ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

12/05/12 平成中村座ファイナル五月昼の部の感想

2012-05-19 23:59:47 | 観劇

昨年11月から東京スカイツリー開業の5月までの平成中村座ロングラン公演もついにファイナル公演となった。今月は「十種香」での中村屋兄弟の共演を一番の楽しみに昼の部を観劇。
【本朝廿四孝 十種香】
浅草駅から急いで歩いたが、少々遅刻。冒頭の扇雀の勝頼の台詞の最中に着席。
勘九郎の腰元濡衣の登場から風情がよく、期待が高まる。七之助の八重垣姫も登場から赤姫姿が綺麗で展開を楽しみに観ていく。
ところが、義太夫の糸にのってはっきりとした身の動きはいいのだが、どうもわざとらしさが鼻につきだす。死んだと思った許嫁の勝頼が目の前にいて、腰元濡衣に仲立ちを頼むというあたりにも、なんだか八重垣姫らしい格の高さを伴っての大胆さという感じがない。どうにも安っぽい八重垣姫だ。
勘九郎の腰元濡衣もオーバーアクション気味。仲立ちのために諏訪法性の兜を姫に所望するという辺りから抑制を効かせて女間者ぶりを垣間見せるというよりも、女スパイとでもいうような露骨な目の芝居にびっくりさせられた。
先月の「小笠原騒動」では、二人を誉めた私だが、この「十種香」にはがっかりだった。日によって仕上がりにバラツキがあるのか?格調高い丸本物のお役を安定的につとめるのは、まだまだ無理なのだろうか?

彌十郎の謙信が重厚感があってよく、白須賀六郎(橘太郎)と原小文治(亀蔵)が続けざまに勝頼の刺客に放たれる場面でようやく安心して観ていられる丸本物の舞台となった。特に橘太郎の白須賀六郎が動きが実によく小柄ながら立派で感心した。

【三社祭七百年記念 四変化 弥生の花浅草祭】
染五郎と勘九郎の変化舞踊。「神功皇后・武内宿禰」「三社祭」「通人・野暮大尽」「石橋」の四段に替わる。
武内宿禰/悪玉/国侍/獅子の精=染五郎
神功皇后/善玉/通人/獅子の精=勘九郎
三社祭七百年記念ということだから、「三社祭」がメインでそれを膨らませたもの。客演の染五郎のコミカルさが武内宿禰や野暮大尽(=国侍?)で楽しめようになっているのはよい。ただ、神宮皇后の赤ん坊を武内宿禰が装置の変なところにチョイ置きするのはいただけない。
「三社祭」の善玉悪玉を二人が若々しく達者に踊っている。三津五郎と勘三郎のコンビのような深い味わいまでは感じられないのは仕方がないだろうと思うが、染五郎の踊りがもう少し一本調子でなく柔らか味も出るとよいと感じられる。
「石橋」で早替りのためだろうが、馬連つきの四天のような衣装に隈取をして紅白のカシラをつけて登場したのには驚いた。あまりセンスはよくないように思う。それと高麗屋三代の連獅子の時も感じたが、染五郎の毛の振り方は少しクセがありすぎなのではないだろうか?同世代の勘九郎が普通に振っているので気になってしまった。

【神明恵和合取組(かみのめぐみわごうとりくみ) め組の喧嘩】
「め組の喧嘩」は菊五郎劇団で2回観ている(2007年の團菊祭の公演の感想はこちら)。
六代目の外孫の勘三郎の辰五郎を初めて観る。今回の主な配役は以下の通り。
め組辰五郎=勘三郎 女房お仲=扇雀
四ツ車大八=橋之助 九竜山浪右衛門=亀蔵
焚出し喜三郎=梅玉 女房おいの=歌女之丞
尾花屋女房おくら=萬次郎 江戸座喜太郎=彦三郎
柴井町藤松=勘九郎 島崎抱おさき=新悟
露月町亀右衛門=錦之助 宇田川町長次郎=男女蔵               
おもちゃの文次=萬太郎 ととまじりの栄次=虎之介

貴乃花親方が橋之助のパパ友ということで応援し、初めて歌舞伎を観たということが話題になっていた。その橋之助の四ツ車がいかにも立派。亀蔵の九竜山ともども相撲取りの若々しい勢いがあってよい。
勘三郎の辰五郎はいなせでよい。ただ声がかすれて少々聞き取りにくいが、小さい小屋なので大丈夫。鳶の中では勘九郎の藤松と錦之助の亀右衛門の台詞が若々しく響いて気持ちがよい。
扇雀の子息の虎之介まで若手が勢揃いし、その勢いで鳶と相撲の喧嘩場を賑やかに見せるのが「め組の喧嘩」の最大の見せ場。平成中村座の大きさでのこの喧嘩場は、ファイナル公演にふさわしいと思えた。

それにしても喧嘩の仲裁で梅玉の焚出し喜三郎がハシゴにのって両者の間に割って入るように飛び降りる場面で、客席に驚きのどよめきが上がったのに私の方が驚いた。平成中村座は明らかに観客層が違い、ふだん歌舞伎をあまり観ない人たちが観に来ているのがよくわかった。これが歌舞伎界の観客層を広げることにつながるとよいのだが、他の座組みの公演は観ないというお客さんたちではいかにも残念だ。

さて、スカイツリー開業の5月までの長丁場となったが、それは少々無理があったようだ。
この日はよく晴れて、ぐんぐんと気温が上がり、昼の部開演後の2階席はむっとする感じが増してきた。正面最後列の梅席で観ながら、はおっていたものをどんどん脱いで半袖シャツ一枚となっていたら、右列でドタっと大きな音がした。しばらくするとスタッフさんに左右を抱えられて具合が悪そうな女性客が出て行き、連れの方が荷物を持って続いた。最初の幕間で外に出たら救急隊が到着したところだった。

異常気象で猛暑が例年続く近年であり、初夏とはいえ、この空調のレベルの仮設小屋での公演はやはり無理がある。
途中から2階席脇の通路に扇風機をもってきて風を送るようになって少しましになったが、幕切れまで舞台の熱気ともども、顔がほてって我慢の観劇となった。

今月一番の楽しみにしていた「十種香」で肩すかしをくい、この暑さとの我慢比べの中、苦手な舞踊でも意地でも居眠りせまいぞとこの日もブラックガムを噛みながら修行モードでの観劇。「め組の喧嘩」で打ち出され、これで隅田公演通いも終ったと思ったら心底ホッとした。この日は1万円では割にあわなかったというのが正直な感想。

観劇後、この場所まで来ることはしばらくないということで平成中村座の真向いにある「待乳山聖天」や行きたいと思っていたレトロな喫茶店などを巡ることにし、いざ出発!


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