日々・from an architect

歩き、撮り、読み、創り、聴き、飲み、食い、語り合い、考えたことを書き留めてみます。

棟方志功のいる光景(1) お正月

2010-01-04 21:02:35 | 日々・音楽・BOOK

わが家の正月は棟方志功のカレンダーをめくることから始まる。今年のタイトルは「羽海道棟方板画」だ。
松尾芭蕉の`奥の細道`を辿った志功が陸奥から出羽への道を「羽海道」として顕した。芭蕉の句は「眉掃きを俤にして紅粉の花」。1975年正月と志功のサインがある。

元旦。いい天気だ。
カーテンを開けて新年の光を部屋一杯に入れる。
妻君と娘が台所でおせちの準備を始めた。時折二人の笑い声が聞こえてくる。
僕は幾つも並んでいる銘酒のなかから、従兄弟のヒロッチャンが送ってくれた佐渡のにごり酒「金鶴」にした。`米から手がける酒造り`として「五百万石」の生産者の名前を記し、折りたたんだ中には蔵人の名によって`一点を見据え風土を醸す`書かれた紙片がビンの口に添えられている。今風の宣伝文句だがもやもやっとした濁りがお屠蘇にいいと思ったのだ。
お正月はこれよ!と朱塗りの大きな片口が妻君から渡された。片口に入れたにごり酒を、まず小さなお猪口に注ぎ仏壇に供えた。

さて年の初めに何を聴こうかと考えた。まずカントロフがミュンヘン室内管弦楽団をバックに弾くバッハのヴァイオリン協奏曲イ単調をディスクに入れた。今年をバッハからスタートさせるのだ。
新婚旅行で買った根来の重箱に入れた料理が並んだ。ひとしきり三十数年前の初々しかった東北を訪ねた旅のはなしになる。毎年のことだが娘もフンフンと聞いている。

CDを平良重信が三味線を弾き唄う「宮古島の古謡」にした。イヤだあ!と妻君と娘から声が上がる。でも爪弾く三味線と独特の節回しの古謡の響きは晴れた元旦になかなかいいのだ。2年前に訪れた南の島の青緑の海とサトウキビの様が浮かんでくる。

年賀状をわいわいいいながら見た後、有鹿神社へ初詣。鄙びた神社だがドラム缶に薪を入れた焚き火を囲んで手をかざしている人が沢山いて賑やかだ。ちゃんとお参りしようねと3人で二礼二拍手一礼をした。鐘楼の鐘を打つ。この神社はお正月に限って誰にでも鐘をつかせてくれる。
「エーツ」と娘が叫んだ。「大吉」。お御籤だ。これ以上発展なしと嘆く。そうかねえ!昨年は「凶」で娘が叫んだ。凶をぶっ飛ばせ!と家族三人でお払いをしてもらったことを思い出した。

僕は「小吉」。其れがなんともいいことが書いてある。
「・・よく一家和合し他所には困りごとありても自分の家のみは春風吹く様に楽しみ集まる他人のために尽くせ」とあり、願い事も思いのままだが人の世話よくせよ、ともある。待ち人も来るし病はなほる、ただしよき医者に頼めとある。やはりね。調子の悪い膝、そうだ優美堂に行こう。読み進む。旅行(たびだち)は早くしてもよく方向も何れもよろし。

ではやるか!愛媛に行ってレーモンド建築を。気になる、鎌倉近美を、愛知芸大を、大阪中郵を、函館の弥生小を、東京中央区の明石小はどうだ!
そうもいかないか・・・争いごとには勝つが人に頼むが吉とある。ふうーん、そうだなあ!争いごとにしてはいけないのだが!