08/08/12 日航機事故から23年で実現したことと映画「クライマーズ・ハイ」


1985年8/12に起きた日航ジャンボ機墜落事故から今日で23年。報道で今年ようやく実現したことを読んで、溜息が出た。以下、それぞれの公式サイトより一部を引用。
「事故から23年 17遺品を展示(毎日新聞)
日航によると、群馬県上野村の墜落現場から見つかった遺品のうち、約2700点が引き取り手のないまま羽田空港内で保管されている。(中略)遺品について、日航は当初、「だびに付して上野村の慰霊の園にまつりたい」との意向を遺族に示した。一方、遺族は「事故を忘れないためにも、遺品は保存すべきだ」と強く要望し、長く話し合いが続けられた。
日航が方針を変えたのは、05年に安全上のトラブルが相次いだのがきっかけ。墜落事故を「負の遺産」でなく安全意識の原点にしようと考え、06年4月、社員研修を主目的とした安全啓発センターを開設。事故機の一部や乗客が家族に残したメモなどを展示した。遺品についても、事故の悲惨さが伝わるものをと遺族と検討し、展示が実現した。見学は11日から3日間は遺族と関係者、18日から一般も受け付ける。」

「忘れたい過去、忘れぬ教訓に 日航機墜落、遺品を展示(朝日新聞)
(前略)JALは当初、これらを焼却し、灰を慰霊施設に納めるつもりだった。遺族の反発で焼却は取りやめになったが、保存や展示を求める遺族の意向には応じてこなかった経緯がある。ある幹部は「『早く忘れたい』、という思いが働いた」と打ち明ける。」

しかしながら、安全上のトラブルが絶えないことと遺族の方々の粘り強い働きかけで今年から公開が実現したという。それにこんなに長い年月を要するというところに溜息が出てしまった。会社が自分たちの失敗は早く忘れたいということで公開を応じてこなかったというのはなんという傲慢さだろう。これは日本人の国民性なんだろうか。と嘆きつつも、せっかくの展示実現だ。事故を知らない世代の若い職員にもきちんと教訓を伝えていくために役立って欲しい。

さて、今月の映画の日に娘と映画「クライマーズ・ハイ」を観ている。観るのがつらそうという予想もあってなかなか腰が上がらなかったが、ブログ仲間の皆さんの評判もよく、意を決して観てきた次第。結論的には見応えのある作品だった。
この歴史的な事故を忘れないためにも、簡単だがしっかりアップしておこう。

ウィキペディアの「クライマーズ・ハイ」の項より
原作者の横山秀夫が「上毛新聞記者時代に遭遇した日本航空123便墜落事故をもとに、事故時の群馬県の架空の地元新聞社を舞台にしたもの」とある。あらすじも出演者もそちらに詳しく書かれているので省略。
冒頭、職場の山登りの会の友人同士である悠木和雅(堤真一)と安西耿一郎(高嶋政宏)がそれぞれの息子と山でキャンプしている場面に少々遅れた。そのせいでストーリーがわかりにくいのかと思いつつ観ていく。
悠木は妻と離婚しているので息子とは一緒に暮らしていない。映画は悠木が老いてからその息子との関係性を修復するために安西の遺児の協力で安西と事故の起きた日に登るはずだった群馬県内最大の難関・谷川岳の衝立岩に登る場面と日航機事故の全権デスクになっての1週間が行ったりきたりするのだが、私には少々煩わしく感じてしまった。悠木も安西もワンマン社長の白河(山崎努)に振り回されていて、安西は会社を辞めようとするふんぎりをつけるための衝立岩登山だったが、悠木と待ち合わせの間にくも膜下出血で過労死。そしてこの1週間の最後で悠木にとっての衝立岩である白河を乗り越えるというクライマックスを迎えるというドラマだったように思う。だから登山家たちの用語の「クライマーズ・ハイ」ということなのだろう。

高嶋政宏はとにかくカッコはよくない役を熱演。植物人間になってしまった姿まで、頭をしっかり剃って本気モードはいい。
堤真一演じる悠木は新聞記者になる原点になった映画での「チェック、ダブルチェック」を信念のようにしてジャーナリストとして生きている。それを若手に伝える気概が素晴らしい。息子との葛藤もそれが息子に理解されていたことで乗り越えられそうな気配に最後は安心できるのだが、その揺れるまなざしも堤ならではの魅力。
堺雅人も常にスクープをねらう若手記者・佐山達哉をすごい迫力で熱演。「喪服の似合うエレクトラ」の弟オリン役から注目してきただけに、最近の大河ドラマの将軍家定さまでのブレイクも嬉しく、映画での活躍も頼もしい。
それになんといっても白河社長の山崎努の嫌らしい(セクハラだけでなく)人間ぶりが秀逸(笑)
若手女性記者・玉置千鶴子の尾野真千子も女性差別意識の根強い職場の中で必死に頑張る姿に1980年代の自分が重なってウルウル。
大久保・連赤事件のスクープで社会部長になった等々力庸平の遠藤憲一の魅力を今回初めて理解した。「覇王別姫」のような舞台よりも映像ではその魅力が生きるようだ。堤真一とのガチンコ場面や次第に応援モードになる男の複雑な感情を実に渋く見せてくれた。

1985年というと社会人になって3年くらい。職場の様子もいちいち自分の職場のそれを思い出しながら見ていた。そうそう電話中心でFAXが大会社の取引先から入っていっていたっけ。オンラインなんてまだまだだったとか・・・・・・。
この日航機123便の事故の報道の記憶も甦る。犠牲になった男性がご家族への遺書を手帳に書き込んでいて、それが報道された時と同様、映画の中でも読み上げられた時に涙が込み上げた。
悠木たちがスクープしようとして思いとどまった「圧力隔壁破損」が事故原因という報道もしっかり覚えている。遺体確認で全国から集まった家族たちに、地元紙として自社の紙面を届けるということへのこだわりがあったことなどは知らなかった。
新聞社という企業体の中で編集部門と販売部門との関係の物凄さなどにはあらためてびっくりさせられた。そういう騒乱まで引き起こしながらも「チェック、ダブルチェック」での確信を持てなければ「俺には抜けない」という悠木の姿に胸を打たれた。

観ていない方にはDVDででもいいから是非にとおすすめしたい。写真は発売予定のDVD。
監督は原田眞人ということで、過去の作品を見たら役所広司主演の「突入せよ!『あさま山荘』事件」を観ていた。連合赤軍事件でつながるのかぁ。「わが魂は輝く水なり」を早く書けということかなぁとまたあせる。
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コメント
 
 
 
評価してくださってうれしいです! (かつらぎ)
2008-08-13 11:32:52
すごく厚みのある感想で感激しました。85年当時といえば、わたしはまだ高校生。麻実れいさんが間一髪でこの飛行機をキャンセルしたがために、助かったんですよね。そして坂本九さんと北原遥子さんが亡くなられて、沢山の犠牲者が出ました。本当に忘れられない事故ですね。

原作はあまりきちんと読んでいないのですが、映画版は、とにかく長回しで、新聞社のリアルな殺伐とした模様を伝えていて、臨場感があり、見応えがありました。尾野真千子さんの姿にも共感することしきり。「だって女だろ?」・・・もう何回言われたことでしょう、職場で。
でも、それでも闘う彼女の姿が美しかったですね。

「喪服の似合うエレクトラ」を見ていたのですね。羨ましい限りです。堺さんは本当に凄い演技を披露されているのでビックリしました。家定公の役で初めて彼の演技を見たというありさまだったので、ショックが大きく「同一人物なの?」というぐらい凄かったし、彼の新境地のような気がしますね。

あえて遺族の方々を登場させない配慮も行き届いていて、作り手の良心を感じさせました。生存者の方もいらっしゃいますが、その方々への心の痛みも感じさせるものになっていたと思います。

最後搭乗客の遺書を読み上げるところは、本当に感無量で胸がいっぱいになりました。人間最後の最後まで家族を思い、幸せを祈るものなのですね。人間の尊厳というものも感じさせてくれる、今年随一の作品だと思います。

 
 
 
Unknown (hitomi)
2008-08-13 17:41:27
まだ観てないのですが次男が宿題に「墜落の夏」を読みましたので私も。

今日「闇の子供たち」を観ました。このよう名題材で邦画が頑張っていてうれしいです。
 
 
 
皆様、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2008-08-14 20:58:26
★かつらぎ様
おすすめの「クライマーズ・ハイ」をなんとか娘をひっぱり出して一緒に観てようやく記事アップできました。早速コメントを有難うございますm(_ _)m
>麻実れいさんが間一髪でこの飛行機をキャンセルしたがために、助かった......そうだったんですね。運命が彼女を生かしたのでしょうか!そう思うと女優として大成されるためにそういうことも志を固められる一つの要因になったんじゃないかとも思ってしまいます。
出演者の皆さんもそれぞれ熱演されていてよかったですが、映画のつくりもなかなかよかったです。
>人間の尊厳......それを奪ってしまったことへの反省が弱いというところを今年のニュースで思い知らされ、かなりへこみました。人間というものを過信しすぎず、しかしあきらめないということが必要と、またまた思い知らされます。こういう映画がつくられることに少しは希望をもてるのかなぁと思うことにしましょう。
★hitomiさま
「墜落の夏」、吉岡忍さんの講談社ノンフィクション賞受賞作ですね。次男さんの宿題はすごい課題だったんですねぇ。
こういう事故を起こした自分たちの失敗は早く忘れたいという会社の姿勢にあきれてしまい、日本人の国民性なんだろうかと思ってしまいました。太平洋戦争という歴史的汚点も政府としてしっかり総括し、後の世代にきちんとした歴史教育をしてこれず、その戦争で迷惑をかけた国々からいまだに怒りをぶつけられている日本。ドイツはナチのしたことを歴史の教科書にどう記述すべきかを周囲の国々と協議して決めているというのに......(ちょっと脱線)。
映画「闇の子供たち」もまた重たい課題でありますが、井上ひさしさんと司馬遼太郎さんの対談集の中で臓器移植に対してお二人が賛成されていないというくだりを読んで、私もそちらに傾きつつあります。角膜とか腎臓くらいまでならいいと思うのですが、お金をどれくらいかけてでも命を諦めないというのはどうも何か違うような気がしています。そのお金はもっと恵まれない人たちのために使う方がいいような気がしてしまいます。
 
 
 
Unknown (恭穂)
2008-08-14 22:52:02
ぴかちゅうさん、こんばんは。
いい、映画だったようですね。
私も観にいきたいと思いつつ、なかなか勇気が出ません。
まずは原作を読んでみようかな、と考えています。

遺品の展示も、これだけの時間が必要だったことに、事故そのものの影響力の大きさを感じます。
「早く忘れたい」という想い・・・解かる部分もあるのです。でも、それでもやはり「なかったこと」にしてはいけない事実なのだと、今回の展示のニュースで改めて思いました。
 
 
 
★恭穂さま (ぴかちゅう)
2008-08-16 15:30:35
>まずは原作を読んでみようかな......私と反対ですねぇ、映画があれば映画を先にというのが安易な私の傾向です。京極堂シリーズも然り。要はあんまり本を読むのが得意でないからなんですが(^^ゞ
>「早く忘れたい」という想い・・・解かる部分もあるのです。でも、それでもやはり「なかったこと」にしてはいけない事実......そこらへん考えてみました。被害者の場合はそういう気持ちは否定しませんが、加害者側の場合はそこを許してはいけないと思うんです。戦争の場合に置き換えて次の記事も書いてますのでよろしければお目通しいただけると嬉しいですm(_ _)m
http://blog.goo.ne.jp/pika1214/d/20080815
 
 
 
こんばんは~♪ (真あさ)
2008-08-16 22:37:00
ぴかちゅうさんが書かれた
>衝立岩に登る場面と日航機事故の全権デスクになっての1週間が行ったりきたりするのだが、私には少々煩わしく感じてしまった。

↑は感じる方多かったかもしれませんね。

私は、
ずーとあの新聞社内での話だと、確かに臨場感あり気分も高揚しながら見れますが、あのシーンが観客に息抜きをさせてくれたし、墜落事故の話じゃないという監督の意図がよくわかるシーンだと思うのですが。

出演者の演技がどれも素晴らしくて久々に興奮した映画でした。
 
 
 
★真あさ様 (ぴかちゅう)
2008-08-17 22:14:51
私が煩わしく感じてしまったのは、高所恐怖症でハーケンまで使うような山登りに全く関心がないというせいもあります。宙吊りになって世界がグルグルする場面なんて観たくなかった~(^^ゞ
日航機事故の報道についてのジャーナリストとしての向かい合い方だけでなく、過去を知る社長との関係、家族との関係を見直すという複雑な話だったんですね。その主人公の複雑で多面的なTPOの芝居を堤さんが的確に演じていてますます好感度アップでした。
次に堤さんを舞台で観るのはコクーンの「人形の家」ですが、楽しみで~す(^O^)/
 
 
 
日航ジャンボ123便ソ連自衛隊核攻撃惨事 (アッキードF19で小沢一郎を撃退希望)
2018-09-02 14:02:12
日航ジャンボ123便ソ連自衛隊核攻撃惨事におけるJAL123便の元気な生存者が、日本の埼玉県警察の警察官(日本語で おまわりさん?)らの手により
http://www.marino.ne.jp/~rendaico/ainugakuin/e0011938_16494167[1].jpg
といった惨憺たる虐殺死体と化した

一方、救助に奔走したのは米国のみであった
 
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