田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

Gー歴女に語る/奥様はバンパイァ  麻屋与志夫

2009-11-28 10:23:03 | Weblog
奥様はバンパイァ83

○「冷たーい」

 玲加が声をあげる。

 話をつづけながら武が湿布をはる。

 玲加は武の手が肌にふれたので顔を赤らめている。

 武はそんな微妙な玲加の心のときめきなどわからない。

 なにせ、文字通り、なんといっても元祖肉食系の男の子だ。

 人狼だ。

「MS温シップだよ。そんなに冷たいわけないとおもうよ」

 まともに玲加の言葉をとりあって、真剣に使用上の注意に目をとおしている。

 打撲傷だから確かに湿布をはったからといって痛みはすぐに治らない。

 玲加は武を見上げてほっと溜息をついた。

○女子生徒の、みみに手をやった行列は途絶えている。

 午後の静寂な校庭にもどった。

○Gは車をだした。

「ともかく、いちど家に戻ろう」

 ありえないことがつづくので老いた物書きは疲れていた。

 Mがそばにいてくれれば、いつも心が高揚している。

 50年も寝食を共にしたカミサンがいない。

 そばにいてくれるだけで、いい。

 話をきいているだけで、いい。

 声だけでも、いいのだ。

 心がはずみ元気になるのだ。

 ひたすら小説をかきたいとおもう。

 絵を見たい。ジャズをききたい。クラシックだっていい。

 ともかく美しいものにふれていたい。

 そのわたしの心のときめきがMにもたまらないらしい。
 
 吸美族のカミサンの糧となる。芸術家の伴侶として至高の存在だ。

○明治の天才画家青木繁の才能を認めて愛人となった福田たねもこの地方の生まれ

だ。

 もしかすると彼女もMの同族かもしれない。

 二人の間に生まれた、認知はされなかったが福田蘭童。

 笛吹き童子のテーマソングで一世を風靡した。
 
 その子、石橋エータロー。

「そういえば、蘭童さんはこの街の西大芦村で老後を過ごしたいといっていた。坂

本龍一のルーツはわが家のバラ園の隣の空き地らしいんだ。これは街のヒトの噂だ

から確かめてみないとわからないがな。未確認情報だ。女流作家人気絶頂の山田詠

美はMと同じ東中学から高校まで同じ出身だ。これは確認済み……。この地方は芸

術家の温床だとおもう……」

 Gは玲加の痛みから気をそらしてやろうと話し続ける。

 歴女の玲加は熱心にききいっている。

 武も同調している。

「ハンドルがとられている。ブレーキがきかない」




●私事ですが、「星の砂」に「初恋の白いバラ」を載せました。そちらもぜひお読みください。

    アイスバーグ
       

       

       

      pictured by 「猫と亭主とわたし

      


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