた虚飾の生活を捨てて身ごもったジャケネッタのために田畑を耕す生活に入ることを宣言。司教たちが歓迎の宴のために用意した余興も祝祭劇風になって格調高く幕になる。
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今回の中越司の舞台美術は柳の木が横に大きく枝を広げて緑の枝葉を垂らしている装置が効果的だった(「お気に召すまま」は灰色の森だった)。野外の場面というだけでなく、その枝葉の蔭に何人もがお互いを気づかずに姿を隠したりするのにぴったりだった。
また、台詞回しにラップが取り入れられていたことが面白かった。下々の者だけでなく貴族までラップというのが可笑しい。確かにシェイクスピアの翻訳の長台詞はかなり飽きてしまうことが多いのだが、ラップ風にしゃべることで笑いにつられて緊張感が続く。聞き取りやすいというわけでもないのだが、役者の一生懸命さに引き込まれてしまった。BGMのクラシックも一部ラップ風アレンジあり。若い人が志村けん風の動きを入れているのも彼らなりの工夫だと思った。
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この物語の中心になる2組。王と王女、ビローンとロザラインだ。特に後者の台詞に含蓄が深い。配役も高橋洋と内田滋という蜷川オールメールシリーズの試され済みの実力コンビが物語の進行の軸となっている。最後のロザラインによるビローンの皮肉屋を治すための宿題を話す場面は愛情があふれていて泣けてきた。深い、深いぞシェイクスピア喜劇。
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もう1組は蜷川演出作品に初参加の北村一輝と姜暢雄のコンビだが合格点をあげたい。北村一輝は濃いあのお顔で思いっきりオーバーにコメディしてくれて○。映像の方での活躍で私も贔屓にしているが舞台もこれから期待したい。姜暢雄は劇団Studio Lifeの人だったのねと納得。オールメールの舞台に慣れているわけだ。成宮寛貴が「お気に召すまま」で悲惨な女声になってしまっていたのと比べ物にならない。北村一輝より背が高いのはご愛嬌で笑のネタにされていた(偽者になった内田滋は高下駄を履いていた)。
須賀貴匡はさすがに仮面ライダーだけにカッコいいし、窪塚俊介も許容範囲に入った。
女方では「美しすぎてごめんなさい」的存在の月川悠貴のマライア。この作品は女方に爆笑シーンが多いのでしっかりと笑ってくれていていつもの冷たい美しさに加えて魅力増大。もちろん爆笑シーンの女王はガングロレディの内田滋(原作に色が黒いとあるので日焼けサロンにも通ったらしい)。偽者になった王女は大爆笑で彼女のふりをするくらいだった。TVドラマ「紙はサイコロをふらない」に出ていたことを覚えていた中村友也のキャサリンも可愛いし、ロザラインとのガチンコの女の喧嘩場面も若さが活きた。
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王女付きの侍従ボイエットに青井陽治。舞台に立つのは久しぶりとのこと。オフブロードウェイミュージカルの翻訳・訳詩でおなじみだが、劇団四季出身だけあってうまい。このフランスのウィットに満ち満ちた男を嫌味にならないぎりぎりのところで仕上げていた。アーマードーの藤井びんもよかった。
「お気に召すまま」での独白が印象に残っている大石継太のコスタードもいい。下々の者のたくましさがにじんだ気のいい役だ。
道化役のズボンのベルト代わりの紐をきちんと結ばずに、ずり落ちて下が見えて笑わせるというのはシェイクスピアの常套手段のようだ。今回はアーマードの小姓役のモスがそうで、白い葉っぱの形をつけたTバック状のものをつけていた。西村篤のお尻が可愛かったから許す。
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このシリーズは奮発することにしていたので今回はなんとサイドブロックではあるが最前列。いつものように客席通路から楽隊の案内で登場した人物が目の前で活躍。いきなり高橋洋にまん前で寝そべられてドキドキした。余興の場面では女方も木の椅子をまん前に置いて見物。中村友也と次には月川悠貴の首筋が目の前に!パニエの入ったドレスの裾は私の膝にこすれているし、香水は薫ってくるし、これは極楽体験だ。拍手で退場する北村一輝と一瞬目が合ったし!
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前楽での観劇だったのでこれまであちこちのブロガーさんの感想を読ませていただいて、ちょっと心配していたが、今日の舞台の仕上がりは上々だったと思う。この「恋の骨折り損」ってかなり難しい作品だと思う。だから上演頻度が低いのだと思うので、若手中心でここまでできれば褒めてあげたい感じがした。
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カーテンコールは前楽だけあって繰り返され、スタンディングになったが、私は涙がにじみそうになりながら汗だくのキャスト皆に拍手を送った。
蜷川さん、若いキャストを使ってこれだけの舞台をつくってくれたのがスゴイ。次のこのシリーズも奮発して楽しませてもらうことに決定。
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写真は公式サイトより今回公演の宣伝画像。