田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

イリュージョン5/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-11-26 16:37:43 | Weblog
奥様はバンパイァ 81

○玲加が武の前にとびこんだ。

オババの杖が玲加を打ちすえた。

「玲加!! オババなんてことする」

○「武。これでいいの。

オババに逆らわないで。

わたしの本気をみてもらいたかった。

これきしのこと。痛くないから」
 
玲加は逆らう気ならオババと対等に戦えた。

Mのガードに駆けつけた吸美族の精鋭だ。

体技だってオババには負けないだろう。

あえてそれをしなかった。

人狼と吸美族の長い抗争にピリオドをうつ。

そのためならこれくらいの犠牲は覚悟していた。

始めは目線があった。

ピリッときた。

始めは「すきだ」。

ほんの一言。

武のその言葉だけで……。

それで十分だった。

恋のはじまる気配なんてなかった。

ふいに頭がボァとして武がまぶしくなった。

武のそばにいるだけで胸がくるしくなった。

玲加をかかえて武が車に逃げこむ。

オババはさすがに追ってはこなかった。

「武。ゴメンね。午後のレッスンでられないね」

○玲加はそこまでいうと、後部座席に倒れこんだ。

「玲加‼ がんばて」

パソコンのなかからMが励ます。

「しっかりしなさい。

玲加はもっと強いはずだ。

打たれ強いはずだ」

「あなた、そんなこといっても玲加がかわいそうよ」

MがGをタシナメル。

血こそ出なかった。

うたれた肩のあたりが赤くはれあがった。

「ぼく保健室で湿布をもらってきます」

「いいから……家にもどろう」

「すぐですから。

二三分でもどります」

武が車のドアをスライドさせてとびだしていった。

「G窓の外みて。あれなんなの?……」

玲加が窓の外を指さす。




●私事ですが、「星の砂」に「初恋の白いバラ」を載せました。そちらもぜひお読みください。

    アイスバーグ
       

       

       

      pictured by 「猫と亭主とわたし

      


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イリュージョン 4/奥様はバンパイァ  麻屋与志夫

2009-11-24 12:43:29 | Weblog
奥様はバンパイァ 80

○「犬飼のオババ」

「あっ!?

おまえは‼

吸美のオババ」

「もうやめましょう。

わたしは恨みのラセンは断ち切った。

いつまでも過去の怨念をもちつづける。

その恨みを晴らすことを生涯の目的とする。

そういうことはやめたほうがいいと。

そこにいる武さんと玲加におそわった」

パソコンから映写される3D画像。

Mは神代寺にいるはずなのに。

この争いの場に参加している。

「またわたしをダマス気だね」

オババは3D映画を見たこともないのだ。

まして、パソコンからMの映像がとびだす。

そして臨場感をともなって話しかけられる。

そんなこと信じられるわけがない。

「わたしゃ、イヤダネ。

武がお狐様の娘とつきあうなんざぁ、許せないね」

「オババ。意地をはらないでくれよ」

「だめ」

「わたしからも、おねがいします。

わたしオババ様のためにつくしますから」

「だめ。ダメ」

「人狼の嫁にしてください」

「駄目。

だめ。

ダメ」

「武とつきあうことを、まずは……許してください」

「ダァーメだよ。

なんといわれてもダメ」

「オババ!!! 駄目といういがいのことば知らないのかよ」

「反抗するの、武」

「あぶない」

それまでだまって成り行きを見守っていたGが叫んだ。

オババが杖で武を打ちすえようとした。

オババの瞳が真紅に光る。 




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イリュージョン3/奥様はバンパイァ  麻屋与志夫

2009-11-23 07:54:27 | Weblog
奥様はバンパイァ 79

○オババの両目は嫉妬の焔で青白くもえていた。

「オババ、気づいてくれよ。

オババは悪魔に憑かれている。

オババはぼくらの誇りだった。

人狼の歴史に明るく。

ぼくらの教育係だったじゃないか」

「いつになっても年をとらない吸美族の女たちが憎いんだよ。

どうして元は同じ天国の園丁だったのに。

吸美の女たちだけが美しく。

若いんだよ」

「オババだって綺麗だ。

ヒトは見かけだけじゃない。

オババのこころは、ぼくらの未来をいつも心配してくれ。

たおばばのこころはみんながしっている。

人狼の若者のあこがれだったじゃないか」

「うるさい。武!! どきな。

こんな小娘、喰らってやる」

「やめてくれ」

「だめだ!!!」

オババの体が青白い嫉妬のフレアでつつまれた。



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寒い街/時の流れ  麻屋与志夫

2009-11-22 18:12:39 | Weblog
11月22日 日曜日

●このところ多忙。

カミサンと買い出しにでられなかった。

さすがに冷蔵庫の中は空っぽになった。

初冬の寒空の中、暗雲たちこめる街にくりだした。

街には人影がない。

人とすれちがうことはない。

田舎町の人は車がすきだ。

わずかな距離でも車にのる。

だが、それたけではない気がする。

●暗雲と書いたのにも、ちょっと説明がいる。

わたしの記憶にないほど街が不景気なのだ。

製材所の器械ノコのひびきが途絶えてしまった。

この季節の風物詩的な丸ノコのキューンという響きが冬空にこだますことはなくな

ってしまった。

冬の澄んだ大気の中でひびきわたるあの音をきくと、ああ冬がきたのだなとおもっ

たものだった。

●毎日文章を書く作業を生業としている。

言葉との格闘の末、狂乱の果てに、まだ頭の中では単語や文体が渦をまいてい

る。

……それでもどうにかYスーパーにたどりついた。

●フロントのよこに並ぶベンチでタバコを吸っている女たち。

ワンカップ大関をおいしそうに飲んでいる男たち。

すべてこともなし。

とおもうのは早計にすぎるようだ。

近づいてきくともなしにきくと、やはり不況の話だった。

広い駐車場のさきにはハローワークがある。

仕事がない嘆きがささやかれている。

暗い気分になる。

それで暗雲がたちこめたように更にかんじてしまう。

●なんとかいますこし景気がもちなおしてくれないと。

こまったものだ。

●平凡な田舎町にも不況の風がふきあれている。

●このなつかしい故郷の町。

わたしをうっとりとさせ、陶酔させた若やいだ女たちはまだ二足歩行で街を歩ける

だろうか。

杖にすがるとか、車いすを利用しているとか……。

10節目に足掛けをくくりつけ、塀の上からでないと乗ることのできなかった竹馬

で路地から路地をのしあるいていたわたしたちの時代のガキ大将はいまどこにいっ

てしまったのだ。

●偶々寄った文化活動交流館。

文化祭の写真展をやっていた。

「かあちゃん」(元ミス鹿沼)という写真がよかった。

わたしのいまの気分にぴったりなので感動したのだろう。

老婆の姿にはペーソスがあった。



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イリュージョン2/奥様はバンパイァ  麻屋与志夫

2009-11-22 12:57:35 | Weblog
奥様はバンパイァ 78

○これって古い言葉でいえば「目くらまし」だ。

今風には「イルージョン」を見せられた。

○Gは最近分からなくなることがある。

Mとのこの50年はなんだったろうか。

どんな過ごし方をしてきたのだろう。

記憶があいまいになって、夢の中のできごとのような気がしてならない。

○ぼんやりと校庭に立っていると、Mとの通話をすませて玲加が車からでてきた。

○一陣の烈風がふきよせた。

玲加の姿が霞む。

「玲加!! 伏せろ!!!」

武だけが風の正体をみきわめていた。

叫びながら玲加に向かって走る。

○Gにもかすかにみえた。

あれは犬飼のオババだ。

Mと戦ったことのある人狼の老婆だ。

「なぜだ? なぜなんだよ?? オババ、なぜこんなことするのだ???」

「武。目くらましの技はオババの裏の技だってことにMが気づいたの。わたしそれ

を武にしらせようとして……」

「そうかい。そうかい。覚えていてくれていたんだね。玉藻の前の危機を救えなか

ったのはわたしの目くらましで麻畑で遊び呆けていたからだと……」

「でも、こんなに規模のおおきなイルージョンをわたしたちにみせられるのは、犬

飼のオババだけでは無理よ」

○「それでなにもかもいままでのことが理解できる。オババ?! あんたベルゼブブ

と手をくんだな。いや悪魔に憑依されたな」

武に追いついたGが叫ぶ。

「オババ。どうしてこんなことをするんだ。オババは犬飼の古老じゃないか。

いろいろな人狼の伝説を話してくれたじゃないか」

「武がこの狐の小娘に誑かされているからだ」


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筵   麻屋与志夫

2009-11-20 23:33:14 | Weblog
11月20日 金曜日 

●「テレビをみていたらあるタレント嬢が「座敷に筵を敷いて」といっていた。

「土座に筵を敷て」と奥の細道は、飯坂温泉から旅立つ章にあったと記憶する。

茣蓙。

うすべり。

むしろ。

同じようなものなのだろう。

わたしには茣蓙とかうすべりはいぐさであんだもの。

筵は藁を材料として編み上げたものとして記憶されている。

●それはさておき、「粗莚」あらむしろをご存じだろうか。

この前に書いた麻の荷物はこの粗莚で梱包して出荷した。

もちろん、縛るのは荒縄である。

いずれも藁を原料としとていた。

●プリンターを買ってきて梱包を解いた。

いやはや時代が違うなとおもった。

その梱包材料をなんと表現していいかわからなかった。


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低地恐怖症  麻屋与志夫

2009-11-20 20:55:06 | Weblog
11月20火 金曜日

●わたしには低地恐怖症がある。

それほど、おおそれた意味合いはない。

「低地にはどこにも立ち止まってはならない。山にのがれな

さい。そうしなければ、あなたは滅びます。」創世記19:17

聖書にでてくる低地でもない。

もっと日常的なことだ。

わたしの住む鹿沼は舟形盆地にある。

そしてわが家はその一番たぶん低いところにある。

そしてJR鹿沼駅は東側の台地にあるのだが、この台地にむかってのびた勾配のある

道は「停車場坂」と呼ばれている。

でもこの地名をいまでは使う人はいないのだろうな。

だって、車で一分とはかからない距離だ。

●むかしはリャカーとか大八車でこの坂を上った。

荷物をひきあげた。

貨車便で麻の荷物を大阪方面に出荷するためにおおよそ四百キロちかくの荷物を

リャカーの荷台に積んでひきあげた。

そこでトラブルが生じた。

雨上がりの未舗装の泥道でリャカーが後ろに滑り出す。

いくら梶棒を握ってふんばってもズルッズルッと後ろに後退してしまう。

冷や汗がでた。

このままアリ地獄にひきこまれてしまうのではないか。

低地の底まで落ちていくようだ。

リャカーがたおれたらどうしょう。こわかった。

●そのときの恐怖がたぶんPTSDとなっているのた。

●「ほんと怖かったのだから」

60年後の少年はカミサンにそのときの恐怖を話しながら隣町にいそいでいだ。

プリンターとコピーをかねたキャノン機器「インクジェットプリンター」を買うた

めにヨドバシカメラにいくのだ。

●ディーン・クーンツの父親のようだった。

怖い父をおもいだしてしまった。



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イルージョン/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-11-20 04:28:24 | Weblog
奥様はバンパイァ77

○悩んで、悩んで、悩みぬけ。

それでもだめならパソコンだ。

どこかできいたことのある。

星野監督のでていたコマーシャルだったかな? 

Gじぶんのパソコンに向かった。

玲加たちはMとまだ話中だ。

おどろいたことにパソコンには蝿で検索したところ、でていた。

出ていました。

誘引剤でひきよせて退治する方法をはじめ、おどろいた。

かずかずの方法がのっている。

硫黄を燻したことなど、恥ずかしくなるほどだ。

CMのオンパレード。

○「え、そんなことあるのですか」

となりのパソコンではMと話していた玲加が絶句した。

「大量発生しているのは事実でしょうが……。

学校に現れたほどの規模で人をおそう。

……というのは納得できないわね。

イルージョンをみたのかもしれないわ」

「そんなことがあるのか」

おどろいてもGききかえす。

「わたしの遡行記憶にないということは。

みんなでマスヒステリーにかったのかも」

Mにカメラで校庭の様子をみてもらったら。

「それより……ぼくみてきます」

ワンボックスカーから武がとびだした。

Gも、Mとの会話は玲加に任せて武のあとを追った。

なんたることだ。

あれほどの、蝿の大群をおとしたのに。

まばらにしか蝿の死骸は落ちていない。

むしろ硫黄の燃えカスのほうが現実味を帯びて残っている。

喉にくるこの臭い、涙をさそうこの臭いが確実に現存しているというのに。

蝿の死骸があまりみあたらない。

こんなことってあるのだろうか。

それこそ狐につままれたみたいだ。

とおもってGはあわてた。

幻影かもしれないといったのは、ほかならぬ吸美族のカミサンだ。

狐の化身と信じられているmimaだ。

マインドバンパイァの妻だ。

わが愛する奥様だ!!!



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蠅のついてのサエナイ会話/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-11-18 04:28:12 | Weblog
奥様はバンパイァ 76

○「絶望的になったときほど冷静になるのよ」

PCの液晶画面でMが憂いを含んだ顔でいう。

玲加を励ます声は厳しい。

「わたしの代では太古からの敵は現れなかった。

わたしはいつもおそれていた。

太古からの敵、蝿の王ベルゼブブが現れるのではないかと……。

ベルゼブブが現れ安い場所というものがあるの。

那須野が原のあたりはその場所なの。

世界中に似た地名はある。

インドのオリッサ地方のアスカ。

アメリカのアラスカ。

ナサ。

地上絵のあるナスカもちろん、日本の飛鳥。

全部、空を飛ぶものとかかわりあいがある遺跡や伝説がのこっている」

「そうか……。

那須は玉藻さまの伝説が残っている。

三浦介義明の矢でうたれた九尾の狐が空をとび那須に落ちた」

「さすがね。歴女玲加だわ」

「ありがとう」

Mに褒められたのがよほどうれしいのだろう。

ほほえみながら言葉を紡ぐ。

「三浦介義明と上総介広常が追討射止めたが死体は石になり、

触れるもの上を飛ぶ虫や鳥まで殺す毒気を放った。

と読んだことがある」

「だから……上を飛ぶ虫まで殺す毒気を放つ硫黄をもやしたのね」

「そうなの。でも街中でたえず硫黄をもやすわけにはいかないでしょう」

「そうね。わたしの念波でコウモリを呼ぶのは……」

「そんなことたびたびしたら玲加からだがもたないわよ」

「こまったな。

解決策が、アイツに敵対する方法はないのかな」

「わたしたちの祖先が天国で働いていたバラ園には……。

ミツバチが群れていて、蝿はちかよらなかったときいている。

蝿は汚いものに集る。

だから糞の王なんてかわいそうな名前をベルゼブブはつけられている」

「おばさま、わたしこの街にきて驚いたことがあったの。

プランタンに造花の花を植えてジョウロで水をやっているひとがいる。

あれってどうかんがえてもおかしいょ」

「そのへんに、ベルゼブブの復活をうながすなにかがあるのよ」

「バラの花で街をおおうなんて……。

できない相談だしな……」

Mと玲加のやりとりにGわりこんだ。

「緊急事態だからな。

いますぐになんとかしないと蝿の大流行だ。

パンデミックだ」

「蝿は疫病も媒介する」

武も会話に参加する。

「なにかないかしら」

みんなが沈思する。


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あらたなる侵略/奥様はバンパイァ  麻屋与志夫

2009-11-15 22:20:28 | Weblog
奥様はバンパイァ 75

○「Mには過去に遡行する能力がある。


わたしと結婚するときに目覚めた。


この能力は過去のあらいる事件や、歴史を記憶している。


Mの家系の女にだけ引継がれる」


「それって、元祖歴女ってことね。


わたしも結婚すれば歴史のことに興味をもつだけでなくて、なんでも思いだすって


ことなの。


それって、すごいことだよね」


玲加がキッチンからキリマンの芳香をはなつコーヒーをはこんでくる。


武がまぶしそうに玲加をみつめている。


○「とうぶんはここで武君も生活するといい。


なかまもつれてきたほうがいいな。


なにがおこるか、わからない」


「おきてるわ」


玲加がテレビをゆびさす。


液晶画面にはこの街のケーブルテレビが映っていた。


蝿が大量に発生していると報じている。


そして蝿が街の街頭。

スウーパーの内部。


家庭。


をとびまわっている。 


「どうしょうというのだ。


なにをしようとしているのだ」


「Mにきいてみる」


玲加がパソコンを開く。


「はやくでて。


Mima。


おしえて。


どうすればいいの」


画面があかるくなった。


Mがほほえんでいる。


「こちらから連絡しょうとしてたの」


「ミイマ、たすけて」


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